経済産業省 出光さん(入社7年目・資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課 課長補佐)【先輩たちのワーク&ライフ】

いでみつ・けいすけ●資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課 課長補佐。京都大学総合人間学部総合人間学科卒業。2009年入省。高校時代に地元・長崎の市街地がどんどん衰えていく様子を見て危機感を抱き、「地域活性化に携わりたい」と考えるようになる。民間企業を中心に就職活動を進める中、合同説明会で経済産業省の存在を知り、興味を抱く。「日本全体の経済政策に携わり、地域が抱える課題に本質的にアプローチすることが地域活性化につながる」と考え、入省を決意。

省内全体を取り仕切る部署に配属され経験を積んだ後、2年目に震災が発生

高校時代から地域活性化の必要性を強く感じていた出光さん。日本全体の経済成長に貢献し、根本的な解決策を見つけていきたいと考え、経済産業省で働く道を選んだという。

入省した当日、大臣官房総務課に配属。そこは省内全体のマネジメントを手がけ、産業政策や貿易・投資政策、エネルギー政策、中小企業政策、知的財産政策など多岐にわたる行政分野を有機的に連携させて、外部にどんな政策を発信していくかを取り仕切る部局である。

「最初の数カ月は、1年上の先輩に教えてもらいながら仕事を覚えていきました。最初に担当したのは、新聞記事における経済産業省関連のニュースをチェックし、大臣や事務次官などの幹部が把握すべき情報をピックアップする作業でしたが、どのニュースが重要なのか判断がつかず途方に暮れました」

1年生は、省内のいろいろな部署に配属された同期と密に連絡をとり、情報を収集・整理して幹部に共有したり、大臣・副大臣などが集まる幹部会議の議題を整理し、資料を作成して運営することなどが主要な仕事だ。

「各部局から、日々大量の情報が入ってきますが、そこから幹部が把握しておくべき重要事項をどうピックアップするかが非常に大事です。なぜなら、その情報が大臣まで上がり、省としての意思決定や政策の発信につながるわけですから。定期的に行われる幹部会議の準備では、こうした情報をもとにどの案件を取り上げるべきかを精査し、関係部局が用意する資料を取りまとめていきました。関係者のスケジュール調整や諸連絡事項の伝達なども、自分の仕切りが悪ければ会議がうまくいきませんから、最初はすごく緊張しましたね。これらの仕事を通じて、何をいつまでに行い、どんな資料を用意すればいいのか、いつ使うのかなど、全体の工程を考える経験を積むことができたと思いますし、瞬時に情報を把握してスピーディに周囲と共有していく“瞬発力”も身につきました」

入省から半年後、出光さんは大臣がスピーチする内容として、省としての見解を統一する作業を一から任されることに。

「毎年国会が始まるときに、大臣が『この国会で何に取り組むか』を表明するスピーチがあります。大臣の見解は省全体の見解なので、十数の部局からの意見をまとめ、省全体の総意を伝える内容にしなければなりません。上司からも各部局の担当者からも数えきれないほどの指摘を受けましたし、それらを調整してまとめることにものすごく労力がかかりましたね。それまで、たくさんの情報が飛び交う中で何が重要事項であるかをつかむ感覚を研ぎ澄ませてきたつもりでしたが、結局、自分が最初に作った原案は、書き出しの部分しか残らなかった(笑)。入省1年目は、組織全体を見渡す感覚と、多くの関係者との調整により落としどころを探る感覚を身につけた時期だったと思います」

入省2年目が終わりを迎えるころ、東日本大震災が発生。出光さんが在籍していた課は、各部署でどのような緊急対応が行われているのかを把握し、迅速に指示を出すためのオペレーションルームに。

