WOMAN'S CAREER

Vol.181 サントリーホールディングス株式会社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ながはら・ゆうこ●人事本部 グローバル人事部。大阪府出身。京都大学総合人間学部国際文化学科卒業。1998年入社。現在、夫と小学校4年生の長男、5歳の次男と4人暮らし。

社員一人ひとりがイキイキ働ける環境を、仕組みづくりの面からサポート

「会う人会う人、みんな素敵なんです」

社内広報業務に長く携わり、サントリーグループ全社のあらゆる部署の社員と接してきた長原さんは言う。

「その思いは、サントリーの選考を受けた就職活動時から変わらないですね」

 

身近なものを通して人々の生活を幸せにできる仕事がしたいと、消費財メーカーや食品メーカー、広告、出版業界などを見ていた中、採用の過程で最も素の自分を出せたのがサントリーだった。出会う社員の面倒見のよさや、長く働く女性の多さに「自分らしく自然体で働き続けられるだろう」と入社を決めたという。

 

入社後、10日間の新入社員研修を経て配属されたのは、本社(大阪)広報部。社内広報グループで、社内誌『まど』の編集メンバーとして取材、撮影、記事の執筆を担当し、先輩の指導を受けながら、毎月発行される40ページの社内誌の企画立案の仕方を学んでいった。全国の営業拠点や生産工場に足を運び社員を取材しては、一人ひとりの仕事のストーリーを追った。

「サントリー内にいるあらゆる職種の社員に会って話を聞き、その仕事観に刺激を受ける毎日でした。3年目には、中国市場に進出して好業績を挙げている事業の特集に携わり、どのように市場開拓をしたのか、進出までにどんな苦労があったのかをプロジェクトメンバーから聞いていきました。社内誌は『経営と社員をつなぐツール』として、記事を通じて会社が目指す方向を社員全体に共有していく役割を持っています。中国進出の特集では、個別のストーリーを通じて、グローバル展開に大きくかじを切ろうとしていく会社の未来を伝えていきました」

 

入社以来4年間、社内誌の編集に携わり面白さを感じる一方、社員を取材し、記事を書くたびに、「商品企画や開発など、現場経験のない自分には、仕事の魅力を真に伝えることができていないのではないか」という思いを抱くようになっていった。

「メーカーに入ったのだから、今後のキャリアのためにも、商品企画、開発業務を経験したい」と社内公募制度に応募し、5年目にはマーケティング部門である酒類事業本部へ異動。ちょうどチューハイやカクテルなどの新商品開発に力を入れていこうという絶好のタイミングだった。しかし、開発に携わった2年半は、力のなさを実感する苦しい時間だったと振り返る。

「新商品の開発は、商品パッケージを考えるデザイナーや中身開発者とでチームを組み、商品コンセプトからターゲット層、パッケージデザイン、販売計画などをゼロから考えていきます。企画内容が固まったら、実際に消費者ニーズはどれほどあるのか消費者調査を行い、その後、社内プレゼンテーションを経て、実際の製造工程に入ります。新商品提案は数々行いましたが、社内で企画が通らなかったり、発売までたどり着いても、ヒットせず早々に撤退したりと、苦い思い出ばかり…。発売に至るまでには、マーケティング投資はもちろん、設備投資など膨大な初期費用がかかるため、発売後にすぐに撤退になると、業績に貢献できないばかりかマイナスになってしまいます。会社に申し訳ないという思いばかり抱えていましたね」

自信を失っていた長原さんの背中を押したのは、上司の言葉だった。社内広報誌の編集経験を買われ、当時、部署にはなかった「商品開発マニュアル」の作成を担当した長原さんは、開発過程で確認すべき全項目を網羅したマニュアル冊子を制作。「成分表示のチェック方法」など細かいところまでフォローされた内容を見た上司が、「時を告げるのではなく、時計をつくる仕事をしたね」と言ったのだ。

「ビジネス書の名著『ビジョナリー・カンパニー』に出てくる言葉を贈ってくれ、仕組みをつくることで、組織に貢献しているんだと評価してくれました。自分の役割に、自信を持てた瞬間でした」

 

