株式会社テー・オー・ダブリュー 小久保さん(入社11年目・インタラクティブプロモーション室 プロデューサー)【先輩たちのワーク&ライフ】

こくぼ・ひでふみ●インタラクティブプロモーション室 プロデューサー。成蹊大学法学部政治学科卒業。2005年入社。出版業界に憧れを抱き、新卒で法律関係の出版社に入社。しかし、変化のない日々を過ごすうち、3年目に「クリエイティブな仕事がしたい」と考え、現社主催のプランナーズスクールを受講。半年間学ぶ中、プロモーション業界の勢いを感じるとともに、現役で働いている講師や先輩のイキイキと働く姿に魅力を感じたことから転職を決意。

入社1年目はアイデア出しの100本ノック。3年目からは次々と面白い企画を実現していくことに

華やかなマスコミ業界に憧れ、新卒で法律関係の出版社に入社した小久保さん。しかし、イメージと違う変化のない日々にギャップを感じ、現社への転職を決めたという。テー・オー・ダブリューは、展示会などのイベントの企画や運営、販売プロモーションを手がけており、クリエイティブな事業を展開する会社だ。

「入社前にこの会社のプランナーズスクールの授業を受講していたので、仕事内容そのものは理解できていました。プランナーの仕事は、広告会社の担当者からプロモーション案件の概要説明を受けることから始まります。商品のキャンペーン、イベント、サンプリングなど、案件ごとに施策のジャンルも違えば、目的もターゲットも予算も違う。発注元であるクライアントのニーズを把握した上で、自分なりにアイデアを出して企画書を作成し、広告会社のフィードバックを受けながらクライアントに満足していただけるものにまとめ上げることがミッションです」

最初の1年は、先輩の打ち合わせについて行き、そこで課題をもらってはひたすら企画を考えていった。

「見よう見まねで100本ノックのようにアイデアを出し、パワーポイントの使い方を必死で覚えながら企画書を作りました。上司からは『予算のことは考えず、とにかく面白いと思う企画を出してみろ』と言ってもらえたので、思いつくままにどんどん考えていくことに。でも、最初の1年間は、自分のアイデアを採用してもらえることはなかったですね(笑)」

「当時の自分には、その企画が実現可能かどうかという視点がなかった」と小久保さんは振り返る。例えば、銀座で花火を打ち上げるイベントを企画しても、都の条例で規制されてしまうし、商品を買った人だけに懸賞としてダイヤモンドをプレゼントするのも、景品表示法で決められている上限金額に抵触すれば実現はできない。

「自分の企画のいい点、悪い点について上司からアドバイスをもらう中、『面白いだけでなく、実現可能なものを考えなくてはダメなのだ』ということを学びました。それからは、企画内容に関連する法令や背後関係、大まかな予算なども配慮しながら企画を考案。100本ノックのこの日々は、自分にとって頭脳を磨くことができた貴重な修業期間となりましたね。常にアイデアのネタを探していたので、駅のホームで電車を待つ間もホーム内でプロモーションに使えそうなスペースをチェックしたり、電車内の中づり広告の内容を見ずにはいられなくなりました(笑)」

小久保さんの考えたアイデアがプレゼンテーションする提案内容として採用されるようになったのは入社2年目のこと。そして、3年目でようやく案件を任せてもらうことに。

「与えられたミッションは、新商品のシャンプーを“話題になる方法”でサンプリングするというもの。初めて企画を任されたうれしさよりも、『先輩の力を借りなくても、一人でできることを見せたい』という意気込みでいっぱいでしたね」

通常なら一案件に対して10本程度の企画案を出すが、この時は気合いを入れて2~3日で20本の企画を考案。広告会社に提出する前に10本に絞り、最終的に採用されたのは、自動販売機で配布するというアイデアだった。ネタ探しのために、インターネットで海外のサンプリング事例を調べた時に、この方法にたどり着いたという。

