株式会社三井住友銀行

しもむら・ゆうた●麹町エリア ウェルスマネジメントバンカー。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。2008年4月入社。合同企業説明会参加や自己分析を重ね、コンサルティング業務に興味を抱く。さまざまな業界の中から、金融・鉄道・電力・百貨店の15社にエントリー。先輩行員が志を持って挑戦している姿を見て、「ここに入行すれば切磋琢磨(せっさたくま)して成長でき、お客さまの役に立てる提案力が身につく」と思ったことが入行の決め手。

住宅ローン業務を通して、「人の役に立てた」という実感が自分のモチベーションに

「身だしなみ、姿勢、所作、心づかい、事務の正確さ。こうした銀行員としての基本をクリアした上で、“私”という人間を認めてもらうためには、人間力を高めることが大切だと思うんです。金融だけに知識が偏らないよう、車やガーデニングといった本にも目を通し、自分の引き出しを増やすよう心がけていますね。お客さまの趣味など、心の琴線に触れる会話ができれば、そこから信頼関係が深まると思うんです」

 

銀行員としての心得をこう語る下村さんが、入行直後に配属となったのは東京都港区にある三田通支店。最初の3カ月間は窓口業務を経験し、銀行業務の基礎を身につけた。絶え間なく顧客が来店し、処理する書類が非常に多い窓口業務。ここで学んだのは、書類を正確に処理する重要性だ。

「記入書類に1カ所でもミスがあれば、訂正印のためにお客さまに再訪していただかなければなりません。あらためて、正確性が求められる仕事であることを認識しましたね」

 

7月末からは住宅ローンを担当。先輩の接客現場に同席するなどして商品知識や提案方法を学びながら、9月には1人で接客するようになった。主な業務は、来店する住宅ローン希望者から、どのような住宅物件の購入を考えていて、どんな将来展望を持っているのかなどをヒアリング。収入なども確認した上で、審査部と折衝し、ローンを実行することだ。

「住宅購入は人生の一大イベント。私としては、何とかお客さまの夢をかなえたい。ところが、審査部から『条件的に難しい』と突き返されることもあって、当初は板挟みのジレンマに悩みました。同じ収入額でも別の条件提示もできていたら、審査部を説得できたのではないかと、自分の力不足を感じました」

 

自信を持って審査部を説得できるようになるには、経験が必要。新人の下村さんは、先輩に相談してアドバイスをもらうなどして経験不足を補い、折衝力を身につけていった。

「やりがいを感じるのは、住宅ローンが実行できてお客さまに喜んでもらえた瞬間です。そして、『末永くよろしくお願いします』と言われ、信頼関係が築けたと思える瞬間ですね。仕事を通して『人の役に立てた』という実感が、自分のモチベーションになりました」

 

2年目、住宅ローンのメイン担当となった下村さんは、支店の目標数字を1人で担うまでに成長。自ら外回りをして案件を獲得したり、支店の取引先企業に交渉してその企業の従業員向けに住宅ローン説明会を開催させてもらうなど、精力的に営業活動を行った。

「とにかく必死でしたね。実践したのは、目の前のことを一つひとつ確実にクリアしていくこと。それがお客さまに喜んでもらえることにつながり、自分の力にもなると信じていました」

 

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麹町支店2階にあるVIPルームで、予約のお客さまと面談。自宅では話しにくい相続や遺言などの相談は、支店で受けることもある。

 

お客さまと信頼関係を築き、シェアを拡大できたときの喜びは格別

3年目、下村さんは同じ三田通支店で、今度は個人顧客の資産の使い道に関するご相談などを受ける運用コンサルティングを担当することになった。この仕事は、顧客の資産を開示してもらい、今後どんな人生を歩んでいきたいのかを聞き出すことがポイント。顧客の信頼を得て、心を開いてもらわなければ始まらない“人間対人間”の仕事だ。

