独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構

みずたに・けんりょう●2012年9月入構。石油開発技術本部 探査部 海外探査課。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 公共政策大学院行政学修士課程修了。海外勤務の多い父の影響で、社会人になるまでの人生の半分以上を海外で過ごす。英語とドイツ語が堪能で、トルコ語、ロシア語、フランス語も話す。日本を外から見たことで、エネルギー資源の微少な日本のためになる仕事がしたいと思い、石油天然ガス・金属鉱物資源機構への入構を決める。

日本の技術を石油開発に生かす。その道筋を立てる

大学院修了まで人生の半分以上を国外で過ごしてきた水谷さん。日本で働くことを決めた時、せっかくなら国の根幹を支える政策実施機関で働きたいと、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC:ジョグメック)に興味を持ち始めたという。
「日本は世界から注目される資源小国。高度な技術を持ち、経済発展も続けてきた中、今後のエネルギー政策をどうしていくのか、公共政策を学んだロンドンの大学院でも研究対象となることが多かったんです。JOGMECは、エネルギー政策に特化した実施機関。経済産業省などの政策立案を手がけるところではなく、ここを選んだのは、より専門性を持ち、政策を実際に運用する部隊で働きたいと思ったからです」

 

JOGMECは、2004年に設立した経済産業省が所管(※1)する独立行政法人。旧・石油公団と旧・金属鉱業事業団の合併により発足した。資源エネルギーを安定的に供給していくというミッションを持ち、地方公共団体や企業と連携して事業を進めていく。扱う資源は、石油、天然ガス、金属鉱物、石炭、地熱。各エネルギーの安定供給を確保すべく、地質調査、探査における構造把握などの技術支援、産油国(石油を産出している国)との共同研究、海外に天然資源の分野で進出する日本企業の金融面での支援など、さまざまな分野での情報収集、技術開発、出資・債務保証を行っている。ロンドンの大学院生だった水谷さんは、大学院1年生の時にJOGMECの事業内容に興味を持ち、「僕を採用してくれませんか」と直接電話をかけたという。
「電話に出た人事担当者に、自己紹介をし、『ぜひ面接をしてほしい』と直談判。すると、一瞬無言になったあと『わかりました』と選考してもらえることに。新卒の選考期間が終わった時期だったのに、とても柔軟に対応していただき、ますます入りたいと思いました。海外では、企業に直接連絡し履歴書を送り、担当者に会えるまで粘り強く会社に張り込む…なんて就職活動が普通なのですが、日本は違いますよね。政府機関なので、規定のルール以外は受け付けない!なんて堅い反応も予想していたのですが、全然違いました。さらに、最終面接で『入構しても勉強する機会はたくさんあります。今後はどんなことを勉強していきたいですか』と質問され、“学び続ける”ことを大切にしている風土なのだと感じました。実際に入構しても、研究熱心な方ばかりで、刺激をもらっています」

(※1)ある範囲の事務をそこの責任、権限で管理すること

 

JOGMECで初めての海外大学院卒生として12年9月に入構。最初に配属されたのは総務部戦略企画室。その年の4月に立ち上がったばかりの部署で、どんな仕事を手がけるかはこれから決める、という状態だった。
「上司にプレゼンテーションの資料を1枚見せられ、事業構想を説明されたのが配属初日。石油業界に応用できる日本の技術を発掘して産油国に紹介し、諸外国との関係を強化することがミッション。その後『技術ソリューション事業』という事業名がつき、『テクノフォーラム(※2)』というイベントが立ち上がり、どんどん仕事を任せてもらいました」
(※2)産油国が求める技術ニーズと日本のさまざまな産業が開発・保有している先進技術との出合いの場を提供するイベント。そのイベントの裏では、石油開発の探査やソリューションプロジェクト組成に向けた交渉が行われている

 

水谷さんが担当したのは、石油開発分野に応用できる日本の技術の発掘と、産油国のニーズを探るニーズ・シーズ分析と「JOGMECテクノフォーラム」の企画運営。ニーズ・シーズ分析では、石油調査に応用できる技術のマーケットポテンシャル(※3)を発掘すべく、全国の大手企業から小さな製作所まで回る一方、海外の産油国にも出向きどんな技術が必要なのかのヒアリングも行った。13年5月に開催した「JOGMECテクノフォーラム」では、高い技術を有する国内企業と、産油国の石油会社の有力者を招へいし、ネットワークをつくる機会を提供したという。
(※3)市場における成長の可能性

