WOMAN'S CAREER

Vol.178 メルセデス・ベンツ日本株式会社

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まつうら・ゆか●販売企画室 プロセス・予算管理課。大阪府出身。34歳。関西学院大学総合政策学部総合政策学科卒業。新聞社、PR会社を経て、2011年にメルセデス・ベンツ日本株式会社入社。現在、夫と7カ月の息子と3人暮らし。

誇りを持てる商品・サービスを、世に伝えていく喜びがある

ドイツ、ダイムラー社の100パーセント子会社として、1986年に設立されたメルセデス・ベンツ日本株式会社。最上の安全性と品質を誇る自動車を、より多くの人に親しんでもらいたいという思いから、2011年7月に、“車を売らないショールーム”『Mercedes-Benz Connection』を東京・六本木にオープン。高級車というブランドイメージに、いかに親近感を持ってもらうか。そのためのマーケティング戦略に力を入れてきた。
松浦さんが入社したのは、マーケティング戦略の転換時期となった2011年。企業広報担当として、企業・ブランド戦略に新しい風を吹き込む役割を任された。
「従来のメルセデス・ベンツの広告は、“雄大な景色や街中を疾走する車”が中心でした。小型車の強化が始まり、日本のアニメーションとのコラボレーション広告やイベントの企画実施など、新しいチャレンジをどんどんするようになったタイミングが、私の入社時期。ガソリン自動車誕生から130年(2016年時点)という歴史を大切にしながらも、いかに新鮮さをもたらし、新たな顧客層を広げるか。会社の変革期に、企業・ブランド広報として入社できたことは非常に幸運でした」

 

大学卒業後のファーストキャリアは、大手新聞社の記者だった松浦さん。記者という仕事に興味を抱いたきっかけは、学生時代に留学していたカナダ・トロントで、地元の雑誌記者に取材を受けたことだった。留学中に9.11(アメリカ同時多発テロ)が発生し、少しでも自分が貢献したいと献血に行った先で、自分の話を聞いてくれる記者に出会った。「小さな声を拾って、世に伝えていく」という仕事に、自分も就きたいと思ったという。
入社してから4年間は、千葉支局、柏支局で、事件、事故、裁判、行政、スポーツ、街ネタなど、担当エリアで生じたあらゆる事象の取材に行く毎日。「事件の関係者を待つため、エンジンを止めた車内でじっとしていたら職務質問されたこともあります」と当時を振り返る。
「大変なことばかりだったのに、今思い出すのは、取材先で『いつもご苦労さま』と温かい缶コーヒーをもらったり、ご飯を食べさせてもらったりと、人の温かさに触れた出来事ばかり。学校でいじめに遭った女の子の記事を書いたら、『学校の教材に使いたい』と中学校の校長先生から問い合わせを頂いたこともありました」

 

刺激に満ちた4年間だった一方、不規則な生活に体力の限界を感じたことから、広報へとキャリアチェンジを決めた松浦さん。社会人5年目から外資系PR会社に転職し、3年半、外資系医薬品メーカー担当として広報を経験。その後、「魅力ある商品を持つ事業会社で、広報をやりたい」という思いでメルセデス・ベンツ日本株式会社への転職を決めた。
『Mercedes-Benz Connection』がオープンして2カ月後に入社し、企業広報として、テレビや新聞の報道対応を担当。メディアの取材依頼が次々と舞い込む状況で、毎日が目まぐるしく過ぎていったという。
「取材対応に追われながらも、メルセデス・ベンツ日本の取り組みやアピールしたいことをどうメディアに取り上げてもらうか、記者とコミュニケーションを取りながら伝えていく“提案型広報”を心がけました。例えば新聞の経済面担当の記者から、メルセデス・ベンツ日本の業績好調の理由について取材したい、と依頼が入ったとします。記者は『株価の影響』などと仮説を持って取材に来るので、ただ質問に答えているだけでは、こちらが取り上げてほしい内容は記事に盛り込まれません。そこで、メルセデス・ベンツ日本が行っているマーケティング手法や広告戦略について、相手に面白いと思ってもらえるようなデータや資料を作成したり、話をさせてもらったり。そんなやりとりによって、記事が『メルセデス・ベンツの斬新なマーケティング戦略』という方向性に大きく変わることもあります。取材内容によっては『ただひと言コメントが欲しい』といった要望もありますので、相手の求めるもの、変更の入る余地などを見極めることが大切ですが、どの情報をどのタイミングでどの程度開示すべきか、常に考えながら対応していました」

 

2015年8月には、3カ月間の産前産後休暇から復帰。1カ月間の時短勤務を経て、現在はフルタイム勤務で、正規販売店と一緒に、お客さま向けの展示会や商談会、自動車ショーなどのイベントを企画、運営している。イベントへの来場者数や成約件数など、結果が数字で明確に出ることが新鮮だと話す。
「記者も広報も数字で評価されることがほとんどなかったので、いいモチベーションになっています。メルセデス・ベンツを実際に売るのは販売店なので、当社の社員が、ユーザーであるお客さまと直接コミュニケーションを取ることはほとんどありません。でもイベントは、生の声を聞ける貴重な機会。お客さまがメルセデス・ベンツにどんな印象を持っているのか、何か要望はないかなど、少しでもヒントを得たくて、イベントに行くのは毎回とても楽しみです。また、お客さまへのホスピタリティなど、イベントでの当社の対応もメルセデス・ベンツの印象を決めますので、動線などにも細心の注意を払っています」

 

