山岸さんは、海外と国内の技術者たちとともに、プロセス実現のための実験を繰り返す。実験室に2週間こもり、条件をクリアするための方法をとことん考え抜いたという。
「最終的に、切断用の工具である『ブレード』を特殊な方法で製造すればうまくいくはず、という結論が出ました。が、工場からは『安定的に供給できないブレードを製品として提供するわけにはいかない』という答えが。再び実験を繰り返したけれど、やっぱりどうにもうまくいかない。海外の技術者たちの熱意ある訴えを聞くうちに、『今はこの要件を達成することが一番大事。そのためには、私が工場との間に立って説得する以外にない!』と決意しました」
山岸さんは広島の工場を訪ね、ブレード製造のリーダーに実験の結果をすべて見せ、説得を重ねた。さらに、関係部門のリーダーや海外拠点のボスなどを順番に口説き落とし、ついにブレード製造にこぎ着けた。
「何とか条件をクリアできた時には達成感でいっぱいでした。その後、ブラッシュアップを経たこのプロセスは、ディスコ独自の技術として確立されました。あの時、ムリを押してチームみんなで頑張ったからこその新技術。一つひとつの小さな努力が新しいモノを生み出し、お客さまを通して最終製品となり世の中に送り出していくことにつながっていく。モノづくりの本当の面白さを知った瞬間でした」
この時から、山岸さんの仕事への姿勢は変化する。最前線の営業担当や技術者にベストの仕事をしてもらうため、全体の流れをイメージすることはもちろん、「相手が誰であっても怯まず、伝えるべきことを的確に伝える、過去にとらわれずチャレンジし続ける」という使命感が生まれた。
入社4年目の夏、ドイツ拠点への赴任が決まる。現地営業・技術者の声を聞き、本社との調整を手がけるだけでなく、現地の展示会運営、企業間の技術発表フォーラムにおけるプレゼンテーションなど、多岐にわたる業務を行う。
「基本の仕事は同じですが、よりお客さま、現場に根付いた活動となりましたね。ドイツと日本との違いも大きかったです。拠点の規模は社員50人程度なので、意思決定から実行までのスピードが早く、ついていくのが大変でした。会議の決定もその場で下されるため、疑問や反論があれば即座に声を上げなくてはなりません。素早い判断力とロジカルな議論、表現力が磨かれました。また、距離・時間の点で日本からは遠く離れたドイツでは、本社に問い合わせるだけではなく、現地にある材料で柔軟に対応していくことも必要なので、発想力がより求められる。あきらめずに方法を考えることで多くのことが実現できましたね! 仕事の面白さをさらに感じるようになりました」
4年8カ月の赴任期間を経て帰国。2008年、現部署である本社の海外営業部テクノロジーソリューションズグループに配属された。
「現在は『削る・磨く』分野の技術コーディネーターとして、エリアや顧客を限定せず、いくつものプロジェクトに携わっています。ひとつのプロジェクトでかかわる部署は非常に多く、人と人をつないでいく面白さを感じます。あるプロジェクトのリーダーとして、新しい装置を販売する準備を進めていますが、複雑な案件をひもとき、チームみんなの理解を深め合い、モチベーションを上げていくプロセスにやりがいを感じますね」
コーディネート力を生かし、お客さまがアッと驚くような提案で世の中を快適に、幸せにしていく。それが山岸さんの今後の目標なのだという。