「集合した幹部が素早く意思決定できるよう、全体の動きを整理し、幹部に伝えることがミッション。余震が続く中、何が起こるかわからない状態だったので、24時間態勢で動けるよう交代制のシフトを組んでいましたね。とはいえ、自分にできることは上司の仕事を必死にサポートすることのみで、普段と比べものにならないスピードで大量に入ってくる情報を、目の前のものからひたすら処理していました。それまでの2年間で鍛えられた瞬発力を生かすことができたと感じます」

資源エネルギー庁の省エネルギー対策課に異動することになったのは、それから3カ月後のこと。震災以降電気が足りない状態が続く中、「国民生活や経済活動に支障が生じないよう、電力需要がピークとなる夏を、停電させることなく乗り越えること」が当時の資源エネルギー庁のミッションだったという。

「計画停電を避けるためには、世の中全体の節電意識を高めなくてはなりません。そのため、この課では、家庭や中小企業に向けて節電の必要性を発信し、どのような対策を行えばよいかを広報する活動を集中的に行っていました。」

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エネルギー関係の国際会議にも参加している。写真は、2012年11月、国際規格ISO 50001(エネルギーマネジメントシステム)の国際会議を日本に誘致・開催した時のもの(後列左から2番目が出光さん)。

入省3〜4年目、省エネ法の改正に尽力。現在は原子力政策に携わり、行政官としての使命をより強く実感

省エネルギー対策課に異動した当初は、エネルギーの専門知識が何もないまま飛び込むことに、大きな不安を感じていたという。

「大臣官房総務課にいたころから、省内の各部局の政策に関する資料を読むように心がけていましたが、エネルギー関係の資料は専門用語が多く、わからないことばかり。省エネルギー対策課に異動したら、業務に関する資料をひたすら読みあさり、会話の中で知らない言葉が出てくればすぐに調べ、インプットを続けた結果、次第にスムーズに業務に取り組めるようになりました」

課内の各担当者が、メディアに出す広告の確認作業や携帯電話に緊急時の節電要請を連絡するための調整など、それぞれ節電の仕事に追われる中、出光さんは、作業全体の進捗状況を把握し、業務の偏りがないよう課員をサポートしたり、官邸で行われる会議で状況を説明する資料の作成などを担うことに。

課内のメンバー二十数名とやりとりしながら、それぞれの案件の進捗状況を確認し、集めた情報や経験を生かしてフォローを行っているうち、出光さんは「いかに課全体でうまく仕事を回せるか」を考えるようになる。

「当時は、節電対策の広報・啓発活動だけでなく、補正予算で数百億円規模の事業を要求するための膨大な資料作成や、省エネ法という法律の改正に向けた議論の場を立ち上げる準備もしなくてはならず、課内全体で尋常でない作業量を抱えている状況でした。優先順位をつけながら次にやるべきことを決めていかねば、とても回していけないと感じ、課内の窓口としてメンバー全員とかかわる立場の自分が、組織マネジメントの視点を持ってバックアップしていこうと考えたんです」

いかに全体を効率化・合理化をしていくかを考えるだけでなく、各担当にまたがる仕事の分担や調整をしていく際には、相手が抱えている業務量の状況を考えたうえでお願いすることに。また、仕事をお願いするとき以外でも、普段から課員とコミュニケーションを取ることで、信頼関係を築くように心がけたという。

「非常に多忙な時期でしたが、課員一丸となり、チームとして一体感を持って取り組むという素晴らしい経験ができたと感じます。また、入省後初めて、“省エネ・節電対策”という具体的なミッションを与えられたことで、自分も国全体の利益に貢献するための仕事の責任の一端を担っているのだと強く実感。使命感がより高まったと感じます」

