お祈りメールに落ち込まない!お坊さん直伝「こころの守り方」

就職活動中に、多くの人が体験するのが「お祈りメール」です。

お祈りメールとは、企業からの不採用通知のこと。「今後のご活躍をお祈り申し上げます」という文末の言葉を受けて、ネットの投稿サイトで使われたのが、最初だったといわれています。お祈りメールは、できるなら受け取りたくないものです。がっかりしたり、自信をなくしたりと、マイナスの影響を受ける人も少なくありません。

しかし就活は、社会に踏み出す出発点です。お祈りメールに負けることなく、気持ちを早めに切り替えて、「内定」というゴールにたどり着きたいものです。そこで、『こころを洗う技術』の著者で、もと社会人の経歴を持つ僧侶の草薙龍瞬さんに、お祈りメールに負けないコツを聞いてみました――。

僧侶・興道の里代表 草薙龍瞬さん インタビューカット

プロフィール草薙龍瞬(くさなぎ・りゅうしゅん)
僧侶・興道の里代表。1969年生まれ。中学中退後、16歳で家出、上京。独学で「大学入学資格検定(現・高等学校卒業程度認定試験)」を経て、東京大学法学部卒業。政策シンクタンクなどで働きながら生き方を探し続け、30代半ばで得度出家。現在、インドで社会改善NGOと幼稚園・小学校を運営するほか、日本では著作・講演などを通じて「合理的な心の使い方としての仏教」を伝えている。著書に、ブッダの合理的考え方をまとめたベストセラー『反応しない練習』『これも修行のうち。』(共にKADOKAWA)など。最新刊『こころを洗う技術 思考がクリアになれば、人生は思いのまま』(SBクリエイティブ )。

お祈りメールに落ち込む理由は「妄想」にある

お祈りメールに動揺する最大の理由は、「妄想」にあります。妄想とは、仏教の言葉で「アタマに思い浮かべる、ムダな考えごとのすべて」です。

たとえば、「断られた」と知って、落ち込む。「自分が否定された」と考えて、傷ついてしまう。「なぜダメだったんだろう」と、不採用の理由を考え込む。「あと何回、これが続くんだろう」「ずっと内定が出ないんじゃないか」と、悲観する。「自分にはコレが欠けているから」「こんな性格だから」と、自分を否定し始める人もいるかもしれません――こうなると、かなり苦しくなってきますね。

こうした思いは、すべて「妄想」に当たります。妄想は、本人には「ある」ように見えますが、他人には見えません。客観的には「ない」ものです。だから、お祈りメールで大事になるのは、「妄想に流されない」こと。そのうえで「正しい心がけに帰る」ことです。

この心がまえが、お祈りメールにはもちろん、就活全体にも「かなり効く」のです。その中身を一緒にたどっていきましょう――。

妄想に流されないコツは「自分の輪郭を保つ」こと

まず、妄想に流されないために「自分の輪郭をしっかり保つ」ように心がけます。

「自分の輪郭」とは、自分にできること・自分がなすべきことです。仏教では「自分の輪郭を保って、ムダなことに心を使わないように」と考えます。「自分の輪郭」を、実際に確かめてみましょうか。いったん目を閉じてください。両手を開いて、前に置きます。目を閉じたまま、その手のひらを「見つめて」、こう考えてください――。

「この手を使ってできることだけが、自分にできること。これが自分の輪郭なのだ」

しっかりと手を閉じたり、開いたりして、感覚を確かめます。リアルな感覚を大事にしてください。というのも、アタマだけだと、いろんな妄想が浮かんできてしまうからです。就活にしても、その先の仕事にしても、その中心にあるのは、自分であり、自分が使える体です。現実の人生を作るのは、「妄想」ではなく「現実に自分ができること」です。

だから、現実にできる範囲に集中しようと考えるのです。メモを取る。連絡する。話を聞く。足を運ぶ。一日の間にできる作業に専念する――これが、妄想に流されないための大事なコツになります。

「歩く禅」でクリアな心を取り戻す

「理屈ではわかるが、実際にできるだろうか?」と思う人もいるでしょう。そこで、シンプルですが、意外と効果のある練習方法を、紹介しましょう。

禅寺でやっている「歩行禅」という修行があります。わかりやすくお伝えすると

  1. 目を閉じる
  2. 床に着いた足の裏に視線を向ける
  3. 「ここに足の裏の感覚がある」と理解する
  4. ぎゅっとしっかり踏みしめて、足の裏の感覚を感じとる

実際にやってみてください。足の裏の感覚は、アタマから一番遠いところにあるので、ここに心を向けると、動揺や緊張を防ぎやすいのです。外を歩くときは、大地をしっかり感じて、「右、左、右、左・・・」と、確認するつもりで力づよく歩いてみます。「感覚」を意識すれば、心がクリアになります。妄想に歯止めがかかり、「手を使ってできる範囲が、自分の輪郭なのだ」ということが、見えてきます。元気が出てきますよ。

