Hitz日立造船株式会社

かねこ・たかのぶ●環境事業本部 プラント第2営業部 担当課長。法政大学人間環境学部人間環境学科卒業。2003年4月入社。就職活動開始時は、金融からメーカー、IT系まで業界を絞らず説明会に参加。業界研究を進める中で、自分が興味を持てる海外や環境に関連する仕事に的を絞る。物流会社や環境装置メーカーなど約10社の選考に進んだが、造船から環境事業へとシフトしていく会社の方針に可能性を感じられた現社へ入社を決意。

提案内容が通り、200億円規模のリサイクル施設を受注

ごみ焼却・発電プラント(工場設備)や海水淡水化プラント、産業機械、インフラ設備、防災システム、精密機器などにかかわる設計・製作を手がけるHitz日立造船株式会社。ごみ焼却・発電プラントでは世界トップクラスの納入実績を誇る。
2003年に入社し、1年間さまざまな部署でのローテーション研修を経て金子さんが配属となったのは、環境東京営業部。市町村などの地方自治体を対象に、ごみ焼却の際に発生する熱をエネルギーとして利用するごみ焼却・発電プラントやリサイクルセンターなどの環境装置を営業することになった。
「お客さまと近いところで仕事ができる営業職を希望していましたし、興味のある環境事業に携われると知り、仕事に対する不安よりもワクワク感でいっぱいでした」

 

ごみ処理は各地方自治体で行うため、1つの自治体に1プラント以上のごみ焼却・発電プラントが存在する。営業の第一歩は、ローカル新聞や専門誌、県庁の資料などから、各自治体のごみ焼却・発電プラントが何年ぐらい稼働しているかの情報を収集し、施設の更新や新規建設のニーズをつかむことだ。
「地方自治体にアプローチし、設備概要など、より具体的なニーズを聞き出します。ヒアリング時に受けた質問は宿題として持ち帰り、回答を持って再訪問。それを繰り返して信頼関係を構築し、情報を蓄積していきます。取引前の条件を提示する機会を頂けたときは嬉しく、社内の設計部門へ見積もりを依頼し、これまで蓄積した情報を基に、提案書を作成して、入札に参加することになります」

 

提案が通って落札となれば、後の工程はプロジェクト部門・設計部門にバトンタッチ。営業活動はここでひとまず終了となるが、受注後もお客さまとの月例会議に出席するなど定期的なフォローや、建設完了後の資金回収も営業の仕事だ。
「新規のごみ焼却・発電プラントは、建設から運営までを含めると200~300億円規模。案件の規模が大きいだけに、営業の責任は重大です。また、初期段階から建設完了までは所要3~5年。途中で異動してしまうこともあり、1案件の受注から完成までを見届けることができないこともあるジレンマがありました」

 

金子さんが担当することになったのは、群馬県および県内の市町村。最初の1年間は、先輩指導員の下で営業の手ほどきを受けた。先輩に同行して営業ノウハウを学び、半年後には1人でお客さまを訪問するように。
「人と話すことが好きなので、営業活動は楽しかったですね。とはいえ、他社のプラントを導入している自治体担当者には、なかなか会ってもらえないなど、苦い経験もありました。また、お客さまの前で答えに口ごもってしまったり、持ち帰った宿題も設計部門と何度もやりとりをしないと理解できなかったりと、1年目はトライ&エラーの連続でしたね」

 

06年に異動した中部支社では、ごみ焼却・発電プラント、リサイクルセンター、排水処理施設の新規案件を開拓。入札のカギを握る金額面で他社よりも安いオファーが功を奏し、入社後、担当者として初受注に貢献した。営業としてひとまわり成長した実感を得られたのも、このころだ。
「支社は人数も少なく、営業担当は上司を含めて3人。自ら動かないと何も進まない状況でした。また、それまでの市町村向けの営業に加えて、民間企業向けの排ガス処理設備、排水処理設備の営業支援など、地方自治体以外に売り込んだ経験も、自分の力になりましたね」

 

大きな達成感を得られたのは、07年に異動した環境大阪営業部での受注。前任者から引き継いだ大阪府内のリサイクルセンターの計画・設計・施工の案件だ。プロポーザルマネジャー(提案チームのリーダー)、設計担当、営業担当の7名でプロポーザルチームを結成し、チーム内唯一の営業担当として、先方へのヒアリングを重ね、3カ月近くかけて提案を練った。
「苦心したのは、市の審査項目に対してどのような方針でどう応えていくかという提案書のコンセプト作りです。これまでの入札は、価格重視の傾向にありましたが、価格面だけでなく技術面も評価としてスコア化され、高得点の提案が評価されるようになったんです。ヒアリングを基に技術仕様を盛り込んだ営業主導の提案が実ったので、受注の喜びはひとしおでした」

