【コロナで留学に行けなくなった…】ガクチカでは何をアピールしたらいい?これからできることは?

新型コロナウイルスの流行であらゆる活動に影響が出ている2020年。留学予定だった学生は計画が崩れ、ショックを受けている方も多いでしょう。また、今後の海外渡航の見通しも立たないため、「就活で学生時代に頑張ったこと(ガクチカ)で、留学をアピールしようと考えていたのにどうしよう…」と思っている学生もいるのではないでしょうか。
そんな不安や今どんな行動ができるのかについて、就職みらい研究所所長の増本全さんと、留学と就活の事情に詳しい2名とで鼎談(ていだん)を実施。
一緒に学生にアドバイスできることを考えてくれたのは、文部科学省が主催する官民協働の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の荒畦悟さんと、企業の人事・採用コンサルティングを手掛ける採用のプロ・曽和利光さんです。
(取材は2020年7月15日に実施しました)

留学予定だった500名以上が足止めに

増本
新型コロナウイルス流行の影響は、学生生活のあらゆるシーンに及んでいます。中でも多大な影響を受けたのが、留学を予定していた学生だと思います。

荒畦
「トビタテ!留学JAPAN」では、主な取り組みとして2014年から留学奨学金制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム(以下、「トビタテ」)」を発足以来、毎年留学生を世界に送り出してきました。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて2020年3月に世界中で不要不急の海外渡航を控えるレベル(外務省感染症危険レベル2以上)になり、4月から留学予定だった514名の大学生は全員足止め状態に。その前から留学していた学生は途中で緊急帰国となり、現地のロックダウンで足止めに遭った学生も100名ほどいました。
例年であれば、夏から留学する場合、3月に書類審査を行い、5月に面接をして奨学生を決めますが、2020年は採用プロセス自体が中止。今後の募集は、1年後ろ倒しで募集する方向で検討を進めている状況です。

増本
「トビタテ」以外でも、多くの学校で今年度の留学支援を中止しています。

荒畦
留学先から緊急帰国せざるを得なかった学生の一部では、オンライン授業を継続して受けているケースもあります。ただ、「トビタテ」に関しては、“座学”の授業以上に、インターンシップやボランティア、現地の地域活動支援といった実践的な内容に力を入れていて、オンラインだと難しいケースが多くあります。

増本:
まさにいろんなことが手探りなんですね。留学の計画が立てられないとなると、就活、卒業までのスケジュールをどう考えていくか、難しい判断になっているのでしょうか。

荒畦
「トビタテ」の場合、大学3年生で留学する学生が多く、そのうち約半数は大学を休学するケースが多いです。計画が頓挫している今、留学できるシミュレーションも立てながら、インターンシップなどの就活準備も並行し、2パターンのプランを考えていかないといけない。今年の春から、緊急帰国や計画が中止になった学生に向けた相談会を開催しているのですが、どちらに注力すべきか悩んでいる学生のキャリア相談は非常に多いですね。

留学が中止になってしまった学生のイメージ

留学ができないからこそ、ガクチカで伝えられることがある

増本
留学を予定していた学生の中には、就活で留学経験を語ろうと考えていた人も多いのではないかと思います。留学自体ができなくなってしまい、就活で何をアピールすればいいのかわからなくなっている。そんな学生たちに伝えられることは何でしょう。

曽和
ネットワークやスキル、異文化対応力など、留学によって得られるものは多いでしょう。でも私は、「留学を志したこと」自体にすでに大きな価値があると思っています
今、6割を超える新入社員が「海外勤務を希望しない」というデータがあります(※)。海外志向がある人が多くない現状で、留学したいというマインドがあること自体が強みだと考える企業は多いのではないかと思います。
また、新型コロナウイルスによる留学断念という、自分ではどうしようもない状況の中でいかに行動したかは、仕事で不測の事態に陥ったときにどう動けるかを示す貴重な証しになると思います。