「ターゲットは20~30代の女性でしたから、設置場所は、渋谷などの感度の高い若者が集まる街にしました。われながらいいアイデアだと思いましたが、広告会社とのブラッシュアップ会議の際、目からウロコのアイデアが出てきたんです。『もっと話題性を増すため、サンプル入りの箱の中に当たり箱を作ろう。10万円を入れて、“ゴールデンパッケージと名付けよう』と。そして、事前にWeb動画を流し、話題になる構造まで作りました。僕が思いついたのは、自販機の前を通る人に向けたコミュニケーションだけ…。世の中全体に注目される方法までは考えつくことができなかったんですよね」

一緒に仕事をする人から吸収できることはたくさんあると実感。以来、その場の施策のみを考えるのではなく、世の中に広めていくためにどうすればいいかという視点を持つように変化したという。

小久保さんは、こののちも広告会社と一緒にさまざまな企画を考えていく。横浜にある商業施設の周年記念イベントでは、ビルの壁面をキャンパスに見立て、そこにレーザー光線の玩具を使って落書きしてもらう企画を実現。

「現場で実物を見た時、『頭で考えていたことを実現できたんだなあ』という達成感を味わいました。このころから、自分一人ではなく、チームでアイデアを出し合うことに面白さを感じるようになったんです。一人では思いつかないようなアイデアが出てきますし、自分のひらめきに『面白いね!』と言ってもらえる瞬間には、ヒットを打ったようなやりがいが。打ち合わせ前に予想もしていなかった面白い企画が生まれたりと、クリエイティブな仕事の醍醐味(だいごみ)を実感する毎日でした」

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チームのメンバーと一緒に、イベントプロモーションのプロデューサーと打ち合わせ。現在進行中のプロジェクトの進捗状況を共有し、スケジュールを擦り合わせる。

Web企画を学んだのち、デジタルとリアルを融合させたインタラクティブな企画を考案

入社7年目、小久保さんはデジタル・プロモーション(※1)についての知識を身につけるため、Web制作会社・面白法人カヤックに出向することになる。

「うちの会社はもともとイベントを手がける会社だったので、Webやデジタルの知識、ノウハウを持つ人材がいないという状況。そんな中、社長から『Web制作について学んでこい』との指令が。正直、プランナーで一人前になって天狗(てんぐ)になっていた鼻を折られたような気分でしたよ(笑)」

(※1)ネットやモバイル上などで行うIT技術を駆使したプロモーション

しかし、「新たなことを吸収できるチャンスだ」と気持ちを切り替え、Webにおける企画手法を学んでいく。

「今までは、キャンペーンの企画内容自体は、イベントでもWebでもなんでもアリでしたが、この期間はWeb企画に限定。限られた範囲の中でどう面白くすればいいのかを考え続け、またも新人時代に戻ったような気分でしたが、おかげでWebの世界ではどんなものがターゲットに響くのかを学ぶことができました。リアルの世界では話題性がある内容なら勝手に広まりますが、Webでは拡散されるためのツボを押さえていなければならない。どんな表現をすればSNSでシェアしたくなるのかまでを考える作業は非常に地道なものでしたが、細部までしっかりと固めた企画を考えられるようになったと思います」

半年の出向期間を経たのち、現部署のインタラクティブプロモーション室に配属に。ここでも再び新たな壁を経験することに。

「企画だけでなく、プロデューサーとして制作進行まで担当することになったんです。プランナー時代には、タッグを組むプロデューサーが予算の見積書作成やスケジュール管理などを担当してくれていたので、数字の算出やスケジュール調整までをするのは、正直、自分にとって地獄でしたね(笑)。企画作成の裏側では、プロデューサーがこんなことまでしてくれていたんだと実感した出来事です」

慣れない制作進行と並行し、これまで通りに企画作成も担当。異動直後には、アルコール飲料の夏のキャンペーンを手がけることになり、デジタル技術のAR(※2)を取り入れることに。

「広告キャラクターはデジタルなイメージのある女性ボーカルユニット。彼女たちを前面に出すキャンペーンの一環でした。ライブでメンバーが6人に増えるデジタル演出をしていたので、イベントでもデジタルな仕かけを作ろうと。そこで、缶にARマーカー(※3)をプリントし、スマートフォンの画面を向けると、そこにボーカルユニットと同じダンスをする人形が映し出される仕組みを担当しました」

