三菱地所株式会社

いなだ・たつき●丸の内開発部。東京大学経済学部経営学科卒業。2012年入社。「チームの一員として自ら動き、“みんなで何かを達成する喜び”を味わう仕事がしたい」と考える。共同事業者や地権者、行政機関、設計会社、施工会社と一緒に一つのプロジェクトを推進するデベロッパーの仕事に興味を持つ。現社に入社を決めたのは、選考の過程で出会う社員に対し、「学生にも真摯に対応してくれる。こんな人たちと一緒に働き、自らもそうなりたい」と感じたため。

入社1年目、「丸の内開発」の部署に配属。何年もかける開発プロジェクトに携わり、スケールの大きさを実感

チームの一員として自らどんどん動きながら、みんなで一つのことを達成していくような仕事がしたいと考えていた稲田さん。一つの建物を完成に導くために、立場の違う関係者の意見をまとめてプロジェクト全体を推進する再開発の仕事に大きな魅力を感じたという。

 

入社後の研修を受けたのちに配属されたのは、東京・丸の内エリアの開発を手がける部署だった。

「丸の内の開発は、規模が大きく、関係者も多く、スケールが非常に大きいです。『いつか携わりたい』と思っていた部署にいきなり配属され、うれしさを感じる反面、『何もわからない新人の自分に、できることがあるのだろうか』というプレッシャーも感じました。最初のうちは、先輩と一緒に関係各所との打ち合わせに参加し続ける日々。不動産や建築の知識もまったくなかったので、わからない言葉が出てくるたび、しらみつぶしに調べていきました」

 

稲田さんは、丸の内周辺エリアにおける「中規模ビルの新規開発」と「丸の内周辺に土地・建物を所有する事業者に向けた開発コンサルティング」を主に手がけるチームに入り、西新橋の中規模ビルの開発を担当することになる。

「想像以上にかかわる人が多く、その上、プロジェクト自体は何年も前から始まっているので、まず、『これまでどのような経緯があり、どのような関係者がいるか』という全体像を把握することが大変でした。登場人物も話の文脈もわからないし、それらの人々がどのような意見や考えを持っているのかは、ネットや本で調べることができません。打ち合わせに参加しながら一つひとつ把握していくところからスタートしました」

 

社内の営業、管理、コーポレートなどの各部署をはじめ、設計会社や施工会社、さらには、共にプロジェクトに投資する共同事業者など、プロジェクトの関係者は多岐にわたる。

「事業の決定からビルの解体、着工、完工まで、開発におけるさまざまなプロセスには想像以上に多くの人がかかわっていくものなのだと知り、時間をかけて積み重ねられてきたスケールの大きさを実感しました。とはいえ、私が担当した時点でその建物はすでに着工しており、7〜8割方までプロジェクトは進行済み。施工会社とのやりとりを中心に、スケジュールとコストの面で予定通りにプロジェクトが進んでいるかをマネジメントしていきました」

 

一方、コンサルティングの仕事では、経験も知見も豊富な先輩たちの活躍ぶりに驚きながら、とにかく迷惑をかけないように必死でついていったという。

「丸の内周辺に土地・建物を持つ事業者に対し、当社が持っているノウハウを生かして開発するメリットや、どのような手法とスケジュールで開発を進めていくべきかを提示し、利益の最大化を目指す提案をします。事業者の代わりに行政機関や施行会社との対外的な協議と調整を行い、各方面からの意見をまとめた上でアドバイスも行います。例えば、再開発について、どのような制度を活用すべきか、それによって得られるメリットと共に提案していきますが、実に多様な制度があるので、まずはそれらを把握し、理解していくだけでもひと苦労でした」

 

法律や不動産についての専門知識などは、プロジェクトの進行に合わせて必要なものをその都度覚えていくことに。関連する文献を読むなど、自分なりに理解を深めるよう努力を続けた。

