WOMAN'S CAREER

Vol.196 アステラス製薬株式会社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
いしい・ようこ●東京支店 台東営業所 所長。41歳。千葉県出身。学習院大学文学部英米文学科卒業。1997年に大学卒業後、語学関連会社に入社。MR派遣会社を経て、2005年にアステラス製薬に中途入社。夫と2人暮らし。

メンバーが自ら考えて判断するまでじっと待つ、マネジメントの難しさと充実感がある

2015年4月1日に、山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し誕生したアステラス製薬株式会社。両社の強みを生かした研究開発型グローバル製薬企業として、革新的な新薬の研究開発に積極的に取り組んでいる。

医師や薬剤師に医療情報を提供するMR(医療情報担当者)として、アステラス製薬発足とほぼ同時期に入社した石井陽子さん。台東営業所の所長として、12人のMRメンバーを束ねる立場だが、就職活動時は「MRという職種の存在すら知らなかった」という。

 

英米文学科に在籍し英語が好きだったことから、大学卒業後の進路に選んだのは、英会話学校や語学研修、翻訳サービスを提供する会社だった。翻訳スタッフとして勤務後、企業に語学研修を提案する営業職に異動すると、「努力した分が明確に結果として見える」ことにやりがいを感じるように。「営業が向いているのでは」とキャリアチェンジを考え始めた。

「お客さまとコミュニケーションを重ねることで、この会社にどんな研修を提案すべきか、少しずつ理解できるようになります。『海外赴任者のために1カ月集中講座を導入しましょう』など要望に応じた提案を考えるプロセスも好きでしたし、受注が決まると純粋にうれしい。じっくり腰を据えてお客さまと信頼関係を築いていく営業職をやっていきたいと転職を考えた時、MRが選択肢の一つに上がってきました」

 

医薬品という、人の命にかかわる商品に携わり、医師や薬剤師と長きにわたって関係を構築していく。そんなMR職に魅力を感じたという石井さんは、専門知識を得ながら仕事を進めるため、MRの派遣会社に入社し業務経験を積んでいった。そして、アステラス製薬の前身である、藤沢薬品工業に派遣され、合併直前のタイミングで正社員入社へのオファーをもらったことが、今のキャリアにつながっていく。

「前職の語学研修の営業では、自分の方がクライアントよりも商品をよく理解していることが前提でした。しかしMRが情報提供する先は、医師や薬剤師など医療のプロ。医薬品や薬事に関する最新の知識を吸収し続けなければ、説得力のある提案はできません。その緊張感は、今も持ち続けています」

 

入社後は埼玉県の開業医担当として、主に循環器や整形外科領域の医薬品を担当。薬の効用はもちろん、どんな副作用が生じるかの説明責任があり、患者一人ひとりの健康にかかわっているという責任の重さを日々感じていた。だからこそ、医師から患者の様子を聞くと、「少しは社会貢献ができたのかな」とほっとするという。

「新しく導入した痛み止めの薬によって、『ひざが痛くて歩けなかった患者さんが歩けるようになった』『痛みによる不眠症が軽減された』といった話を聞けるのが、MRをやっていてよかったと思う瞬間です。先生方は皆、毎日の診察で本当に多忙なので、話す時間を取るのも大変。院内を移動する時間に歩きながら話をすることも少なくなく、短い時間で、その先生が求める情報を伝え、何らかの宿題を頂いて次のアポイントにつなげます。そんな地道な努力や工夫を重ねる中で、患者さんについて先生の方からフィードバックしてくれると、ようやく信頼関係を築くことができたかなとうれしくなります」

 

3年間の埼玉県エリア担当を経て、結婚を機に川崎市エリアに異動となると、開業医のMRを兼任しながら、チームリーダーとして新入社員の育成を任されることに。「つい具体的な指示を出しそうになる」自分をぐっと抑え、メンバーに考えさせることを通じて彼らの成長を実感するにつれ、マネジメントに興味を抱くようになったという。

「チームリーダーとして意識したのは、メンバー自ら『私はこうしようと思います』と言ってくるまで待つということ。私から指示を出せば、短期的な成果は出るかもしれませんが、自分で決めたことを行動に移す力は鍛えられません。たとえ失敗したとしても、本人がやりたいようにやって結果を振り返った方が実になりますし、成果が上がったときの達成感も大きいはず。実際に、ぐんぐん業績を上げていくメンバーを見て、マネジメントをしっかり学びたい、マネージャーとしてキャリアを積みたいという意欲が高まりました」

 

現在は、東京都荒川区、足立区エリアの病院、開業医、クリニックを担当する台東営業所の所長として、12人のMRメンバーを見ている石井さん。営業戦略の策定から、メンバーとの個別面談、病院やクリニックへの同行、医薬品の販売代理店との打ち合わせ同行まで日々多忙に駆け回る。医師へのアプローチや提案内容についてメンバーの判断を重視しつつも、「営業所で起きたことはすべて自分の責任」と言い切る使命感の強さに、メンバーからの信頼も厚い。

「MR活動のゴールは、医師や薬剤師の皆さんに、『一番頼れる医薬品メーカーはアステラス製薬』と言っていただくこと。そのために、メンバーが入手した情報は欠かさず所内で共有します。『このクリニックの医師は、あの大学病院に患者さんを紹介している』という連携の流れがわかれば、患者さんの紹介の流れを可視化し、クリニックと大学病院それぞれの医師にどんな情報提供をすべきかを考えます。医療圏(病床の整備を図るために都道府県が定める地域区分)によって、地域に根ざしたクリニックから、入院が可能なより規模の大きな病院へと連携を深める動きが、現在の医療現場のスタンダードとなっています。その地域医療の中にもっと深く入り、患者さんの動きに合わせた迅速かつ的確な情報提供ができる営業所でありたいですね」

 

ph_woman_vol196_01

営業戦略を立てる。メンバーに同行して外回りに行くことが多いので、デスクにいる時間は短時間集中!