「石油生産には、衛星技術、画像解析、プラント(生産施設)建設技術など、ありとあらゆる技術が必要で、日本には、石油探査に使える高度な技術がたくさんあるんです。例えば、石油発掘にはまったくつながりがなかった自動車のブレーキ制御技術が、地下に眠る石油の有無を測定する技術に応用できることもある。日本ではごく身近な技術が、産油国にとっては非常に魅力的なことも。われわれの仕事は、その双方のニーズをつなぎ、さまざまな業種から石油開発への参入を促進することです。将来、日本の技術が海外の油田で使えるようになれば、産油国との関係強化につながり、日本のエネルギーの安定供給に帰結します。その初期段階として、『JOGMECテクノフォーラム』では、国内企業向けの相談会や、レセプションを開いて、日本企業が産油国の方と直接話せるような場づくりも行っていきました。また、海外へ向けた積極的な発信の一環として、トルクメニスタン国営ガス公社幹部が来日された際にはロシア語を駆使して日本の強みである人材育成やプラント建設技術をアピールをしたり、カナダの国際的な技術展示会ではカナダ政府高官へ向けて日本の革新的技術の発信を行ったりもしました」

 

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海外とのメールや電話のやりとりが日々発生。時差があるので朝や夕方に対応している。

 

国民性が異なる産油国の石油会社と、開発プロジェクトを進める

14年5月からは、石油開発技術本部 探査部 海外探査課に異動し、日本企業が海外の石油開発事業に携わる前段階の調査事業を担当している。
「日本企業が産油国で石油開発権益(※4)を獲得するまでの準備を進めること。それが私の仕事です。石油があるかないかわからないエリアは、世界中にたくさんありますが、実際に掘って調査するのにはばく大なお金がかかり、失敗すれば石油会社が一つつぶれてしまうくらいの大損失が生じます。ですので、産油国でも、未開拓エリアに手を出すのに躊躇(ちゅうちょ)してしまうのです。そこで、われわれの地質調査の専門家が事前リサーチを進め、産油国と日本とで資金を出し合い、あるいは日本が資金を出して地質構造調査という、共同調査の枠組みをつくっていきます。日本と共に新たな油ガス田の開発を進めましょう、と国営石油会社と交渉し契約書をつくったら、実際の調査がスタート。そこから2~3年の調査事業を経て、リスクを減らして日本企業に引き継いでいきます。私は交渉と契約内容のチェックを行うため、月1~2回は産油国に行き、相手国へ敬意を示すために訪問する表敬訪問から、契約した業務が遂行されているかの監視や指導を行う監視履行など、細部の詰めなどを行っています」
(※4)産油国・産ガス国が設定する「鉱区」における石油などを探す活動の権利

 

現在、常時3カ国以上の案件を進めている水谷さん。その中の一つ、ケニアの政府系国営企業(※5)では、案件を立ち上げた前任から引継ぎ、日本企業が参入するフィールドが整うよう、準備を進めている。
「仕事のとらえ方が日本とは異なり最初は驚くことばかりでした。アポイントをとってはるばる日本から訪問したら、アポイントをすっぽかされた…なんてことは日常茶飯事。いちいち怒らず、石油会社の担当者に会えるまで会社の入り口で張り込みをするなど、こちらもねばります(笑)。子どものころから海外生活が長かったからか、価値観の異なる人との付き合いにストレスは感じない方なんです。正しいも間違っているもなく『そういうこともある』と、受け入れられる。勤務時間が17時までだからといって、17時まで担当者が会社にいるとは限らない。『なんで不在なんだ!』などといちいち思っていたら身が持ちません。現部署に異動する前、前の上司が『君に合っている部署だよ』と言っていたのですが、あらゆる出来事を寛容に受け入れられるという僕の性格を見抜いていたのかもしれません」

(※5)産業育成などの目的で、国家や政府機関が最大の投資者になっている企業

 

今後は、現部署で新規案件の立ち上げから携わりたいと話す水谷さん。「自分がスタートさせた案件を通じて石油エネルギーが日本に入ってくる日には、もう定年退職しているかもしれませんけど」と笑う。
「石油があるかどうか地質調査から始まり、ビジネスの可能性があると感じたら、資金面と技術面で現地の国営石油会社にパートナーにならないかと持ちかけます。契約を結べて初めて実際の調査が始まりますので、プロジェクト期間は本当に長い。うまく日本企業に引き継げれば、日本側のみならず、産油国にとっても産業育成につながり、双方にとって良い関係が築けるのです。日本で働くなら、国のためになることをやりたい。そう思ってJOGMECに入ったので、石油エネルギー導入の道筋をつくれていることに、とても充実感がありますね」