「何でも軽々とこなしてしまう先輩たちの一挙一動から目を離さず、とにかくマネできる部分はマネしていくよう心がけました。やがて、『わからないことがわからない』状態から脱却し、全体のスケジュールや、それぞれの局面で注意すべきことなどが少しずつ見えるようになっていったと感じますね。振り返ればこの時期の経験が、プロジェクトの取りまとめをするようになってから役立っていると思います」

 

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開発チームの同期から、建物概要のパンフレットについて意見をもらう。過去の物件や競合他社のパンフレットを見ながら、どのような内容にすれば物件の魅力が伝わるのかを考える。

 

入社2年目、丸の内エリアの複合ビル案件の担当に。入社3年目には行政機関との交渉も任される

入社2年目、稲田さんは担当物件の変更に伴い、丸の内エリアの大規模開発案件に携わることに。

「開発の仕事というものは、案件ごとの個別性が強く、そのスキーム(枠組みを伴った計画)や事業経緯、関係者とのかかわり方もプロジェクトにより異なります。はじめに担当したプロジェクトの全体像をようやく理解できたころに、再びゼロから新たなプロジェクトの背景を把握していかねばならず、振り出しに戻ってしまったこともあります。『また先輩に迷惑をかけてしまうのか』とため息が出ましたが、とにかくドンドン吸収していこうと考え、前向きに取り組むことを決意しました」

稲田さんが新たに担当したのは、丸の内エリアの大型複合ビルの開発。自社所有ビルと、同じ敷地内に位置する共同事業者の所有するビルを含めた計3棟のビルを建て替え、“1棟の複合施設”とするプロジェクトだ。丸の内は皇居周辺エリアに位置し、周辺との景観に配慮したまちづくりを推進していく必要があるため、建物の外観に対しても行政機関や有識者などと相談しながら決定していく必要があり、かかわる人の数はどんどん増えていく。

「週に一度、共同事業者と協議を行う共同事業者会議を開催しています。事前に行政機関と話し合った内容を報告した上で、『どのような制度を活用していくのか』『予算内におさめ、かつ、規制をクリアする外観とは』など、段階ごとに決定していくべき事項を話し合います。共同事業者にとって、ビルは大切な資産。それぞれの意見をしっかり吸い上げた上で、コストの面でも納得できる内容にすることが大前提。また、行政機関の認可を得られる内容としなくては、着工することもできないのです」

 

会議の議題から議事進行の流れまでを考えるのも、稲田さんのチームの役割。そのため、1週間のうちに起きたことをすべて把握し、翌週の進捗について予測を立てながら会議の方向性を考えていったという。

「プロジェクトの中心に立つのは私たちのチーム。会議の内容を行政機関との協議で提出する資料に落とし込むことも私たちの仕事でしたし、いろいろなことが同時進行で動くので、何をいつまでにやらねばならないのか把握するのが大変でしたね。膨大な資料の作成と、関係各所との細かなやりとりが求められる中、すべて取りこぼさないためには、それぞれどのような目的のために必要なのか、どのようなプロセスを経てこの事業が進んでいくのかを理解しなくてはならない。いつまでに何がどう動くのかという一日ごとのスケジュールを作成し、自分なりに整理していきました」

 

入社3年目、チームから先輩が1人異動したことで、稲田さんの活躍するフィールドは一層広がり、行政機関との交渉も担当することに。東京都や千代田区、国交省など、それぞれの担当者から意見をもらうため、関係各所に何度も足を運び続けたという。

「最も大変だったのは、『都市再生特別地区』の制度を活用するための提案でした。これは、都市に貢献するような提案を民間企業が行った場合、インセンティブとして建物の容積率をアップできる(通常の基準より、より高層の建物を建築することが可能)という制度です。提案が認められれば、建物の床面積が増え、事業性を高めることができ、地域貢献内容によっては、今後のエリア開発にもプラスの影響を与えることも可能となります」

 

多いときには週に3〜4回は東京都庁に足を運び、行政機関と協議を行う。それらを反映しながら、開発の青写真を描く社内の部署と連携して提案内容を整理。設計会社と提案の詳細を二人三脚で考え、共同事業者から了承を得るという流れを繰り返した1年後、3つのポイントを目玉とする提案が完成。

