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ビジネスパーソン研究FILE

掲載日:2011年9月2日

Vol.136 世界中に安全・安心な製品を届けていきたい

入社後の配属先は工場の現場。スケールの大きな製造工程に携わり、体で製造の基本を学んだ

化学が好きで、大学院では研究に打ち込んだという小森さん。「大好きな化学にかかわるモノづくりの仕事で、社会貢献していきたい」と考え、この仕事を選んだという。

入社当初の配属先は横浜磯子工場精製グループ。現場で製造オペレーターを担当することになった。
「正直、いきなり製造現場に入ることには不安もありましたが、『経験したことのないことだからこそ、学べることがたくさんあるはず』と前向きにとらえました」

植物原料から油脂をしぼり、不純物を取り除く製造工程の中で、小森さんは「脱酸、脱色」を担当。原料油から遊離脂肪酸などを取り除き、色を薄くする工程において、添加する加工助剤の量を決めたり、装置の設定や操作などを手がけていった。
「学生時代の研究はビーカーのスケールでの作業。現場のスケールはまったく違い、体全体を使って操作するほどの大きな規模でしたから、慣れるまでが大変でした。また、作業で使うレンチやネジ締めの工具は、はじめて見るものばかり。工具一つひとつの名前を覚えるところから始めました」

小森さんが入ったチームは、職長と脱酸・脱色担当、脱臭担当で編成。先輩から指導を受けながら操作手順や加工助剤の適正な添加量などを学んでいったが、原料の性質や状態は刻々と変化するため、臨機応変な判断をしなくてはならない。
「とにかく安全第一を心がけました。1時間につき約20トンの油が流れるラインもあるので、操作に誤りがあると大量の油が無駄になってしまう。また、ほんの少しの気のゆるみで怪我をするリスクもあります。ちょっとしたミスが損失や危険を招く現場なので、どんな作業に危険が隠れているかをたたき込まれました。入社後の教育期間を経た後に独り立ちしましたが、緊張の連続でしたね」

しかし、仕事に慣れてきたある日、小森さんはほかの作業に気を取られ、バルブ(配管の開閉を行う機器)の操作を間違えてしまう。そして、これが原因で全体の生産スケジュールが遅れ、後の工程にまで影響を与えてしまったのだ。
「危険な場所や注意すべき操作方法は先輩からさんざん言われていたのに、イージーミスをしてしまったんです。ひとつのミスが、製品出荷などの後のスケジュールに大きく影響してしまうことを思い知らされましたね。仕事での失敗は仕事でしか取り返せないと思い、それからは先輩の作業を見学したり、教えてもらったことを逐一メモしたり、翌日の作業を確認して起こりうる事態を想定しておくなど、ミスしないよう努力を重ねていきました」

この失敗を境に、小森さんの仕事に対する姿勢が変化したという。
「1人でつくっているわけじゃない。みんなが支え合い、一つひとつの役割をこなしていくことで、初めて製品をつくりあげることができる。それを痛感して以来、どんな小さなことも見逃さず、徹底的に注意を払うプロ意識が芽生えました」

工場内のラボにて、植物原料の製造条件を検討。ビーカースケール、数十から数百キロのパイロットプラントスケール(※)で最適な条件を探した後、実機にてのテストを行う。
※小型の実験装置と工場の生産設備との中間規模の装置

現場の工程改善を行う技術スタッフを経験後、生産技術部へ。自らアイデアを発信する面白さを実感

入社2年目の小森さんは、現場で学んだ経験を生かし、技術スタッフとして設備投資や作業工程の改善を手がけるようになる。
「脱酸、脱色の工程で使う資材の検討や、工程を改善するための方法提案、設備の導入などを担当することになりました。初めて手がけたのは、新しく導入したタンク8機を洗浄し、鉄粉や細かなゴミなどの異物を取り除いて使えるようにするという仕事。油を入れて洗浄していく際の工程を考えましたが、現場のオペレーターに作業手順やそれぞれの工程の目的を正確に伝えることが難しかったですね」