 

この案件は、リサイクルセンターの建設と完成後20年間の運転管理などの施設運営を含む200億円規模の受注となった。

 

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デスクで入札資料や提案書の確認を行う。現在は海外営業担当のため、読む資料は英文が中心。社内連絡は日本語なので、業務は日本語が7割、英語が3割。

 

営業フィールドを海外に広げ、契約交渉や資金回収など、新たな仕事に挑戦

2010年、金子さんに転機が訪れた。東京本社に異動し、海外営業を行うことになったのだ。担当エリアは中国と東南アジア。今度は、海外で潜在的ニーズが高いごみ焼却・発電プラントを中心に営業することに。以前から取り扱っている商材とはいえ、「言語も慣習も違う相手とのやりとりに戸惑った」という金子さん。中でも苦労したのが、契約交渉だ。
「日本国内の地方自治体との取引では建設契約約款(やっかん:契約条件)がきちんと決められていて、契約条件の変更の余地はないのですが、海外では、発注者と請負業者間で責任分担や支払条件などを契約交渉で決めます。海外を担当するようになって、契約交渉が営業の重要な任務になりました」

 

北京と上海の現地スタッフとのやりとりを重ねながら、月に1、2回は中国に出張。入札前には、数週間滞在することもあった。現地スタッフとのやりとりは日本語だが、クライアントである国営企業や政府下で事業を行う民間事業者の担当者とは中国語。通訳を介しての交渉となった。
「例え落札候補者になったとしても、その後の契約交渉がうまくいかなければ、受注は他社にとられてしまう。それだけに、交渉の緊張感は高いですね」

 

初回の中国側との交渉は上司と出席したが、2度目は営業からは1人で交渉に臨むことに。自分だけで判断できないことは、日本の上司に連絡を取るなどして、内容を決めていった。
「幸い顧客の交渉代表は、合理的な考えの持ち主。国際慣習に照らしておかしいことは、理解し、譲歩してくれました。交渉で大切なのは、相手に『失うだけでなく、得るものがあった』と思ってもらえること。こうした駆け引きのコツを会得することができましたね」

 

契約書の見るべきポイントも、海外営業の経験から学んだ。
「さらに、契約書に書いてあるからといって、その通りに実行されるわけではないということも知りました(笑)。日本では地方自治体との取引だったこともあって、請求書を送れば、所定の期日に入金されます。ところが海外では、請求書を送っても振り込まれず、現地入りして催促しなければいけない。営業として、資金回収の苦労と重要性をあらためて認識しましたよ」

 

13年からは、中東などインド以西の地域を担当し、10年に買収したスイスにある子会社のHitachi Zosen Inova AG(Inova社)(※2)のごみ焼却・発電プラント営業をサポートしている金子さん。メールや電話会議など、英語でコミュニケーションをとりながら、1日も早く日本とスイスそれぞれの強みを生かして案件を受注し、Inova社と共同の成功体験を積むことを目標にしている。
「Inova社にはこれまでのノウハウの蓄積があり、営業先へのアプローチの仕方も自分たちとは異なります。自ら現場に赴いて情報収集できないもどかしさはありますが、欧米流の営業スタイルを学ぶいいチャンスだと思っています。1人でできることは限られていますが、プロジェクトでチームを結成し、同じ方向を目指せば、大きなことを成し遂げられる。高機能なごみ焼却・発電プラントの建設・運営によって、周辺地域の生活環境を改善できるだけでなく、ごみ焼却・発電によって化石燃料を削減しCO2排出量を低減することで地球温暖化対策にも寄与することができます。『世の中の役に立っている』という実感を得られることが、この仕事の一番のやりがいですね」

(※2)100パーセント子会社で、ごみ焼却・発電プラントの設計、建設などを手がける

 

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応接室で来訪者と面談。商社からの相談や銀行担当者からの情報提供など、いろいろな人と会って情報を収集することも、営業の重要な仕事の1つ。

 

金子さんのキャリアステップ

STEP1 2003年 人事部、資材部、経理部で1年間の研修。幅広い知識を習得(入社1年目)

