WOMAN'S CAREER

Vol.184 クノール食品株式会社

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そや・あつこ●開発技術センター。神奈川県出身。48歳。明治大学農学部農芸化学科卒業。1990年入社。大学では食品化学のゼミに所属し、デンプンやたんぱく質について研究していた。現在、夫と中学2年生の長女、小学3年生の次女と4人暮らし。

スープの味を忠実に再現できるよう、何度も研究を重ねる

味の素グループの中で、加工食品分野の商品開発と生産事業を担うクノール食品。カップスープや「CookDo」をはじめとするレトルト調味料など、誰もが一度は聞いたことのある人気商品を多く作り出している。
商品開発に長く携わり、レトルト総菜からカップスープ、フリーズドライスープなど数多くの商品を世に送り出してきた征矢さんは、大学時代から農学部で食品化学を専攻。食品会社の商品開発職に就きたいとクノール食品に入社し、まさに、思い描いた通りの道を進むことになった。
「ただ、私が就職活動をしていた1989年当時、女性というだけで『当社では募集していない』と断られることが多く、選択肢は多くありませんでした。クノール食品には、食品化学のゼミのメンバーと会社見学気分で訪問し、就職活動というものをあまり理解していないまま面接に進みそのまま1社目で内定。女性を総合職で採用してくれる企業が限られていたので、即決でした。女性というだけで門戸が狭いことが悔しくて、仕事を覚えて一人前になるまで、最低でも5年間は働こう!と考えていました」

 

入社後、1週間の研修を経てすぐに商品開発研究所に配属されると、レトルト総菜の開発のため、毎日ひたすら調理する日々が始まった。
「ハヤシライスの開発に携わった時は、担当している先輩について、タマネギを切るところから始めました。メーカーから取り寄せた肉と当社製品特有の調味料やエキスなどを一緒に大きな鍋で炒め、味のパターンをいくつか作ります。完成したらレトルトパウチの袋に詰め、殺菌機にかけます。翌日、数パターンの完成品を並べて食べ比べ、どの味が一番いいか、何を加えるべきか改善案を考えていきます。1年目は、いろいろな総菜を担当している先輩たちに順番でつきながら、作り方を覚えていきました」

 

クノール食品は開発と生産のみを担当しており、商品企画や販売を手がける味の素のマーケティング部門の担当者との打ち合わせも密に行われる。開発した商品を試食しながら「もっとこんな味にしたい」とブラッシュアップしていくという。
入社4年目には、乾燥スープ開発グループに異動し、簡単な調理をするだけで食べられるクッキングタイプスープから、フリーズドライスープ、カップスープ、業務用コンソメなどの開発を担当。クッキングタイプの中華スープを開発した際は、中華料理店のシェフにふかひれスープを作ってもらい、作り方や味を細かく分析。限りなく本物に近づけるには何を加えるべきかを研究していった。
「大切なのは、原料の知識です。普段使っている原料以外にも、メーカーから新しい原料の情報をもらったり、自分たちでも原料から作ることを検討したり、目標とするふかひれスープに近づけるためには何を入れるといいのか、シェフのやり方を一つひとつ置き換えて組み立てていきました。量産する際に使い勝手のいい原料であるかどうかも大事なので、商品化までにはさまざまな観点からの検討が必要です。さらに、1年かけて開発したものは、社内外の評価にかけて発売が決まります。いくつかの味のパターンを用意し、社内では、味覚試験に合格したメンバーに内容を伏せたまま試飲してもらい、一番おいしいものを決めるんです。緊張する瞬間ですが、いい評価を頂いた時や、自分が開発したものが店頭に並んだ時の達成感はたまらないですね」

 

スープ開発に10年間没頭したのち、入社13年目に1年間の産休・育休を取得。時短勤務制度が整ったタイミングに、当時、部署ではまだ珍しかったワーキングマザーとして復帰した。子どもができたことで、食品づくりへの意識は大きく変わったと話す。
「人は毎日食べるものでできているということを、日々大きくなっていく子どもを前に強く実感しました。体にいいものを食べるってなんて大事なんだろうと、食品を開発する側として、身が引き締まる思いでした」

 

復帰後は、お客さまからの問い合わせに対応する品質保証グループで、成分配合や産地についてなど、細かな質問に一つひとつ回答を用意する業務を担当した。アレルギー物質の表示制度の制定やBSE問題(※)など、食品の安全への関心が急激に高まっていた中だったが、子どもが生まれたことで、敏感になるお客さまの気持ちを理解することができたという。
「一方で、効率的に仕事を進めることに追われていて、無駄話をする時間は一切とりません!という戦闘モードが続いていました(笑)。今振り返ると、ちょっとギスギスしていたなと思いますね」

 

(※)2000年代の初頭に発生した、BSE(狂牛病)に関する社会問題。

 

現在は、海外輸出用のインスタントスープや、ギフト用のフリーズドライ製品の開発を担当している征矢さん。生産管理や工場での製造部門、品質保証のメンバー、社外のメーカーなど多くの人と連携しながらモノづくりを進めていく過程が、開発の醍醐味(だいごみ)だと話す。
「海外輸出用商品を扱う際は、文化や法律が異なる中、海外法人の現地の方とのコミュニケーションがとても大切になります。この分野ではまだ経験が浅いのですが、現地の具体的なニーズを引き出し、味の素のマーケティング担当者と意見を出し合いながら商品の詳細を詰めていきたいと思っています。そのためにも、自分なりに市場動向を調べていきたいですね」