(※2)Augmented Realityの略。コンピュータを利用して、現実の風景に情報を重ね合わせて表示する技術

(※3)ARシステムにおいて、情報を表示する位置を指定するための標識のようなもの

飲料の缶を使わないと見ることができないため、購買にもつながって一石二鳥と考えたが、実際には思うようにユーザーが参加してくれなかったという。

「アプリケーションをダウンロードしないと見ることができませんし、飲料を購入すること自体もハードルになったと思います。生活者とは、こちらが思うようには動いてくれないものであり、ハードルが高いほど行動につながらない。それを学んだことで、以後はハードルをなるべく低くした上で、ユーザーがやりたくなる仕かけを作るよう心がけていきました。プロデューサーは、最終的なアウトプットまで行い、サイトのアクセス数などの結果もしっかりチェックしなくてはなりません。おかげで、企画の面白さのみでなく、デザインなどの表現にもこだわり、『人が見たくなるもの、シェアしたくなるもの』を作る意識が芽生えたと感じます」

そして、2015年。小久保さんは自身の集大成とも言える企画を実現する。

「クライアントは外資系自動車会社。すでに海外では面白いプロモーション活動をやっている会社なので、『とにかく面白いことをやれ』が与えられたミッションでした。そこで、実物大の自動車を印刷した新聞の折り込み広告を配布する企画を考案。紙面の30面分にあたる巨大なこの広告を自宅の車庫に張ってもらい、『大きなイメージのある外車も、日本の狭い車庫にちゃんと収まる』ということを実感してもらおうと」

さらに、AR技術を用いて、スマートフォンの画面越しに見れば、立体の自動車が映し出され、360度回転させることもできるような仕かけを作ることに。

「自宅の駐車場にその外車を駐車しているような疑似体験ができるようにしました。これだけ巨大なものだったら、きっとアプリケーションをダウンロードしてでもやりたくなるはず! とはいえ、前例がないほどに巨大な印刷物なので、紙の調達も、印刷可能な機械を持っている印刷会社を探すことも大変でしたよ。いろんな印刷会社に当たった結果、ようやくやってもらえる会社を見つけることができました」

印刷物の制作は、ディレクションを担当する広告会社のアートディレクターと一緒に担当。クライアントのこだわりを実現するため、10回も色調(色合い)を調整していった。また、これと並行し、AR技術を手がける会社との連携や、記者発表会の実施、ギネスブックへの認定申請なども行ったという。

「企画立案から半年後、ようやく実現にこぎ着けました。折り込み広告を受け取った人の大半がARを使ってくれて、SNSでも話題になったり、大学の授業でも取り上げられたり。すごくうれしかったし、大きな達成感を得ることができました。この仕事の一番のやりがいは、テーマに沿って面白いことを考えるだけでなく、それを実現し、世の中の反響をリアルに味わえるところにあると感じます。今後も新たな技術をどんどん取り入れ、デジタルとリアルを融合させた面白い企画を発信していきたいですね」

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広告会社と打ち合わせた内容を基にアイデアを企画書にまとめる。1つの案件に対し、10本程度の企画を作成している。

小久保さんのキャリアステップ

STEP1 2005年 企画部 新人時代(入社1年目)

入社後、先輩の下につき、広告会社との打ち合わせに同行してはひたすら企画を考え続けた。週に2回程度の打ち合わせがあり、案件ごとにアイデア出しをし、それに対する広告会社からのフィードバックを受けて再度アイデアに磨きをかけるという流れだ。「1年目はまったく採用されませんでした。ですが、そういうものだと思っていましたし、周囲にはそうした期間を経て活躍している先輩たちがいたので、その姿を目標にし、『焦らず目の前のことを頑張ろう』と思えました」。

STEP2 2010年 企画部 プランナー時代(入社6年目)