入社後、新入社員の事務職10名で、1年間のローテーション研修に参加。大阪本社にて人事部と資材部、堺工場にて経理部を経験。人事部(現在の総務・人事部)では、会社組織や規定、労務、採用教育活動のサポート業務を経験。資材部(現在の調達部)では、受注前の引き合い(入札に関する取引)、受注済み工事の資材調達サポート業務を経験。堺工場の経理部では、橋梁(きょうりょう:河川や運河などの上に架け渡す構造物)などの鉄構製品の受注済み工事にかかわる入金管理や伝票作成など、経理業務のサポートを経験。各部門の立場で、会社組織や業務の流れ、自社製品についての幅広い知識を身につけることができた。

STEP2 2004年 群馬県および県内の市町村に向けて環境装置の営業(入社2年目)

4月、環境・鉄構事業本部 第1営業本部 環境東京営業部に配属。群馬県および県内の市町村向けの環境装置、新製品の営業、納入済み施設のフォローなどを担当する。ごみ焼却・発電プラント、リサイクルセンターの新規案件の開拓、群馬県にある粗大ごみ処理プラント改造工事の営業と受注後のフォロー、群馬県の木質バイオマスガス発電プラントの入札と提案書の作成、バイオマス利活用装置などの新製品の営業、納入済みごみ焼却・発電プラント、リサイクルセンターのフォローなどを幅広く経験。1年目は先輩指導員の下で営業ノウハウを学び、2年目には、お客さまとの関係性構築や情報収集の要領をつかんだ。

STEP3 2006年 中部・関西・四国地方の市町村や民間企業に環境装置を営業(入社4年目)
5月、中部支社に異動。営業本部 環境営業部にて、愛知県、岐阜県・三重県の市町村向けのごみ焼却・発電プラントやリサイクルセンターなどの環境装置の新規営業、受注済み工事の営業フォローなどを行う。それに加え、電力会社向けの脱硝触媒(だっしょうしょくばい:工場や発電所からの排ガスに含まれる有害な成分(NOx:窒素酸化物を無害化する装置)の営業支援、民間企業向けの排ガス処理設備・排水処理設備の営業支援など、地方自治体以外へも活動の幅を広げる。中部支社時代の終わりに初受注を経験。07年10月、環境大阪営業部に異動し、大阪府北部、京都府北部、福井県、高知県、徳島県の市町村向けの新規ごみ焼却・発電プラント、リサイクルセンターの営業や受注済み工事の営業フォローを経験。

STEP4 2010年 中国・東南アジア、インド以西の国々にごみ焼・却発電プラントを営業(入社8年目)

10月、東京本社のエンジニアリング本部 環境・ソリューション事業部 営業統括部 環境輸出営業部に異動。念願だった海外営業担当となり、中国・東南アジア向けの環境装置の営業や受注済み案件の営業フォローを行う。13年1月、環境事業本部 プラント営業統括部 プラント第2営業部に異動し、インド以西地域向けのごみ焼却・発電プラントの海外営業、スイスの子会社のHitachi Zosen Inova AGのごみ焼却・発電プラント営業のサポートなどに従事。13年7月、担当課長に昇進。

 

ある日のスケジュール

8:30 出社。1日のスケジュールを確認し、メールチェック。
8:45 始業。メール返信や、次週インド以西の国に出張するための資料準備を行う。
12:15 先輩社員と近所のレストランでランチ。
13:00 15時からのミーティングの準備、次週の資料確認などの準備を行う。
15:00 お客さまと商談。
18:00 スイスのHitachi Zosen Inova AGと電話会議。日本人2名、スイス人2名で次週の出張について打ち合わせる。
19:00 退社。

プライベート

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2014年10月、妻が行きたいというベトナムのホーチミンに2泊3日で旅行へ。写真はオプショナルツアーで参加したメコン川クルーズの途中で立ち寄った村。ヘビを首に巻いて写真撮影。

 

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大学時代は国際交流サークルに所属。留学生とさまざまなイベントを通じて交流してきた。現在もサークル仲間と毎月飲み会を開き、毎年旅行に出かける。写真は2015年1月の箱根旅行。

 

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旅行が趣味。2014年9月には、妻と2泊3日で広島へ。写真は、広島県江田島市(えだじまし)にある旧海軍兵学校。ほかに宮島などを観光。

 

取材・文/田中瑠子 撮影/刑部友康

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