株式会社キョードー大阪

みやした・たかし●山口県立大学生活科学部生活環境学科卒業。2007年入社。やりたい仕事が見つからないまま、大学4年生の4月から就職活動を開始。興味のある分野を中心に企業へ応募し、多くの人と関わりながら、一つの物事を作る仕事内容に興味を持ちキョードー大阪に入社。

大きなミスを経験し、何事もなく公演が行われることの大変さを痛感

関西圏を中心にコンサートやミュージカル、演劇などさまざまな公演を手がけるイベント興行会社であるキョードー大阪を母体とする株式会社リバティ・コンサーツは、京阪神以外の郊外エリアや地方の会館、ホールで行うコンサートや学園祭でのライブの企画・運営などを担っている会社だ。アーティストが所属するプロダクションや、放送局・出版社といったマスコミ業界、公演のスポンサーとなる企業、チケット販売会社と連携をとりながら、年間約3000件の公演の企画・運営を行っている。宮下さんは入社当初から、営業、企画、運営などさまざまな業務を担当している。

「事業内容は知っていましたが、具体的にどのような業務を行うかわからなかったので、正直不安だらけでした。先輩について業務を覚えていきましたが、公演内容の企画や宣伝から始まり、チケット販売、会場設営、運営スタッフの手配、アーティストの送迎や当日の食事手配に至るまで…やるべきことの幅が広すぎて、経験を積んでいくしかないと思いましたね」

 

入社1年目の8月、出張となった先輩の代理で、大きな仕事を任される。大阪にある舞洲(まいしま)で開催される、数万人規模の都市型野外音楽フェスティバル(フェス)の5種類ある会場の中の1会場を担当することになったのだ。

「準備のために2日前から会場入りして、徹夜で会場設営を進めました。照明や音響の確認、リハーサルや観客の動線などをチェック。トイレや別会場への案内板を作成したり、楽屋から舞台への動線を確認したり…。本当にやることがありすぎて混乱しましたね(笑)。関連会社の機材担当の方などにも質問してしまい、『そんなことまで聞くのか!』と、怒られることもしょっちゅうでした」

 

2日間は自宅に戻らず、会場に布団を敷いて寝泊り。そして、ステージが開演し、何が何だかわからないまま終わったという。

「やり切ったという達成感ではなく、『終わってしまった…』というのがその時の感想ですね。トランシーバー3台、携帯電話2台を持ってスタッフとやりとりしていたのですが、次々に問い合わせがくるため混乱してしまい、判断しなければならないことに即答できず、かなり迷惑をかけたと思います。当然ですが、自分の力不足を痛感しましたね」

 

入社2年目には、先輩にサポートしてもらいながらも1人で担当する仕事が増え、年間約100件の公演を先輩と分担して担当。しかし、経験を重ねて余裕が出てきた入社3年目に大きなミスをおかしてしまう。

「ある歌手のコンサートで、お客さまから『自分の座席がない』というクレームが入ったんです。実際に会場を確認してみたところ、最前列だけ座席がない状態でした。一般的なコンサートホールは、客席前方の座席がオーケストラの演奏スペースになることから、客席前方の座席が撤去できるようになっているんです。事前に会場側といろいろと確認は重ねていたのですが、開場後に座席が撤去されたままだということが判明…。さらに、チケットは最前列の分も販売済み。2000席あろうが1万席あろうが、お客さまにとっては自分の席は一つだけです。最前列の席だと楽しみにされていたのに、席がないなんてもってのほか。そこで、急きょパイプ椅子を用意。お客さまにもおわびして、なんとか乗り切りました。後で先輩から、『座席を事前に確認するのも大切な仕事の一つ。ちゃんと自分の目で確認しろ。公演を楽しみたいお客さまの気持ちに水をさすことになってしまう』と怒られました。何事もなく公演が行われることは、どれだけ大変なことなのか、思い知らされましたね」

 

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日中はほとんど、大学や会場となるホールを訪問して打ち合わせ。公演の実現に向けて何度も会話し、細部まで決めていく。メールは外出先でチェックし、関係先への連絡も頻繁に行う。

