アサヒグループ

みうら・いちろう●人事部 採用・成長支援グループリーダー、ダイバーシティ推進担当、次長。青山学院大学文学部日本文学科卒業。1994年入社。就職活動では営業を志望し、幅広い業種約60社に応募。中でも、他業種に比べて営業担当者の努力や活動がシェア向上に大きく影響する食品・飲料業界にひかれていた。アサヒビールへの入社の決め手は、選考などを通して出会った社員が皆、本音で話す人ばかりで、そのオープンな雰囲気にひかれたこと。

地道な苦労を重ねながら自分のスタイルを確立した営業時代

「ビールは他社と大きな差を生みにくい商品。だからこそ、自分を売り込むことが成果につながる。努力して『あなたがいるから、アサヒの商品を使うんだよ』と言ってもらえるようになるのが楽しいし、やりがいに思う」。

 

就職活動で出会ったアサヒビールの社員から聞いたこの言葉にひかれて、ビールメーカーの営業を特に志望していた三浦さん。入社後は希望がかない、酒販店やお酒の卸業者、飲食店などに営業を行う業務用営業を担当することになったが、配属された新潟支社では大きな失敗を経験した。担当顧客の中で最も大きな酒販店を出入り禁止になってしまったのだ。

「酒屋さんに案内できていない商品を、その卸先である飲食店さんに先に案内してしまったんです。ビール業界では、商品はメーカーから卸業者さん、酒屋さんを経由して飲食店さんに届きます。また、代金も、卸業者さんや酒屋さんがそれぞれの卸先から回収する。飲食店さんが新しい商品を採用するとなると、卸業者さんや酒屋さんは在庫を調整し、代金回収にかかる手間も増えますから、まずは卸業者さんや酒屋さんに話を通した上で飲食店さんに案内します。入社後の研修で学んだはずなのに、『良い商品を売り込むことがメーカーの仕事』という思いが強くなりすぎて、順番を間違ってしまいました」

 

このような経験もあり、「当初は営業としてさんざんだった」と振り返る三浦さん。自分なりの成功パターンを確立するきっかけを得られたのは、入社3年目、新潟市内の大手業務用酒販店を担当していた時だった。

「引き継ぎのあいさつにうかがった時に、『うちはアサヒを売らないことに決めてるから』と言われて、悔しくて『一度だけチャンスをください。アサヒがダメなら、まず、三浦という人間に宿題を与えて、応えっぷりを見てください』とお願いしたんです。すると、ふとした時に、『あるカラオケチェーンが、駅前に新しく居酒屋をオープンするんだけど、何かいい提案をしてもらえる?』と言われて。ひと晩で駅前エリアの繁盛店の分布と繁盛要因の分析、これらをふまえたランチメニューと、居酒屋としてのスタイルやコンセプトなどについての提案をまとめて翌日持っていったところ、『アサヒにしよう』と言っていただけたんです」

 

そこから、提案が評価されたときには、別の案件についての提案も求められるなど、信頼が深まっていった。

「『踏み込んだ提案を持っていって、お客さまに喜んでいただく』という自分の勝ちパターンを得られた経験でした。ここから、仕事が面白くなっていったように思います」

 

こうして自らの営業スタイルを確立し、5年目には念願の東京支社勤務に。当初は「踏み込んだ提案を持っていって、喜んでいただく」というスタイルを生かしにくい個人の酒販店などを担当し、競争の激しさも相まって苦労したが、徐々に成績を伸ばし、大手業務用酒販店を任されるまでになった。顧客と信頼関係を築く上で心がけていたのは、規模の大小や地域を問わず「お客さまの話をよく聞くこと」だったという。

「自分からペラペラしゃべらず、まずはお客さまが何を求めていて、何に困っているか、本音を聞き出すことを意識していました。最初は話していただけなくても、沈黙を恐れずに、相手が話してくださるのを待つんです。そして、悩みや要望がわかれば、一つひとつにきっちりと応えていく。そうすることで、信頼の深さが増していきました」

 

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面接の結果を持って、応募者の合否について議論する。採用方針や本人のビジョンなどをふまえて慎重に議論を重ねる。

 

「人と組織」に興味を持ち、人事部門へ

営業の仕事にまい進する一方で、新たな興味も生まれていた。人材育成や組織づくりなどの分野だ。きっかけは、7年目から営業の仕事とともに取り組んでいた、労働組合の支社支部長。さまざまな部署に会社の制度を説明したり、意見を聞いて回ったりする中で、前向きな組織を作ることが業績に大きく影響することを実感し、興味がわき起こってきたという。そんな時、偶然にも人事・総務部門への異動希望者の社内公募があり、悩んだ末に応募。10年目に異動することになった。

 

担当したのは、営業統括部門での営業担当の研修。業務用営業と量販店営業の成功事例を分析し、営業担当の育成の仕組みや研修プログラムに落とし込む役割を担った。

「いろいろな成功パターンについて、何をどのような手順で進めているのかを分析し、営業担当者に共有する仕組みや研修を作りました。営業現場にいたからこそ現場の課題や営業担当者たちの要望が実感を持ってわかり、そのことが研修などを作る上でおおいに役立ったと思います。人材育成や組織づくりを担う組織から全社に影響を与えていくという経験を積むことができました」

 

13年目には人事部に異動し、評価や配置、マーケティングや国際事業の研修企画などを担当。途中、3年弱のアサヒグループホールディングスの社長秘書業務を経て、21年目の2014年から再び人事部に戻り、採用や研修、ダイバーシティ推進などを担当している。これまで、将来国際事業を担うことができそうな人材を原則1年半アサヒグループの海外事業会社に派遣する制度「グローバル・チャレンジャーズ・プログラム」の立ち上げや、16年卒業予定者向けの新卒採用のスケジュールが従来から大幅に変わったことに対応した採用方針づくりなど、何度も「答えのないところに答えを作っていくこと」に挑戦してきた。