入社2年目からは自分のアイデアが取り入れられることも増え、3年目以降は、自分の企画をどんどん実現していくことに。ある検索サイトのキャンペーンでは、ユーザー数に応じて沖縄にサンゴを植える企画で、デジタルとリアルを融合させるアイデアを実現。六本木に巨大なゴルフ練習場を作ったり、表参道で発表会を行ったり、恵比寿駅構内にある通路の床一面を使い、「ここまで歩けば○○キロカロリー消費」という文字を入れるカロリー計算の広告を作成するなど、さまざまなプロモーション企画に携わる。

STEP3 2011年 インタラクティブプロモーション室時代(入社8年目)

面白法人カヤックへの出向後、デジタル分野のプロモーションを手がける現部署(11年時点ではデジタル・プロモーション室。その後の部署名変更に伴い、現部署名となる)に配属。プランナー兼プロデューサーとして、企画立案に加え、見積書の作成から進行スケジュールの管理、制作物の作成まで行うことに。「企画のアウトプットや、反響を数字でチェックまで行う立場になったことで、『この企画の何がいいのか、悪いのか』がわかるようになったと感じます。また、プランナーの立場と違い、企画を実現するためにさまざまな協力会社とやりとりしなくてはならないので、人脈のネットワークが非常に大事なんです。Web制作会社やデジタル技術の会社、印刷会社など、社外の人とも積極的に交流するようになりました」。

STEP4 2015年 インタラクティブプロモーション室 チームリーダー時代(入社11年目)

15年より小久保チームのリーダーとして、部下を抱えることに。また、14年には、一緒に仕事していたWeb制作会社とタッグを組んで「1→TOW(ワン・トゥー・ダブリュー)」というユニットを作ることに。テクノロジーを駆使した双方向性の高いイベント企画を手がけ、壁面や、建築物・家具など立体物の表面にプロジェクターで映像を投影するプロジェクションマッピングや、キネクト(全身を使ったジェスチャー入力や音声認識を可能とするモーションセンサーデバイス)などを活用。「一緒に仕事をするうちに、その会社のデザイナーさんとウマが合うと感じて、社長に頼んでユニットとして活動できる体制にしてもらいました。現在は、デジタル技術を融合させたショーやゲームなど、体験による付加価値のあるイベントを展開していますね。今までにない新しい取り組みに、反響も上々ですし、どんどんアイデアが広がっていく面白さを味わっています」。

ある日のスケジュール

10:00 出社後、メールチェック。広告会社、印刷会社、Web制作会社などと毎日200通近いメールのやりとりをしている。
11:00 外出。広告会社の担当者と打ち合わせ。アイデアを出し合うブレスト(※4)や、プレゼンテーションに向けた企画書について話し合う。
13:00 別の案件の担当者と打ち合わせ。制作案件の進行報告と情報共有を行ったのち、近場の飲食店で軽く昼食を取る。
16:00 帰社。社内のデザイナーやチームのメンバー、印刷会社やWeb制作会社などの協力会社を集めて打ち合わせ。広告会社と話し合った内容を共有。制作物のデザインやディレクションも行う。
18:00 デスクワーク。打ち合わせの内容を資料に反映したり、アイデアを企画書にまとめるなどの作業を行う。
22:00 退社。後輩と一緒に軽く一杯飲みに出かける。

プライベート

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週に2~3回は飲みに出かける。社内のメンバーはもちろん、社外の仕事仲間とも頻繁に飲みに行くそう。「技術的な話や業界の新しい情報などを聞くことができるので、刺激になりますね!」

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プライベートは子どもが中心。週末にはいろんなところに出かけている。写真は15年の夏休みに、ふなばしアンデルセン公園(千葉県)に出かけた時のもの。「外国人に人気のテーマパークとして話題になっていたスポットです。子どもと一緒にリフレッシュしつつ、今のトレンドをチェックしてきました」。

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子どもの同級生とは家族ぐるみで付き合いをしている。写真は15年8月に同級生宅で花火をした時のもの。「プールや商業施設などにも出かけています。子どもと一緒にいろんな思い出づくりをするためにも、こうした付き合いは大事にしています」。

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

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