セイコーホールディングスグループ

みのわ・ゆき●セイコー第一企画部 一グループ。東京外国語大学外国語学部フランス語学科卒業。2012年入社。就職活動では、化粧品やファッション、時計、ジュエリー、お菓子など、自分が興味を持てる商品を扱う仕事を軸に探した。会社説明会の際に「他社とは違い、若いうちから企画宣伝などの経験をしている社員が多く、面白そうな会社」と感じたことや、社員のフランクな雰囲気に相性の良さを感じたことが決め手となり入社を決意。

入社1年目に商品企画部へ配属され、「自分のイメージが形になる喜び」を味わう

若いうちからさまざまな部署で経験を積めることから、現社に入社を決めた箕輪さん。入社後3カ月の研修を受けたのちに配属されたのは、商品企画の部署だった。

「実は、入社時に希望していたのは、海外マーケットの分析・調査を手がける部署でした。もともと自分から何かを提案し、人を巻き込んで実現するようなことが苦手で、自分一人で完結できる仕事がしたかったんです。当初は、喜ぶどころか、自分には無理だと思っていましたね」

 

箕輪さんはメンズブランドのチームに入り、先輩について仕事を学ぶ。最初は、商品知識も専門用語もわからず、製造部門やデザイン部門との会議に参加しても何を言っているのかまったくわからない状態。知らない言葉をノートに書き留めては先輩に聞いたり、自分で調べるなどして、努力を続けた。

「配属されてわりとすぐに、先輩から『このメンズブランドのラインで、若い女性向けのリーズナブルなレディースウオッチを企画中なんだけど、どんなものがいいと思う?』と聞かれたことがあって。企画の練習のつもりとして取り組んでいたのですが、実際にその企画を担当することになったんです。正直、プレッシャーは感じましたが、『任されたならやるしかない!』と思いました」

 

商品企画の仕事は、購買ターゲットをもとにコンセプトを決め、それに合わせてどんなものを作るかを考えるところからスタートする。企画の方向性が決まったら社内のデザイナーにイメージを伝え、デザイン画に起こしてもらうのだ。

「ターゲットは、安くておしゃれなファストファッション(※)を好む若い女性。当時は大人向けの女性誌がたくさん創刊された時期だったので、『大人っぽくて、カジュアルに使える時計』をコンセプトとしました。けれど、自分流に企画書を作ってデザイナーさんに見せたところ、『よくわからない』と言われてしまって…。どんなテイストにしたいのか話し合いながら頭の中を整理して、先輩にも指導を受けながら再度企画書をまとめ直していきました」

(※)最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態

 

企画書を基に、デザイナーが何パターンものデザイン画を起こし、それを見ながらどのデザインにするかを決定。5~6回ほどのやりとりで、デザインの微調整はもちろん、文字盤のレイアウトからガラスの加工、レザーバンドの色の組み合わせまで細かく決めていったが、やはり不安だらけ。

「最初にデザイン画を見せられた時は、パターンがたくさんあり過ぎて、それぞれ何がいいのか、何が悪いのか判断がつかなくて…。感覚的に『このデザインの雰囲気がいい』と思っても、デザイナーさんも部内の先輩たちも『こっちもいい』『あっちもいい』とそれぞれ意見が違うので、悩みましたね」

 

箕輪さんは、自分の判断を裏付ける根拠が必要だと考え、量販店や通販ファッションサイトの売れ筋ランキングを見て、人気時計モデルの傾向をチェックすることに。仕事帰りには、渋谷や新宿などの若者の多い街に足を運んでは、百貨店やファッションビルの時計売り場を巡り、トレンド商品の傾向を見て回った。さらに、社内にある素材のサンプルを片っ端からチェックし、バンドに使う革などの知識も深めたという。

「デザイン画を3つの候補に絞った後も、どれを選べばいいのか迷いましたね。そこで、先輩に『自分としては、このデザインがいいと思ったけれど、マーケットとしてはどうなのか』と相談したところ、『箕輪さんがいいと思うなら、それでいこう』と後押ししてくれて。それで心を決めることができました」