入社7年目に1年間の産休・育休を経て、東京支社の社内広報グループに復帰すると、会社はグローバル化へと一気に突き進む時期の真っただ中。中国をはじめ、タイやインドネシア、ベトナムなどの東南アジア圏から、欧米までグループ各社を訪れ、現地社員を英語で取材して記事を起こす、初めての経験を重ねていった。

「アメリカ・サンフランシスコでは、各国のウイスキーブランドが商品を出すイベントを取材しました。ジャパニーズウイスキーに多くの人が関心を寄せ、サントリーのブースに人が押し寄せる光景を見た時は、海外展開への勢いにわくわくしましたね」

 

その後、入社12年目に次男を出産し、2児の母として子育てとフルタイム勤務とを両立させている長原さん。長男の育休明けには、頻繁に熱を出す息子を保育園に迎えに行くため、会社を早退したり休んだりすることが多く、「休んだ分の仕事を何とか取り返さなくては」と意気込むあまり、倒れそうになったことも。「両方、完璧を目指すことは無理」と受け入れてからは、ベビーシッターを頼んだり、関西にいる両親に上京して面倒を見てもらったりと、「頼れるものには頼る」ことを心がけているという。

 

現在は、グローバル人事として、国内で働く外国籍社員の環境整備や、海外駐在員のサポート業務を担当。日本での生活や働き方にカルチャーショックを受ける外国籍社員に対して、異文化適用のための研修を充実させるなど、やるべきことはたくさんあると話す。

「サントリーでは、どんな仕事でもチームワークが重視され、ジョブローテーションを通じて長期間かけて人を育てる文化が根付いています。でも、欧米では、個人の能力に基づき、空いたポジションにその業務にたけた即戦力人材が入るのが普通。チームワークが日本ほど重視されないため、報連相(報告・連絡・相談)の文化もありません。多くの外国籍社員がぶつかるのが、この報連相の壁。『こんなに細かいことまで報告を求められるのは、自分が信頼されていないからではないか』と自信を失ってしまう社員も少なからずいます。そこで、異文化を理解するための研修など、違いを受け入れられるような機会を増やしていくことが必要だなと考えています」

 

海外駐在員のサポートのため、海外グループ会社の人事部と電話やメールでコミュニケーションを取る際も、文化の違いから理解し合うまでに時間がかかることも多い。だからこそ、わかり合えた時の達成感は格別だ。さらに、海外の第一線で奮闘する駐在員とつながり、相手の反応がダイレクトに伝わることがこの仕事の面白さだと話す。

「働く社員のイキイキした姿を見るのが、好きなんです。これからは、人事としてのキャリアを積んで、変化を続ける会社の仕組みづくりに貢献していきたい。会う人はみんな素敵、という私が感じたサントリーの魅力を、私がサポートしていく側になりたいですね」

 

ph_woman_vol181_01
外国籍社員を交えた打ち合わせ。社内環境の改善点を挙げていく。

 

ph_woman_vol181_02
海外駐在員から、現地法人の人事制度について問い合わせが入る。

 

長原さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、大阪広報部で社内広報誌の制作を担当
社内広報グループのメンバー4人で、社内報を通じて社員に何を伝え、問いかけるべきか、いつも議論を重ねていた。「サントリーは、創業者・鳥井信治郎の『やってみなはれ』というチャレンジ精神を大事にしている会社です。では、普段から本当に挑戦の心、遊び心を持って仕事に取り組んでいるのか。全社に問題提起しようと、特集を組んだこともありました。このままでいいの?と働き方を考えるきっかけになればと、社員に意識調査をしたり社外の有識者にも取材をしたり。社員からの反響にはいつもドキドキしていました」。先輩から丁寧に仕事を教わりながら経験を積んでいた長原さんだったが、一度、叱責を受けたことがあった。「ある時、先輩に『(原稿を)修正してもらえるという前提で、記事を書いているでしょう』と指摘されたんです。先輩がチェックしてくれるからこれくらいでいいかな、と甘えていたのを見抜かれていて『もっと推敲(すいこう)しなさい』と。それ以来、一度でOKが出る原稿を作成するには、何に気をつければいいのか、これまでの赤字を見直すなど、仕事の完成度に対する姿勢が変わりました」。