 

学園祭を実行する学生と共に考え、企画を練り、実現へと導く

宮下さんは営業する際、お客さまとのコミュ二ケーションを大切にしている。形あるものを提案するだけでなく、“どんなコンサートにしたいのか”、“なぜそれをしたいのか”など、お客さまの要望をヒアリングし、期待以上のものを提案したいからだ。そのため、お客さま先には足しげく通うようにしているという。

「奈良県にある市民会館のご担当者から、『幅広い年代の方に楽しんでもらえる公演を企画したい』というご要望を頂いたんです。そこで、出演者の年代や音楽ジャンルにバリエーションをつけることをご提案。その結果、担当者の方から、『ほかの会社からも提案を受けているが、宮下さんにお願いしたい』と言っていただけたんです。頻繁に通っていたので、お昼ご飯をご一緒するような関係性はできていたのですが、自分の企画を採用していただけただけでなく、翌年の公演実施まですべて任せてもらえた時、信頼されることの喜びを感じましたね」

 

13年からは、年間80件以上の学園祭を先輩と分担し、関西圏の大学や短期大学、専門学校の学園祭をメインで担当することに。営業先は、学園祭の実行委員である学生となった。

「業務内容自体は、これまでやってきた公演企画と大きく変わるわけではありませんが、学生にも一緒に考えてもらうことを心がけるようにしていますね。学生は、アーティストに出演してもらうためにはお金がないと無理だと考えがちなので、『200万円の出演料で300人来客する学園祭と、70万円の出演料で3000人来客する学園祭。自分がもしアーティストだったら、どちらの学園祭に行きたい?』と質問します。すると、ほとんどが3000人集まる学園祭だと答えるんです。アーティストも同じで、多くのお客さまに楽しんでもらいたいと考えている人が多い。そんなふうに『アーティストの立場で考えて進める大切さ』を理解してもらいながら、学園祭を実現するために何をすべきか、何を用意すればいいか考えるようにしていますね」

 

大学で学園祭の公演内容を企画している際、あるロックバンドの出演を学生から切望された宮下さん。そのロックバンドは、「学園祭には出演しない」とほかの大学からの出演依頼を断っているバンドだった。

「学生の思いをなんとか実現させたいという思いで、バンドが出演を承諾するようさまざまな企画を考えました。その中で、ラジオ局と協働して“ラジオ番組の公開収録”という名目の公演企画を提案したところ、バンド側が『ラジオ番組への出演なら…』と、出演を承諾してくれたんです。最終的に1600人の観客を動員し、会場となった体育館は超満員! ラジオ局は学生にPRができたし、学生は希望するバンドを呼ぶことができました。関係するすべての方に喜んでもらえるベストな着地点を見つけることができたと感じましたね! この時『これが自分がやるべき仕事なのだ』と思いました」

 

今後の宮下さんの目標は、売れると思う新人アーティストを自ら発掘し、公演を企画するという新しい分野に取り組むことだ。

「関西でのコンサートを機に、全国へと人気が広まっていく。そんな仕事を手がけたいですね。まずは、今担当する学園祭公演のチケットを完売できるようなプロモーションを行い、出演者やお客さまはもちろん、関係企業、コンサートのすべての運営スタッフにいたるまで、みんなが喜んでくれるものにしたい。そのためには、公演にかかわる一人ひとりの立場に立って、物事を見て判断し、進めていきたいと思っています。そして、『宮下にお願いしたい』と僕を信頼してもらい、責任ある仕事を任せてもらえるように成果を残したいですね」

 

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コンサート当日に、観客に配布するチラシを準備。チラシやポスターのデザインの起案も業務の一つで、チケットの購買につながる見せ方を考えてディレクションし、外部の制作会社へ依頼する。

 

宮下さんのキャリアステップ

STEP1 2007年3月 入社8年目の先輩について多岐にわたる業務を覚える(入社1年目)

