株式会社シャルマン

さいとう・ただあき●企画統括部 国内企画部。福井県立大学経済学部経営学科卒業。2012年入社。「人と深くかかわる仕事がしたい」と考え営業職を志望。興味が持てる事業内容を行う企業を中心に、業界を絞らず就職活動を進めた。不動産会社、広告会社など、複数の企業から内定を得るが、故郷である福井県、東京、アジアやヨーロッパなどの海外に拠点を持ち、活躍の場が幅広いことからシャルマンに入社を決意。

国内企画部に配属。工場での現場研修と先輩のアシスタント業務を経て、ブランド担当に

シャルマンは、メガネフレームやサングラスの企画・デザイン・製造・販売までを手がけている。斎藤さんが最初に配属されたのは、福井本社。国内向けの商品を企画する部署だ。入社前は営業職を志望していたが、企画に携わるチャンスをもらえたことをうれしく感じたという。

「メンバーの一人ひとりがブランドを担当し、商品の企画をする部署です。商品のコンセプトやターゲットを考えるところから始まり、社内デザイナーとデザイン画作成、工場部門と製造についてのやりとり、営業部門への販売戦略の発信までを担当。商品にかかわるすべてに責任を持ち、全体をまとめていく立場のため、やることは本当に幅広いですね」

 

配属当初の半年間は、福井県の自社工場にてOJT(※1)で、作業着を着用して現場でのプレス工程などの作業に携わった。メガネのフレームとなる金属素材を平たく加工するため、ひたすらプレス機械のスイッチを押し続けたという。

「もともと単純作業は嫌いじゃないので、楽しかったですね。なにより、半年間現場で過ごした経験は非常に勉強になりました。メガネ作りは、機械化できない部分も多く、フレームに手作業で着色する工程など、一つひとつ、人力で時間をかけていることを実感。素材の違いについても、エキスパートである工場の先輩たちが教えてくれました。この経験のおかげで、素材や型を見るだけでも工程のイメージができるようになり、どんなことをすれば、どれだけコストがかかるのかもわかるようになったと思います」

(※1)On-the-Job Training。実際仕事を行いながら学ぶこと

 

半年後には、福井本社のオフィスで先輩のサポート業務を担当。企画の基礎を覚えていった。

「私にとって、この時期が一番つらかったですね。本社に戻ればすぐに華やかな企画業務に携われると思っていたのに、実際は地道なデスクワークが中心でした。先輩の企画した商品について、市場調査のデータを集めては『こんな市場状況のもと、こういう仮説が成立する』といった裏付け資料を作成。データと向き合い続ける日々は、正直、きつかったですが、この半年間で企画業務全体の流れを学ぶことができたと思います」

 

入社2年目、斎藤さんは念願の企画に携わることに。女性向けのライセンスブランド「ELLE」を担当することに。

「40代の女性をターゲットとしたブランドですが、売り上げが思わしくないため、これまでと違う方向性で売り上げをアップすることがミッションでした。ブランドには、自社でイチから手がけるハウスブランドと、他社ブランドの名前を使う権利を購入して企画開発をするライセンスブランドの2つがありますが、このブランドは後者です。とにかく足を使おうと考え、営業担当や店頭の販売スタッフに現状の商品評価をヒアリングすることからスタートし、どこに可能性があるのかを探っていきました」

 

調査の結果、“わかりやすいセールスポイントがない”“ファッションブランドそのものと、商品のイメージに差がある”という意見が多くあったという。

「ライセンスブランドは、他社のファッションブランドの名前を冠する商品のため、シーズンごとのデザインの方向性やイメージはライセンスを持っている会社から示唆されるもの。社外的な要素が絡む背景があるため、デザインの路線を大きく変更することは難しい状況でした。そこで、『デザインが無理なら、機能性でセールスポイントを作ればいいんだ!』と考えたんです」

 

