株式会社毎日放送 亀井さん(入社6年目・東京支社テレビ編成部)【先輩たちのワーク&ライフ】

かめい・ひろし●東京支社テレビ編成部。京都大学文学部二十世紀学専修卒業。2010年4月入社。実際に企業を見てみないとわからないと考え、3年生の夏に外資系の消費財メーカーとコンサルティング会社、商社、放送局でインターンシップを体験。マーケティングやアニメに携わる仕事など“自分がやりたいこと”を軸に、インターンシップ先企業を含む8社にエントリー。子どものころから大好きなアニメを担当できる可能性に懸けて、現社への入社を決意。

企画・営業開発として、番組で商品を取り上げてもらえる“面白い見せ方”を発案

大阪市北区に本社を構える毎日放送は、関西では『ちちんぷいぷい』や『痛快!明石家電視台』など、全国ネットでは『情熱大陸』『プレバト!!』『世界の日本人妻は見た!』などの人気番組を提供している。2010年、「アニメの仕事に携われるかもしれない」と期待に胸を膨らませて入社した亀井さんだったが、最初の配属先はテレビ広告の営業。しかも、東京支社。「一度も暮らしたことのない東京で営業…『ウソやん!』というのが、正直な心境でした」

テレビ営業部には、番組の提供スポンサーを獲得するタイム営業部と、番組が終わってから次の番組までの間に流れるCMスポンサーを獲得するスポット営業部がある。1年目、亀井さんはタイム営業部の内勤となり、半年後には任された仕事を一人で回せるようになった。

「主な業務は社内調整です。外回りの営業担当が獲得してきたスポンサーを、その番組のCMに流しても問題ないかを考査したり、番組内で複数回放送されるCMの順番を考えてローテーション表を作成したり。営業が使用するスポンサーへの説明資料も作成しました」

同時にネットワーク業務部の仕事のサポートも担当していた。自社制作の番組を、富山ならTUT、静岡ならSBSなど、各地の系列局に売り込むのが主な仕事。
「先輩に同行し、ローカル局とのリレーションを深め、自社の新番組を売り込んでいくノウハウを勉強しました」

2年目にはスポット営業部に異動。スポットCMのスポンサーを獲得するための企画を考えたり、決定した企画を滞りなく運用するための素材集めや管理を行うことが、主な仕事となった。情報バラエティ番組などでスポンサーの商品を取り上げてもらうため、スポンサーが喜び、番組としても面白くなる商品の取り上げ方を考え、事業局や制作局など各番組の担当部署にプレゼンテーションするのだ。

「スポンサーさんのために商品をたくさん紹介してほしいと考える営業と、その商品をただ紹介するだけでは番組として面白くならないと考える制作との間で、両方に納得してもらえる企画を考えることは簡単ではありません。でも、自分のアイデアが受け入れられ、形になった時の喜びは大きかったですね」
亀井さんは、徐々に「この商品を取り上げたいんだけど、何かアイデアない?」と先輩からも頼られる存在へと成長していった。

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放送前のアニメを最終チェック。ノートパソコンでDVDを見ながら、映像的にミスはないか、放送しても問題ないかなどを確認。万一ミスが見つかれば、即座に対応する。

社会にインパクトを与えられる記者の仕事に手応え。5年目に念願のアニメプロデューサーに

3年目、大阪本社の報道局ニュースセンターに異動した亀井さんは、事件現場などで日々のニュースを取材し、番組内で放送する5分から10分程度のニュース性のあるVTRを企画・制作する記者となった。

「異動直後から、何もわからないままカメラマンとカメラマン助手との3人で取材へ。とにかく情報を取らなければならないので、警察では誰に取材すればよいのか、聞き込みでは何を聞けばよいのかなどを、現場で先輩記者やベテランカメラマンに教わりながら学んでいきました」

1カ月が経過したころ、自ら提案した企画が実り、3分間のVTRを制作することになった。当時の関西ではまだ珍しかった、ベンチャー企業などがオフィス空間を間借りするコワーキングスペースの取材だ。

