就職ジャーナル | 1日10分の社会勉強サイト

HOME > 理系 > 理系のシゴトバ >株式会社ミツトヨ

理系のシゴトバ

掲載日:2012年2月29日

Vol.60 数十ナノのズレも見逃さない
高精度なリニアエンコーダを開発

ミツトヨ 研究開発本部
モノづくりの現場において、精密な測定を行う際に欠かせないマイクロメータやノギス。ミツトヨはマイクロメータやノギスを筆頭に、内径測定器、リニアエンコーダ(直線軸の位置を検出して位置情報として出力する装置)、地震観測機器・振動測定機器、画像測定機、三次元測定機など、さまざまなモノを測定する機器を開発、製造しています。ミツトヨが設立されたのは1934年。仏教伝道者だった創業者の沼田恵範(えはん)氏は、「仏教伝道の支援を通して人々の幸福に寄与する」「活動する領域において世界のトップレベルを目指す」という強い願いを込めて同社を設立したそうです。その創業の精神は現在の経営理念「精密測定で社会に貢献する」にも受け継がれており、企業活動や社員の行動の源泉として今も大切にされているのです。それはマイクロメータやノギスなどの分野で、国内はもちろん海外でも高いシェアを獲得していることからもわかるでしょう。今回はそんな世界をリードする精密測定機器を開発している研究開発本部を訪れました。

リニアエンコーダを要素技術から開発する

研究開発本部があるのは神奈川県川崎市高津区。最寄り駅は東急田園都市線「溝の口」駅(もしくはJR南武線「武蔵溝ノ口」駅)。東急・渋谷駅から溝の口駅までは急行に乗ると13分。駅から15分ほど歩くとミツトヨ本社の正門が見え、その敷地内に研究開発本部があります。溝の口駅前は江戸時代より商業地として栄えてきた土地ですが、少し歩くと閑静な住宅街が広がります。
研究開発本部はメーンの研究開発拠点。同社計測機器に関連する技術の中枢を担っています。研究開発本部のシゴトバをディバイス技術開発部3課の木村彰秀さんが案内してくれました。
木村さんが開発に携わっているのがリニアエンコーダという製品です。
「例えば半導体の製造装置や検査装置では、ステージ(加工・検査するモノを載せる台の部分)の位置をナノメートルレベルの精度でコントロールしなければなりません。それは、ステージの位置が数十ナノメートル違うだけで、得られる結果に違いを生んでしまうからです。ステージの位置を精密にコントロールするためには、まずは位置を精密に“知る(=測定する)”必要があります。このような精密測定を実現するための測定機器が、リニアエンコーダです」(木村さん)
リニアエンコーダは精密な“目盛”を持つスケールとその位置情報を取得する検出器で構成された測定機器。三次元測定機や画像測定機と比べれば小さな製品ですが、ミツトヨが持つ機械技術、電気・電子技術、光学技術、ソフトウェア技術が結集しています。工作機械や搬送機械、電子部品実装機械や電子デバイス製造装置など、さまざまな産業装置の位置制御に使用されています。
リニアエンコーダが搭載された製品の一例です。写真は三次元測定機です。三次元測定機にはリニアエンコーダがXYZ方向に取り付けられており、三次元測定機の先端に取り付けられたセンサの位置情報をリニアエンコーダによって読み取ることで、立体的な寸法測定が可能です。航空機や自動車、船舶、PC部品など私達の身の回りにある工業製品のほとんどは三次元形状をしています。これらの工業製品は数千、数万という部品から構成されていて、それぞれの部品は、設計者が指定した誤差の範囲で製造されていなければなりません。木村さんの担当しているリニアエンコーダは最終的にはこのような三次元測定機などの大型製品に搭載され、さまざまな工業製品の品質管理の現場で活躍しています。
写真はディバイス技術開発部のオフィスです。ここで数年先を見据えたリニアエンコーダの要素技術の開発が行われています。
「私は入社2年目ですが、入社以来注力して取り組んでいるのが、リニアエンコーダの精度検査システムの開発です。精密な位置制御に使用されるリニアエンコーダだけに、その精度を保証するための検査システムも必要だからです。リニアエンコーダの開発とひと口に言っても、リニアエンコーダそのものの構成要素だけではなく、それを評価する方法や装置なども要素技術として自社で研究開発しています」(木村さん)
木村さんは評価装置に使う機械部品や電気回路の設計をするのはもちろん、装置に搭載されるソフトウェアの開発、実験データの集計や分析、解析などを行ったりしています。
CADを使ってリニアエンコーダの検査システム用の機械部品を設計しているところです。
「これは機械設計用のCADソフト。電気回路の設計やソフトウェアの開発にも携わります。扱う製品の関係上、さまざまな分野の知識を要求されます」(木村さん)
設計した精度検査システムは、最終的にはリニアエンコーダの製造拠点で立ち上げる必要があります。打ち合わせのために、実際の製造拠点である宇都宮事業所清原生産部(栃木県宇都宮市)に出向くこともあるそうです。
自ら手を動かし、システムを自作することもしばしばあるそうです。
「本格的な電気回路基板を開発する前段階として、時にはこうして回路を自作して機能テストを行います。私は機械系出身ですが、電気回路の知識は入社してから身につけました。まだまだ勉強不足な点が多々あるので、本や外部セミナー等で勉強しています」(木村さん)
「検査システムの開発は、私たちだけでできるわけではありません。リニアエンコーダそのものの開発担当者はもちろん、実際に検査システムを使用する生産技術の担当者など、さまざまな人たちの要求を聞いて、進めていきます。部署のメンバーで会議をすることはもちろんですが、生産技術や商品開発の人たちと会議をすることもひんぱんにあります」(木村さん)
写真は同じ部署の人たちと会議をしているところです。
写真は、宇都宮事業所清原生産部での検査システム立ち上げ風景です。宇都宮事業所清原生産部は最寄り駅であるJR宇都宮駅から車で30分の距離にある清原工業団地内にあります。
「清原生産部はリニアエンコーダ用ガラススケールの製造、電装部品の組み立て、製品の組み立て、検査までの一貫生産が行われている拠点です。モノづくりに携わる上では、現物を実際に目で確かめることは重要です。なので、机上の検討だけでなく、こうして実際の現場へ出向くこともしばしばあります」(木村さん)
ハタラクヒト
電気、光学、機械…。幅広い知見と総合的な力が求められる
 社員を代表して木村さんに「ミツトヨ 研究開発本部はどんなシゴトバなのか。どんな人たちが働いているのか、どんなやりがい、魅力があるのか」などについて、お話をうかがいました。