 

今後は、品質管理や生産管理など開発の関連部署や、再度、品質保証部門で「開発がうまく回るようにサポートする業務」にも挑戦したいと話す。
「入社したころと今とでは、商品のチェック項目数がまったく違います。産地偽装、異物混入問題が社会的に大きく取り上げられ、食品の安全性への意識は高まっていく一方。新しい法律もどんどん制定されています。その都度、『これを読めば全チェック項目がわかる』という全社共通のチェックシートを、今あるものより、さらにわかりやすくし、事例もより多く掲載したいのです。開発経験が長いからこそ気づけることがたくさんあるのではないかと思っています。私たちの体を作る食の安全に、積極的に携わっていきたいですね」

 

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開発中のインスタントスープをチームメンバーと試飲。どの味が一番おいしいか、意見を交わしながら飲み比べる。

 

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既製品の成分表示をチェックしながら、製品の品質に関してデータを作成。

 

征矢さんのキャリアステップ

STEP1 入社1年目、商品開発研究所(現・開発技術センター)に配属

レトルト開発グループで、3年間、レトルト総菜の開発を担当した。2年目には業務用の缶詰製品を任され、約1年かけて開発していたが、市場ニーズの変化により発売中止になったこともあった。「今までの苦労はどうなるの?という悔しい思いをしましたが、当時、市場動向について考えたことはほとんどありませんでした。この時の経験から、お客さまは何を求めているのかという消費者視点に非常に敏感になり、『商品企画や販売の担当者と対等に意見を交わせるようになろう』と思うようになりましたね」。

STEP2 入社4年目、商品開発研究所のスープ開発グループに異動

乾燥スープの開発を10年間担当する。カップスープからフリーズドライまで幅広く担当し、商品が変わるたびに異なる生産技術を覚えていった。「カップスープの場合、原料を水に溶けやすくするために、細かい粒にする“造粒”という技術を使いますが、フリーズドライはもともと調理したものを凍らせて乾燥させるので、開発工程がまったく違います。常に新しい知識を身につけるのに必死でしたが、いつも新鮮な気持ちで開発に向かえました」。

STEP3 入社13年目、長女を出産。復帰後に品質保証グループに配属

産休・育休に入る前から、国内の食品への関心が高まり、開発部門にお客さまからのさまざまな問い合わせが届くようになっていた。それまで、原材料の細かい内容について質問がくることはほとんどなく、問い合わせを専門で受ける部署もなかったため、開発担当者が個別に回答することが増えていた。1年間の産休・育休後、品質保証グループに配属され、新設されて間もない問い合わせ専任の部門で問い合わせ対応に従事。販売を担う味の素に寄せられた質問や相談、クレームに一つひとつ答えていった。「当時、ワーキングマザーは珍しい存在でしたが、『あなたは16時までだから、この質問は引き継ぐね』などと周りがサポートしてくれ、本当に助かりました。進捗共有をまめに行い、できない仕事は早めに周りにお願いする大切さをこのとき学びましたね」。

STEP4 入社18年目に次女を出産。育休復帰後、開発工業化センターの開発企画部配属を経て、現職

開発工業化センター(現・開発技術センター)で、開発部門全体の労務管理や、社員教育などを担当。その後、同センター内の1部署である、スープ開発グループで家庭用フリーズドライスープや栄養ケアスープを開発し、現在は、海外輸出用スープなどを担当している。「開発部門全体を見る総務的な役割をさせていただき、商品開発の際に(味の素の)マーケティング部門と当社がどのような契約をしているのかなどを見ることができました。商品の開発意図をより深く理解できるようになったり、社内の人脈が広がり、すぐに相談できるメンバーがいろんな部署にできたことも、とても貴重でした」。

ある一日のスケジュール

5:30 起床。朝食、長女のお弁当作り。
7:30 朝食後、出勤。
8:30 出社し、メールチェック。
9:15 保存テストを実施(インスタントスープの賞味期間を確認するため、一定期間保管したサンプルを評価)。
10:30 保存テストのデータをまとめる。
11:30 味覚評価(同僚の試作したスープをチェック)。
12:15 社員食堂でランチ。
13:15 昼礼。フレックスタイム制のため、昼に部署全員で連絡事項を共有する。
13:30 資料作成。新しく導入する原料の品質に関するデータをまとめる。
15:30 新製品の開発の進め方を、味の素のマーケティング担当者と打ち合わせ。
18:00 作業場を掃除(当番制)したのち、退社。
18:45 次女を学童保育に迎えに行き、夕食。
22:00 子どもと翌日の準備。子どもが就寝。
23:30 就寝。

 

征矢さんのプライベート

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スープ開発グループの女性メンバーだけでフランス料理店へ(右から2番目が征矢さん)。「たまには女子だけでおいしいものを食べに行きましょう」と同僚が企画してくれた。

 

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2015年1月、家族でスキーをしに長野県へ。次女が5歳になってから毎年出かけている恒例行事。ほかにも、休日は家族でサイクリングやミニゴルフなどを楽しんでいる。

 

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週末の朝食に作った、クノール食品のコーンスープをアレンジしたコーンチャウダー。「夕食は手を抜いても、朝食はしっかり食べる」のが、日々のこだわりだ。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

 

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