WOMAN'S CAREER

Vol.180 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)

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きがわ・みきこ●対日投資部 誘致プロモーション課。埼玉県出身。38歳。関西学院大学総合政策学部総合政策学科卒業。2002年入構。本場のサッカーを観戦したいという理由で、学生時代にドイツへ語学留学。日本をステレオタイプで語る海外の学生が多く、日本の魅力をもっと伝えたいと思うようになった。現在、夫と2人暮らし。

「木川さんのおかげで世界に行けた」。中小企業社長の言葉に力をもらう

「日本のよさを、もっと世界に伝えたい」
そんな思いで、通商・貿易政策の実施機関、独立行政法人 日本貿易振興機構(以下、ジェトロ)に入構した木川さん。現在、対日投資部で、海外企業の日本市場への投資を促進するプロモーション活動を担当している。
世界に目を向けるようになったきっかけは、学生時代のドイツ留学経験だった。同じ語学学校に通っていた海外の学生から、「日本はスシ、ゲイシャ、サムライ、ニンジャの国」と言われ、日本の“今”がまだまだ世界に伝わっていないと実感。日本の魅力を伝える仕事に就きたいと考え始めたという。
「“伝える”という点でメディア関係にも興味がありましたが、ジェトロの仕事は、より直接的に、日本の中小企業にアプローチして海外展開を手がけ、外国企業の日本販路展開をサポートしていく。面白そうな仕事だと思いました。ジェトロの事務所は、国内に40カ所以上、海外では54カ国70カ所以上あり、地方や海外で経験を積める点も魅力でした。長く働いている女性も多く、出産後に家族と一緒に海外駐在している方がいるなど、女性が仕事を続けやすい環境があると感じましたね」

 

入構後は輸入促進部に配属され、自動車をはじめ外国商品の輸入を進める部署で、社会人としてのビジネススキルを身につけた。ただ、輸入を促進することよりも、輸出を促進するニーズの高まりを背景に、2年目には組織が大きく再編。その流れで総務部に異動し、オフィス移転のプロジェクトを任され、旧オフィスの備品整理や新オフィスのレイアウト立案などを手がけた。

 

中小企業の海外展開支援を担当したのは、4年目になってからだ。仙台事務所に転勤し、地元の自治体などと協力して海外展開に関心のある企業向けにセミナーを開催。年間約50の企業に対し、各企業が誇る食品や伝統工芸、技術を海外に展開するべく、さまざまな企画を立案、実施していった。
「水産加工品を香港や台湾に売りたいという企業とは、台湾の展示会に出展し、法被(はっぴ)を着て一緒に試食会を行いました。仙台出身の建築家やデザイナー、メディアの方々とは、『仙台を芸術の都にする会』を立ち上げ、『仙台から世界を挑発!』をキャッチコピーに勉強会を定期的に開催。ほかにも、漆(うるし)とこけしが有名な鳴子地域を活性化するべく、こけしの独特な丸みと漆の高級感を融合させた製品を作り、パリの展示会(デザイン作品の見本市メゾン・エ・オブジェ)出展に向けて、市場調査のための出張をしたこともありました。海外は初めてという漆職人さんをパリに連れていくのは大変でしたが、『モノづくりの世界が広がった』という言葉を頂き、苦労も吹き飛びました」

 

3年間の仙台事務所勤務の後、7年目には東京本部に異動し、全国の中小企業を対象に輸出支援を担当。各地方のジェトロ事務所と連携しながら、年間200社の企業を受け持った。
「日本の優れた技術は、まだまだ世界に知られていないと実感する日々でした。例えば、茨城県にある家族経営の中小企業は、さまざまな素材の薄い板に少しのバリ(材料を切ったり削ったりした際にできる出っ張り)もなく穴をあける、高度なパンチングの技術を持っていました。すでに日本の大手企業とは取引をされていたので、海外企業にも必ず売り出せると思いましたが、社内には海外展開へのノウハウや知識がありませんでした。そこで、どの国と地域にニーズがあるのか市場調査を実施。社長を連れて海外に行き、現地のバイヤーと商談をするところまでを支援しました。その企業は今でも自分たちで通訳をつけて、年に1~2回商談を続けているそうです。『木川さんがきっかけを与えてくれた』という言葉をもらった時は、とてもうれしかったですね」

 

入構11年目には、希望していたドイツ・デュッセルドルフ事務所への転勤が決まった。ドイツ市場の開拓に興味を持つ企業の相談に乗り、ドイツの展示会への出展をサポートしながら、日本市場に進出するドイツ企業を開拓。年間40日はドイツ国内に出張し、企業を訪問して回った。
「日本進出を見込めそうなドイツ企業を調べては訪問し、日本の経済状況や商習慣をプレゼンテーションしていきました。ドイツのメーカーは、日本と同レベルの高い技術力を持っています。日本人は技術への理解が深く、適正な価格で取引をしてくれますし、日本技術との連携で、新たな製品を生み出せるかもしれない。そんな話を重ねることで、実際に日本に事務所を設けた企業も発掘できました」

 

3年間のドイツ生活を終え、現在、対日投資部 誘致プロモーション課で、日本市場を海外にPRする事業を担当している。世界各国で、日本が外国企業の投資誘致に積極的であることをPRするセミナーを開催したり、地方自治体の投資誘致事業をサポート。国内外のジェトロ事務所と協力しながら、プロモーション活動を立案、実施している。
「日本で事業を立ち上げた外国企業の方を講師に招くこともあります。また、『(誘致活動で出合った)この外国企業と同じような技術を持つあの日本企業であれば、連携できる可能性がある』とマッチングの機会を提供するなど、中小企業支援で培った人脈を生かしています」