3月末に入社。主に関西圏の郊外にある会館やホールへの公演の提案から、実施を先輩について学ぶ。公演の予算しか決まっていない会場から、具体的な出演希望アーティスト名を挙げる会場まで、営業先によって要望はさまざま。1つの公演に、さまざまな関係会社やスタッフがかかわっているため、調整業務の重要性を実感。関係各社から頻繁に問い合わせがあるため、瞬時に判断する難しさ、さまざまな要望を調整しながら業務を進める難しさを実感。

STEP2 2007年8月  数万人が来場する夏の野外フェスの会場責任者に(入社1年目)

先輩の代理で、さまざまな会場が存在するフェスの一つの会場を任される。現在も続くそのフェスは、この年から場所を変えて大きな会場に変わったため、機材搬入、会場セッティングなど例年通りにいかず、対処すべきことが頻発。準備から終演まで1人で担当したことで、何がどういう流れで進むのか把握することができた。

STEP3 2011年 市民会館の年間予算すべてを預かる(入社5年目)

奈良県にある市民会館から「年間予算の中で、3回コンサートを実施したい」という依頼をもらう。幅広い年齢層の市民の方に楽しんでもらえるよう、ご年配の方向けの歌手と20~40代向け歌手のコンサート、参加型のファミリー向けコンサートという内容を提案し採用される。何もないところからかかわり、翌年に行うコンサートまで一連の流れをすべて担当。任せてもらえる喜びとともに、ほぼ完売で終えられたことに達成感を感じた。

STEP4 2013年12月 学園祭の担当と一般の公演を担当(入社7年目)

メイン業務が、関西の大学や短大、専門学校の学園祭担当に。先輩とふたりで年間100件の学園祭を担当し、ライブやイベントの企画提案から実現への道筋、予算管理、オペレーション補助などを行う。学園祭でも業務内容は通常の公演と変わらないが、顧客が大学生なので現状報告だけでなく、なぜそうなったのかまでわかりやすく説明することを心がける。学園祭の合間に、会館やホールの公演業務も引き続き行っている。

ある日のスケジュール

9:30 出社後、メールをチェック。外出先などでもメールは頻繁にチェックする。
10:00 当日券や配布するチラシ、関係者受付のセッティングアイテム、お釣りなど会場に持参するものを準備。
11:00 会場に到着したらまず会場関係者や照明などの機材を担当するスタッフにあいさつ。その後、出演者の出迎え準備や楽屋のセッティングを行う。
11:30 機材搬入、会場設営、人員整理等のアルバイトスタッフへの指示に加え自分も搬入を手伝う。空き時間にささっと昼食をすませる。
14:00 出演者の出迎え。新幹線で来られる場合は新大阪へ。飛行機の場合は空港まで出迎え。
16:30 開場。チケットの半券をもぎったり、混み具合を見て入場口を増やしたり、スムーズに観客が会場入りできるよう心がける。
17:00 開演後は会場の隅で、客席からのライブの見え方や聴こえ方もチェック。観客の様子も常に確認する。ときにはトイレへの誘導なども行う。
19:30 終演すると、安全に会場から出てもらうために誘導や声かけ。グッズ販売やサイン会の段取りや誘導も。その後、機材などの搬出の手伝い。アーティストやスタッフの送り出しやお見送りも。
21:00 会場を元通りにして、退出する。
21:30 前売券、当日券の売り上げや来場者数など、業務報告を行い、業務終了。打ち上げがない場合は、そのまま帰宅する。

プライベート

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小学生からサッカーを始め、現在はフットサルを楽しむ。右から2番目が宮下さん。週に1、2回、休日や仕事終わりに屋内フットサルコートへ。チームではなく、自然と集まったメンバーでプレーする。

 

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大学時代に住んでいた山口県には、就職してからも年に1回は訪れている。写真右が宮下さん。尊敬する先輩とサッカーしたり飲んだり。今でも大切な仲間がいる大切な場所。

 

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友人とイラストレーターのニシワキタダシさんの展覧会へ。関西弁をイラストの世界で表現する手法が好きで、ほのぼのしたイラストタッチにもひかれる。

 

取材・文/森下裕美子 撮影/笹木淳

 

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