「原稿の書き方や原稿と映像の組み合わせ方などを先輩に教わりながら、一連の制作過程を経験。番組の中で放送された時は、感動しました。ところが、先輩からは『コワーキングスペースの良さが画面からまだまだ伝わってこない』と指摘され…。厳しい洗礼を受けました(笑)」

4年目には経済担当として、百貨店の催事やテーマパークのイベント、新製品の発表や大型商業ビルの新オープンに企業の決算報告など、生活全般と経済に関する取材がメインに。亀井さんは、それまでの報道畑の人たちが興味を持ちにくかったベンチャーの取材や、アニメや現代アート、文化財や将棋など、自分の関心が高い分野を追求し、ほかの記者とは違う企画を考えてきた。そして、映像にしにくい事柄をどうすれば視聴者に伝わるかに心を砕いてきた。

「突発的な事件を取材するデイリーのニュースに求められるのは、他局にはない情報を手に入れる独自性とスピード感。一方、企画VTRの取材に求められるのは、面白さを見極める視点。世の中の事象をどう切り取るか、どうやって面白く見せるかというロジカルかつ感性の勝負です。ときには、自分が取り上げたニュースによって世の中が動くこともあるのが醍醐味(だいごみ)ですね」

手応えを感じたのが、大阪みどり百選にも選ばれている鵜殿(うどの)のヨシ原の取材だ。鵜殿のヨシ原は、宇治川・桂川・木津川が合流する淀川右岸の河川敷一帯。ここに生えるヨシは、雅楽などで古くから使われている管楽器の篳篥(ひちりき)のリード部分に使用されている。ところが、その一帯に高速道路の建設が予定されているため、鵜殿のヨシ原がなくなると日本の伝統音楽である雅楽にも影響が及ぶのではないかという内容だ。

「このニュースだけがきっかけではなかったと思いますが、鵜殿の関係者と高速道路の関係者の話し合いが持たれることに。社会に何らかのインパクトを与えることができたことは、大きな励みになりました」

入社6年目、亀井さんは東京支社のテレビ編成部に異動し、念願のアニメプロデューサーに転身。プロデューサーの業務は、良い作品を見つけたり、オリジナル作品を企画して出資し、作品のクオリティを維持しつつ、滞りなく放送できるよう全体を管理・運用すること。

「やりたいと思い続けてきたことをできる…その喜びで胸がいっぱいでした。30歳までは、アニメの仕事に就けなくても勉強期間だと覚悟していたので、予想より2年も早くて驚きました」

2015年10月からは、深夜枠で放送しているアニメ『K RETURN OF KINGS』と『蒼穹(そうきゅう)のファフナー EXODUS』のプロデューサーとして、制作に出資した複数の企業で構成される製作委員会で進捗状況や宣伝活動について報告するほか、シナリオや絵コンテのチェック、テレビ放送に適さないシーンがないかどうかなどのチェック、スケジュール管理、宣伝業務などを行っている。同年10月に、大阪城ホールで開催した「MBSアニメフェス2015」の運営にも携わり、『黒執事』と『デュラララ!!』のステージを担当した。

「作品を紹介するたびに、1万人のファンから湧き上がる大歓声とエネルギーに心が震えました。これからも、ファンの人たちにさらに応援してもらえる作品を作っていかなければ、と決意を新たにしました。当面の目標は、プロデューサーとしての出資業務などに必須な契約関連の知識を蓄えて、企画を自分で立ち上げること。そして、『亀井が言うのなら、一緒にやろう』と言ってもらえる信頼関係を一人でも多くの人と築き、いつかは後世に名を遺すようなオリジナル作品を手がけるのが夢。好きなことを仕事にできて、幸せです」

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過去に制作した作品が保管されているテレビ編成部のライブラリーにて。イベントの参考資料として、過去の作品などから素材を探す。

亀井さんのキャリアステップ

STEP1 2010年 1カ月間の新入社員研修で放送局の多岐にわたる業務を学ぶ(入社1年目)