最初に行ったのは、口座開設のみの顧客や多額の入金があった顧客などにアプローチする新規開拓。

「電話で訪問のアポを取るのですが、なかなかスムーズにはいきませんでした。そこで、何かお客さまのためになること――例えば、引っ越ししているけども住所変更手続きをしていないと思われるお客さまに対して変更手続きをご案内する、ATM利用料が無料になるご案内をしていないお客さまにアプローチする…など、お客さまに貢献できることを探しました。そして、そのご案内を兼ねて訪問するようにしたんです。電話では怪訝(けげん)そうだったお客さまも、実際に対面でお話しすると、打ち解けて話を聞いてくださる。やはり、顔を見て話をすることが基本なのだと実感しました」

 

4年目、異動した先輩から大口顧客を引き継いだ下村さんは、約400名を担当するまでに。できるだけ全員にアプローチできるよう、年齢や職業、家族構成などを把握した上で、退職やお孫さんの誕生などのライフイベントに合わせて訪問するシフトを考え、お役に立てるベストなタイミングに訪問するよう心がけた。こうして、3年目には苦戦した数字目標も達成し、コンサルティング業務に大きなやりがいを感じるようになった。

5年目、麹町支店に異動となった下村さんは、超富裕層を対象とするコンサルティングを担当することに。

「お客さまは、一部上場企業の社長一族、弁護士、医者、地主など。業務内容は同じですが、扱う額が桁違いなので、そのスケールには醍醐味(だいごみ)を感じますね。ですが、得られる喜びに大小はありません。私のミッションはお客さまの人生をどのように支えていくか。新社会人の口座開設であっても、数百億の資産運用であっても、その方にとっての重要度は同じ。お客さまの希望に誠心誠意応え、ご満足いただけたときの喜びも同じです」

 

超富裕層を顧客に持つようになって痛感したのは、他行との競合の熾烈(しれつ)さ。少しでも目を離すと他行に預金額のシェアを奪われるような状況下で、生き残っていくのは大変だ。それだけに、相手の懐に入って信頼関係を構築し、シェアを拡大できたときの喜びは大きい。

「あるお客さまが退職され、手元の退職金と会社の売却資金をどの銀行に任せるかを検討されていたんです。社内でチームを結成し、さまざまな提案をしてきたのですが、その方の息子さんの就職先が他行だと聞き、あきらめかけていました。ところが、お客さまは『子どもの就職は就職。これまでいろいろと提案してくれたから』と当行に資産運用を任せてくださったのです。自分たちと積み重ねてきた関係を心に留めていてくださったのだと、心からうれしく思いました」

 

超富裕層の関心事は、事業承継(※1)、資産承継(※2)、遺言信託(※3)など、築いた資産をどのように次世代に継いでいくかということ。

「相続税の増税など年々税制が厳しくなり、提案できる幅は限られつつありますが、税理士による社内の勉強会に参加して最新情報を把握し、将来においてもお客さまの家族や会社のメインバンクとして役に立っていけるよう、長い視点に立った提案を心がけています。こうした提案こそが、将来の銀行の成長にもつながっていくのだと思っています」

(※1)会社の経営を後継者に引き継ぐこと

(※2)預金や資産を後継者に引き継ぐこと

(※3)「いごんしんたく」と読む。遺言を書くときに遺言執行者として信託銀行を指定しておき、いざ相続が生じたときには遺言執行者として指定してある信託銀行が遺言に記載されている通りに財産の分割に関する手続きなどを行うサービス

 

いろいろなお客さまと接し、たくさんの人たちに喜んでもらえるリテール業務(※4)にやりがいを感じている一方で、下村さんは、日本に金融リテラシー(※5)が浸透していない現状に歯がゆさも感じている。

「ですから、将来的にはエコノミストやストラテジスト(※6)など、世の中全般に影響力を与えられるような情報を発信できる仕事に就きたいと考えています。リテールで目の前のお客さまと共有した喜びを、もっと多くの人たちと分かち合い、もっと多くの人たちを笑顔にしていけたらと願っています」

(※4)個人や中小企業などの顧客を対象とした小口の業務

(※5)金融に関する知識や情報を理解し、正しく判断する能力

(※6)投資戦略を考える専門家

 

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訪問営業が9割で、1日平均3軒はお客さまの自宅や企業を回る。支店周辺が多いが、現在は地方に転居したお客さまを訪問するために、年に数回出張することもある。

 

下村さんのキャリアステップ

STEP1 2008年 新入社員研修で人間力を磨く重要性を実感(入行1年目)