 

最終決定したのは、アンティーク風の華奢(きゃしゃ)なデザインだったが、道のりはまだまだ遠い。試作品制作に着手するためには、まず部内の会議で承認を得ることが必要で、プレゼンテーション用の資料作りという難関も待っていた。

「先輩が作った過去のプレゼンテーション資料を徹底的にチェックし、パワーポイントの使い方を必死で覚えながら作成しました。商品の雰囲気に合わせて、使う書体や色使いなども工夫し、とにかく世界観を伝えるようにした結果、すんなりOKが出たんです。この時もすごくうれしかったけれど、一番感動したのは、試作品が上がってきた時。『自分のイメージが形になる』という大きな喜びを味わうことができましたね」

 

こうしてでき上がった試作品を携え、最終関門である時計のモデル決定会議へ。営業部門や宣伝部門などの役員の前でプレゼンテーションし、OKをもらえれば商品化されるのだ。

「緊張のあまり、自分が何を話したのかも覚えていないほどでしたが、かかわってきた皆さんに後押ししていただいたのははっきり覚えています。でも、プレゼンテーションでOKをもらってからがまた大変。製造部門と使用素材の確認をする会議があり、素材の種類を表す記号を把握しなくてはなりません。例えば、文字盤の白い色一つを取っても、微妙に違う色調や質感でいくつも記号分けされています。また仕上げの記号もいくつもあるのですが、仕様の指示はすべてそうした記号で行われるんです。サンプル品に書かれた記号や、仕様情報を入力したシステムを見ながら必死で覚え、会議にも何とかついていくことができました」

 

ph_business_vol313_01

社内のデザイナーと新しい商品の企画打ち合わせ。コンセプトやイメージを伝えたうえで、どんな素材を使うのかを話し合って、デザイン画をアップしてもらう。

 

入社2年目に既存ブランドの再構築を手がけ、現在は「ルキア」を担当

箕輪さんが初企画におけるすべての過程をクリアし、ようやく発売されたのは企画から約1年後のことだった。

「発売直後、社内販売で1本購入しましたが、お店の人がどんな接客をしているのか実際に体感してみたくて、お客さんのふりをしてさらに1本購入してしまいました(笑)。店員さんが『アンティーク風で大人っぽくて、すごくかわいいですよね!』と、まさに狙い通りのトークをしてくれた瞬間、自分の描いたイメージ通りだと感じて、本当にうれしかったですね」

 

いくつかの企画を経験した入社2年目、箕輪さんはレディース時計の人気ブランド「ティセ」の担当を任される。もともとは20代前半向けのかわいらしいデザインを中心とするブランドだったが、担当となった4カ月後、ブランド自体のあり方を再構築することになる。

「ベーシックなものを好む30~40代の主婦層も対象とする方針で、ブランドコンセプトやターゲットの設定をイチから手がけることになりました。私自身、手に入りやすい価格帯の『ティセ』でシンプルなものを作れば、絶対に売れると思っていたものの、これまでとは違うプレッシャーを感じましたね。なにしろ、共有できるイメージのない白紙状態の中、『どんな雰囲気の人がターゲットなのか』『ブランドの方向性はどうするのか』という大前提の部分から考えなければならないわけですから」

 

チームのメンバーは、女性の先輩、係長、課長と経験豊富な人たちばかり。箕輪さんはその中心となってイメージをかためていく。主婦を集め、3つのパターンのイメージを見せて意見をもらうユーザーインタビューを実施したり、主婦層向けの雑誌やファッションブランドをひたすらチェックして、“ベーシック”というキーワードにつながる材料を集めていった。

「この時期、自分から発信していくことの大変さを初めて経験しました。自分に自信がなくても担当として方向性を打ち出さなければならないし、発言に共感してもらえなくては先に進めない。そして、説得力ある話をするためには、根拠や裏付けが必要なので、説得材料をしっかり集め、下準備をする習慣が身につきました」

 

