独立行政法人 国際交流基金

ふたこ・のぼる●日本研究・知的交流部 企画調整・米州チーム兼アジア・大洋州チーム長補佐。東京大学大学院人文社会系研究科修了。2002年11月入社。大学院で文化政策を研究していたことから、文化や芸術にかかわる仕事に就きたいと考え、文化事業を行う新聞社や教育関係など5社にエントリー。目指す仕事に一番近かったこと、海外との接点が多い仕事であることにひかれ、現社への入社を決意。入社時のTOEIC(R)スコアは800点。

出版に携わった図書がのちのちまで利用される喜びを実感。財務課では組織理解と、論理的な交渉術を習得

国際交流基金は、世界の人々と日本の人々の相互理解を深め、より良い国際環境をつくることを目的として、世界各地で国際文化交流事業を行っている専門機関。主に、文化芸術交流、海外での日本語教育、日本研究・知的交流という3つのフィールドで、事業を展開している。

二子さんが最初に配属されたのは、メディア事業部編集課。海外における日本への理解の促進や日本研究の振興を目的に、日本語書籍の外国語への翻訳・出版や、外国語での日本関係書籍の出版を支援する助成プログラムを担当した。二子さんの仕事は、国内外の出版社などから届く助成申請に対して、大学の研究者など外部専門家の意見を参考に審査し、採否を決定すること。そして、助成が決定した出版物の進捗状況を把握し、翻訳や出版が完了したかどうかを確認して、助成金を送金することだ。

「世界中から届く申請は、年間150~200件。計算すると申請から1カ月以内にそれぞれの出版テーマや言語に関する評価者を探して依頼を終えなければ、その件数に対応しきれません。最終的に評価委員会が全案件を見て採否のアドバイスをわれわれに伝えるのですが、重要なのは案件ごとの評価者の評価が適切であり、審査を公平にすること。それだけに、評価者探しの責任は重大なんです」

 

インターネットで検索するのはもちろん、さまざまな分野の研究者や知識人と豊富なリレーション(つながり・関係性)を持っている上司や先輩の力も借りて、適切な評価者を選定。1年8カ月の在籍期間に70冊以上の出版物を世に送り出した。

「出版物が形になって手元に届いた時は、やはりうれしいですね。ですが、それにも増してうれしいのは、海外の大学図書館などにその出版物が並び、のちのちまで利用されているのを目にした時。2008年にロンドンに赴任した際、現地の出版社や研究者に『以前、国際交流基金の助成金をもらって出版し、今も活用している』と聞かされ、大変感激しました」

 

04年7月に異動した経理部財務課では、基金全体の予算要求、予算編成、予算執行管理などに携わった。財務課のミッションは、基金全体の予算要求をとりまとめて外務省・財務省と協議を行い、翌年度予算を確保すること。そして、確保した予算を翌年度の事業方針に基づいて配分し、その予算の執行状況を見ながら、必要なところに追加措置をとるなど予算配分を変更して、安定的な運営を資金面からサポートすることだ。

「上司が省庁との交渉を行う場に同席し、『自分たちの考えをどのように語れば、説得力が増すのか』という論理構成や交渉術を学びました。ここでは私たちが基金の代表であり、すべての事業分野についてきちんと説明できなければいけない。ですから、基金全体について必死で勉強しました」

 

財務課に異動した1年目は、各部署がどんな事業を行い、何を求めているのかを把握するので精いっぱいだった二子さんだが、2年目には全体の動きを把握して調整ができるように。

「財務課業務は、来年度の予算要求が終わる12月と、翌年度の使い道が決まる2月から3月が仕事の山場。そして、部門ごとに課内で業務を分担しているので、よりチームワークが求められます。それだけに、事業方針に基づいて予算配分できたり、新しい予算を確保できた場合など、チームで達成感をわかち合えたことはいい経験となりました」

 

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メンバーとミーティング。大学への支援方法などの見直しやプログラム運営の改善策などについて話し合う。

 

日中交流センターやロンドン日本文化センターで、文化交流の意義を実感

07年、日中交流センターに異動した二子さんは、「ふれあいの場」事業に従事。中国国内での、日本のマンガや音楽、ファッション雑誌などの最新情報に触れられる施設の開設や、交流イベントなどを通じて、主に青少年の対日理解と交流を深める事業である。

二子さんがイチからかかわったのは、「長春(ちょうしゅん)ふれあいの場」の開設。図書館内に設置したいという中国の長春市政府の要望を受けて現地視察を行い、条件などを交渉。内装デザインは、日本の若手建築家にチャンスを提供しようと考え、プロポーザル(※1)を実施した。

