小麦の輸入制度や市場環境の変化とグローバル化への対応
日清製粉グループの111年の歴史を根底から支えているものは、社是である「信を万事の本と為す」と「時代への適合」であると思います。「信を万事の本と為す」とは、何に対しても、また、誰に対しても信頼を大事にすること、また「時代への適合」とはビジネスを取り巻く環境の変化に対応していくことと言えるでしょう。
もともと製粉業は、原料である小麦をマーケットから仕入れ、国内で加工・販売するビジネスでした。しかしその後、小麦は米と並ぶ主要食糧として政府の管理下に置かれ、政府がほぼ全量を輸入して国内価格を管理する時代が長く続いてきたのです。そうした政府の管理が、近年、大きく変化し、政府から製粉会社に売り渡される輸入小麦の価格が、その都度、変動する時代を迎えています。このような変化を背景にビジネスモデル自体が変わっていく中、国内のリーディングカンパニーとしての責任と見識を持ち、お客さまの信頼に応え続けながらビジネスを進めていくことが求められていると言えるでしょう。例えば、小麦の輸入、価格政策についても、これまで政策によって製粉業界が守られてきた側面もあるわけですが、そうした状況が続くことが国民の食生活にどのような影響があるかを考えなければなりません。一企業、一業界の利益だけを主張していくのではなく、国民の食生活を支える企業として、信頼を得ながら事業を継続していかなければならないと考えています。
また、国内の少子化・高齢化といった環境変化への適合という観点から、グローバルなビジネス展開を加速させることも必要です。日本国内の人口が減少傾向にあり少子高齢化が進む中、消費全体が右肩下がりになっていくことが想定されます。グループ最大の事業会社である日清製粉はもちろん、小麦粉をベースとした加工食品を手がける日清フーズのビジネスも、国内のマーケットが縮小していくと考えざるを得ません。その中でさらに発展していくためには、当然、海外での事業拡大が重要になります。海外のビジネスの型としては、日本向け製品の生産基地を海外につくって製品を輸入するビジネスモデル、現地マーケットで販売するモデル、また、海外生産拠点からほかの国に輸出するといったビジネスモデルがあります。今後の当社グループの海外事業拡大の方向としては、海外で新たなマーケットを切り開く、現地の方に直接お買い上げいただくビジネスが主になっていくと思っています。
大切なのは「人」「商品」「仕事」を好きになれる資質
当社は2001年に分社化によるグループ体制に移行し、持ち株会社である日清製粉グループ本社のもと、製粉、加工食品、ペットフード、健康食品等の事業を各事業会社が行っています。採用自体は各々の会社で行っていますが、入社後はグループ内での出向や転籍による異動もあります。グループ本社と各事業会社の間は、それぞれの機能を分担し、ともにグループとしての価値を最大化していく関係にありますので、グループ本社がグループ戦略を立てたり、事業会社の支援を行うにあたり、各事業会社の事業や組織、また働いている人たちの気持ちなどを理解することが必須になります。また、各事業会社には、それぞれのビジネスの視点だけでなくグループ全体を見渡す視野を持ってほしいと考えています。
グループ全体で活躍の場は広く用意されていますが、どの場においても求められる資質は「人」「商品」「仕事」を好きになれること。基本的には多様な人材が集まって力を合わせることが大切だと考えていますが、ベースとして「人」「商品」「仕事」を好きになる資質が、製造業である当社グループで活躍するには大変重要と考えています。というのも、製造業のビジネスが、研究開発者から工場の現場で働く方までさまざまなバックグラウンドを持つ人たちが集まり、一つのものを作り上げていくものだからです。その際、軋轢(あつれき)を避けるのではなく、それぞれの立場から意見を出し合ってよりよいものを作っていくことが求められます。時間がかかる大変な過程ですが、それでも常に前向きに捉え、周囲とコミュニケーションできる力が必要とされるのです。
海外でのビジネス拡大には、そのための人材も必要です。現地での採用なども含めて状況に合わせて対応していきますが、基本的には国内で採用し、社内でグローバルに活躍する人材を育成したいと考えています。ですから、「世界のどこでも、誰とでも対等に仕事をし、海外ビジネスを拡大していく」という気概を持つ人を求めています。また、海外で活躍するには“思考の健康”も必要です。海外では、それまで培ってきた価値観が崩れるような体験をすることが少なくありません。私自身、シンガポールとタイに赴任した経験がありますが、考え方の違いにショックを受けたことがたくさんありました。例えば、日本では多くの社員が「会社に貢献したい」「ずっと勤め続けたい」という思いを持って働いていますし、多くの会社が社員に対して「仕事を通して定年まで成長し、貢献してほしい」と考えています。しかし、こうした考え方は海外では必ずしも一般的ではありません。転職のペースが速く、企業間のスタッフの取り合いもあります。現地スタッフの中には、「給与が決まっているのだから、できるだけ楽をして最低限の仕事をこなせばよい。その結果として会社の評判や利益がどうなるかはマネジメントが考えることで私には関係ない」というようなことを言う人もいました。海外では日々、びっくりすることの連続です。こうした文化などの違いを柔軟に受け入れ、一時的に落ち込むようなことがあっても立ち直る強靭さが求められます。
学生の皆さんへ
学生時代は学生らしく、学生としてすべきことをやってほしいと思っています。まずは卒業に向けて、学業をしっかり修めることが大事。さらに言えば、学生時代だからこそ許される「失敗経験」をたくさん積んできてほしいですね。例えば対人関係なら、本気でぶつかり合って、それでもうまくいかないということがあるでしょう。学生のうちなら時間をかけて関係を修復することもできますが、社会人になれば「取引先とうまくいかず半年も口をきかない」といったことはあり得ません。ぜひ、時間がある学生時代のうちにさまざまなことにチャレンジし、見聞を広めてください。サークル活動でも、バックパッカーとして海外を巡ってみるのでも、何でもいい。高い目標を掲げて、限界に挑戦し、失敗するという経験をしておくことが、後に生きてくると思います。











