
- 引き出物を入れる紙袋のリニューアルも担当。最終デザインを検討中。
全国に23のリゾートホテルや温泉旅館を展開している星野リゾート。軽井沢町星野エリアで運営する「ホテルブレストンコート」は、歴史ある「軽井沢高原教会」「石の教会 内村鑑三記念堂」と隣接し、ウエディング利用としても人気のホテルだ。三浦さんは入社後、旅館「星のや 軽井沢」の宿泊サービスにて半年間のOJTを経験したのち、同ホテルのブライダル広告を手がける部署に配属された。
配属後はテレビや雑誌に掲載する広告の制作や広報のほか、イベントの企画・運営も担当。月日を重ねるにつれ、自らの経験不足をもどかしく感じるようになった。
「同世代のお客さまを対象としたイベントの企画などでは、自分の意見が形になることも多く、やりがいがありました。ただ、それは上司や先輩が私の発言を拾い上げてくれたからこそ。デザイナーやカメラマンなど外部の方たちと仕事をするようになると、感覚的には確信のあることを相手に納得してもらえず、空回りしたことも多々ありました」

- 「幸せ重ね箱」。各食品のいわれを記したリーフレットを添えたのもポイント。
軌道に乗り始めたのは入社3、4年目にマーケティングの勘所がつかめてから。顧客調査の実施・分析をチームの中心となって行うようになったのがきっかけだ。
「それまでデータ分析には苦手意識を持っていましたが、アンケートの質問内容の検討から結果のレポートまでを一貫して担当することでお客さま像の理解が深まりました。その結果、お客さまが求めていることを論理的に伝えられるようになり、自分より経験豊富な相手を説得できるようになったんです」
例えば、年間1万冊を配布する同ホテルのブライダルカタログのディレクション(制作指揮)を任されたときのこと。デザイナーやカメラマンと議論をしながら制作をとりまとめる際によりどころとなったのは、調査データだったという。
「リゾートでの挙式を望むお客さまにもタイプがあって、例えば、沖縄派と軽井沢派では重視するものが異なります。沖縄派は開放的で美しい風景に魅力を感じる方が多く、軽井沢派は雰囲気に加えて結婚式を挙げる場所のいわれや歴史など物語性を大切にする方が多いんです。後者のお客さまに興味を持っていただける写真や文章が何かを徹底的に追究してカタログを作成したところ、ご好評を頂き、集客数にもつながりました」
以来、広告の仕事に打ち込んだが、現場感覚が薄れていくことへの不安もあり、もう一度顧客に近い場所で働きたいという思いが強くなった。そこで先輩社員や上司に相談したところ、「マーケティングの経験が生かせる仕事だよ」と引き出物業務を担当する部署のユニットディレクターに立候補することを勧められた。同社には階層的な組織構造がなく、総支配人のもとで社員が役割ごとにユニット(チーム)を組んで仕事を進める。このユニットを指揮統率するのがユニットディレクターだ。総支配人やユニットディレクターなどマネジメント職への昇進は、年2回開催される「立候補プレゼン大会」で決定される。「立候補プレゼン大会」では、立候補者が全社員の前で志望する部署の目指すべき方向性と戦略をプレゼンテーションし、審査の結果、昇進。
「マネジメント職に立候補するとは想像もしていませんでしたが、それまでの自分の仕事を見守ってきてくれた先輩が勧めてくれるならと、挑戦してみることにしました」
プレゼン内容が評価され、2010年6月にギフトチームのユニットディレクターに就任。業者から仕入れる商品の品ぞろえ管理はもちろん、オリジナル商品の企画・開発にも携わる。就任後の半年間で開発した商品は6アイテム。軽井沢で収穫された希少米「五郎兵衛米」をブレンドしたお米や信州産の「黒豆ほうじ茶」など6種類の信州産食品から3種類を選べる「幸せ重ね箱」もそのひとつだ。
「『軽井沢らしさ』や『自分たちらしさ』を大切にするお客さまに満足していただくには、信州産のいわれのある食品をそろえ、おふたりで組み合わせを選べるようにすることが譲れない点でした。従来取引のなかった業者に小ロットで安価な生産をお願いする必要があるなどハードルは高かったのですが、ここが勝負どころと粘り強く交渉しました」
その甲斐あって商品の反響は良く、挙式シーズンを前に年間目標の1割を売り上げ、出だし好調だ。接客を担当するブライダルコーディネーターとの連携を強化し、顧客の声を品ぞろえに反映しやすい体制を作るなどの工夫もあり、三浦さんがディレクターに就任後、同ホテルの引き出物の売り上げはアップ。前年比126%を達成している。
「チームのメンバーは私を含め5名で、母親世代から20代半ばの後輩まで年齢も雇用形態もさまざま。最初は戸惑いましたが、それぞれの得意分野やライフスタイルをふまえて仕事を任せるよう心掛けました。マネジメント職に就いて変わったのは、部署全体の方向性を自分で決め、やってみたいなと思うことをダイレクトに形にできるようになったこと。その面白さは、挑戦してみるまでわかりませんでした。今後は部署横断のプロジェクトへの参加などを通して若いスタッフと一緒に仕事をする機会を持ち、マネジメント職の面白さを伝えられたらと秘かな野望を抱いています(笑)」