タンクに油を送り込む工程では、送り先を間違えないことはもちろん、量やタイミングを間違えても上手くいかないのだという。しかし、製造オペレーターは交替勤務のため、工程をバトンタッチする際に伝わりきらず、行き違いが起きることもあった。
「誰が見ても一目瞭然でわかるようにと考え、作業手順の資料をつくることもしましたが、現場ではスケジュールの変更も多いので、なかなか上手く伝えることができず、神経を使いました」

品質管理グループに油のサンプルを提出し、合格すればタンクの使用が可能という流れだったが、厳しい合格基準をクリアするためには、複数回の洗浄が必要となり、苦しい日々を送った。
「8機すべてが合格するまでに、数えきれないほどチェックを受けました。洗浄に使う油は製品用なので、『これ以上、ロスはできない』と焦る一方で、『お客さまの口に入るものを扱うのだから、絶対にいい加減なことはできない』という気持ちも強くあり、最後は祈るような思いでしたね。3カ月後にようやくOKをもらい、本当にほっとしました」

その後、設備の配管設計や導入する機器の選定なども手がけ、1年後には現部署である生産技術部に異動となる。小森さんは、生産プロセスにおける製造条件の検討や新設備の導入、さらには新規生産技術の調査と開発までを手がけるようになる。
「従来の製品の品質改善や、新しい品種の原料を使うなどの場合に、どういった製造条件を整えるべきかを検討しています。現在の製造現場で対応できるのか、あるいは新たな設備や工程が必要かなどをテストし、必要があれば現場を改善する提案をしていく。小さなラボ(実験室)スケールから少しずつ規模を大きくしてテストを重ね、最終的に必要な工程を現場に導入できるようにするんです」

「実験はすべてが積み重ね」だと考え、手がけたテストの記録はすべて残し、担当が入れ替わった時にもすぐに参照できるように心がけている小森さん。そんな彼にとって印象深かったのは、異動から半年後に手がけたある製品の製造プロセス改善だった。
「新しい油脂製品の製造プロセスの中に課題があり、それを改善するため検討を重ねていました。さまざまな条件設定をして実験を続けましたが、原因も解決方法もわからず、苦労していたんです」

1年以上を費やしたある日、小森さんは「いつもよりも実験のスケールを小さくすることで、実験回数を増やそう」と考えた。すると、規模が小さくなったことで温度コントロールが上手くいかないなど、いつもとは大きく条件が変わってしまう事態が発生!
「『しまった! 失敗した』と思いました。が、サンプルを評価したところ、理想に近い数値が出たんです。なぜなのかを調べるため、過去の実験データを横並びにして調べていったら、それまで思いつきもしなかった原因が見つかり、必要な条件が何かを突き止めることができたんです! 自分が積み重ねてきたデータの蓄積が役に立ったと感じ、『やった!』という達成感がこみ上げましたね」

小森さんは、この仕事の面白さを「自分で工夫を重ねることによって問題解決ができるところ」に感じると話す。
「実験の条件を自分で自由に考えていく面白さがありますし、日々、発見があります。油の製法は、伝統技術の積み重ねで完成されてきたので、大々的に技術革新するような変化はありません。ですが、これまで精製に使われてこなかった新しい装置を組み合わせていくことで、また新たな効果を得ることができます。過去に積み重ねられた技術を学び、新たな試行錯誤を繰り返すことで、さらなる発見もあるし、自分の手がけた実験をデータとして残していくこともできる。受け身ではなく、自らアイデアを生み出して発信していかねばならない大変さはありますが、それがカタチになる瞬間には大きな喜びを感じますね」

現在は、海外で生産する油の開発も手がけている小森さん。目標は、「国内だけでなく、世界中の人に使ってもらえるような油をつくっていくこと」だという。
「世界を視野に入れ、より広く社会に貢献していければと思っています。実験の際、効率を優先したくなってしまうような状況もありますが、そんなときには消費者の皆さんの笑顔を思い浮かべ、安全・安心を第一に考えるよう心がけています。多くの人々の『おいしさ、健康、美しさ』に繋がるような油を届けていくため、頑張っていきたいです」

