「経済活動を支える原油のほとんどを輸入に頼る日本は、非常に不安定な基盤の上に成り立っています。その基盤となる石油に携わり、グローバルに働きたいと思ったのです」
世界各地で油田・ガス田の開発・生産に参画し、日本への安定的なエネルギー供給を担う国際石油開発帝石(INPEX)。そこで働く高野さんが大学時代に実感したのが、日本にとっての石油・天然ガスなどの天然資源の重要性だった。大学時代に経験したシリア留学や、休学中のリビアでのアラビア語通訳の経験、また中東諸国を転々と旅する中で、石油の存在感を目の当たりにしたのだ。
世界各地の油ガス田の探鉱・開発プロジェクトへの参加を期待して入社したものの、資材部に配属された当初、担当したのは社内のインフラ整備。先輩社員が世界各地の探鉱・開発プロジェクトにかかわる中、高野さんはWindowsの社内パソコンへのインストール作業200台分や電話交換機導入に伴う業者の選定、社内にプロジェクト室を立ち上げる際のIT環境の整備など、国内業務を担当することに。一見、石油開発から程遠い仕事でがっかりしたが、その後、入社1年目の6月から4カ月間、同業他社に研修生として出向し、秋田県男鹿半島の掘削現場で資材調達を担当する機会を得た。初めての現場は学ぶことばかりで、失敗の連続だったという。
「掘削責任者とのコミュニケーション不足から、調泥剤(掘削時に、比重や増粘調整のため坑内循環させる流体に投入する薬剤)の発注量を誤ったことがあります。掘削の進み具合に応じて教科書通りの発注をしたのですが、掘削責任者は数日後に通常より多くの調泥剤を必要とする作業を予想していたのです。その作業方針を十分に確認しておらず、当日調泥剤が足りなくなるという事態に。結果的には、次回の調達で間に合うことになりましたが、工程表に「WOM(Wait on Material:資材待ち)」と示されるのは資材調達担当の恥。作業レポートだけを見て判断するのではなく、作業担当者に直接、今後の予定を確認することや、技術的な内容も可能な限り理解し、次にどのような工程が予定されているのかを見通すことの大切さを実感しました」
それからは、業務開始前や昼休みも惜しんで勉強を重ねるとともに、わからないことは恥ずかしがらずに人に聞くように。出向終了後は少しずつ海外の現場での資材調達関連の業務も任されるようになり、入社2年目には念願の海外赴任が実現した。行き先は中東の某国。INPEXが中心となり進める石油開発プロジェクトで、高野さんは約1年半、中東の海外事務所に勤務した。その後、陸上生産施設の基本設計を請け負うエンジニアリング会社の事務所(フランス)に1年間駐在し、コストコントローラーとして、陸上施設設計チームの予算作成や作業進捗の管理を行う業務を担った。
石油開発業界におけるコストコントローラーは、上流開発プロジェクトにおいて、プロジェクト費用の予測・管理・分析を担う。開発作業費、資機材費、人件費をはじめとする一般管理費など、開発作業にかかる予算を作成した上で、作業進捗をコスト面から把握。作業の進捗を工程表と比較しながら管理するスケジューラーと連携を取りながら、決められた工期・予算内で作業が進められているかなどをチェックしていく。また、予算や工程の見直し、コスト超過が予見された場合の予防策をプロジェクトマネージャーに進言し、判断を仰ぐ。
「発注先であるエンジニアリング企業から提出される図面と照らし合わせながら、設計図や設計にかかった人件費が適切かどうか、毎月末にチェックしていました。当初は見るもの聞くものすべてが新しい経験。けれど、仕事を進めていくうちに、コストコントローラーに求められるのは、技術的な側面も理解しながら予算と工程を把握し、コストのトレンド(傾向)を予測して、手遅れになる前にマネジメントに予防策や判断材料を提供することだとわかりました。そのためには、実際に予算を使う部署が何を考え、どのような発注をしようとしているのかを把握することが大切。担当者の元にできるだけ足を運ぶなど、綿密なコミュニケーションを心がけるようになりました」