 木村さんは東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻修了後、2010年4月ミツトヨに入社。大学院時代はナノ計測技術に関する研究に携わっていた木村さんがミツトヨに入社を決めたのは、「大学院時代の知識を生かしたいという思いに加え、ここなら基礎研究から従事し、それを商品開発や生産技術に生かしていることから、幅広い仕事に携われるのではないかと思った」からだそうです。

 入社して配属されたのがリニアエンコーダを開発しているディバイス技術開発部3課。
「配属以来、携わっているリニアエンコーダの評価システムの開発では、日々、苦労しています。このシステムには生産技術や商品開発の担当者などいろいろな立場の人がかかわるため、視点の異なるさまざまな要求が出てくるからです。例えばわれわれ要素研究の立場からは、性能向上のためのさまざまな施策を提案したりしますが、製造しやすさやコストなどを損なう恐れもあります。さまざまな要求を満たしつつ、いかにトータルとして良い技術を開発するか、入社2年目の私から見て、その点が研究開発において最も苦労するところと感じています。私もまだまだ勉強中ですが、そのような研究開発の一端を担えることは、本当にやりがいがあり楽しいですね」

 さまざまな技術が結集したリニアエンコーダの開発に携わっている木村さん。それだけに幅広い知識が求められると言います。
「ディバイス技術開発部は電気系や物理系出身者が多くを占めており、機械系の私は珍しい存在です。私たちの仕事は1つの知識だけでできるものではありません。測定を基幹として、電気、機械、光学など幅広い知見が求められます。いろんな関連分野の技術について関心を持ち、貪欲に取り込もうする意欲が大切だと思います」

 最後にミツトヨの社風や文化について聞いてみました。
「若手社員の育成に熱心な会社だと思います。入社してから2年間、各自課題を設定してそれをどう解決したか発表する『課題研究』制度が用意されているのもその一例です。そのほかにも、仕事に必要な知識については、上司に申請すれば外部のセミナーに行かせてくれるなど、学べる機会をどんどん与えてくれます。当社は『基幹技術は自社で保有する』というように、精密計測機器の要素技術開発および基礎研究から携わるというモットーを持っているため、技術的にかなり深いところまで携われます。他部署との連携もスムーズで風通しもよい。技術者としても面白く、働きがいのある居心地のよいシゴトバです」

測定機器のルーツと歴史がわかる施設も

ショールームです。ミツトヨの主力製品、マイクロメータやノギスをはじめ、顕微鏡、画像測定機、三次元測定機などの製品が展示されています。
ミツトヨのこれまでの開発の歴史がわかる沼田記念館です。同施設は創業50周年の記念事業の一つとして、1987年に本社1号館4階に開設されました。また沼田記念館の隣にはミツトヨ博物館が併設。同博物館では長さ計測、精密測定のルーツと変遷を知ることができます。
「両施設とも、申し込めば誰でも見られるんです。近所の小学校の社会科見学に使われたりしています」(木村さん)
食堂です。広くてメニューが豊富、しかも安価なのが特徴。例えば定食はA、B、ヘルシーと3種類あり、それらはいずれも246円。麺類(うどん・そばとラーメンが交互にラインナップ)やカレーは189円で食べられます。昼(12時〜13時)だけでなく朝(7時半〜8時半)も夜(17時15分〜18時)も食事をとることができるそうです。

ミツトヨにまつわる3つの数字

モノづくりの現場に欠かせないノギスやマイクロメータ。これらの精密計測機器の分野で日本はもちろん世界をけん引するミツトヨ。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1
5000
2
100万分の1
ミリメートル
3
80
この記事を共有する

取材・文/中村仁美 撮影/平山諭 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

  • バックナンバーはこちら
page top