4月に入行後、1カ月間の集合研修に参加。新入行員500名以上が神戸の研修所に集まり、社会人としての心構えや銀行業などについて学んだ。商品説明のロールプレイングでは「お客さまは千差万別であり、お客さまに合わせた話し方をしなければ、言いたいことが伝わらない」ということを実感。お金を扱う銀行業でも、大切なのは“人間対人間”であり、人間力を磨かなければ一流の銀行員にはなれないと、仕事に対する意識を新たにした。

STEP2 2008年 3カ月間の窓口業務を経験後、個人融資業務を経験(入行1年目)

4月末、三田通支店に配属となり、3カ月間窓口業務を経験。定期預金の口座開設や為替業務などのOJT(※7)を通して、正確な事務処理を学ぶ。7月末からは、住宅ローンを中心とした個人融資業務を担当。先輩に付いて仕事を習得し、9月からは1人で接客を行う。不慣れだったために稟議(※8)が遅れ、ローンの実行を急いでいる顧客に叱られたという苦い経験から、スピード感の大切さ、早めに周囲に助けを求める必要性を悟る。入行1年目に3級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券業協会 二種外務員資格、生命保険募集人資格、損害保険募集人資格を取得。2年目に2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を取得。
(※7)実務を行いながら業務を学ぶ研修
(※8)りんぎと読む。担当者が作成した案を関係者に回覧してそれぞれの承認を求めること

STEP3 2010年 個人顧客を対象とするコンサルティング業務を経験(入行3年目)

4月、同じ三田通支店の東京南ブロック担当となり、個人顧客の運用、相続を中心としたコンサルティング業務に従事。入社時からこの仕事に従事してきた同期もいるので、出遅れたような焦りがあったが、実際に始めてみると、住宅ローンで培った知識が大いに役立った。3年目は数字目標を達成できず悩んだが、上司や先輩などの力を借り、ときには支店長に同行してもらうなどして足りない知識を補ってもらい、乗り越える。4年目にはスキルも身につき、先輩から大口顧客を引き継いで、目標を達成することができた。

STEP4 2012年 超富裕層を対象とする総合コンサルティング業務に従事(入行5年目)

10月、麹町支店に異動。麹町エリアの担当となり、企業オーナー、弁護士や医師、地権者など、超富裕層の顧客を中心とした総合金融コンサルティング業務に従事。7年目からは、プライベートバンキング営業部やプライベートアドバイザリー部などの社内部署と連携し、ときにはSMBC信託銀行やSMBC日興証券などのグループ会社の協力も得ながら、よりスケールの大きな提案を実践している。60代から80代の顧客が多いので、人生の大先輩から多くのことを学びながら、自分の提案力に磨きをかける日々。13年7月、支店長代理補に昇格。

ある日のスケジュール

8:00 出社。メールをチェックし、アポイント状況を確認。マーケット情報やニュースに目を通す。
8:40 営業職員10~15名で朝礼。事務連絡などを行う。9時に店舗開店。顧客訪問の準備を行う。
10:00 顧客の自宅を訪問し、税制が変更になった案内などの情報を提供し、ニーズを探る。
12:00 帰社して、社員食堂で昼食をとる。
14:00 顧客が社長を務めるオフィスを訪問し、経営課題をヒアリング。事業承継などの提案を行う。
16:00 帰社。振込伝票や印鑑照合、運用商品買い付けの入力作業など、事務処理を行う。
17:00 夕礼で今日の報告を行い、営業職員で共有。18時から他部署と案件提案についてミーティングを行い、19時ごろ退社。

プライベート

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大学のゼミ仲間とは今も仲が良く、3カ月に1回程度のペースで、キャンプやバーベキュー、ホームパーティーなどを開催。写真は、2014年5月に渋谷にあるデパート屋上でバーベキューを楽しんだ時。

 

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以前は二子玉川近隣に住んでいたので、よく多摩川の河川敷に1歳(当時)の息子を連れて遊びに行った。写真は、14年の夏ごろ。「週末は、どうしても子ども中心の生活になりますね」。

 

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14年10月、ハロウィーンのイベントを楽しむために、妻も大好きなアミューズメントパークへ。「お気に入りのキャラクターに会えて息子も大喜びでした」。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

 

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