「やることすべてが手探り状態の中、中国側の図書館との契約、プロポーザルの実施からマンガ・雑誌類の現地送付の手配まで、一つひとつ手順を整理しながら遂行していくのは、非常に大変でした。その上、現地とのやりとりは、中国語を話せるスタッフ経由。自分の思いを直接伝えることが難しく、もどかしい思いをしたこともありましたね」

(※1)複数の建築家より設計案の提出を受け、競争により設計者を決めること

 

現地視察から約半年後の08年1月、ついに「長春ふれあいの場」がオープンした。

「中国の若い学生さんたちは、ここに来れば最新の日本に触れられるし、中国へ留学中の日本人にも『ここに来て、学校以外の中国人たちとの交流が広がった』と言ってもらえて…。目の前で日本のマンガを手に取り喜ぶ学生の姿を見ながら、ホッとすると同時に、“世界の人々との交流事業に携わる”という仕事の意義を実感しました」

 

08年からは、国際交流基金ロンドン日本文化センターの副所長としてロンドンへ赴任。約5年間、主に研究者同士の交流を促す研究交流を担当した。在任中の仕事で印象に残っているのは、自ら発案・開催した大学院向けのワークショップ。日本について研究している若手研究者を集めて、学術の世界で生き残っていくために必要となる効果的なプレゼンテーション方法や専門誌への論文投稿の方法、研究資金の獲得の仕方などについて、ベテラン研究者に依頼してレクチャーをしてもらった。

「イギリスでも研究者の生き残りは深刻です。そうした悩みを話し合い、プレゼンテーションの精度などをベテランの専門家に批評してもらえる新しいプロジェクトにしました。おかげさまで、このワークショップは現在も続いています」

 

日本に帰国したのは13年。現在は、日本研究・知的交流部で、海外の日本研究機関や研究者の支援、国内外の研究者や知的リーダー層の交流促進に努めている。

14年には、日本・中国・韓国の次世代リーダー16名を集め、日中韓の3カ国を巡る10日間のネットワーク事業を担当。日本での視察の際には、リーダーシップをテーマに、日本人の幸福観を研究している京都大学の研究者との対話や、京都の西陣織の海外戦略に関する話などを組み込んだ。

「交流内容を考えるためには、日本と海外に共通する課題はもちろん、その課題に対する専門家はどこにいるのかにもアンテナを張っておく必要があります。そのために日ごろから大切にしているのは、社内外のコミュニケーションです。重要な人との付き合いは、1回限りで終わることはありません。以前仕事で知り合い、現在は疎遠になっている人に対してもどんなことを求めているかを想像し、現在の仕事での付き合いがある人などと同様に、有用と思われる情報は提供しています。当然ですが、社内スタッフとのコミュニケーションも大切。やはり、自分一人で集められる情報には限界がありますから」

 

研究者のサポートは地道な活動だが、フェロー(国際交流基金から支援を受けて日本で研究する研究者)だった若手が、10年、20年後には第一人者となっていることもある。そういう人たちの成長に多少なりとも貢献できるこの仕事にやりがいを感じている二子さんには、大きな夢がある。それは、暮らしていて楽しい世界をつくることだ。

「日本の企業のグローバル化が進み、日本を旅行する外国人も増えています。企業の国際化、観光客誘致、町おこしなど、多様な分野の人たちが国の内外を問わず横断的に交流したり、これまで接点のなかった知識人や次世代リーダー同士の接点ができていけば、世の中に新しい価値が生まれる可能性が広がるはず。海外との文化交流でそうした機会を創出し、人々がより楽しく生活できるような世の中にしていけたら素晴らしいですね」

 

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部全体のとりまとめも業務の一つ。次年度の予算編成の見直しや報告書の作成など、デスクワークは多い。

 

二子さんのキャリアステップ

STEP1 2002年 日本関連書籍の出版支援や経理部での予算管理に携わる(入社1年目)

03年4月の入社予定だったが、02年に卒業して研究生をしていたので、研究生を切り上げて02年11月に入社。メディア事業部編集課にて、日本語書籍の外国語への翻訳・出版、外国語での日本関係書籍の出版を支援する翻訳・出版の助成プログラムに携わる。04年5月の組織改編により、芸術交流部映像出版課となったが、引き続き同じ業務にあたる。04年7月、経理部財務監理課に異動し、基金を円滑に運営するための予算要求、基金内の予算編成、予算執行の管理に携わる。06年、経理部財務企画課に異動したのちも、同様の業務に従事。予算の仕事を通して、巨額の全体予算も小さい予算の積み上げから構成されているため、緻密に作業することの重要さを悟る。

STEP2 2007年 日中交流センターにて、中国の青少年との交流促進に従事(入社5年目)

