テレビ局内定 お茶の水女子大学 堤 早紀さん

就活データ
志望業界
:マスコミ、公務員 説明会参加:5社 先輩訪問:4人(通信社1人、新聞社1人、テレビ局1人、公務員1人) エントリーシート提出:4社 面接:1社 内定:1社 活動費用:約8万3000円(交通費5000円、スーツなど5万円、外食費2万円、証明写真5000円、封筒・郵送代3000円。証明写真は大学生協が斡旋していた業者で撮ったので、通常より安く済んだ。書籍代は先輩にもらって節約)

進路を変えた震災、人生を変えた出会い

大学では、将来的にNGOなどに入って国際協力関係の仕事に従事したいという思いから、国際政治分野を学んでいました。しかし、勉強すればするほどに、国際協力や開発援助のジレンマを感じるようになりました。それまではシンプルな自給自足の生活で十分幸せだったかもしれない途上国の住民に、先進国が技術的な豊かさを押し付けていく…国際協力には、そうした先進国のエゴでしかないという側面もあります。数値では測れない本質的な豊かさを鑑みずに、先進国が一方的な支援をすることに本当に意味があるのか――私は壁にぶち当たり、将来について考え直すようになりました。目標が見えなくなったことに対して焦りもありましたが、真剣に勉強したおかげで自分の限界を知り、進路を考え直すことができてよかったなと、今では思っています。

進路変更の決定的な契機となったのは、大学2年のときに起きた東日本大震災です。現地でのボランティアに携わって、私は現実と報道とのギャップに憤りを感じました。被災地では前向きに頑張ろうとする人々が大勢いるのに、マスメディアは悲しみや絶望にくれる人々の姿ばかりを拾おうとする。私が被災地で出会った人の中には、テレビのリポーターに「悲しんでください」と言われた人もいました。そんなゆがんだメディアの現状を変えたいという意志が芽生え、マスコミ・報道業界を目指すように。また、自分が生まれ育ち、これからも住み続ける国のためにもっとできることがあるはずだと思い、公務員も視野に入れるようになりました。

大学3年の8月、いよいよ進路に対して本格的に考えようとしたとき、ゼミの教授の紹介で通信社と新聞社の先輩に話をうかがえる機会をいただきました。そのお二人から、自社のことばかりではなく、マスコミ業界全体のことや、各媒体の魅力について幅広く教えていただけたんです。とりわけ、心に響いたのはテレビの力についてのお話でした。

それまで私は、テレビというメディアをどこか軽く見ていた部分がありました。視聴率に大きく影響されるし、娯楽にかたよる傾向があるため、真の報道からは遠いメディアだと思っていたのです。しかし、先輩方から新聞とテレビの特性の違いや、とある局のディレクターの徹底的にこだわった番組づくりのお話を聞くうちに、テレビの仕事に大きな関心を持つようになりました。新聞社の先輩が言った「沈黙を伝えられるのがテレビだ」という言葉は、今でも強く印象に残っています。

その新聞社の先輩から、今度はテレビ局の知り合いを紹介していただきました。富山で仕事をしていらっしゃるディレクターの方なので、電話とメールでのやり取りなのですが、業界のことを何も知らない私の話を本当に真剣に聞いてくださって。やさしいばかりでなく、ときには自分の価値観を根底から覆されるような疑問を投げかけられたりもしました。そして、「テレビは思考が偏りそうになった群衆に“待った!”をかける、価値観のバランスを整えるためのメディア」とも教わりました。その方との出会いが、私の進路をはっきりと“テレビ”と決定づけたんです。まだ一度も実際にお会いしたことがないのですが、私の人生を変えてくれた恩師だと断言できます。

12月になって、その方が勤めている放送局の説明会に参加。制作の裏話を交じえながら「番組づくりは、人と人とのぶつかり合いからしか始まらない」と語る現場の方のお話にかき立てられ、「もう、私の行くところは、ここしかない」と思いました。

エントリーシートでも面接でも、“伝え方”に最大限のこだわりを

就活中のもっぱらの葛藤は、公務員試験の勉強と民間企業の就活対策の両立でした。実際、現在の内定先の説明会に参加した時点で、心は民間企業側に傾いていました。しかし、3年の4月から予備校に通って公務員試験の準備をしていたのであきらめきれず、もやもやとした気持ちを抱えながらも両立を図っていきました。

「両方落ちたらどうしよう」不安が募り、そこまで行きたいとも思っていない企業のエントリーをむやみやたらに増やした時期もあります。そんなとき、周りの友人に相談して「自分が何をしたいのか」という軸を再確認。迷ったときには、人と話すと冷静になれます。そうして、「ただでさえ試験勉強との両立で時間は足りないのだから、心から行きたいと思えない企業に時間を割いても後悔するだけだ」と思い直し、エントリーシートの提出も最小限にしぼりました。

私が志望したディレクターという職種は、伝えることが仕事です。だからこそ、エントリーシートでも面接でも、伝え方には徹底的にこだわりました。「自分の想いをいかに面白く相手に届けるか」という点を重視して、エントリーシート全体を通してストーリー性を重視。一番こだわったのは、志望動機の書き出しです。冒頭の一文で興味を持ってもらえれば、最後まで読んでもらえると思ったからです。周りに見せると「ふざけすぎじゃないか」と言われることもありましたが、自分という人間を最も的確に伝える表現を追求して「これで落ちるならしょうがない」と思えるまで、エントリーシートは作りこみました。