このとき斎藤さんは、かつて工場で研修を受けた際に知った素材、ベータチタン(弾性チタン)のことを思い出す。

「非常に柔軟性の高い素材で、工場で実際に触れた時、『これはスゴイ!』と思ったんです。ただ、機能性が高い分、原価も高いという難点が…。いくらのコストがかかって、いくら利益が取れるかを検討したところ、商品化しても利益が得られるということがわかったので、企画書の作成に入りました」

 

斎藤さんはこの企画書を基に上司へプレゼンテーションを実施。意外なほどにすんなり承認が出たので、さっそく社内デザイナーとデザイン画の作成を開始。ライセンス元が示唆するブランドイメージを共有したのち、デザイナーが上げてきた15点の絵を基に方向性を話し合っていった。

「とはいえ、ターゲットは40代の女性。自分とは年代も性別も違うので、どういうものが好まれるかがまったくわかりませんでした。担当のデザイナーが女性だったので、女性の視点を教えてもらいつつ、男性から見たデザインの良さを伝えるなどして、意見を擦り合わせていったんですが、正直大変でしたね」

 

デザイナーは細部にまで強いこだわりがあるが、それをすべて実現すればコストが上がる。採算が取れなくなってしまっては商品として成立しない。しかし、斎藤さんはどれだけ互いの考えを共有できるかが大事だと考え、じっくり話し合うよう心がけた。

「感覚的な部分だけで話していてはダメだと感じ、社内の販売実績や世間の売れ筋などについて説明し、説得力を持たせていきました。ようやく落としどころが見つかったのは1カ月後。そこから企画の資料作成を行い、上層部へのプレゼンテーションへ。企画に承認をもらった瞬間、『ここからが本番だ!』と感じ、気が引き締まる思いでしたね」

 

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新たに開発する商品の企画書作成や、営業担当者と情報共有するためのカタログ作りを行う。

 

8カ月かけて商品を完成させ、大きな喜びを実感。ハウスブランドを手がけたことが大きな転機に

デザイン画が決定した後は、デザイン画を基に工場で設計図面を作成してもらい、サンプルを作って形状を確認。そののち、工場での量産過程に入るのが一連の流れだ。しかし、このとき担当していたブランドの商品は中国工場で作っていたため、考え方を共有するコミュニケーションが難しかったという。

「中国工場の担当者が間に入ってやりとりしていましたが、人づてで自分の考えを伝える難しさを痛感しましたね。デザイナーは見た目、工場は製造過程やコスト面といった具合に、各部署それぞれに役割や立場があり、守りたいものは違います。商品企画において主導権はこちらにありますが、相手の立場や意見を尊重しながら話し合い、折り合いをつけていくように心がけるようになりました」

 

ようやくでき上がった完成品のサンプルを本社に提出し、承認をもらった後には、全国各地の営業担当者に向けた社内用カタログの作成へ。

「営業は、常にいろんな商品を扱っています。だからこそ、ひと目でセールスポイントが理解できるものにしなくてはなりません。写真も自ら撮影し、『ベータチタンを使った機能性』をわかりやすく伝えるよう心がけました。また、得意先であるメガネ専門店や量販店に向けた先行商談(一般発売前の予約販売)にも同行しましたが、社外向けのプレゼンテーションは初めて。余裕はありませんでしたが必死で乗り切りました」

 

8カ月かけて商品を完成させた時、斎藤さんは企画開発における大きな喜びを味わったという。

「自分がゼロから考えたものが形になった感動は、言葉では言い表せませんね。『これが店頭に並ぶんだ』と考えるだけでもワクワクしましたし、実際に店頭に並んだ様子を見た時は本当にうれしかったです!」

 

斎藤さんは、こののちも3カ月に一度は新型商品を企画し、8カ月スパンで並行していった。そして入社3年目、いよいよオリジナル商品であるハウスブランド「MENS MARK(メンズマーク)」を任されることになる。