「例えば採用や育成は、いろんな人がいろんな思いを持っている分野ですし、採用は環境変化が激しく、育成は正解のない世界です。その中で、関係者の意見を集約し、当社の置かれた環境とその変化を読み取って制度や仕組みを作っていくのは、難しいですが、やりがいのあることだと感じています。心がけているのは、現場で働く社員も含めて、いろんな人に話を聞くこと。そして、現場の声を知り、集めた情報を基に作ったたたき台を皆にけちょんけちょんに批判してもらい、さらに改善していく。それが、良い仕組みを作ることにつながると感じています」

 

営業を9年、人事・総務、秘書業務などを12年あまり経験してきた三浦さん。将来的には、海外事業にも挑戦したいと考えている。

「アサヒグループホールディングスの社長秘書を務めていたとき、M&Aによって世界中の食と健康に関する企業と提携し、どんどん仲間が増えていく様子を間近に見てきました。そんな仲間と会社をさらに成長させていける。これが、当社で働く醍醐味(だいごみ)ですし、グローバル市場での成功が、今後の当社の成長の鍵を握っています。私にはまだ海外勤務の経験がないので、ぜひ携わりたいですね」

 

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採用面接では、できるだけ応募者の緊張をほぐすよう努めている。ときには、本社がある東京・浅草の景色を窓から眺めてもらうことも。

 

三浦さんのキャリアステップ

STEP1 1994年 業務用営業担当として、新潟支社に配属(入社1年目)

約1カ月間の研修ののち、東京都内の業務用営業を担当する部門に仮配属されるが、9月の本配属で新潟支社に勤務することに。三条市をはじめとした新潟県央地域の約300の酒販店や卸業者を担当した。2年目から新潟市内を担当したのち、5年目に東京に転勤。葛飾区の担当に始まり、成績が伸びるに従い、飲食店専任、大手業務用酒販店と規模の大きな顧客を担当するようになった。

STEP2 2003年 営業部人材開発課に異動し、営業担当者の研修・育成を担当(入社10年目)

営業統括部門の研修担当として、業務用営業と量販店営業の成功事例の営業プロセスを分析し、営業担当の育成の仕組みや研修プログラムに落とし込み、実施するという役割を担った。その後、13年目に人事部に異動し、社員の評価・配置を主に担当。さらに、マーケティングや国際事業の研修企画も担当し、同僚と共に「グローバル・チャレンジャーズ・プログラム」を立ち上げた。

STEP3 2011年 アサヒグループホールディングスの社長秘書に(入社18年目)

泉谷直木代表取締役社長兼COO(現・代表取締役社長兼CEO)の社長秘書として、情報収集を担当。社長が翌週に会う人物や訪問先に関する情報を整理し、インプットする役割を担った。「1分1秒も無駄にせず、最後の最後まで突き詰めて会社のことを考える真摯さや、時間が空いている限り社長室の扉を開き、社員が相談に訪れるとどんなに忙しくても手を止めて話を聞くオープンマインドな姿勢…。トップの姿を濃厚に見聞きさせていただいた期間でした」。

STEP4 2014年 人事部に戻り、採用、研修、ダイバーシティ推進の担当に(入社21年目)

5人の部下と共に、採用や研修、ダイバーシティ推進などを担当。現在は、2016年から始まる3年間の中期経営計画に盛り込む採用・育成計画の策定にも奔走している。これまでリーダーという立場で2人の部下を見た経験はあったが、5人の部下のマネジメントは初めて。「泉谷社長に倣ってオープンマインドな姿勢を心がけていますが、忙しそうと思われたり、ほかの予定が入ってしまって部下を優先してあげられなかったりと、自分自身の予定組みだけではない、チーム全体の段取りを組み立てる難しさを感じています」。

ある日のスケジュール

7:20 出社。メール対応や承認業務、中期経営計画や採用に関する資料作成などを行う。日中は会議や打ち合わせの予定で埋まることが多いため、朝の2時間〜2時間半をデスクワークに集中する時間にあてている。
10:00 社員が自主的に手を挙げて受講する「選択型研修」の内容に関する部内打ち合わせ。
11:00 中期経営計画の策定に関する部内打ち合わせ。採用に関する中期的な取り組みや方向性について議論する。
12:30 社員食堂でランチ。その時席にいる人事部のメンバーと一緒に食べに行くことが多い。
13:30 採用ホームページの内容について、デジタル戦略部と打ち合わせ。
15:00 アサヒグループ外の他社に1〜2年程度社員を送り出す「社外武者修行研修」の発表会に参加。運輸会社に出向していた社員の報告を聞く。
17:30 退社し、同僚と飲みに。飲みに行くのは週3回ほど。飲みに行かない日は、18時半か19時半ごろ退社することが多い。

プライベート

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週末は家族に料理を振る舞う。「冷蔵庫にある食材などを『クックパッド』に入力して、おいしそうなレシピを見つけて再現しています」。写真はお子さんと一緒にサラダを作っているところ。

 

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ビジネス書から古典まで幅広いジャンルの本を読む。「自分では経験できない世界を最も安く追体験できるのが読書の良さですね」。最近読んで面白かったのは、マルクス・アウレリウスの『自省録』とのこと。

 

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同僚と仕事帰りに一杯。「一神教アサヒ教信者です」と言い張り、外でも自宅でも、ビールは「スーパードライ」で。「量を飲まないときは、『ドライプレミアム』をチョイス。重厚感のある味わいを、ゆっくりとかみしめます」。

 

取材・文/浅田夕香 撮影/刑部友康

 

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