就職ジャーナル | 1日10分の社会勉強サイト

HOME > 業界研究 > 業界トレンドNEWS > 電子マネー編

掲載日:2012年4月2日

Vol.125 電子マネー編

市場は順調に拡大中。他業界との連携など利便性を高めて会員を増やす動きがさらに活発化

購買履歴から顧客の好みなどを割り出し、最適な割引クーポンを送るなどの新サービスが登場している。

電子マネーとは、ICチップを搭載したカードや携帯電話を、読み取り用の端末にかざして決済するサービスのこと。お金を事前に入金(チャージ)して使う「前払い(プリペイド)式」と、一定期間内に購入した代金を後日まとめて支払う「後払い(ポストペイ)式」とがある。前払い式の代表格としては、流通・小売系のnanaco(セブン&アイ・ホールディングス)やWAON(イオン)、交通系のSuica(JR東日本)、ICOCA(JR西日本)、PASMO(首都圏の私鉄・地下鉄・バス)、楽天の子会社であるビットワレットが運営するEdyが挙げられる。一方、後払い式にはiD(NTTドコモ)、PiTaPa(関西圏の私鉄・地下鉄・バス)などがある。

ここ数年、電子マネー市場は急激に拡大中だ。日本銀行決済機構局の調査「最近の電子マネーの動向について(2011年)」によれば、nanaco、WAON、Suica、ICOCA、PASMO、SUGOCA(JR九州)、Kitaca(JR北海道)、Edyの2007年末時点における総発行枚数は7326万枚。これが、08年末には9885万枚、09年末には1億2426万枚、10年末には1億4647万枚と順調に増加している。また、イオンは12年2月期におけるWAONの年間決済総額が、主要電子マネーの中で初めて1兆円を突破したと発表。決済件数・金額の面でも成長していることが見て取れる。電子マネー機能が内蔵されたスマートフォンが増えていることも追い風となっており、12年も市場は拡大する予測だ。

各社は、買い物額に応じてポイントを付与したり、電子マネーを使える店舗数を増やしたりするなどの工夫で、利用者増を目指している。特にこのところ目に付くのが、他社と連携して利便性を高めようとする動きだ。例えばWAONを運営するイオンリテールは、大手家電量販店のビックカメラで買い物をした人に、ビックカメラの通常ポイント還元に加えてWAONのポイントも加算するサービスを開始。また、ビットワレットはEdyに対応したKDDIのスマートフォンで、購買履歴をもとにした割引クーポンを発行するなど、さまざまな共同展開を検討中とされる。Suica、PASMOなどの交通系電子マネーも、「駅ナカ」以外の店舗やタクシーでの決済など、利用範囲が拡大中。今後も、他社と協力して電子マネーの魅力を高めようとする試みは盛んに行われるだろう。

電子マネーによる購買履歴など、いわゆる「ビッグデータ」(データベース上に集められた巨大なデータを指す)の活用を目指す企業も多い。例えば、JR東日本ウォータービジネスは、Suicaの決済データなどを分析し、それに基づいて果汁ジュースの新製品を開発した。また、購買履歴に合わせ、顧客の携帯端末にクーポンやお勧め商品情報を配信するなどの取り組みも進んでいる。

現在、日本国内で展開されている電子マネーは、ソニーによって開発された「FeliCa(フェリカ)」という技術を利用していることが多い。しかし、世界的には「NFC」という規格が主流となりつつある。NFC対応のスマートフォンも登場しつつあり、今後は国際規格への対応が急ピッチで進められる可能性が高い。この業界を志望する学生は、関連ニュースに注目しておきたい。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

電子マネー業界志望者が知っておきたいキーワードとは?

おサイフケータイ 携帯電話・スマートフォンに内蔵されたICチップを使い、買い物の支払いや交通機関への乗車、各種会員証などの機能を果たすサービスのこと。NTTドコモの登録商標だが、KDDIやソフトバンクモバイルなどもこの名称を使っている。
NFC Near Field Communicationの略で、直訳すれば「近距離無線通信」。非接触ICカードにおける次世代の国際標準規格となっている。NFCの利用促進を進める「NFCフォーラム」には、160社以上が参画。
ICカード型/ネットワーク型 電子マネーの分類法の一つ。「ICカード型」はデータが書き込まれたICチップ入りのカードを利用する仕組み。流通・小売系、交通系など、主な電子マネーはこれに当たる。一方、パソコンなどを使ってネットワーク上で決済を行うのが「ネットワーク型」で、WebMoney(ウェブマネー)、BitCash(ビットキャッシュ)などが該当する。

【このニュースだけは要チェック!】

NFCへの対応にぜひ注目しよう

・Edyを運営するビットワレットが、KDDI、大日本印刷と共同で、NFCを用いた次世代型電子マネーシステムの試作版を開発したと発表。世界での普及が見込まれるNFCに対応したことで、将来、電子マネーサービスの海外展開も期待されている。(2012年3月6日)

・NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社が、「モバイル非接触ICサービス普及協議会」を設立することで合意。モバイル非接触ICサービスの提供会社やメーカーなどに参加を呼びかけながら、「NFC」を使った電子マネーの仕組み作りについて検討する。(2011年12月21日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 粟田 輝氏
日本総合研究所 研究員 粟田 輝氏
慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。
この記事を共有する

取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

  • バックナンバーはこちら
page top