※産業能率大学「新入社員のグローバル意識調査」
調査期間:2017年8月30日~9月11日、調査対象:2017年4月に新卒採用された18歳から26歳までの新入社員800名

増本
就活では華やかな経験や、成果をアピールしなくてはと考えてしまう人も多いですが、企業は「経験できなかった」という一つの挫折経験から、どう動いたかを知りたいと思っているということでしょうか。

曽和
まさにそうですね。
組織で圧倒的な成果を上げるハイパフォーマーには、共通する要素があります。それは「仕事への意味付け力」の高さです。
単調なルーチンワークや、会社や上司からの指示で始めた仕事に対しても、自分なりに意味を見いだして行動できるかどうか。「せっかくやるなら効率化を図ろう」「周りが仕事をしやすい仕組みを取り入れよう」など工夫する姿勢は、その後のパフォーマンスを大きく左右します。

留学のように自分がやりたいと思ってやることを頑張るのは多くの人ができることですが、社会に出て仕事をする中では「やりたくないけどやらなくてはいけないこと」の方が圧倒的に多く、新入社員であれば特にそれが顕著です。そんなとき、仕事の意味を自分で見つけ、行動できるかどうかは、ハイパフォーマー人材を見極める上で重要なヒントになります。
留学が不可抗力によって中断や中止になってしまったことを受け入れるのは苦しいことだと思います。
すぐに切り替えるのは難しいかもしれませんが、今の状況をどう意味付け、次のアクションにつなげられるか。コロナ禍での行動は、就活時の大きなアピールポイントになると思います。

荒畦
留学したことをアピールしたから評価されるのではない、ということですね。
実際に、留学できなくなった学生の中にも「せっかくもらった機会を生かそう」「支えられていることに感謝して動こう」という考えを持ってくれている人もいます。

曽和
留学によって得られたはずの経験は、もちろんたくさんあるでしょう。その喪失感はすごく大きいと思うんです。ただ、「就活でアピールできることがなくなった」という考え方は違うと思います。

そもそも留学で得られる異文化体験は、「それまでの常識が通用しない逆境に対して動く」ということ。外国に行くことで、そういった環境に身を置けていましたが、コロナ禍はまさに、非日常とのぶつかりを日本にいながら体験しているとも言えます。

荒畦
「トビタテ」の奨学生を見ていると、社会人のロールモデルや友人など、第三者からフィードバックをもらって自分を客観視できている学生は、自分なりに現実を受け入れ、気持ちを整理して進んでいるなと感じます。

曽和
近くにロールモデルがいなくても、例えば、甲子園がなくなった高校球児や、オリンピック東京2020オリンピック・パラリンピックが延期になって引退を決めたアスリートなどに、コロナ禍での意味付け力を学ぶのも一つの方法ですね。今や、世界中の人が似たような経験をしている。彼らはどう行動しているのかに目を向けてみるのも大事だと思います。
後は、過去の自分に学ぶこと。「今の悔しい経験が、5年後の未来をつくる」などと言われてもきれい事に聞こえるかもしれません。でもこれまでの人生に「当時はしんどかったけれど、あの経験があったから今がある」と思えることがあれば、その意味付け力にヒントを得られるでしょう。
これからの状況が読めないからこそ、留学をあきらめて就活へのステップに切り替えても、留学に向けて引き続き努力を重ねても、どちらでもいい。どう考えて動いたかが大事です。

オンラインで海外の教授とやりとりする学生のイメージ

「留学」に求めていたものとは。自分を振り返るチャンスと捉えてほしい

増本
そもそも、留学を経験している学生のエピソードで評価されているポイントは何でしょうか。

曽和
留学にかかわらず、企業が知りたいのは「こんな経験をしました」というエピソードではなく、そこで「自分はどう感じてどう行動したのか」です。
留学は、経験することでインプットされる情報量が多く、多様性や異文化ギャップにぶつかることが必然的に用意されている。だからこそ、何を得たのかという期待感が高まります。自分がどう変わったのかを語れないと、感受性の低さを露呈してしまう可能性があるでしょう。
逆に、留学や世界一周なんてしていなくても、「飲食のチェーン店でアルバイトをし、地味なルーチンワークにこんな学びを見いだした」という学生がいれば、光るものを感じてもらえるかもしれません。