 

ph_woman_vol196_02

週1回は、MRメンバー全員と情報共有ミーティングを行う。地元のクリニックと病院との連携の動きなどを確認し合う。

 

石井さんのキャリアステップ

STEP1  大学卒業後、翻訳・語学関連会社に入社

英会話の学校や翻訳サービスを提供している会社に、翻訳スタッフとして入社。社内異動により、企業への翻訳サービスや語学研修を提案する営業担当となり、お客さまとコミュニケーションを重ねて研修内容を考えるプロセスや、成果が数字として見えるところに面白さを感じるようになった。ただ、景気変動が激しく、より安定した業界の営業職に就きたいと考えMRへの転職を決めた。

STEP2  2005年、アステラス製薬に入社。開業医担当のMRとして従事

MRとしての知識、経験を積むため、MR専門の派遣会社に入社。(アステラス製薬の合併元である)藤沢薬品工業に派遣されたのち正社員になり、05年4月のアステラス製薬発足と同時に埼玉県エリアの担当MRとなる。200床以下の、規模が比較的小さい病院やクリニックを80カ所ほど担当した。「入社早々、ある医薬品の副作用について、早急に説明すべきという指令が厚生労働省から下りてきました。『こういった状況で使用すると副作用が生じる可能性がある』という重要な内容で、休日返上で、担当の病院やクリニックすべてに案内して回りました。患者さんの命にかかわる商品情報を提供しているという重責を実感した経験でした」。

STEP3  入社8年目、病院担当のMRになる

入社4年目に、川崎エリアに異動し、開業医MRとチームリーダーを兼任。その後、それまで持ったことがなかった、200床以上の病院を担当した。「マネージャーになりたいと思った時、病院担当の経験は必須だと思い、希望して担当を変えてもらいました。開業医に医薬品を提案する際は、医師の一任で導入を決めてくれることが多いのですが、大規模な病院となると、薬事審議会で医薬品の採用が協議され、決定までのプロセスが複雑になります。誰にどんな情報を伝えるべきかを戦略的に考える必要があり、開業医担当時代とは違う“根回し力”が鍛えられました」。また、当時、担当領域だった循環器系の医薬品に加えて、糖尿病の新薬が登場し、患者さんからの喜びの声を聞けたことは貴重な経験となった。「それまでの糖尿病の薬には、飲むと体重が増える副作用がありました。糖尿病の患者さんは、そもそも糖分を我慢することでストレスを感じている方が多く、体重が増えることでさらにストレスが重なっていました。そこに登場した新薬は、飲むことで体重を減らしてくれたため、『薬を変えたら体が軽くなり、運動を始められるようになった』という患者さんからの声が多く寄せられるようになったのです。MRができることは医薬品の情報提供ですが、それが患者さんの健やかな日々に少しでも役立ったのならと、うれしくなりました」。

STEP4  入社11年目、台東営業所の所長として12人のメンバーを持つ

所長になる1年前から、社内のマネージャー養成研修に参加。MR業務を進めながら、在籍する営業所の課題解決に取り組む、実践的な研修を並行して行っていた。「社内でも女性管理職を増やそうという流れが強まり、上司や人事研修担当者、外部の研修会社のコンサルタントなど、さまざまな方のサポートを受けながらマネジメントのイロハを学べることに。貴重な機会を頂き、期待に応えなくてはという気持ちが高まりましたね」。15年10月に所長となった。今は、12人のメンバーが担当する病院やクリニックを自分が担当しているときと同じ熱量で考えられるように心がけているという。

ある一日のスケジュール

6:30 起床。朝食や身支度。
8:00 販売店に直行し、メンバーの打ち合わせに同席する。
10:00 営業所に戻り、営業戦略の立案。
11:30 ランチ。
13:00 メンバー同行のため、担当の病院に行く(お昼以降はドクターのアポイントを取りやすいため)。
15:00 帰社し、メンバーと個別面談。仕事の進捗状況や相談などを聞く。
16:00 メンバーのMR業務の進捗整理。
18:00 担当医師の講演会に顔を出す。
20:00 講演会場から直帰。
21:00 夕食。
24:00 就寝。

石井さんのプライベート

ph_woman_vol196_03

2014年9月、夫と広島を旅行中に、オクトーバーフェスにて。大好きなビールとともに。

 

ph_woman_vol196_04

平日夜の自宅にて。夫との夕食は貴重なリラックスタイム。遅く帰宅しても楽しみたい時間だ。

 

ph_woman_vol196_05

2015年7月、夫と箱根旅行へ。休暇の小旅行を楽しみに、仕事に励んでいる。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/鈴木慶子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1年生も、もちろん!
大学生・院生・短大生・専門学校生になったら!

リクナビで詳しく見てみよう!

この企業についてリクナビで研究する