一方、省エネ法の改正にも携わり、改正案を検討する会議の立ち上げから法案の成立までの一連のプロセスを経験。

「省エネに知見が深い有識者、専門家、産業界の方々に会議への参加をお願いするところからスタート。僕は、月に数回の会議開催の段取りをつけて資料を作ったり、そこで議論した内容を報告書にまとめるなどしていきました。改正案は、方向性が決まった後、臨時で結成されたチームで法律案の形にまとめられ、関係各所との調整に苦労しつつも、何とか閣議で決定され、国会に提出されました。国会で審議される際には、前日に100を超える論点について整理し、当日朝に大臣などの幹部に論点を把握してもらってから臨まなければならないので、まさに時間との勝負でしたね。合計20時間弱の国会審議を経てようやく法案が成立した時には、検討開始からのいろんな苦労がよぎり、『ここまでようやくたどり着いたんだ』と達成感を感じ、不覚にも泣きそうになりました」

2013年、出光さんは現職の原子力政策課に配属される。原子力政策の企画立案を手がける課だ。

「政府のエネルギー政策において、原子力をどう位置づけるか、将来どれくらいの量が必要かなどを決定し、それを実現するための施策を一つひとつ作り上げていくことがミッションです。ここでも有識者の方々からなる会議を編成し、月2回、さまざまなテーマで議論を重ねる場を作ることになりました」

課長と一緒に、大学の教授、企業の幹部、ジャーナリスト、教育関係者など、さまざまな見識を持つさまざまな立場の方を100名近く訪問して意見交換し、今後どのような内容を議論すべきかを見極めていったという。

「省エネ課にいたころは、主に会議開催の段取りを任されていましたが、今度は、資源エネルギー庁や経済産業省、政府全体の動きまで把握したうえで、いつ何をどの会議の場で議論すればよいかを全体的にコーディネートする役割を担当することになりました。自分が担当する内容だけ考えていればよいわけではなく、世の中で何が起き、どんな議論がされているかを把握した上で、いま国として何をすべきなのかを考えなければなりません。視野を広げなければ本質的な議論にたどり着けないのだと強く感じましたね」

震災以降、エネルギー政策は激動の時代を迎えていると出光さんは語る。

「震災を機に、エネルギー政策について関心が高まっています。われわれは、目先の利害にとらわれず中長期的な視点を持って、国全体がどのような方向に進んでいくべきか、そのためにどう取り組んでいくべきかを常に考えなければなりません。福島への責任を果たしながら、国民の生活や企業の経済活動に支障が出ないようエネルギーを安定供給すること、燃料価格が高騰する中で経済の効率性を考えること、地球温暖化対策を考えること。これら全体のバランスを見て、最適化していくことが重要なのです。われわれが考えなくては誰も考えないことであり、その責任の大きさはプレッシャーである一方、やりがいの大きさでもある。入省した時の思いを常に大切にして、まずはエネルギー政策を通じて、日本全体の経済に貢献していきたいと思います」

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チームのメンバーと会議。電気事業法改正の内容を確認しつつ、今後検討しなければならない論点を検討。

出光さんのキャリアステップ

STEP1 2009年4月 入省直後の研修時代(入省1年目)

入省後、全省庁の新人が集まる1週間の合宿研修に参加。総理大臣をはじめとする政財界の重鎮から国の状況や職務についての思いなどの話を聞き、行政官としての心構えを学んだ。
この後、大臣官房総務課で約1カ月間、仕事をした後、5週間の全省庁合同合宿研修に参加。介護施設や地方自治体で、介護の現場や道路・水道などのインフラなどを見て回った。「僕は宮城県の小さな自治体を訪問しましたが、どこの地域でも高齢化が進み、産業振興や経済の活性化に悩んでいることは共通だと感じました。さまざまな課題を解決していくことによって日本経済が成長していくということを肌で学び、これから何十年か働く政府ができることはたくさんあると実感できたと思います」「省をまたいで同期と交流し、人脈作りができました。この時に仲良くなったメンバーとは、今でも年に数回飲みに出かけたりしています」。

STEP2 2009年4月 大臣官房総務課時代(入省1年目)