「ハウスブランドの中でも売り上げ2位の人気ブランドです。最初に担当したブランドと比べ、売り上げが約10倍なので規模感が違う。最初は『信頼されているんだ』とうれしく思いましたが、売り上げが大きい分、得意先も多く、そこにかかわる営業担当者の数も多い…。やっていく中でどんどんプレッシャーが増していきましたね」

 

ターゲットは、40代~50代の男性ビジネスパーソン。斎藤さんのミッションは、ブランドコンセプトはそのままに売り上げをアップすることだった。男性がターゲットのため、よりイメージはしやすい。しかし、ライセンスブランドのようにデザインの方向性が決まっていないため、ゼロから自分で考えねばならず、むしろ難易度は上がったという。

「路線を大きく変えず、無難なものにすべきかと迷いましたが、せっかくメンズを手がけられるのなら、やっぱり自分がカッコイイと思えるものを作りたかった。けれど、メガネというものは、デザインに特徴があり過ぎても売れないんです。自分としてはファッション性の高いものを作りたいのに、求められているものはベーシックさ。そのはざ間で悩みましたね」

 

斎藤さんは売り上げ実績のデータを細かくチェックし、「やはり奇抜なデザインのものは売れない」と分析。その結果、「使い心地」と「ベーシックなカッコ良さ」を基本にし、その枠の中で自分なりの表現をしようと決意した。

「柔らかく使い心地のいいエクセレンスチタン(超弾性チタン)という素材を選び、より柔軟性を持たせるためのハニカムパーツ(※2)部分の加工を工夫することにしました。通常はタテにカッティングするものを斜めにし、ほんの少しだけスタイリッシュにしたところ、これが売れたんですよ!」

(※2)メガネフレームの耳にかける部分

 

斎藤さんの分析が当たり、この商品は、従来の新商品の2倍の売り上げをたたき出す。そして、この経験のおかげで、自身の企画への姿勢が変わったという。

「自分の主観でいいと思うものが売れるわけじゃない。けれど、柔軟に物事を考えれば、工夫次第で自分のセンスや感覚を生かせる方法もある。デザイン性と売り上げを両立することは難しいけれど、世の中が何を求めているのかを一番に考えながらも、自分の色を出す商品を企画していきたいですね」

 

斎藤さんは入社4目を迎えた2015年4月より、東京オフィス勤務となった。

「東京はトレンドを発信する街であり、市場がすぐ近くにあるから企画に役立つヒントも手に入りやすいですね。現在、3つのブランドを担当していますが、得意先や営業など、より多くの人とかかわる中、販売場所によって顧客層が違い、求められるものも違ってくると実感。百貨店なのか、量販店なのか、どこで売りたいのかをまず考えたうえで、企画段階からイメージをしっかり持つことを大切にしています」

 

この仕事の一番のやりがいは、自分の考えをもとに、ゼロから商品を創り上げられることだと話す。

「これからも自分のセンスと市場の需要を合致させる商品を創っていきたいですね。目標は、自分でブランドを立ち上げることです!」

 

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社内の営業担当者と打ち合わせ。商品に対する現場サイドの意見をヒアリング。次の企画に生かすヒントを得る。

 

斉藤さんのキャリアステップ

STEP1 2012年 研修時代(入社1年目)

入社後、2週間の新人研修を受講。ビジネスマナーや会社の事業内容などを学ぶ。また、福井県の自社工場にてメガネを作る工程を見学する現場研修も受けた。「チームに分かれ、工場で働いている人にインタビューをしたのち、その内容をまとめ、メガネができるまでの工程を図で表すという内容でした。入社前、ファッションの要素もあるメガネに興味を持っていましたが、こんなにたくさんの工程があり、非常に手間がかかるものだと知って驚きましたね」。

STEP2 2012年 工場での研修時代(入社1年目)

