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ビジネスパーソン研究FILE

掲載日:2010年12月10日

Vol.111 国内トップクラスの電力事業に新たな可能性を切り開く

タックスストラクチャーの構築、案件精査や収益予測など、IPP事業の管理業務を習得

木部さんが入社以来所属している電力部隊は、海外でのIPP事業(独立発電事業)やEPC(発電所建設の請負)を行う丸紅の重点事業の一つであり、現在はその中でも海外IPP事業を行う部署に所属している。1995年の電気事業法改正で、一般事業者がIPP事業に参入している中、丸紅は持分発電容量7599メガワット(2010年6月現在)と、日本の発電事業者としてトップクラスの地位を築いているのだ。

最初の配属は、丸紅電力開発株式会社への出向。海外電力事業案件の開発・運営を行う関連会社の税務や会計などの管理業務に当たった。初仕事は、香港の関係会社の会計をスムーズに管理するレポーティングパッケージのオンライン化。香港オフィスのニーズを聞きながら、日本の都市銀行のオンラインシステムを最適化して導入する業務だ。配属先は課長がいない部長直轄の組織で、最初の打ち合わせこそ先輩が同席したものの、後は木部さんが主担当となって業務をこなし、初めての香港出張も一人で行った。
「そこで、まずは社内の資料が保存されている共有フォルダから過去の類似案件を探して参考にしました。自分なりに仕事を進め、一日の終わりに先輩が僕の業務報告書を読んで軌道修正してくれる。この繰り返しで仕事を覚えていきましたね。先輩も仕事をたくさん抱えているので、後輩に引き継がなければ新しい案件に手をつけられない。だから、お互い必死です(笑)。会計や税務など、各分野に明るい先輩が身近にいたので、その点では非常に恵まれていましたね」

その後は、海外にある持ち株会社を担当。アジア・中近東などの担当チームや現地オフィスから依頼される案件にかかわり、最適な投資構造を考える業務に就いた。契約までの流れを簡単に説明すると、現地スタッフが探して絞り込んだ案件を、東京オフィスでさらに精査。タックスストラクチャー(節税対策)や収益性などの投資構造を構築し、本社の承認が下りたら入札に参加。入札で事業者に選定されると独占交渉権を得られ、両者でさらに細かい条件を詰め、最終合意に達したら書面での契約締結…となる。
「日本が出資するにあたって最適なタックスストラクチャーを構築するために、子会社を経由させることは珍しくありません。『この案件は××国の子会社を経由させたほうが良い』など、案件ごとの国際的なタックスストラクチャリングを考える仕事です。税務に関する幅広い知識が必要となり、本来は経験を積んだ人たちが担当する業務なので、プレッシャーはありましたね」

2008年に異動となった電力インフラアセットマネジメント部アセットマネジメントチームは、世界各地で動いているプロジェクトの収益を迅速に把握するべく発足した新しい組織である。
「うれしかったのは、自分の部門別会計報告が部長に上がり、会社の報告書として使われたこと。自分が苦労してはじき出した数字が使われていたのを見たときは、感激しましたね」

年4回のIPP事業の予算管理と、年2回の中長期計画をまとめた部門別会計の報告を担当するようになり、木部さんが実感するようになったのは説明責任を全うする大切さ。これは営業担当となった現在も変わらない。
「僕の役割の1つは、常日頃上司からいわれていることの受け売りですが、『良い案件かどうかを目利きして獲得する』こと。もう1つは、その案件について部門や社内の理解を得られるまで説明すること。地味で難しい作業ですが、全社純利益の底支えとなるべき事業なので、あらゆる手段で説明責任を果たすべきだという意識を持つようになりました」

一日の終わりにチーム長とブレーンストーミング。各案件について対応方針が間違っていないかを上司とすり合わせる。

北米の送配電事業開発が結実。営業として新たなビジネスモデルの足掛かりを作る

2010年からは、海外電力プロジェクト第三部 電力事業第一チームで営業を担当している。
「前部署時代から、新規案件獲得のサポート役として営業のアメリカ出張に同行していたので、仕事の雰囲気はつかんでいました。でも、今までの管理部門とまったく違ったのがスピード感です。午前と午後では案件の進捗状況が変わることもあるし、新規案件がドカドカと入ってくる。その目まぐるしさには驚きました(笑)」

異動して以来、チームの一員として手掛けてきた大型案件が、2010年10月に実を結んだ。これはアメリカ中部大西洋岸地域での大規模海底送電線の開発業務を、アメリカのグーグル社などと共同出資で推進していこうというプロジェクト。将来的には約6000メガワット相当の電力を供給する見通しだ。
「これは、従来のような相対契約による収益モデルではなく、送電線を利用した最終消費者から徴収する料金で利益をあげていくという新しいビジネスモデルです。約6000メガワットといえば、最新の原子力発電所5〜6基分の発電量に相当。当社の持分発電量が約7600メガワットですから、一案件としての最終的な規模は非常に大きいといえるでしょう」

現在、アメリカでは再生可能エネルギーの導入を義務付ける法整備が州レベルで進んでおり、今後20年間で約30兆円の送配電インフラ投資が見込まれている。それだけに、この事業への期待は大きい。
「電力会社を買収した経験はあっても、その仕組み作りに一から携わるのは丸紅としても初めて。手探りの中で感じたことは、周りの諸先輩方の『この案件を絶対に実現させる』という強い思いがあったからこそ実現した案件だということです」