省内全体のマネジメントを手がける課に配属。上司に呼ばれても反応が鈍く目の前の作業に没頭していたり、目上の人と話すときに座ったまま話したりと、学生気分が抜けていないことで上司から叱られる。「上司に『礼節がなっていない人間がどう見られるのかを考えなさい』と指摘されたことで、自分の発言や行動には責任が伴うのだと痛感。いついかなるときも国家公務員として見られる以上、人としてもきちんとした行動をしなくてはいけないと意識をあらためました。また、大臣など幹部が集まる会議を取り仕切る中、学生時代とは違い、社会人とはあらゆる可能性に頭をめぐらせて段取りをつけなければ、責任を果たせないのだと考えるようになりました」。

STEP3 2011年6月 省エネルギー対策課時代(入省3年目)

節電の推進や省エネ法の改正、予算要求などを手がける。課のメンバー二十数名をはじめ、省エネルギー・新エネルギー部内、資源エネルギー庁内、財務省や国土交通省など他省庁、民間企業の方々など、さまざまな人とかかわることに。「課内全体のコミュニケーションをスムーズにすることを心がけ、膨大な作業でも効率的に仕事ができるように一人ひとりをサポートしていこうと心がけました。本当に忙しくて、終電で帰れずに泊まり込むこともありましたが、何とか計画停電せず夏を乗り切ったことで『自分の仕事で少しでも社会に貢献できたんだ』という大きな達成感を味わうことができたと思います。異動から5カ月後、自分の誕生日の時に課員のみんながケーキを用意してお祝いをしてくれて、すごくうれしかったですね。今でも当時のメンバーとは強いきずなで結ばれています」。

STEP4 2013年6月 原子力政策課時代(入省5年目)

原子力政策の企画立案を行う部局に異動。原子力だけでなく、エネルギー政策全体でどんなことが行われているかまで把握した上で、政策を形作っていく。「配属当初は専門的な知識はまったくありませんでしたが、福島を訪問したり、各地の発電所を視察したり、電気事業者などの業界の人々に話を聞くなどして知見を蓄えていきました。現在、電気料金が高騰し、全国の中小企業が苦境に追い込まれていますが、エネルギー政策に携わることで、地域の産業を支えることは、『地域活性に貢献したい』と考えていた入省当初の思いと一致しています。今後もいろんな分野に携わって、地域と日本全体の課題解決に携わっていきたいと思います」。

ある日のスケジュール

8:00  定時より早めに出勤し、月に数回開催される有志の勉強会に参加。エネルギー全般に関する知識を有識者や専門家に教えていただく。
9:30 メールチェック。一日平均100通、多ければ300通のメールに目を通し、やりとりをしている。
10:00 エネルギー政策を議論する審議会に参加。
12:00 同期の仲間と近場のレストランでランチタイム。
13:00 幹部に審議会の結果を報告し、今後の方針を相談した後、チームで打ち合わせ。
15:00 外出。電気事業者やシンクタンクを訪問し、エネルギー業界における現況や今後の見通しについて議論。
17:00 省に戻り、議論の結果や翌日の打合せに必要な資料をまとめる。
業務が終了次第、適宜退庁。早く退庁できた日は、同期と食事を楽しんでいる。

プライベート

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大学時代、吹奏楽団に所属し、トランペット奏者として活躍。社会人になった現在も、趣味で月に1回河原でトランペットを吹いている。「大学時代も河原で練習していました。無心になって集中できるので、いいリフレッシュの時間になっています」。

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東日本大震災の被災地となった福島県をプライベートで定期的に訪問。写真は2014年4月に農業法人を訪れた際に植林を手伝った際のもの(左が出光さん)。「自分の仕事の延長線上にある地域の現状をより深く知りたいと考え、同期など職場の仲間と一緒に訪問を続けています」。

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前の職場の仲間と今でも非常に仲が良く、20名近い大人数で半年に一度くらい旅行に出かけている。写真は2014年10月に長野県の上高地に行った際のもの(左が出光さん)。「震災直後のエネルギー政策激動の時期を共に過ごした仲間でもあるため、深いきずなで結ばれていますね」。

取材・文/上野真理子 撮影/鈴木慶子

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