WOMAN'S CAREER

Vol.187 株式会社セールスフォース・ドットコム

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えんどう・りえ●Salesforce.org(社会貢献部門)シニアマネージャー。宮城県出身。41歳。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業。2007年入社。現在、夫と3歳の息子と3人暮らし。

セールスフォース・ドットコムのテクノロジーに出合い「もっと多くのNPOに使ってほしい」と思った

全世界で15万社以上に、クラウド・ソーシャル・モバイルのテクノロジーを活用するためのクラウドアプリケーションおよびクラウドプラットホームを提供しているセールスフォース・ドットコム。時間や場所に縛られることなく顧客情報にアクセスでき、経営状況をタイムリーに把握できるなど、世界中に新しいビジネスシーンを創出してきた。

 

遠藤さんが所属する社会貢献部門、Salesforce.orgでは、NPO(非営利組織)へのテクノロジー寄贈・割引、助成を行うほか、社員のボランティア活動を推進。ビジネスと社会貢献を統合し、就業時間の1パーセント、リソースの1パーセント、テクノロジーの1パーセントを地域社会に還元しようとする社会貢献活動「1-1-1モデル」を行っている。

 

「世の中の役に立つことをしたい」「国際的な環境で働きたい」という思いで、大学卒業後は国際協力銀行(旧・日本輸出入銀行)に入社した遠藤さん。総務部に配属され社会人としての基礎を学ぶ中、たまたま目にした新聞の採用記事に興味を抱き、社会人4年目に国際交流基金(※1)ロンドン日本文化センター(旧・ロンドン日本語センター)に転職。運営専門員として3年間、ロンドンに駐在することになった。
「世の中のために働きたいという思いは、小児科医の母を見て、自然と抱くようになりました。いつも子どもたちのために奔走する姿を『カッコいいな』と尊敬していて、私は自分なりに何ができるだろうかと考えていました。国際交流基金のロンドン駐在の仕事は、国際的に活躍したいと思っていた私にとって、キャリアアップの大きなチャンス。ロンドンオフィスに置かれた日本語教育を推進するセンターにて、経理・総務業務や、日本語教育を行う教師や機関の支援プログラムを担当しました。流暢(りゅうちょう)とは言えない英語ながら、現地メンバーとの関係構築、仕事をお願いする際のコミュニケーションの取り方など、チームで仕事を進める上でさまざまな力を鍛えられました」

(※1)独立行政法人国際交流基金(The Japan Foundation)。総合的に国際文化交流を実施する日本で唯一の専門機関。日本文化や日本語を海外に紹介していくため、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流の3つを主要活動分野としている。

 

濃密な3年間のロンドン駐在を終え、29歳になった時、ひとつの転機が訪れる。実家・宮城県仙台市の祖母が体調を崩し、介護のために帰省することになったのだ。「あの時期があったから、今、働く喜びを実感できている」と、苦しかった1年間を振り返る。
「両親は仕事をすぐに辞められる状況ではなかったので、ちょうどロンドン駐在を終えたタイミングの私が、おばあちゃんのそばにいることになりました。掃除、洗濯、食事を用意し、おばあちゃんとゆっくり会話する毎日。社会との接点といえば、新聞とテレビのニュース番組だけ。周りの友達が、東京で忙しそうにイキイキと働いている話を聞くたびに、私だけ前に進めていないと悶々(もんもん)としていました。だからこそ、仕事のできる環境にいることがいかにありがたいことか、幸せを感じる自分がいます」

 

セールスフォース・ドットコムに出合ったのは、介護を終えて就職した国連WFP(World Food Programme)協会(※)でのこと。支援者拡大戦略のためにSales Cloud(セールスフォース・ドットコムの主力製品であるCRMシステム)を導入し、テクノロジーを活用する素晴らしさに感銘を受けたことが、セールスフォース・ドットコムへの入社のきっかけだった。
「Salesforce(セールスフォース・ドットコムが提供する製品の総称)のCRMによって、WFPに寄付してくれた個人や組織の情報、寄付金の集まり状況などが可視化され、誰もがどこからでもアクセスできるようになりました。情報整理、共有業務がなくなり、仕事のスピードが圧倒的に上がったのです。テクノロジーの活用は、少人数で膨大な作業に追われるNPOにこそ必要だと感じ、サービスを提供する側にいきたいと思うようになりました」

