
- 部内にある開発ルームでは、試作品をボディに着せて細部を検討する。
100パーセントオイルカットのスキンケア商品をはじめとする化粧品や、栄養補助食品、ボディウェアをカタログ、インターネット、店舗の3チャネルで販売するオルビス。カスタマーセンターに届く利用者の感想や意見を生かしてすべての商品が企画されているという同社で、朝倉さんは入社以来ボディウェアの企画・開発に携わってきた。
朝倉さんが顧客の声の重要性を強く感じたのは、入社2年目、定番商品として販売していたショーツを担当したとき。ウエストにレースを用いた商品について、ある顧客から「これまでと同じサイズを買ったのにレースがきつい」との意見が届いたのだ。
「『そんなはずはない』と思いつつ返品していただき、自分の目で確認するとともにメーカーにも確認をとりましたが、やはり不良は見られませんでした。お客さまにもその旨をお伝えしたところ『そんなはずはない。10年以上はき続けているからわかる』との言葉が。再度メーカーに詳しく調べてもらったところ、それまで取り引きしていたレースメーカーが生産を中止したため、別のレースメーカーに変更していたことがわかりました。仕様の許容範囲内でできているので不良ではありませんが、従来品を100パーセント再現できてはいなかったのです。その後も同様のご意見が複数寄せられ、『お客さまは正しい』という前提ですべてのことに対応していくことの大切さを実感しました」
その後も、開発時に少しでも妥協や迷いがあると、商品の売り上げが伸びなかったり、厳しい意見が寄せられることがあり、顧客の声の重要性をひしひしと感じたという。その顧客の声を生かして大きな成果を出したのが入社5年目。体型補整下着シリーズの大型リニューアルに取り組んだときのことだった。
「当社の体型補整下着の強みは、動いてもズレず、きつさを感じない点にありますが、カタログを見たお客さまから『きつそう』というご感想を頂くことが多かったのです。どのようにして『きつくなく、安定している』という快適さや補整機能の高さを伝えるか。商品そのものの工夫と見せ方の工夫、両方に腐心しました」

- 年々シビアになる消費者の目に応えて新しい価値を発信できるよう、日々施策を検討している。
通販商品の場合、顧客が実物を手に取って見ることができないため、カタログでの表現が購買を大きく左右する。朝倉さんはカタログを制作するマーケティング担当にも積極的にアイデアを提案していった。
「例えばブラジャーの場合、カップ下部分に伸縮性のある生地を交差させる設計を企画し、『アクティブクロス設計』と名づけて動いてもズレないことをカタログでアピールしました。さらに、補整結果を視覚的に伝えるためにバストやヒップの等高線写真を撮影し、他社製品や下着をつけない状態と比較する形で掲載したり、開発者のインタビューを別冊にまとめ、補整機能も快適性も備えていることが伝わるようにしました」
販売時期についても、従来は一斉に発売していたところを、ひと月で買い物に使える金額を考慮し、月ごとに数点ずつ発売する形に変更。これらの工夫の結果、売り上げはシリーズ全体でリニューアル前の1.3倍に。顧客からも、「胸がちゃんと寄る」「おなかがぺたんこになった」「苦しくない」などの感想が寄せられたという。それと同時に、朝倉さん自身の仕事に対する意識にも変化が起こったそうだ。
「当社の商品企画担当は、商品のコンセプト決めやデザイン、ネーミングだけでなく、価格の検討や生産体制の管理、カタログでの打ち出し方、お客さまからの問い合わせ対応など商品に関するあらゆる面にかかわります。これまでは、それを頭ではわかっていても、企画することに精一杯で関係部署と意識的に連携するところまではできていませんでした。しかし、カタログでの売り出し方で売れ方が大きく変わることを実感し、売るためには企画だけをしていればいいわけではないことを本当に理解することができたように思います。それからは、マーケティングや発注担当、コールセンターなどの関係部署との連携をより意識するようになりました」
その後、ボディウェア分野の一通りの商品を担当し、入社7年目には主任に、翌年には係長に昇進。現在は課長としてボディウェアの企画部門をとりまとめ、後輩の育成に尽力している。
「1人あたり数多くの新製品を担当しているため、すべてに100パーセントの力で取り組もうとすると回らなくなってしまいます。企画に必要な考え方だけでなく、どのように優先順位をつけて効率的に進めるか、また、私が経験して得た『企画だけしていればいいわけではない』という視点などを伝えるよう心がけています。後輩たちが早くヒット商品を生み出し、自信をつけてさらに成長してもらえるよう働きかけていきたいですね」
「人々の生活に彩りを添える仕事をしたい」という思いで入社した朝倉さん。顧客から届く意見や感想から、日々それを実感している。
「新商品を発売する毎月25日前後は『何かよくないことが起こったらどうしよう』と胃が痛い思いをしていますが、売り上げが順調だとほっとします。そして、『この商品がよかったのでほかの商品も買いました』『家族にも勧めました!』といった心からの喜びの声を頂けると、その方のために役立てたことが実感でき、うれしく思います。『彩りを与えることができたな』と感じる瞬間です」