ワークライフバランスを考え、記者から広報へのキャリアチェンジをしてきた松浦さんだが、「想像以上にいいバランスで仕事と育児を両立できている」と話す。
「私が育休を取得せずにフルタイム復帰できたのは、会社と自宅が近く、夫や義理の母が育児に協力的であるから。そして、長時間労働を是としない会社の風土と、フレックスタイム、在宅勤務などの制度の充実があります。育休は子どもが2歳になるまで取得できるので、どのような働き方、生き方をするかによって、復帰の仕方もさまざま。『明日は午前中出勤しないので、違う曜日の夜にその分2時間多く勤務します』といった調整は個人の裁量に任され、周りも当たり前のこととして理解してくれます。約40人のワーキングマザーの先輩がいるのも心強いですね。これからも、メルセデス・ベンツをもっと多くの人に親しんでもらうため、新しいチャレンジに貪欲でいたいと思います」

 

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次回出展する自動車ショーに向け、社内で打ち合わせ。出展ブースをどんなレイアウトにするかによってお客さまの反応が異なるため、密な事前準備は必須だ。

 

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イベントに出す車種は何にすべきか、来場するお客さま層を考えながらチェックしていく。

 

松浦さんのキャリアステップ

STEP1 社会人1年目、大手新聞社(全国紙)の千葉支局で記者になる

1年目に千葉支局、2年目に柏支局(千葉県)に配属になり、そのエリアで起きたさまざまな事件、事故や行政を担当。事件関係者の顔写真を探し、情報を得るべく歩き回ったことも多々。「事件や事故の取材を通して、人の醜いところもたくさん見ましたが、それよりも、人の優しさに触れた経験の方が印象的でした。不規則な生活を案じて地元の方がご飯をごちそうしてくださったり、寒い日にはあたたかい缶コーヒーを頂きました」。ただ、求めたい仕事のレベルとプライベートの両立を、自分の体力で実現するのは難しいと感じ、広報の道へ転換を決める。

STEP2 社会人5年目、外資系PR会社に転職

外資系PR会社に転職し、外資系医薬品メーカー担当として、広報のキャリアをスタート。「それまで記者だった私にとって、広報は取材対象者でした。その“表裏”を見てきた経験を生かし、企業幹部向けに『模擬取材を受けるメディアトレーニング』研修をサービスとして提案。取材でどう受け答えをすべきか、何をどう話すと、相手が記事として取り上げてくれるかをレクチャーしていきました。企業倒産やM&Aにかかわったこともあり、情報をどのタイミングで誰に伝えるべきか、メディア報道の前に社員に情報を伝達するために企業幹部はどう動くべきかといった、コンサルタントとしての仕事も担当。一つの事業会社にいては経験できないことばかりでしたね」。

STEP3 社会人8年目、メルセデス・ベンツ日本株式会社に広報として入社

広報として、テレビや新聞などの報道対応を担当した。転職先として選ぶ際、「世の中に自信を持ってPRできる商品やサービスを持っている企業」であることを重視。また、前職の外資系PR会社で多くのヨーロッパ系企業を見てきた中、どこもワークライフバランスが充実していると感じ、長く働きやすいだろうと考えた。「安全性、品質ともに絶対の信頼を置ける商品を扱っているので、広報としてとてもやりがいがあります。また、直属の上司・同僚の理解だけではなく、長時間労働を是としない風土が社員一人ひとりに浸透しており、想像以上に働きやすい環境でした」。

STEP4 社会人12年目、3カ月間の産休取得後、販売企画室に復帰

育休を取得せずに1カ月間の時短勤務を経てフルタイム復帰し、フレックスタイム制度や在宅勤務制度などを利用しながら育児と仕事との両立を進めている。「母親になってから、仕事の優先順位づけと、先回りした動きにはこれまで以上に注意するようになりました。子どもの熱など突発的な用事ができれば、次の日に出勤できるとは限りません。そこで、常に周りのメンバーと共有できるようなフォルダにデータを保存し、仕事がどこまで進んだのかがわかるようにしたり、『そろそろイベントの資料が必要だろう』と先を見越して作成したり。仕事の生産性が上がっているのを感じます」。

ある一日のスケジュール

6:30 起床、長男の世話。
7:30 夫と長男を送り出す(保育園の送りは夫が担当)。自分の朝食、家事をすませる。
9:30 出社、優先度の高いものからメールを返信。
10:00 イベントへの展示車両を決めるため、社内で打ち合わせ。
12:00 先輩ママ社員とランチ(フレックス勤務の日はデスクランチ)。
13:00 イベントについて、広告会社と打ち合わせ。
14:00 イベント参加者用の資料作成、印刷物の校正。
18:00 退社。長男を保育園に迎えに行く。
19:00 帰宅し、長男に夕食を食べさせ、お風呂に入れる。絵本の読みきかせ、寝かしつけ。
21:00 自分の夕食、家事(保育園で汚した洋服の洗濯など)。ドラマ鑑賞。
23:00 就寝。

 

松浦さんのプライベート

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2012年秋にモルディブへ。ダイビング好きの夫に影響され、自身も上級ライセンスを取得。モルディブの海を潜った。

 

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2015年8月のお宮参り。子どものドレスはすべて手作り。ミシンを購入し、丸3日かけて靴下まで作った。「初めての洋服作りでしたが、やりはじめたら細部までこだわってしまいました」。

 

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2013年夏、沖縄の海を潜りに行った。お盆やゴールデンウィークは、社員のほとんどが1週間ほどの長期休暇を取得する。その休みを使って、バリ島やサイパンの海にも潜りに行った。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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