2010年にフェニックスで開催された油脂についての国際学会に参加。また、カリフォルニアに立ち寄り、油脂製造工場も視察。写真は工場の近くにあるゴールデンゲートブリッジで撮影したもの。

小森さんのキャリアステップ

STEP1
2007年4月 研修時代(入社1年目)
1カ月の集合研修に参加。ビジネスマナーなど社会人の基本や、会社の各部署の役割やつながりを学んだ。「自分が目指していた研究・生産のみに注目していましたが、ひとつの会社であってもいろんな事業を抱え、さまざまな仕事の役割があることを学びました」。このとき一緒に研修に参加した同期は約40名。今でも1〜2カ月に一度は同期会を開催するほど仲がいい。
STEP2
2007年5月 製造オペレーター時代(入社1年目)
配属先は磯子工場精製グループ。勤務時間は日勤だけでなく、交替勤務では朝勤や夜勤などがローテーションで回ってくるため、体を慣らしていくことでも一苦労した。1年間、現場のスケールの大きさを体感しながら、油の製造の基本を学んだ。
STEP3
2008年4月 技術スタッフ時代(入社2年目)
同グループ内で、技術スタッフとして設備投資や工程改善を担当することに。「初めて学ぶことばかりで、仕事に追いかけられていましたね。ポンプや流量計などの機器の選定も手がけましたが、同じ機器でもすごくたくさんの種類があるので、ベストのものを選び抜くことが難しかったです。どれも安いものではないので、失敗はできないというプレッシャーもありました」。機器メーカーに話を聞き、経験豊富な先輩に相談しながら仕事を進めていった。
STEP4
2009年3月 生産技術部時代(入社3年目)
最初に手がけたのは製品のさらなる高品質化。先輩と一緒にラボスケールで必要な条件を検討し、より良い風味を目指した。この部署では、現場の製造プロセスの改善や効率化など、他部署から依頼された課題を解決していくことに加え、まったく新しい生産プロセスについて、自ら調査・検討して提案することも仕事のため、アイデアを出す面白さもあるという。2010年の5月には、上司の勧めで国際学会にも参加。海外の研究内容を知り、刺激を受けると同時に「自分も目指していることは同じ。けして世界にも負けてはいないぞ!」と感じたという。「自分のやってきたことは間違いなかったんだと感じ、自信をつけることができました。いずれは世界で発表できるような研究を手がけたいですね」

ある一日のスケジュール

8:30
出社。メールチェックと、一日のスケジュールの再確認。実験の事前準備も行う。8:30からの朝の体操の後、部内のメンバー7人とスケジュールを共有。
9:00
今後手がけようと思っている実験の計画書を作成。これまでのデータを読み込み、特許や文献についてリサーチ。
11:00
研究所と海外向け油脂についての打ち合わせ。製造現場、品質管理、事業部などと打ち合わせすることも。
12:00
事業所内の同期と社員食堂でランチ。
13:00
ラボにて実験作業。内容によって、数時間で終わるものもあれば、数日間連続で行うこともある。
16:00
部内メンバーと実験結果の共有。方向性に行き詰まりを感じた際には、お互いにアイデアを出し合って次の実験につなげる。
17:00
上司に進捗報告。今後の方向性について話し合う。その後、18:00に退社。部内のメンバーと飲みに出かけることも。

小森さんのプライベート

2011年の2月に神奈川マラソンに参加。小森さんが働く磯子工場がスタート&ゴール地点のため、先輩に誘われて一緒に参加することに。これを機に、みなとみらいの街を個人で走るなどもしているという。
学生時代は音楽サークルでベースを弾いていた小森さん。社会人になってからは演奏から離れていたが、2011年の春に学生時代の仲間たちと一緒に、社会人になってから初のライブを開催。今後もコンスタントにライブをやる予定だそう。
自然の中で音楽を楽しむロックフェスが大好きで、毎年、参加することが恒例行事になっている。写真は2010年の朝霧JAMにて。「富士山のふもとで音楽を聴きながら飲むビールは最高! 今年も出かける予定です」
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取材・文/上野真理子 撮影/早坂卓也 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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