 

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チームメンバーと、ケニアでの石油探査プロジェクト進捗状況を確認。

 

水谷さんのキャリアステップ

STEP1 2012年 総務部戦略企画室に配属(入構1年目)

入構半年後の1月には、『JOGMECプレテクノフォーラム』というのちの『JOGMECテクノフォーラム』のベースとなった小規模イベントを実施。新規で立ち上がったばかりの部署に配属される。「エネルギーの安定供給のため、日本の技術を使って産油国との関係を強化していく」という事業構想の下、石油開発分野に応用できる日本の技術の発掘と、産油国のニーズを探る「ニーズ・シーズ分析」、日本の技術と海外ニーズの情報交換を行う「JOGMECテクノフォーラム」を任される。「1年目なのに仕事をどんどん任せてもらい、『JOGMECテクノフォーラム』という、イベント名も私が命名しました」。

STEP2 2013年5月に「JOGMECテクノフォーラム」を開催(入構1年目)

「JOGMECテクノフォーラム」を実施し、海外の大手石油会社のトップなど、業界では名の知れた経営陣を多く招待。2日間で1000人を超える来場者を集めた。「日本には、石油探査で必要な耐熱性・耐圧性を持った素晴らしい技術がたくさんあり、例えば半導体や電子機器、測定機器など『こんな技術が石油開発に応用できるんだ!』と感動することも多くありました。これまで石油とは関係がないと考えられていた分野の技術を産油国にアピールするため、通訳としての橋渡しの役割も担っていました」。

STEP3 2014年 石油開発技術本部に異動(入構2年目)

石油開発技術本部の探査部海外探査課に異動し、ケニアやセーシェル(インド洋の島国)などの産油国との既存契約の管理履行を担当。トラブル対応要員として、月に1回、多い時には2回現地に出張に行く。石油会社への表敬訪問から、地質構造調査の依頼、細かな契約内容の確認などアポイントの内容は多岐にわたる。また、自身が技術系ではないため、周囲の先輩を巻き込んで地質勉強会を立ち上げ、他部署の若手エンジニアと共に地質について理解を深めた。

STEP4 2015年 海外探査課として常時3つ以上のプロジェクトを動かす(入構3年目)

物理調査と地質調査を行う専門家と3人でチームを組み、1国のプロジェクトを担当している。物理調査は、実際に地下の状態を地震波で測定するなど、石油があるかどうかを調べる専門職。地質調査は、土や石などの状態を調べる専門職だ。常時3案件以上が並行して動いているため、チーム内の密な進捗共有は必須。産油国の多くには、日本とはまったく異なるワークライフバランスの考え方があり、「さっき会社に来たばかりなのに、もう帰っちゃったの?」と笑ってしまうことも多々。「唯一仕事でつらいのは、衛生環境のよくない場所に出張に行き、ひどい食あたりになることですかね(笑)」。

 

ある日のスケジュール

8:30 出社。海外からのメールをチェック。
9:30 プロジェクトチームで打ち合わせ。常時3つ以上のプロジェクトにかかわっているため、打ち合わせ数も多い。
11:00 情報収集。
12:30 ランチ。チームメンバーと食べに行ったり、自分でつくってきたお弁当を食べることも。
13:00 プロジェクトでかかわっている海外の国営石油会社とメールのやりとり。
15:00 プロジェクト先の国の法制度について弁護士と打ち合わせ。
16:00 海外のオフィスと電話。
17:00 退社。残業があるときは19時退社。ジムやプールで体を動かす。

プライベート

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2014年夏、12年入社の同期4人で中山道の宿場町を巡る旅に出かけた。

 

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2013年秋、大学院時代の留学生仲間にもらったカザフスタンの民族衣装をまとって。世界中に友人ができ、日本に遊びに来る仲間も多い。

 

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2012年秋、JOGMEC入構後にお休みを利用してイギリスでハイキングを楽しんだ。ロンドンからドーバー海峡まで踏破。

 

 

取材・文/田中瑠子 撮影/刑部友康

 

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