荒畦
本当にそうですね。
「トビタテ」では、留学後の体験発表会で「必ずマイストーリーを入れなさい」と言っています。やったことの事実ではなく、経験に対して自分はどう理解し、今後どうしたいのかにフォーカスして自分らしい言葉で語りなさい、と。留学は事後の振り返りがとても大切で、経験を言語化してアウトプットにつなげると留学体験がより意味を持つようになります。

増本
自分では大したことないと思っていたことがすごいことだったとか、失敗だと思っていたことに実は価値があったとか。客観的な振り返りがないとわかりませんよね。

荒畦
その振り返りができず、新型コロナウイルスによる留学断念をまだうまく消化しきれていない学生は少なくありません。ぜひ、自分だけでこの体験を消化しようとせず周りの仲間や先輩からも意見をもらう機会を設けることをお勧めします。

そして「トビタテ」の奨学生は、「自分の専門分野について海外で学びたい」「海外でインターンシップに参加して、専門分野の理解を深めたい」というように、実現したいテーマを持って留学に臨んでいます。だからこそ、学生の中には、留学という手段が不透明になっても、ほかの道を探ろうと動いている人もいます。実際に、オンライン留学を探してきたり、大学教授と個別に連絡を取り合っている学生もいます。多くの学生にとって「留学」とは何だったのかを考える機会になっていると感じています。

曽和
留学自体が目的だった人と、留学を手段として選んだ人とではだいぶ差が出てくるでしょうね。一つの道が絶たれたときに、いかにほかの道を見つけに行くかというケーススタディを、今まさに体験しているとも言えます。

荒畦
コロナ禍を生きる今は、誰にとっても人生が変わる原体験になると思います。水面下にあった社会課題が一気に噴き出して、社会のゆがみに気づくチャンスを生きているとも捉えることができるのではないでしょうか?
目の前にあった留学機会が突然消えてしまった、という衝撃的な経験をしたからこそ、自分にしかない問題意識を持つリーダーが生まれるかもしれないという期待もあります。

一方で、私としては海外でのリアルな体験に勝るものはないとも思っています。この現状をどう捉えるかが大事であるということには賛同する一方で、現地に行くことの価値は今後ますます高まるでしょうし、それを伝えていきたいです。と同時に今後は、オンラインとオフラインのハイブリッドになっていくのではないかと考える中で、その双方の価値をあらためて整理し直し、留学の価値を再定義してきたいとも考えています。

増本
そうですね。留学に向けて準備をしてきたこと、留学を志向していることそのものに価値があって、無駄なことは一つもありません。自分にとって留学は何だったのか、何を求めていたのかをあらためて考え、そこから次の道につなげていってほしいなと思っています。

荒畦さんプロフィール写真プロフィール
荒畦 悟(あらうね・さとる)
トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトマネージャー。民間企業を経て2014年トビタテ!留学JAPAN創業メンバーとしてプロジェクトに参画。大学生コース立ち上げ、支援企業連携、委員会運営等プロジェクト運営全般に携わる。詳細は、公式サイトをご覧ください。
株式会社人材研究所 曽和利光さん写真プロフィール
曽和利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所・代表取締役社長。リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャーなどを経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。
増本さんプロフィール写真プロフィール
増本 全(ますもと・ぜん)
就職みらい研究所 所長。新卒入社以来、新卒就職・採用に関する業務に携わる。学生時代、働くことに悩み社会人に片っ端からインタビュー。憧れの八百屋さんの言葉に心を打たれた。

取材・文/田中瑠子

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