STEP2 入社5年目、東京支社の酒類事業本部企画部に異動し、新商品開発を手がける
社内公募制度に応募して、チューハイやカクテルの新商品開発部署に異動。人気商品だった「ザ・カクテルバー」をリニューアルし、缶入りの新シリーズを出すなど、さまざまな商品開発に携わった。「ヒット商品を出すまでには至りませんでしたが、開発過程でのロジカルシンキング、プレゼンテーション技法はその後の仕事にとても役立ちました。ヒット商品を多く手がけている商品開発者は『お客さまの生活をどこまでリアルに“想像”し、新商品のある生活をどこまで具体的に描けるかが肝だ』と話していて、その想像力はどんな仕事にも応用できると納得したのを覚えています」。

STEP3 入社7年目、長男出産のため1年間の産休・育休取得後、広報部に復帰
商品開発部では、仕事柄、アルコール飲料を試飲することを避けられないこともあり、東京の広報部社内広報グループに復帰。育休明けの1年間は9時から17時までの時短勤務を選択し、その後は17時半までのフルタイム勤務を続けた。「グローバル展開事例を取材する機会が増え、海外のグループ会社で現地社員を英語で取材することも多くなりました。そこで、語学力を上げなければと、社内の研修制度を利用して、朝の英会話レッスンへ。夫と保育園の送りを交代で担当しながら、週1回、朝7時20分から1時間半のグループレッスンを5年間受けました。海外出張が入る際は、夫婦どちらかの両親に1週間子どもを見に来てもらうなど、いろいろなサポートをお願いしましたね」。

STEP4 入社12年目に次男出産後、広報部での勤務を経て、グローバル人事部に配属
2度目の育休後も引き続き広報部社内広報グループに復帰。グローバル向けの社内報サイト「Global MADO」の立ち上げ、企画運営など、Web媒体への取り組みが増えていった。「業務と並行して、社内横断プロジェクト『子育て環境プロジェクト』のメンバーとなりました。女性の働きやすさには、男性が子育てできる環境が整っていることが大切だと日々痛感していたので、男性社員が育休をもっと取りやすい環境づくりを提言しました。ほかにも、産休・育休前後の情報提供や会社との接点を絶やさない仕組みなど、自分の経験をもとに提案できたのはとても有意義でしたね」。2015年4月からはグローバル人事部に配属され、外国籍社員の働きやすさをサポートする「インバウンド・プロジェクト」に注力している。

ある一日のスケジュール

6:00 起床。洗濯などの家事をすませ、次男の登園準備。朝食づくりは夫が担当。
8:30 次男を保育園に連れていき、出勤。
9:00 出社し、メールチェック。海外グループ会社の人事部や駐在員からの問い合わせに対応。
10:00 海外駐在員や外国籍社員の税務の考え方や手続きについて、会計事務所と打ち合わせ。
12:00 ランチタイムを利用して、部内の英語勉強会に参加。
13:00 課内の共有ミーティング。海外からの問い合わせ内容を共有し、対応にぶれが出ないようにする。
15:00 社内の外国籍社員の働きやすさ向上に向け、資料を作成。
17:00 グローバル人事について専門知識を深めるため社外セミナーに参加。
18:30 退社。保育園に次男を迎えに行く。
19:30 帰宅後、急いで夕食を作る。
20:00 塾から帰ってきた長男と一緒に夕食。
22:30 本を読み聞かせながら、子どもと一緒に就寝。

 

長原さんのプライベート

ph_woman_vol181_03
2015年9月に家族でセブ島(フィリピン)へ。「次男が大きくなり、家族4人で海外に出かけられるようになってきたのがうれしいです」。

 

ph_woman_vol181_04
2014年夏、サントリーの次世代環境教育プログラム「水育(みずいく)」の一つ、「森と水の学校」(山梨県北杜市)に長男とプライベートで参加。「子どもが小学生になったら絶対に参加したいと思っていて、やっと実現できました!」。

 

ph_woman_vol181_05

週に2回はベビーシッターの作ってくれた夕食を家族で食べる。家事をなるべく省力化し、帰宅後の限られた時間を少しでも子どもと過ごすための工夫の一つ。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

向いている仕事のタイプがわかる自己分析や、自分に合った企業探しをしてみよう。リクナビ2018へ。

リクナビ2018

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1年生も、もちろん!
大学生・院生・短大生・専門学校生になったら!

リクナビで詳しく見てみよう!

この企業についてリクナビで研究する