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掲載日:2012年4月16日

Vol.127 IT業界(情報システム系)編

クラウドサービスの普及で業界構造が激変。「汎用品を組み合わせた提案力」が重要に

クラウドサービスの拡大などにより、開発エンジニアに求められる要件は大きく変わりつつある。「アプリ・システム開発とネットワーク構築を兼務できる」「単にプログラムを仕上げるだけでなく、自らサービスの企画・提案ができる」などの人材が求められている。

ここでは、企業からシステム開発を受注して開発する「受注ソフトウェア」、パッケージソフト(店頭などで市販されるソフトウェアのこと)を開発・販売する「ソフトウェアプロダクト」、システムの保守や運用を受託する「システム等管理運営受託」などの「情報サービス業」について取り上げる。この業界は、2000年にいわゆる「ITバブル」が崩壊した後、比較的堅調に推移。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によれば、08年の市場規模は11.2兆円に達していた。ところが、同年に起きたリーマン・ショックによる世界的不況の影響で、09年が10.5兆円、10年が10.2兆円、そして11年は東日本大震災の影響も加わり、9.9兆円と3年連続で市場は縮小している。ただし、11年末から売り上げが前年同月比でプラスに転じている分野が増えており、ようやく回復の兆しが見え始めているところだ。

市場の6割を占める「受注ソフトウェア」分野には、顧客企業の要望をくみ取る「要件定義」などの「上流」から、システム設計、そしてプログラミング・テストといった「下流」に至るまで、複数の工程が存在する。また、大きな案件になるほど、元請けから2次請け・3次請けへと仕事が委託される「階層構造」になるケースが多い。一般に、付加価値性の高い上流工程を担当する元請けの方が、下請けに比べて収益性が高いとされる。

従来の日本企業では、それなりの費用がかかっても、自社に合うシステムを作り込みたいという意向が強かった。ところが、08年以降の不景気により、システム開発に対してもコスト抑制の動きが強まる傾向にある。また、大手企業でのシステム導入は一巡。現在は、予算に限りのある中堅・中小企業がシステム導入を進めている段階だ。そのため、システム開発会社にとっては、汎用的な製品をできるだけ活用し、低価格でシステムを構築・提供することが大事になっている。そこで鍵を握るのが「クラウドコンピューティング」(キーワード参照)だ。ここ数年で、クラウドを利用したサービスを使う企業は急増。すでに「クラウドを使うか、使わないか」という段階は過ぎ、日本でも当たり前の存在として定着した。すべての従来型システム(レガシーシステム)がクラウドを利用したシステム(オープンシステム)に置き換わるわけではないが、クラウドの利用頻度は今後も高まるとみられる。

クラウドサービスを使う場合、自社の業務にシステムを合わせるのではなく、既存のサービスに自社の業務を合わせる割合が高まる。そのため、顧客に合わせたカスタマイズを行うことで売り上げを得てきたSIer(システム開発を請け負う企業のこと。システムインテグレーターとも呼ぶ)としては、厳しい状況だ。さらに、クラウド部門では一日の長がある外資系企業の進出、サーバーを持っているメーカーや通信系企業の参入なども加わり、国内SIerの競争環境は激化の一途。今後は、従来の「個社に合わせたシステムをゼロから作る」から、「多様なソリューションの中から最適なものを組み合わせて提案する」という方向性に発想を切り替えられた企業だけが生き残れるだろう。

国内市場が大きく成長することは期待しにくい。そこで、海外展開に活路を見いだす企業も増えている。特に、海外進出している日本メーカー・流通事業者などのシステム構築を狙う動きが活発だ。また、海外企業の買収・資本提携などで海外展開を目指す企業もある。例えば業界大手であるNTTデータの場合、米国Keane International, Inc.の子会社化(10年12月)、シンガポールCornerstone Asia Tech Pte. Ltd.との資本提携(11年2月)、イタリアValue Team S.p.A.の子会社化(11年6月)などの動きを見せた。野村総合研究所なども中国を中心としたアジア展開を加速中。業界志望者は、こうした動きにも注意を払うべきだろう。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

IT業界志望者が知っておきたいキーワードとは?

クラウドコンピューティング ユーザーが手元にハードウェア・ソフトウェア・データなどを保有せず、ネットワークを経由して利用すること。ネットワークを「雲」に見立てて、このように呼ばれる。単に「クラウド」と略されることも多い。ソフトウェアをパッケージでなく、ネットワーク経由で利用するSaaS(Software as a Service)は、代表的なサービス。
オフショア開発 システム開発の一部を海外の提携事業者・子会社などに委託すること。人件費の安い地域で開発し、コストを削減するのが狙い。この流れがさらに加速すれば、国内で下流工程を請け負っている中堅・中小事業者は厳しい状況に立たされる。
データセンター 顧客企業からサーバーなどを預かり、保守・運用する施設。クラウドコンピューティングを実現するために不可欠で、今後も成長が見込まれている。ただし、他社と差別化が難しい面があるため、価格競争に陥る危険性も指摘されている。
ビッグデータ ネットワークなどを通じて集められた「膨大なデータ」のこと。収集・分析し、得られた成果をさまざまなサービスに活用できる。現在、多くのSIerがビッグデータを支える製品・サービスの提供に力を入れているところだ。
BCP Business Continuity Planningの略。災害などが起きた際に、限られた経営資源で最低限の事業を継続したり、目標時間内に復旧するための「事業継続計画」のこと。企業が従業員の安否確認・連絡手段の確保、無停電システムを導入する際に、ITシステムは欠かせない存在。

【このニュースだけは要チェック!】

人事制度・教育制度の変革に注目

・富士通が、「スキル」を基に設定されていた職種区分を、「ロール(役割)」をベースにした職種に再定義すると発表。クラウドサービスが普及して顧客ごとにシステムを作り込む需要が減る状況に対し、人事制度を改革して乗り切るのが狙いとみられる。(2012年1月19日)

・NTTデータが、1年目の社員を対象に300名規模の海外研修を実施すると発表。中国・インドが派遣先で、ディスカッション・語学研修・オフショア開発体験などのカリキュラムを展開。事業のグローバル化に対応できる人材の育成を目指す。(2012年1月24日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 山浦康史氏
日本総合研究所 研究員 山浦康史氏
慶應義塾大学大学院工学系研究科修士課程修了。通信・メディア・テクノロジー分野を中心としたさまざまな業界における経営戦略・計画策定、事業性評価、新規事業展開支援、R&D戦略策定支援などのコンサルティングに従事している。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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