(※2)特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会。世界の飢餓と貧困撲滅に向けた、日本における民間協力の公式支援窓口。

 

遠藤さんが入社当時、全国で20のNPOしか導入していなかったSalesforceは、9年たった今では700団体以上が利用。1人だった部署に、4人のメンバーが在籍するようになった。
「入社後6年間は1人だったので、NPOを支援する中間支援組織とパートナーになり、Salesforceを説明するセミナーや研修を進めていきました。Salesforceを活用する団体の一つに、認定NPO法人フローレンスがあります。親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決するために訪問型病児保育などさまざまな課題解決事業を行っており、組織インフラとしてSalesforceがなくてはならない存在になっています。病児育児事業においては、会員登録やケアをするスタッフとのマッチングはもちろん、スマホから手軽にサービス利用予約ができるなど、一連の業務がSalesforceを基盤にしています。さらにSalesforceに蓄積されたデータが、事業展開を考える有力な材料となり、まさに経営戦略の要となっているのです。テクノロジーの導入により、煩雑な作業に時間を割かれずに、本来の事業に集中できていること。そして、間接的に(フローレンスの会員である)働くご両親をサポートできていることが、とてもうれしいですね」

 

セールスフォース・ドットコムの社会貢献プログラムには、社員のボランティア活動を推進する7日間の社会貢献休暇や、マッチング寄付制度(社員個人がNPOに寄付すると同額を会社が上乗せする制度)などがある。2011年3月11日の東日本大震災では、アメリカやイギリスのメンバーと協力し、翌日には寄付募集のホームページが立ち上がった。寄せられた寄付金に対して同額をSalesforce.orgが上乗せし、計8000万円を超える支援金を、信頼をおけるNPOへ寄付することができたという。
「私自身は、地元・仙台を大災害が襲ったショックで、仕事がまったく手につかない状況でした。でも、世界中のスタッフが『大切な日本のために』と力を合わせてくれ、翌日には素晴らしいホームページが立ち上がっていたのです。各NPOに早急に財政支援できたことで、『セールスフォース・ドットコムがすぐに支援した団体』として海外からの信頼度が上がり、その後の支援が受けやすくなったケースもありました。自分たちができることを最短のスピードでやりきる組織力に、とても誇らしい気持ちでしたね」

 

今後は、「教育格差の是正」「若者の就業支援」「テクノロジー革新」の3つをテーマに、支援先や助成額の選定、社員のボランティア参加を促進していく遠藤さん。現在も、経済的・社会的にチャレンジを抱える家庭の多い地域の小学校に社員が訪問し、オンライン教材を使ったプログラミング教育を行っている。背景には、子どもたちの科学技術への興味関心を育み、国際社会において新しい価値観を創造する人材を育てたいという思いがある。
「セールスフォース・ドットコムに入社した時、『テクノロジーを活用し、NPO業にイノベーションを起こしたい』という強い思いがありました。9年たった今、テクノロジー導入がますます広がり、それを提供する側にいられることがとてもうれしい。少しずつながら、社会に変化を生み出せている実感を、これからも感じ続けていきたいですね」

 

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全社会議にて、熊本地震に対する社会貢献プログラムを社員に説明(写真左が遠藤さん)。九州を拠点に働く社員やビジネスパートナーから現地の情報を収集し、社内に共有する。

 

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小学生へのプログラミング教育推進に向け、今後の社内体制についてメンバーとディスカッション。

 

遠藤さんのキャリアステップ

STEP1 社会人1年目、国際協力銀行を経て、国際交流基金に転職

海外との接点がある仕事を…と、日本の対外経済政策・エネルギー安全保障政策を手がける国際協力銀行(当時は日本輸出入銀行)に一般職として入社。社会人としての基礎を積みながら、財務分析に関する知識の習得、英語の勉強を地道に進めていた。社会人4年目に、ロンドンに駐在して日本文化を発信する国際交流基金の仕事を知り、3年間のロンドン駐在生活を送る。