「自分を理解する」という心がけに帰る

自分の輪郭に留まって、妄想に流されない。そして「正しい心がけに帰る」ようにします。

「正しい心がけ」とは何か――その答えを出す前に、ちょっと大きく「就活の本質」にさかのぼって考えたいと思います。
本質とは、目の前の出来事に左右されない、もっと大きくて普遍的なものです。「この先何があろうと、これが間違いなく正しいことだ」と思えるもの。それが本質です。

就活の本質とは何か。何のために就活するのか――もちろん内定を得て、働く場所を見つけることが、実際の目的です。ただ、もっと大きくとらえてみれば、「自分を理解する」ためだと考えることが可能です。

というのも、就活で問われることを思い出してください。たとえば「過去の体験」――過去に何があって、そのとき自分はどう動いて、どんな結果が出たか、何を学んだか。これは「理解する」対象です。

「成功」した体験があるなら、なぜ成功したのか――あきらめない意志の強さがあったのか、人とコミュニケーションをとることが上手だったのか、特有のスキルがあったのか、人に恵まれていたのか。こうした要素を挙げられることも、「理解する」ことです。
逆に「失敗」したとしたら、なぜ失敗したのか、その「原因」を理解する。「どうすれば成功し得たのか」という「方法」を理解する。その方法を「今後は、こうしたやり方で成功をめざしたい」という前向きな「意欲」として位置づける。これも「理解する」ことです。

就活中は、先方の企業から、さまざまなことを問われますよね。「なぜこの業種、この企業を?」という問いかけや、自分の個性や、強み・弱み、学生時代の経験など――こうした質問は、結局は「あなたはどう理解しているか」を尋ねているのです。これまでの体験を通して見えたものが「強さ」にせよ、克服すべき「弱さ」にせよ、きちんと理解しているなら、自分のアピールポイントとして活かせます。「自分を理解している」人の言葉は、説得力があるものです。

就活の本質は、「自分を理解する」ことだといっても、間違いないのです。だから、いつも「自分を理解する」ことに帰ること。これが正しい心がけになります。

就職活動中の「お祈りメール」に落ち込まないイメージ画像

自信をもって前に進むには?

お祈りメールは、そのまま「ゴミ箱ゆき」が正解かもしれません。「不採用の理由」や「アドバイス」が書かれているわけではないからです。

ただし、「次に備える」必要はあります。せめて次に活かすこと。ここから最善の成果を得るために、何をなすべきか――やはり「今後聞かれうるポイント」について自分を理解することになるでしょう。その理解を言葉でまとめる。その言葉が、次の機会に自分を表現する言葉になります。結局、就活でなすべきことは、一貫しているのかもしれません。

「もっと自信をもって就活にのぞみたい」と思う人もいるでしょうが、仏教的な視点でみると、「自信」には「あやうさ」もあります。
というのも、「自分はできる」「こんな自分を見せれば、きっと評価してもらえる」という思いは「根拠のない妄想」かもしれないからです。妄想は、ブレやすいのです。緊張や動揺で、すぐかき消されてしまいます。「自分が見えていない」と、先方に見抜かれるかもしれません。むしろ、「自分の輪郭の中で、自分にできることを確実にやる」ことに集中するほうが、正解だと思います。

本当の自信というのは、自分にできることを、着実に積み重ねていくことでしか生まれないものです。「今自分にできることを、きちんとやっている。そんな自分に納得している」と思えるほうが、はるかに大事です。その心がまえなら、心も安定してきます。

「自分の場所は必ず見つかる」と考える

よく言われることですが、「お祈りメール」は、自分の価値が否定されたということではありません。そもそも企業によって、めざすものも、価値観も、人間も、違います。そこにフィットしそうな人というのも、当然異なってきます。
とすると、先方が「この人なら、ウチでよく働いてくれそうだ」と最終的に判断する人は、自然と限られてきます。「あなたはウチに合うから来てください」と思ってくれる場所より、「別の場所で頑張ってくださいね」と思われる場所のほうが、多くなるということ。考えてみれば、自然なことですよね。
だから、お祈りメールを受け取ったときは、「自分には別の場所があるということなんだな」と、受けとめるだけでよいのだと思います。それ以上は「妄想」です。

就活の目的は、社会の中における最初の「役割」を見つけることにあります。そして、今後さまざまなことを体験しながら、「どんな役割ならば、この社会で自分を最大限活かせるのか」という問いに、答えを出していくことになります。
思い通りにいかないことも多いかもしれません。でも、これほどやりがいがあって、楽しみなこともない――そう思える自分でいたいものです。

誠実に向き合えば、何もこわくない

そして、できるかぎり「誠実に」向き合うことだと思います。仕事の世界に敬意をもって、出会う相手に、最大限の誠意をもって応えようと努めること。それは、人と人との関わり、ひいては社会における最初の約束事です。

それがしっかりできていれば、あとは「自分のまま」でいればいい。自分をちゃんと保って、相手を理解し、自分を理解し、自分自身が理解したことを、誠心誠意、自分の言葉で伝えることに最善を尽くす――これができれば、きっといい場所にたどり着けます。

企業も、社会も、あなたを待っていてくれているのは、確かです。
踏み出してみましょう。きっと大丈夫です。

僧侶・興道の里代表 草薙龍瞬さん

取材/中城邦子
撮影/刑部友康

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