「1つ目は、鉄道事業者の了承も得て、各路線を地下通路でつなぐ歩行者ネットワークを作り、利用者の利便性を高めること。2つ目は、災害時の帰宅困難者を受け入れる体制を作ると同時に、非常時の送電などでエネルギーネットワークを作ること。そして3つ目は、近隣の国際会議場なども含め、このエリア全体で国際会議などを開催できる土台作りをすること。さまざまな関係者との協議を重ね、提案を行った結果、最終的に無事提案することができ、行政機関からも認可を受けることができました。多くの方の協力を得て、ようやく提案にたどり着くことができ、感無量でしたよ!」

 

稲田さんは、この時期から自分の判断力を生かし、中長期的な視点で物事を考えられるようになっていったという。

「共同事業者を説得する際にも、理想的な結論に導くための説得方法を考えていきました。どのような資料を準備し、どのような説明の仕方をすれば最もゴールに近づくかまで考えることが重要です。例えば、外観の設計では、予算を抑えつつデザイン上の高級感を両立させ、かつ、行政機関の認可が下りるプランにすることが命題です。上司や設計会社の担当者にも相談を行い、何度も提案を作り直し、最終的に説得力ある内容に落とし込んだ。その結果、全員に納得してもらうことができました」

 

このプロジェクトは、2015年の11月に着工し、18年10月に完工が予定されている。

「現在は、ビルにどのような機能を導入していくのかという提案を考えている真っ最中。例えば、このビルが面する丸の内仲通りには2階にテラス席のある店舗がないので、そのような店舗計画も盛り込んでいけたらと考えています。都市開発の仕事は、長い時間をかけて作業を積み重ねていくため、華やかさよりも地道な部分が大きい。しかし、多くの人々の考えをまとめ上げ、プロジェクトを進めていく過程には大きな達成感がありますね! それに、国際的な玄関口である東京駅や、国を象徴する皇居を擁するこの丸の内エリアは『日本を代表する街』と言えますし、私たちが携わる建築物は100年規模でそこに存在し続けます。東京という街の魅力を世界に発信していくこの仕事に、今、大きなやりがいを感じています」

 

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関係各所と電話でやりとりを行いつつ、共同事業者との打ち合わせに向かう。工事の進捗に合わせ、外観から内装の仕様まで、すべて意見を吸い上げながら提案に落とし込んでいくため、これまで数えきれないほど足を運んでいるという。

 

稲田さんのキャリアステップ

STEP1 2012年 研修時代(入社1年目)

入社後、1カ月間の新入社員研修を受ける。最初の2週間は、ビジネスマナーや不動産デベロッパーの仕事についての概要などを学び、次の2週間は、三菱地所という会社の“DNA”について考えるグループワークを行った。「グループに分かれて、社内の若手社員に都市開発や仕事に対する考え方をヒアリングしたのち、『この会社の社員たちに受け継がれてきたDNA とは一体何なのか』という意見をまとめて発表しました。ヒアリングを重ねる中、どんなに忙しくても真摯に応えてくれる先輩たちの姿を見て、『就職活動の時に感じた通り、一緒に働きたい人たちばかりだ!』と、あらためて実感しましたね」。

STEP2 2012年 丸の内開発部 中規模ビル案件担当時代(入社1年目)

丸の内エリアの開発を手がける部署に配属。事業者へのコンサルティングと丸の内周辺の中規模ビル案件を担当する4人編成のチームに入ることに。配属発表の際に「仕事とは、荒波の中に飛び込んでいくようなものだ」との話を聞いたが、実際にプロジェクトを経験する中、その言葉の意味を実感したという。「わからないことだらけの中に飛び込む以上、教えてもらうのを待っているだけではダメですね。自分で動き出さない限りは何も学ぶことはできないのは当たり前。また、開発の案件は、それぞれに背景や人物の相関図も違うので、その人の”人となり”や、何を考えているのかは、自ら体験してこそ、理解できるものだと実感しました」。