STEP2 社会人7年目、実家・仙台で祖母を介護したのち、国連WFP協会に入会

ロンドンから帰国するタイミングで祖母が病に倒れ、母が仕事をセミリタイアするまでの1年間、献身的に介護を続けた。「友人たちが仕事や結婚で生活を充実させる中、自分だけどうして…と思う気持ちもありました。でも、あの経験が、仕事をポジティブに楽しめる今の自分を作ってくれました」。その後、国際交流基金のシドニーオフィスで働く選択肢もあったが、「違う仕事に挑戦したい」と、国連WFP協会に入会。事業の拡大に伴い、効率的な支援者情報管理のためSalesforceを導入し、カスタマイズを自ら行い、使い方をメンバーに教えていく役割も担った。「情報へのアクセスが非常に速くなり、業務効率は飛躍的に上がりました。もっと多くのNPOが使えばいいのにと思っていた時に、セールスフォース・ドットコムの社会貢献部門に人が必要だと知って、すぐに手を挙げました」。

STEP3 社会人11年目、セールスフォース・ドットコムに入社。16年目に長男を出産

社会貢献部門で、NPOを支援する中間支援組織とパートナーシップを組み、テクノロジー・助成・社員ボランティアによるコミュニティー支援を推進していった。社内には、社会貢献委員会という組織があり、社会貢献の企画立案、社員への呼びかけを担当するメンバーが約70人いる。彼らが、リーダーシップを発揮しやすいようサポートする役割も担った。入社6年目に、それまで1人だった部門が、2名に。そのタイミングで長男を出産した。

STEP4 出産後、育休4カ月でフルタイム復帰

育休4カ月でフルタイム復帰。セールスフォース・ドットコムの復帰率は100%で、時短勤務やフルタイム勤務などそれぞれのライフスタイルに合わせて選択できる。「クラウドサービスを使い、どこにいても働ける環境が整っているのは本当にありがたいです。息子が突然熱を出して、仕事を誰にも頼めないという状況でも、自宅で十分仕事ができます。午前中会社に行けない日があっても、フレックスタイム制なのでそれ以外の時間でカバーすれば問題ありません。『仕事をきちんと進めていれば、どこにいようと問題ない』という考えが社内に浸透しており、ストレスがとても少ない職場だと思いますね」。現在は、4人チームになり、社会貢献活動「1-1-1モデル」の各分野のプロフェッショナルをマネジメントする立場に。「NPOはSalesforceテクノロジーを10人まで無償で使えます。11人以上で使う場合や、Sales Cloud以外の製品を使う場合は、割引価格でありますがお金を頂きます。このお金が、社会貢献部門の活動資金となります。多くの資金が入れば、より多くの金額を『助成金』としてコミュニティーへの投資に回すことができます。資金循環を大きくして、もっとポジティブな社会的インパクトを出していきたいです。『社会をよりよくするためにもっと売ろう』と胸を張って言える。それはとても気持ちのいいことだなと思います」。

ある一日のスケジュール

7:00 起床。メールチェック。急ぎのものがないか確認する。
8:30 家族で朝食後、息子を保育園に送り出す。
9:00 出社。メールチェック。
9:30 アメリカの同僚とのテレビ電話会議。プロボノ(社会人が職業上持っているプロフェッショナルな知識や経験を生かして行うボランティア活動)を日本でどう進めていくか、やるべきことを話し合う。
10:30 メンバーとの個人面談。2週間に1度のペースで行う。
11:30 プレゼン資料の作成。海外資料の翻訳業務。
12:00 付き合いのある企業の社会貢献担当者とランチミーティング。
13:00 子どもへのプログラミング教育普及プロジェクトのミーティング。
15:00 Salesforceを活用するNPOが集まる「ユーザーグループNPO分科会」に参加。NPOと意見交換できる貴重な機会。
18:00 退社。息子を保育園に迎えに行き、近所のなじみの店で夕食。
20:00 入浴、洗濯、掃除を終え、息子と絵本を読む。
22:00 息子が寝たあとに、昼間に終わらなかった業務を終える。
23:00 就寝。

遠藤さんのプライベート

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海外旅行が好きで、家族3人で年に一度は出かける。写真は、2015年夏にバリ島に1週間滞在した時のもの。

 

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宮城県仙台市の実家には毎月のように帰省し、両親とゆっくりした時間を過ごす。写真は、施設で暮らす2人の祖母を見舞いに行った時の1枚(後列左が遠藤さん)。

 

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海外の友人や同僚が、休暇や出張で東京に来ると、日本らしい場所に連れていったりおいしいものを食べに行ったりして一緒に遊ぶ。2015年冬には、アメリカ、イギリス、オーストラリアの同僚と日本庭園に行った。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

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