 

日本と海外をつなぐ仕事を、今後もずっと手がけていきたいと話す木川さん。
「仙台でも東京でもドイツでも、企業の情報は自ら取りに行き、『海外に売りに行きましょう』『日本に進出しませんか』と直接コミュニケーションをとって、事業を動かしてきました。『木川さんに出会わなければ、海外に行くことは絶対になかった』と今も言ってくれる社長がいて、やってきてよかったと心から思います。面白い仕事を自分で見つけるという姿勢は、後輩たちにも伝えていきたいですね」

 

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海外で行われるセミナーに向けて、日本市場のどんな情報をPRすべきか、課内のメンバーと意見を交わす。

 

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ドイツの経済雑誌や日本の経済新聞などのチェックは欠かさず、最新情報のアップデートに努めている。

 

木川さんのキャリアステップ

STEP1 入構1年目に輸入促進部、2年目に総務部配属を経て、4年目に仙台事務所で中小企業の海外展開を支援
総務部ではオフィス移転準備を担当した。2万点以上ある旧オフィスの机や椅子、キャビネットなどのサイズをすべて測り、新オフィスに入るようにレイアウトを組むなど、細かな確認業務を進めた。オフィス内で使われていた電話番号を整理し不要な回線を見つけることで、電話料金の大幅な削減にもつなげた。仙台事務所では、海外進出に興味のある企業を年間約50社担当。「企業から問い合わせが来る場合もあれば、新聞やインターネットで、面白い製品や独自の技術を持つ企業を探して訪問することもありました。多くの文化人やクリエイター、大学教授の方々と、東京を経由することなく、仙台からダイレクトに海外にアピールしていこうと『仙台を芸術の都にする会』を設立。仙台のおいしい地酒を飲みながら議論を重ねた時間は、本当に楽しかったですね」。

STEP2 入構7年目、東京本部に異動し、全国の中小企業の海外販路拡大をサポート
「日本にはいいものがたくさんあるのに、海外に全然伝わっていない」という学生時代の思いを持って、中小企業の海外展開を支援。輸出に興味を示さない経営者に「この技術があれば、売りに行ける」と説得し、どの国・地域に進出すべきかを調査していった。「海外のバイヤーと商談をするのは社長ですが、ジェトロは各国の事務所の情報網を活用し、アプローチすべき企業の選出や絞り込みなどに力を発揮できます。企業にDMを送る際は、その文面を一緒に考えるなど、細かな部分までサポートしていきました。海外の展示会に出ていながら、その後、何もフォローしていない企業や、問い合わせをもらっているのに対応していない企業も少なくありません。語学の壁を感じている経営者も多いので、『こうやったら対応できます』という筋道を示すのが大切です。実際に、極小のネジを製造している家族経営の中小企業では、英語好きな方を海外担当に任命し、外国企業へのメールの書き方、海外の展示会に出展オファーを出す方法、海外で販売代理店を見つけるノウハウまで伝授していきました」。

STEP3 入構11年目、ドイツ・デュッセルドルフ事務所に駐在
転勤が決まる1年前に結婚したため、駐在中の3年間は単身赴任生活だった。帰国は年に1回という別居生活だったが、「夫は『海外駐在したい』という私の想いを理解し、快く送り出してくれました」。ジェトロには、夫婦どちらかが海外駐在となった場合、その期間は配偶者に同行するために休職し、帰国後、復帰できる制度がある。この制度を使って家族との時間と仕事を両立している人もおり、子どもを連れて海外駐在している女性もいるという。キャリアを継続するために設計された制度という。

STEP4 入構14年目、対日投資部 誘致プロモーション課に配属される
世界に向けて、日本が投資受け入れに積極的であることをいかに伝えるか、日々考えている。「どの国でどんな構成のセミナーを開催するか、誰に何を話してもらうべきかを考えるのも、課の役割です。例えば、首相のメッセージが効果的な米国では、総理大臣がニューヨークで国際会議に出席するのに合わせ、5分だけ時間を頂いて、セミナーでメッセージを発信してもらいました。PR資料においては、文字がびっしり書かれたパンフレットを嫌がる国もあれば、情報を詰め込んだ資料の方が好意的に受け取られる国もあります。対象国によって、資料のデザインを変えるなどの工夫にも、取り組まなくてはいけません」。課には入構1~3年目の若手が多いため、仕事の進め方についてアドバイスすることも多いという。「経験上、情報を自分で取りに行く、足を運んで聞きに行く大切さは伝えていきたいです」。

ある一日のスケジュール

7:00 起床。朝ご飯を食べる。
9:00 出社し、その日やることを整理。
9:30 海外事務所から届いているメールをチェックし、チーム内で役割分担。課長へ情報を共有。
10:00 時差の少ないアジア各国の事務所と電話。開催するセミナーについて情報のすり合わせ。
12:00 他部署と近況報告、情報交換のため一緒にランチ。
13:00 日本市場のPR資料を作成。
15:00 欧州の事務所が始業したタイミングを見計らって、電話で打ち合わせ。
19:00 退社。帰り道に夕食の食材を買う。
20:00 帰宅して、夕食。
21:00 翌日の夫のお弁当を作る。
24:00 就寝。

 

木川さんのプライベート

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2015年春、イタリアのフィレンツェで、学生時代のドイツ留学仲間と15年ぶりの再会!

 

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2013年12月、世界最古といわれるドイツ・ドレスデンのクリスマスマーケットを友人と訪れ、ホットワインとソーセージに舌鼓。

 

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子どものころから浦和レッズファン。シーズン中、ホームの試合は必ず観戦に行く。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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