商品の企画開発を手がける企画統括部国内企画部に配属。当初の半年間は、福井県内の自社工場で現場を経験。この時、工場の人たちと交流を持ったことが、その後の開発の仕事に大きく役立っている。「もともと製造部門と販売部門は別々の会社で、そこから1社に統合された経緯があります。現場では、販売を手がける本社を別会社のように思っている方もいましたね。けれど、作業の中でさまざまなことを教えてもらいながら現場の人と親しくなることができましたし、社内の部活に入ったことで部署を超えてより深いコミュニケーションができ、人脈も広げることができました。この時に人間関係を作れたおかげで、遠く離れた東京オフィスで企画をしているときも、工場サイドとスムーズなコミュニケーションができると感じています」。

STEP3 2013年 福井本社 ブランド担当時代(入社2年目)

ライセンスブランド「ELLE」を担当したのち、入社3年目にはハウスブランド「MENS MARK(メンズマーク)」も担当。企画を商品化していく過程の中で、営業や工場、さらには得意先まで、多くの人とかかわることに。「それぞれの立場があるので、営業からは『こんなデザインじゃ売れない』、工場からは『こんなにコストのかかるものは作れない』など、いろんな意見を頂きます。すべてを踏襲したものを作ることは難しいですが、だからこそ、皆が納得できるようなものを作れたときの達成感は大きい。15年10月に発売予定の商品では、それに近いことを実現できたと思います。さまざまな部署の方たちと何度も話し合いを重ね、店頭で現場ヒアリングも続けていったことで、工場サイドにはコスト面で納得してもらえましたし、営業サイドからは『これは売れそうだ』という声を聞けました。みんなの意見を取り込みつつ自分のやりたいことを実現できたこの商品、今から発売が楽しみです!」。

STEP4 2015年 東京オフィス ブランド担当時代(入社4年目)

東京オフィスに異動。福井県と東京との市場の違いを実感しながら刺激を受ける日々。「営業に同行して得意先の店頭を回るにしても、福井よりも距離が近いので、商品開発に役立つ情報が手に入りやすい。それに、東京には本当にいろんな店があるので、メガネ以外のいろんな流行にも触れることができ、大きな刺激を受けています。入社前に『いろんなステージで活躍できる』と考えていましたが、今まさにそれを味わっていますね! ただ、福井本社時代は車通勤が基本だったので、満員電車で通勤することに慣れるまではつらかった(笑)。以前は通勤環境に恵まれていたんだなと実感しています」。

ある日のスケジュール

8:15 出社。本日行うチームミーティングのための準備。
9:00 国内企画部のメンバーとチームミーティング。担当ブランドの売り上げ進捗確認や情報共有を行う。
10:00 社内のデザイナーと新商品のデザイン案打ち合わせ。
12:00 昼食。先輩と一緒に近場のラーメン店へ。
13:00 製造部との技術検討会に参加。新商品のコストダウンや問題点について検討する。
14:30 営業担当者にヒアリング。得意先の状況、担当ブランド商品の評価など、現場の声を聞く。
15:30 市場リサーチのため、外出。メガネ専門店や量販店、ファッションブランドの店などを見てトレンドをチェック。
17:00 帰社。担当ブランドの売り上げデータ分析と在庫チェックを行う。
18:00 退社。

プライベート

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福井本社に勤務していたころは、社内の部活と社外の社会人サッカーチームに所属し、週末はサッカーの試合を楽しんでいた。写真2列目の右から3人目が斎藤さん。「東京オフィス勤務になった現在は、社内のフットサルクラブに入り、月に1~2回は参加しています。部署を超えたコミュニケーションができますね」。

 

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長期連休は、仲のいい友人と旅を企画。写真は2015年に高知県を旅した時のもの。右から2番目が斎藤さん。「学生時代から、男ばかりのメンバーで旅をしていました。ベタな観光スポットを回って楽しんでいます(笑)」。

 

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お酒が好きで、週に2~3回は社内外の人と飲みに出かけている。写真は社外の友人と休日に飲んだ時のもの。写真左から2番目が斎藤さん。「社会人になった当初は、ほとんど毎日のように飲みに出かけていましたね(笑)。職場の先輩や、東京に勤務している学生時代の友人と飲むことが多いです」。

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

 

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