面接では、「学生時代、こんなにスゴイことをしました」という実績勝負ではほかの志望者にまったくかなわないと思ったので、“等身大の自分”の考えを、まっすぐ語るように心がけました。震災後にボランティアに行って、何ができて何ができなかったのか、何を感じたのか…「私がどういう人間なのか」が伝わるようなエピソード選びを意識。あるときにはなかなか笑わない相手を笑わそうとしたり、またあるときにはこちらが気になったことを思いきって質問してみたりと、双方向的に会話を楽しむ姿勢を常に持つようにしました。

就活の中で一番大切だと思ったのは、想像力です。「殺人事件の被害者遺族に取材をしようとして、断られたらどうする?」「作った番組を加害者家族が観たら、どう思う?」など、難しい質問が何度も投げかけられました。マスメディアに携わる以上、さまざまな立場の人の気持ちに立って物事を考えることは必要不可欠。たとえ答えがなくて途方に暮れそうになることでも、考えることを投げ出してはいけない、問い続けていかなければいけないんだと、選考を通して強く感じさせられました。

最終的に、面接に進んだのは現在の内定先の1社のみ。面接担当者にも「うちの会社、落ちたらどうするの?」と聞かれましたが、そのときは「また来年リベンジします」ときっぱり意思表示をしました。公務員試験との両立は思うようにうまくいかず、決してかしこい就活ではありませんでしたが、最後まで自分の信念を曲げずに「ここしかない」という強い決意で選考に臨んだことが、内定につながったんだと思っています。

低学年のときに注力していたことは?

入学当初からバンドサークルに所属していたのですが、とても閉鎖的なコミュニティでした。内輪で盛り上がっているだけではつまらないと思ったので、他大学のサークルと合同ライブを企画し、定期的に交流を持つようにしました。その後も、カンボジアの教育支援を行う学生団体を立ち上げたり、被災地ボランティアに積極的に参加したりと、「思い立ったら即実行」を心がけていました。

また、周りの人に「誰かに会わせてみたい」と思ってもらえるような人になることは、大事だと感じます。自分からいろいろなことに挑戦して自ら広げた人脈もありますが、それよりも私を育ててくれたのは、人からの紹介による出会いでした。誰かと話をして「こいつ面白い」と思ってもらえれば、その人が知っている面白い人を紹介してくれます。そうして質の高い出会いを重ねることで、経験値や視野が広がっていきます。先輩訪問も、自分からお願いしたのは1人だけで、ほかは知り合いに「紹介したい人がいる」とつないでいただいた方々でした。そのためには、初対面の人に対しても自分を繕わないで弱さをさらけ出すように意識。腹を割ってさらけ出すことで、相手も同じように正直に話してくれて、その後も長い付き合いになる人が増えていきました。

いろいろな人と話ができるように、引き出しをたくさん作ることも忘れずに。時間を見つけては本を読んだり、テレビを観たりして情報収集。気になることがあれば、すぐに現地に足を運びました。学生時代には、思い立ったときにすぐ動ける自由な時間があります。フットワークをいつでも軽くしておくことが、自分の可能性を広げるために、最も大切なことだと思っています。

就活スケジュール

大学3年8月
初めての先輩訪問
以前から興味のあったマスコミ業界で働く先輩にお話をうかがい、この業界で働きたいという想いが強まる。
大学3年10月
現在の内定先の先輩を紹介していただく
第1志望企業の良い点ばかりではなく、悪い点も聞くように心がけた。「なぜそう思うのか」「そう考えるようになったきっかけは何か」など、こちらの話を一つひとつ深く掘り下げてくださったので、自己分析にも役立った。
大学3年12月
リクナビに登録し、企業説明会に参加
説明会に参加したことで、志望企業が固まる。このころから4月までほぼ毎日テレビと新聞を見て気になった番組や記事をピックアップ、それを通して感じたことをノートに書いてまとめていた。
大学3年1月
筆記試験対策を始める
エントリーシートを書き始める前に筆記試験勉強を進めようと思い、週2回のペースで論文練習を始める。
大学3年2月
エントリーシート提出
第1志望企業のエントリーシートは、1月から約1カ月かけて推敲し続けた。家族や友人、マスコミ業界の先輩など、自分のことを知らない人も含め、20人近くの人に見てもらった。そこでのアドバイスはすべて鵜呑みにするのではなく、自分の軸をぶらさないよう、取捨選択しながら生かすことを心がけた。
大学4年4月
志望企業の選考が始まる

今まで書きためておいた論文をしっかり見直して、筆記試験に臨んだ。ディレクターはあらゆることにアンテナを張っていなければならない職業なので、面接会場に向かう途中も何か面白いことはないかと周囲を観察。いつでも精神的余裕を持てるように意識。
大学4年4月下旬
就活終了

第1志望の企業から内定をもらい、就活終了。

就活ファッション

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ベースは黒色のリクルートスーツと白のシャツ。説明会では寒さ対策でパンツを着用したが、面接では柔らかい雰囲気を出すためにスカートに。スーツは長時間着ていても疲れないようなフィット感を重視。カバンは書類・筆記用具・ペットボトルなど、普段の持ち物がしっかり収まる容量のものを選んだ。一番大事にしていたのは清潔感。スーツのシワやえり元の汚れは常に注意し、スッキリとした髪形を意識。説明会では、少し派手目なワニクリップで髪をとめるなどして、若干の遊びも取り入れていた。

取材・文/西山武志 撮影/鈴木慶子

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
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