カタログに掲載するブランドコンセプトの文言も自分で考えることになり、悩みながらも『しあわせを毎日身に着ける。等身大の自分らしさを表現するレディースウオッチ』と決めた。

「そこからデザイナーとやりとりして、コンセプトに沿ったデザイン画を作成していきました。これを携え、部内会議で今後のブランドコンセプトと合わせてプレゼンテーションに臨みましたが、『高価格のレディースブランドにイメージが近過ぎる』『機能性の高いメンズブランドと統合した方がいい』などの反対意見も多かった。けれど、『ティセ』でやることにこそ意味があると訴え、OKをもらうことができました」

 

また、試作品ができ上がった時も、デザイン画のイメージと違う仕上がりだったが、「今さらひっくり返せないけれど、どうしても納得がいかない」と苦悩した。通常では、試作段階でデザインを変えることはほぼないが、自分なら欲しくないという感覚は否めなかったのだ。

「平面ではスマートなイメージだったのに、素材を組み合わせて立体化するとぱっとしない印象だったんです。上司に相談した結果、作り直す許可と製造部門と生産期間の調整もしてくれました。結果的に、作り直したものが広告に出るモデルとなって、今でも売れ続けているんですよ。理解してくれた上司には本当に感謝しています。この企画に携わったことで『妥協せずにあらゆる可能性を検討し、悩み抜く』という仕事へのスタンスを持つようになりました。今でも自分の感覚と世の中の需要のはざまで悩むことは多いですが、そんなときは、そもそもその企画が何を目指していたのかに立ち返るようにしています」

 

2014年12月、箕輪さんは女性向けの看板ブランド「ルキア」の担当となる。会社の主力商品であり、営業部など各部から要望されることは非常に多く、期待値も高いため、これまでとは違う難しさを感じている。

「会社の看板ブランドとして、競合の商品に常に勝たなければならないので、毎月の販売集計データをチェックする時は緊張しますね。売れる商品を作り続けることが使命なので、営業部からの『こういうものを作ってほしい』といった要望をくむ一方、広告を手がける宣伝部とはブランドイメージをしっかり共有し、イメージがブレない企画をすることも重要です。そのため、『ルキア』の担当になってからは、社内の他部署の人たちとより深く関係を持とうと思うようになりましたね」

 

プレッシャーは大きいが、「より多くの人が身につけているブランド」を手がけることに大きなやりがいを感じている。

「街を歩いていても、周囲を見渡せば、自分の手がけた商品を身につけている人が必ずいる。それが一番のやりがいとなっています。入社当初、自分には企画は向いていないと思っていたけれど、この仕事を経験したことで足りない能力が身につき、成長することができました。『ルキア』は海外での認知度も高いので、今後はより広い視野を持って価値ある商品を世界に発信していきたいですね!」

 

ph_business_vol313_02

社内のデザイナーと新しい商品の企画打ち合わせ。コンセプトやイメージを伝えたうえで、どんな素材を使うのかを話し合って、デザイン画をアップしてもらう。

 

箕輪さんのキャリアステップ

STEP1 2012年 研修時代(入社1年目)

入社後、1カ月間の基礎研修を受け、ビジネスマナーや社会人としての心構え、会社の事業概要などを学んだ。また、グループ会社と合同で行う1泊2日の合宿研修もあり、課題解決のグループワークや営業のロールプレイングなどを経験。一緒に参加した同期とは今も仲が良く、グループ会社のメンバーともつながりを持ち続けている。こののち、2カ月間の店頭販売研修へ。伊勢丹新宿店の時計売り場に配属され、自社のみならず、他社の時計についての接客も経験。「自社商品の知識もないまま、他社商品の細かい性能について質問されたり、古いモデル(型)の修理を頼まれたり。売り場の人に助けてもらいながら、プロの皆さんの知識の深さと意識の高さを実感しました。お客さまを第一に考え、どんなことにも対応する姿勢を目の当たりにしたことで、社会人として大切な心構えを学ぶことができたと思います」。