新しいビジネスモデルを経験したことで、またひと回り大きくなった木部さんは、丸紅で働く魅力をこう語る。
「丸紅は、社会に影響を与えるような大きなプロジェクトでも、若手にポンと任せてくれる会社。自分が手掛けた案件が新聞に載り、友人から『これ、お前がやったの?』と連絡が来たりすると、この仕事をしていて良かったなと思えます。発電所建設など、自分が手掛けた成果が地図に残ると考えるとワクワクしますね」

そんな木部さんのモットーは、楽しく仕事をすること。興味のある案件には、率先して手を挙げている。
「送配電の分野はまだまだ勉強することも多く、将来的にも楽しみな仕事です。ゆくゆくは海外駐在してプロジェクト全体の運営まで手掛けてみたいと思っています。先輩訪問で学生の皆さんからよく受けるのが『一度配属された部署から異動できず、担当業務がずっと変わらないのでは?』という質問です。僕も入社前はそう思っていました。けれど、実際は異動をしなくても、配属された部門の先には大きな世界が広がっている。今は、同じ電力・インフラ部門で違うフィールドに挑戦したいという思いでいっぱいです」

会議などで話し合った内容はすぐに議事録にして、メンバーや上司へ。仕事はデスクワークか海外出張と両極端。

木部さんのキャリアステップ

STEP1
2005年 新入社員研修で同期の結束を強めた時期(入社1年目)
4月から1カ月間、同期約80名との新入社員研修に参加。社会人としてのビジネスマナー、商社パーソンとしての経理や会計、法律知識などを座学で学ぶ。「早く仕事をしたい!」という思いでいっぱいだったが、最初の一定期を一緒に過ごすことで同期の結束が強まり、後々仕事でのコミュニケーションがとりやすくなった有意義な研修だった。
STEP2
2005年 国際税務・会計を学んだ時期(入社1年目)
5月、海外電力プロジェクト第二部に配属となり、丸紅電力開発株式会社に出向。配属先での実務と並行して、社内検定試験の勉強に取り組む。経理、財務、リスクマネジメント、貿易実務などの試験すべてにパスしないと海外出張に行けないため、懸命に勉強。初仕事で香港出張に行くことができた。その後は、国際税務や会計業務の知識をもとに入札案件の精査を行う仕事を担当。3年目を過ぎるころには、自分が担当する精査だけでなく入札の全容が理解できるようになった。
STEP3
2008年 ポートフォリオ作成や収益予測を担当(入社4年目)
電力インフラアセットマネジメント部アセットマネジメントチームに異動し、世界各地で進行しているプロジェクトの部門別収益モデルの作成サポート、発電資産全般の管理業務などを担当。一時は、北米、アジア、中近東、欧州と全エリアを管轄していたため、出張先は香港、ニューヨーク、ロンドン、韓国、アブダビ、オランダ、タイ、フィリピン、チュニジアなど全世界に及んだ。それまでは部長直轄の部署にいたが、この異動で初めて課長がつき、課長が上層部と折衝して方針決定されることとなったので、より実務的な作業を深堀することができた。
STEP4
2010年 個別案件を獲得してくる営業担当に(入社6年目)
海外電力プロジェクト第三部 電力事業第一チームに異動。入社以来担当してきた管理業務から、北米エリアの営業担当となる。チームで手掛けてきたアメリカ中部大西洋岸地域における大規模海底送電線事業開発の実施が決定し、現在は2013年の建設着工を目指して許認可申請業務などを行っている。ほかの案件も同時進行しているので、依頼案件の精査や海外出張などに奔走している。

ある一日のスケジュール

9:30
出社。通勤中にメールをチェックして、出社までに今日の予定を確認しておく。約30分間、ニューヨークオフィスと電話会議。
10:00
午後の電力会社などのパートナーと行う会議に備えて資料を作成。終了後、関係管理部門に出向き、契約署名前の説明を行う。
11:30
別の案件の資料を作成。部長および役員に、チーム長と一緒にその案件についての状況を報告した後、チームメンバーと近所にランチへ。
13:00
パートナーとの会議のため外出。14時に帰社し、会議報告書を作成・配布。15時におやつ休憩をとり、資料作成や電話対応などのデスクワークを行う。
16:00
数字関連の業務が多いので、不明点について会計監査法人と電話会議を行う。その後、チーム内で会議内容について協議し、データを更新する。
19:30
15分ほど休憩したのち、今後の対応方針についてチーム長とブレーンストーミング。
22:00
部長に最新情報を報告し、今後の方針を確認。残ったデスクワークを片づけて22時ごろ帰宅。23時から15分ほど、NYと自宅で電話会議を行うことも。

木部さんのプライベート

07年夏に群馬県利根川で、友人とラフティングに参加。台風後で水かさが増していたため、激流にもまれることに。「楽しかったですが、体がまったく休まらなかったですね」。
08年夏、大学時代の友人と東京から近場の島(新島)にて夏休みを満喫。大学時代から、お互いの誕生日を祝い合うほどの仲。旅行も毎年企画しているという。
10年以上もの付き合いになる高校時代の友人と月1〜2回の頻度で新宿のバッティングセンターに。「その後、韓国焼肉を食べ、24時間営業の喫茶店で語るのがいつものパターンです」。

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取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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