入社2年目の小森さんは、現場で学んだ経験を生かし、技術スタッフとして設備投資や作業工程の改善を手がけるようになる。
「脱酸、脱色の工程で使う資材の検討や、工程を改善するための方法提案、設備の導入などを担当することになりました。初めて手がけたのは、新しく導入したタンク8機を洗浄し、鉄粉や細かなゴミなどの異物を取り除いて使えるようにするという仕事。油を入れて洗浄していく際の工程を考えましたが、現場のオペレーターに作業手順やそれぞれの工程の目的を正確に伝えることが難しかったですね」
タンクに油を送り込む工程では、送り先を間違えないことはもちろん、量やタイミングを間違えても上手くいかないのだという。しかし、製造オペレーターは交替勤務のため、工程をバトンタッチする際に伝わりきらず、行き違いが起きることもあった。
「誰が見ても一目瞭然でわかるようにと考え、作業手順の資料をつくることもしましたが、現場ではスケジュールの変更も多いので、なかなか上手く伝えることができず、神経を使いました」
品質管理グループに油のサンプルを提出し、合格すればタンクの使用が可能という流れだったが、厳しい合格基準をクリアするためには、複数回の洗浄が必要となり、苦しい日々を送った。
「8機すべてが合格するまでに、数えきれないほどチェックを受けました。洗浄に使う油は製品用なので、『これ以上、ロスはできない』と焦る一方で、『お客さまの口に入るものを扱うのだから、絶対にいい加減なことはできない』という気持ちも強くあり、最後は祈るような思いでしたね。3カ月後にようやくOKをもらい、本当にほっとしました」
その後、設備の配管設計や導入する機器の選定なども手がけ、1年後には現部署である生産技術部に異動となる。小森さんは、生産プロセスにおける製造条件の検討や新設備の導入、さらには新規生産技術の調査と開発までを手がけるようになる。
「従来の製品の品質改善や、新しい品種の原料を使うなどの場合に、どういった製造条件を整えるべきかを検討しています。現在の製造現場で対応できるのか、あるいは新たな設備や工程が必要かなどをテストし、必要があれば現場を改善する提案をしていく。小さなラボ(実験室)スケールから少しずつ規模を大きくしてテストを重ね、最終的に必要な工程を現場に導入できるようにするんです」
「実験はすべてが積み重ね」だと考え、手がけたテストの記録はすべて残し、担当が入れ替わった時にもすぐに参照できるように心がけている小森さん。そんな彼にとって印象深かったのは、異動から半年後に手がけたある製品の製造プロセス改善だった。
「新しい油脂製品の製造プロセスの中に課題があり、それを改善するため検討を重ねていました。さまざまな条件設定をして実験を続けましたが、原因も解決方法もわからず、苦労していたんです」
1年以上を費やしたある日、小森さんは「いつもよりも実験のスケールを小さくすることで、実験回数を増やそう」と考えた。すると、規模が小さくなったことで温度コントロールが上手くいかないなど、いつもとは大きく条件が変わってしまう事態が発生!
「『しまった! 失敗した』と思いました。が、サンプルを評価したところ、理想に近い数値が出たんです。なぜなのかを調べるため、過去の実験データを横並びにして調べていったら、それまで思いつきもしなかった原因が見つかり、必要な条件が何かを突き止めることができたんです! 自分が積み重ねてきたデータの蓄積が役に立ったと感じ、『やった!』という達成感がこみ上げましたね」
小森さんは、この仕事の面白さを「自分で工夫を重ねることによって問題解決ができるところ」に感じると話す。
「実験の条件を自分で自由に考えていく面白さがありますし、日々、発見があります。油の製法は、伝統技術の積み重ねで完成されてきたので、大々的に技術革新するような変化はありません。ですが、これまで精製に使われてこなかった新しい装置を組み合わせていくことで、また新たな効果を得ることができます。過去に積み重ねられた技術を学び、新たな試行錯誤を繰り返すことで、さらなる発見もあるし、自分の手がけた実験をデータとして残していくこともできる。受け身ではなく、自らアイデアを生み出して発信していかねばならない大変さはありますが、それがカタチになる瞬間には大きな喜びを感じますね」
現在は、海外で生産する油の開発も手がけている小森さん。目標は、「国内だけでなく、世界中の人に使ってもらえるような油をつくっていくこと」だという。
「世界を視野に入れ、より広く社会に貢献していければと思っています。実験の際、効率を優先したくなってしまうような状況もありますが、そんなときには消費者の皆さんの笑顔を思い浮かべ、安全・安心を第一に考えるよう心がけています。多くの人々の『おいしさ、健康、美しさ』に繋がるような油を届けていくため、頑張っていきたいです」