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掲載日:2009年6月17日

Vol.02漫画家 倉田真由美

くらたまゆみ・1971年、福岡県出身。一橋大学商学部卒業。就職活動では約20社に全敗。その体験をもとに描いた漫画でヤングマガジンギャグ大賞を受賞した。漫画家としてデビューするも生計は立たず、雀荘や学習塾でアルバイトをしながら、漫画を描き続ける。2000年、週刊誌『SPA!』で『だめんず・うぉ〜か〜』の連載を開始。ダメ男を好きになる女たちを描いて反響を呼び、「だめんず」は流行語に。ドラマ化もされた。28歳で結婚し、男の子を出産、30歳で離婚。現在はマンガ、エッセイの執筆のほか、おもにコメンテーターとしてテレビやラジオ、トークショーなど多方面で活躍中。

モテないことを自覚しているなら、モテる人の成功談なんて参考にしてもダメ

イメージだけが独り歩きしてましたね。私の就職活動は。バリバリ働くキャリアウーマンを目指して商社や金融の総合職を受けるんだけど、ことごとく不採用。仕事内容もまともに理解せず、的外れな志望動機を熱く語るんだから、今思えば当然の結果です。しかも、超大手しか狙わないなんて、本気で仕事をするつもりがあったのか疑わしいでしょう?

でも、当時は、商社や金融の仕事に自分の適性があると本気で考えていました。認識が甘かったと言われれば、ごもっともなのですが、仕事の適性って意外とわからないものなんですよ。例えば、私はお酒を飲む場も、人と話すのも好きだから、キャバクラで働くのは向いているとつい最近まで思っていたんですね。学生時代、居酒屋でアルバイトをして楽しかったし。ところが、雑誌の企画でキャバ嬢体験をさせてもらったら、5時間の予定が1時間半でリタイア。グループを相手に当たり障りのない会話なら誰とでもできても、マンツーマンで興味のない話を聞くとなると、絶対に無理。30代にして初めて悟りました。仕事選びに思い込みは大敵ですから、アルバイトをして生の仕事を体験したり、いろいろな企業に話を聞いて視野を広げておくのは本当に大切だと思いますよ。

漫画家になったのは、就職の夢破れ、「やりたいこと」よりも、「できそうなこと」を探した結果です。中学、高校と少女漫画を描いては投稿していたので、私にとっては、事務の仕事よりはできそうな分野でした。ただし、同じゼミにプロの漫画家がいたこともあって、自分の絵がさほど上手ではないことはわかっていました。そこで、ギャグ漫画ならイケるかもと、自分の就活失敗をネタに描いてみたら、いきなり賞を取ってデビューできたんです。

漫画家には描きたいことを描いて成功する「天才型」もいますが、私はそうではありません。だから、どうしたら世のなかに受け入れられるのかを客観的に考える「プロデューサー的視点」はデビュー当時から意識していました。恋愛だってモテる人は何をやってもうまく行くけど、その成功談をモテない人が参考にしてもダメでしょ。仕事も同じで、モテない人がモテたいなら、自分なりのアプローチを考えるしかないんです。

『だめんず・うぉ〜か〜』の連載をいただいたときも、テーマは特に決まってなかったのですが、「何を描きたいか」は頭になかった。「何がウケるか」だけを考え、「ダメ男」とつき合っていた過去を描くことにしました。私の体験談のなかで、一番友だちが笑ってくれた話だったからです。もちろん、そんな話、不特定多数の人に公表するのは恥ずかしかったですよ。でも、当時、私は28歳。デビュー以来鳴かず飛ばずで、『SPA!』での連載は大きなチャンス。ここが勝負どころと思い切りました。

20代半ばまでは仕事も恋愛も失敗してばかりでした。そこから学んだのは、うまく行かないときは、自分を変えていくしかないということ。他人は変えられませんからね。それから、大事なのは失敗した理由をとことん分析すること。「ダメ男」との出会いを繰り返す人もいるけど、それは失敗を記憶から消してしまっているからなんです。つらくても記憶に刻みつけて反省し、次に活かさなきゃ。失敗はそのとき初めて意味を持ちます。

「よくある話」のディテールを追求して、差異を出していくのが仕事

『だめんず・うぉ〜か〜』の連載は今年で10年目を迎えます。漫画家とはいえ、私の場合、仕事の大半は取材で話を聞くことなんですよ。「よくネタが尽きませんね」と言われますが、確かにその通りで、例えば、「彼が殴るんです」という話自体はそんなに珍しくはありません。でも、「彼の飼い犬の餌を、『餌』と言ったら、『ごはんだろ!?』とグーで殴られた」と耳にすると、「ええっ?」と身を乗り出して聞くでしょ。どんな理由で、どんな台詞を吐きながら、どう殴ったのか。面白いのは、リアルなディテールなんです。そこを虫眼鏡で見るようにいろんな人に聞き続けていれば、新しいネタは出てきます。「よくある話」や同じような業務であっても、ディテールを追求して、差異化する。それが「仕事」だと思うんですよ。

最近、つくづく思うのですが、私は女の人に恋愛の話を聞くのが好きなんですよね。飽きないもの(笑)。仕事というのは楽しいことばかりじゃないし、好きなことだけを仕事にできる人なんて滅多にいない。でも、少しでも興味を持てる仕事を選ぶことは、長く続けていくために大切な要素の一つだなと今は感じます。就職活動をしていると、内定がゴールのように思いがちだけど、日常はそこから先もずっと長く続きます。だから、どんなにほかの条件が良くても、ものすごくイヤなことがある仕事は避けたほうがいい。恋人選びと同じで、致命的にイヤなことがあると、続くはずがありませんから。

仕事ってうまく行かないときも必ずあります。そういうときって、周囲の態度にも仕事への評価が表れたりもするから、自分を否定して落ち込みがち。人に会うのもイヤになるけど、行動力だけは上げておくようにしてみてください。動くと、必ず何かが変化するから。それは仕事上の変化に限らず、恋人や新しい趣味との出合いでも何でもいい。人生にスパイスがあれば、前に進みやすくなるんですよ。

information
『だめんず・うぉ〜か〜 15』(扶桑社/税込945円)。「全話、繰り返し暗記するくらい、読んでます。悩む女性のバイブルです」――経済評論家・勝間和代さんもこう推薦する名作の第15弾が登場! 倉田さんと加護亜依さんとの対談も収録されている。1〜6巻は『SPA!』のWebサイトから電子書籍としても購入できる(各巻とも税込450円)。

©倉田真由美/扶桑社

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取材・文/泉彩子 撮影/刑部友康 デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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