STEP3 2013年4月 丸の内開発部 大規模ビル案件担当時代(入社2年目)

丸の内エリアの大規模複合ビル案件の担当に。3人編成のチームに入り、先輩の補佐をしながら開発の背景や人物相関図を把握していった。自分のチームがプロジェクトの中心となり、共同事業者と行政機関の協力を得ながら全体をマネジメントしていく過程を経験。入社3年目には、チームで自分の上にいた先輩が異動し、「先輩が抜けたからといって、ダメになったとは言われないように頑張ろう」と決意を新たにする。

「とにかくかかわる人が多いですね。このプロジェクトを通じて直接やりとりした人は、社内の各部署、設計会社、行政機関の担当者はそれぞれ20〜30名、共同事業者については10〜20名。進捗状況によってコンタクトする相手も変化しますが、多いときは100名と連携していたと思います。社内でも、営業部署に対して『販売戦略において、ビルの仕様に問題はないか』を確認しなくてはなりませんし、管理部署に対しては『ビル管理のしやすさに問題はないか』、コーポレート部署に対しては『会社全体のポートフォリオ(企業経営上の事業の組み合わせ)の中での本案件の意義がどのようなものか』など、それぞれ関係する部分について確認していくことが必要でしたね」。

STEP4 2015年9月 丸の内開発部 大規模ビル案件担当時代(入社4年目)

引き続き、大規模複合ビル案件を担当。「開発案件においては、さまざまな関係者が、いろいろな立場で意見を言うもの。それらをすべてないがしろにすることなく、まとめていくことは非常に大変ですが、開発における大きなイベントと言える“既存ビルの解体”や“新たなビルの着工”の際には、『自分の仕事が、事業化を一歩一歩進めているのだ』という大きな手応えを感じます。この会社では、10年で3部署をローテーションする人事制度があるので、私自身はもうそろそろ異動するタイミングとなってしまいます。ビルが完工する時期にはまた別の部署に配属されていると思いますが、宴会施設を手がけている共同事業者の方から『3年後のビルオープンの時に、ぜひ新しくなった施設で結婚式を挙げてほしい』といううれしい言葉も頂きました。多くの人と関係を築くこの仕事ならではの出来事だと思います」。

ある日のスケジュール

8:45 出社後、メールチェック。
9:30 社内で打ち合わせ。営業担当者とパンフレットのイメージについて話し合う。
10:30 外出。共同事業者と打ち合わせ。一週間の進捗報告と、先方の判断が必要な事項について詳細を伝える。
12:00 外出先付近のレストランで、チームのメンバーや設計担当者とランチ後、帰社。
13:30 東京都などの行政機関と打ち合わせ。税制優遇制度への申請に向けて事前協議を行う。
17:00 設計担当者と打ち合わせ。事業者に向けた打ち合わせの前に、内装についての詳細を決めていく。
19:00 退社。学生時代の友人と飲みに出かける。

プライベート

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毎年、同期の仲間と海外旅行に出かけている。写真は2014年の9月にドイツに旅行した際のもの。「ドイツのビールイベント『オクトーバーフェスト』に浴衣着用で参戦! 最後列中央が稲田さん。過去には、アメリカ西海岸のドライブ旅行、ラスベガスツアーを楽しみました。15年は南国でダイビングをする予定です」。

 

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週末には学生時代の友人と国内旅行を楽しむ。写真は2015年7月に出かけた京都旅行。「旅行が大好きなので、国内はもちろん、韓国やグアムなどにも出かけていますね。9月は沖縄でダイビング出かけましたし、10月にはシンガポールに行きました。旅行先でさまざまな体験をして刺激を受けています」。

 

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三菱地所が手がける街のイベントにも同期や後輩と一緒にプライベートで参加している。写真は2015年7月に丸の内エリアで開催された“打ち水・盆踊り”イベント。一番左が稲田さん。「街づくりをする会社なので、面白いイベントがいっぱいあります。一般の参加者として、自由に楽しんでいます」。

 

取材・文/上野真理子 撮影/刑部友康

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