4月、日中交流センターに異動し、中国人の日本理解を深める「ふれあいの場」事業に携わる。異動後まもなく、1カ所目となる「成都(せいと)ふれあいの場」がオープン。2カ所目となる「長春ふれあいの場」は、長春市政府や長春図書館との協議・交渉から携わり、日本人の若手建築家による内装設計のプロポーザル、日本から送付する雑誌類の廉価(値段が安い)な購入・送付手段の決定など、初めてづくしの経験を積む。国際交流基金が運営を行う「主催型」のほかに、現地の機関が設置する「ふれあいの場」に対してコンテンツを提供する「助成型」の制度設計も担当し、また、現地に住む日本人留学生の協力で、日本語教室や運動会などのイベントを開催。在任中、成都、南京、長春、瀋陽(しんよう)、延吉(えんきつ)、広州など、北京・上海に比べて日本の情報に触れる機会の少ない地方都市を中心に、1年3カ月の間に、十数回、中国に出張した。

STEP3 2008年 ロンドンで総務・経理及び文化芸術・日本研究部門の責任者となる(入社6年目)

7月、ロンドン日本文化センターへの異動に伴い、副所長としてロンドンへ赴任。総務・経理の責任者として、現地スタッフと共同で家主との家賃交渉や代理人との打ち合わせ、事務所内備品の整理管理やその方法の検討などの事務所運営業務を経験。文化芸術・日本研究部門の責任者として、親日・知日(ちにち ※2)派の育成や日本研究の振興にあたり、研究者を招いた一般向けシンポジウムの企画・実行、気候変動問題に関する研究者向けの小規模イベントなどの企画・実行、助成金やフェローシップの運用にも従事。たわいのないおしゃべりの中からアイデアが生まれることもあるので、研究者をはじめさまざまな人々との付き合いを大切にした。現地では駐在員や移住者など、幅広いタイプの日本人とも出会い、事務所運営のノウハウや文化背景、考え方など、多くのことを学んだ。世代や業種を超えて増えた知り合いは、現在も自分の財産となっている。
(※2)日本の社会・文化などに対して深い理解を持つ外国人を指す

STEP4 2013年 日本研究・知的交流部で国際会議や交流事業の企画、事業計画策定に従事(入社11年目)

5月、日本研究・知的交流部アジア・大洋州チームに異動。現在はチーム長補佐として、研究者などを集めた国際会議や知識人の交流事業の企画・実施、国際交流基金が研究者に供与するフェローシップに関する事務作業、海外の大学・研究機関などを支援するための事務作業に従事。海外勤務を経験したことで、国内の情報やネットワークと海外の情報やネットワークを、同時にイメージしながら結び付けられるようになった。15年2月からは、企画調整・米州チームも兼任。実績評価や事業計画策定のための部内取りまとめ、基金内の担当部署である総合戦略課との調整業務も増えて忙しいが、「自分の周辺分野の仕事もわかり、全体のトレンドを把握できるチャンス」ととらえている。

ある日のスケジュール

10:00 4歳の長男を幼稚園へ送って出勤。メールをチェックし、対応すべきメールに返信。優先業務を確認する。
10:30 海外からのメールや前日に面会した方にお礼のメールをする。
11:30 東南アジアからのグループ招へい事業について、コンセプトや訪問先に関する打ち合わせを行う。
12:30 昼食。リレーションづくりのため、別部門の社内スタッフや外部専門家とランチに出かけることも。
13:30 デスクワーク。翌年度公募事業について、申請書などの改定作業を行う。
14:30 担当しているベトナムから来日したフェローと面談。近況などについて話を聞く。
15:30 前年度事業のフォローアップについて打ち合わせ。
16:30 バングラデシュから招へいする知識人について、日程調整・ビザ手配準備。
18:30 ベトナムの研究機関から届いた事業報告書の確認、経理部門との打ち合わせ。
20:00 退勤。

プライベート

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4歳の男の子と0歳の女の子の父親としてイクメンぶりを発揮中。週末は長男と近所の公園でサッカーをして遊ぶ。「幼稚園に送るのも僕の役目。子育ては大変ですが、楽しんでいます」。

 

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ヨーロッパ旅行でエスプレッソにはまり、ロンドンから帰国後、エスプレッソマシンを購入した。「夜、子どもが寝てから夫婦でエスプレッソやカプチーノをいれて飲むのが、至福のリラックスタイムです」。

 

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ロンドンに赴任していたころ、よく散歩していた家の近所にある「Little Venice」という名前の運河。四季を感じられるお気に入りの場所だった。写真は、2012年6月ごろのもの。

 

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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