STEP2 2012年 第一企画部 メンズチーム時代(入社1年目)

商品企画を手がける部署に配属され、男性社員3名から成るメンズチームのメンバーに。入社1年目の9月には商品企画を任されることに。「『スピリットスマート』というシリーズの中の、レディース向けの流通限定商品を企画しました。プレゼンテーション資料作成の際には、自分のチームだけでなく、部署内のさまざまな先輩が作成した資料を徹底的に読むことに。人によってスタイルが違い、プレゼンテーションのやり方も違うので、先輩たちのいい部分を取り入れながら説得力のある構成を考えました。でも、今思えば、わりとスムーズに企画が通ったのは、新人を見守る会社の姿勢もあったのかもしれないなと思っています(笑)」。

STEP3 2012年12月 第一企画部 海外観光客向けの商品を担当(入社1年目)

企画を並行して手がけることになり、機能性の高い「スピリット」というブランドにおける、中国人をはじめとする海外観光客向けの商品を担当。スペックも価格も決まっていたため、何を優先させ、どういったデザインにするかも明確だった。「中国人の方がどういうものを好むのかがわからず、男性の先輩に意見を聞きながら企画を立てていきました。商品のデザインよりも価格やスペックが重要な企画だったため、スペックに対して中国人が求めていることを調べましたね。結果、中国人はペアモデルを求めるお客さまが多いため、男女まったく同じデザインを好むことがわかりました。自分の感性とはまた違う世界があると知り、時計という商品の幅広さを実感しましたね」。

STEP4 2015年 第一企画部 ルキア担当時代(入社4年目)

入社2年目にチーム編成が変わり、メンズ・レディースといったチーム区分がなくなる。レディースブランド「ティセ」のブランド再構築と商品企画を手がけたのち、レディースの看板商品である「ルキア」の担当に。販売を手がける現場スタッフの声を大切にし、スタッフレポートには常に目を通している。また、自ら店頭に足を運び、販売スタッフに試作品を見せて意見を聞くなどの地道な努力も続ける。「『ルキア』は中国や台湾でも販売しているので、海外の営業部ともやりとりし、現地の状況をヒアリングしています。日本では誰もが知っているブランドであり、海外でも扱っている国が多いので、そうしたブランドの企画に携わることに誇りを感じますね!」。

ある日のスケジュール

8:45 出社後、メールチェック。担当する時計「ルキア」の売り上げ金額や出荷数などのデータをチェックし、販売状況を把握。
11:00 デザイナーとデザイン決定のための打ち合わせ。複数のデザイン画を見ながら、どれにするのか最終決定する。
12:30 ランチタイム。チームのメンバーと一緒に近場のレストランへ。
13:30 製造部門と商品の構造について会議。試作品の改善点など、技術面について話し合う。
15:00 宣伝販促部・営業部門と打ち合わせ。「ルキア」における今シーズンのブランドの方向性を共有する。
16:00 デスクワーク。会議のための資料や企画書を作成。
19:30 退社。同期と一緒に食事に出かける。

プライベート

ph_business_vol313_03

学生時代から海外旅行が好きで、欧米やアジア、カナダ、メキシコなどを旅した。社会人になってからは、タイとフランスに出かけたそう。写真は2015年のゴールデンウィークにフランスを1人旅した時のもの。「偶然、同じタイミングで旅行に出かける友人と現地で合流したり、現地に住んでいる友人と食事しました。いいリフレッシュになりましたね!」。

 

ph_business_vol313_04

週末や連休を利用して、友人と国内旅行へ。写真は2015年6月の熱海旅行のもの。右端が箕輪さん。「学生時代の友人や社会人になってからの友人など、いろんな人と小旅行に出かけています。基本的には近場が多いですね。冬は、スノーボードと温泉に行くのが恒例になっています」。

 

ph_business_vol313_05

休日には、友人たちと一緒に食事やお酒を楽しんでいる。「おいしいものが大好きなので、お互いに気になる店を見つけては誘い合って出かけています。お酒も大好きですよ(笑)」。

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。