4月から1カ月間の研修に参加し、制作局、事業局、報道局、ラジオ局、営業など、大阪本社と東京支社の各部署をローテーション。先輩の話を聞いたり、営業同行するなどして、各部署の業務概要を学んだ。部署によって業務内容がかなり異なり、「まるで別会社のようだ」という印象を持ったのと同時に、一般的な企業に就職した学生時代の友人たちの仕事内容とはかけ離れていて「面白そうだ」と感じ、社会人となる不安よりも仕事への期待感が上回った。

STEP2 2010年 営業部にて、テレビ広告の営業を経験(入社1年目)

東京支社テレビ営業部に配属となり、テレビ広告の営業を経験。1年目は、タイム営業部でデスク補佐を経験。複数の仕事をミスなくこなすことに苦戦。既存の資料の更新作業などでは一部元データが残っていたり、売り上げ確認で最終的な数字が合わなかったりと、ケアレスミスでよく叱られた。2年目には、スポット営業部で企画・営業開発を担当。1年目の仕事は作業的なものも多かったが、2年目になると考える仕事が増え、クリエイティブ度がアップ。自分ができることが増えるにつれ、仕事の面白さも増していった。2年間の営業経験で、コミュニケーション力を養った。

STEP3 2012年 報道局ニュースセンターにて記者としての経験を積む(入社3年目)

7月、大阪本社の報道局ニュースセンターに異動。記者として、事件などのデイリーニュース取材やニュース性のある企画VTRの制作を担当。2年目には、この内容なら何分のVTRにまとめられるという経験則が身につき、年間15本程度を制作するまでに。経済担当時代に企画した、企業のトップに密着取材して人となりや経営手法を紹介する『BOSSの流儀』は、不定期だが現在も続行中のロングラン企画に。2014年、京都支局に異動し、記者として行政から教育、事件、経済、文化まで全般を取材。3年間の記者経験で、伝えたいことを映像化する感覚を身につけた。

STEP4 2015年 東京支社テレビ編成部にて、アニメのプロデューサーとなる(入社6年目)

7月、東京支社に異動。テレビ編成部にて、深夜アニメを中心としたプロデューサー業務に携わる。番組への出資企業で構成される製作委員会には20名以上が集まるなど、多くの人たちがかかわっていること、シナリオや絵コンテ、映像チェックなどの制作関連業務、納品するフォーマットの管理などの技術的業務、宣伝業務、契約関連業務など、仕事内容が幅広いことに驚いた。契約関連業務など、新たに覚えることは山積みだが、ゆくゆくは作品探しから制作まで自ら手がけたアニメを世に送り出したいと考えている。

ある日のスケジュール

10:00 出社してメールをチェック。絵コンテやシナリオなど担当作品の内容チェック、納品期限の確認などを行う。
12:00 ランチ。時間が合えば、先輩と近所の飲食店へ。本を片手に一人で食べに行くことも。
13:00 アニメの原作元の出版社の会議室で行われる製作委員会に出席。出資会社や制作会社の担当者から進捗状況を聞き、自社の取り組みを報告。
15:00 終了後、別の会社で行われる製作委員会に出席。
17:00 帰社してメールを確認した後、納品されたVTRをチェックする。
19:00 編集スタジオで近々放送されるVTRの編集作業に立ち会う。
21:00 退社。時間が合えば、外部のプロデューサーや学生時代の友人と食事に行くことも。

プライベート

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現代アートを収集していて、休日は美術館やギャラリーなどを回って、アート鑑賞するのが趣味。写真は国立新美術館。2015年8月、展覧会「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」に出かけた時。

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大阪にいたころは、ストレス発散のためによく買い物に出かけていた。写真(中央が亀井さん)は、2014年の冬に大学時代の同級生とその子どもと、神戸三田プレミアム・アウトレットに行った時。

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実家暮らしの時に家族が飼い始めたコザクラインコと、東京で同居中。「8歳になるオス。言葉はしゃべらないけれど、カゴから出すと肩に乗ってきます。私の趣味の将棋の邪魔をするのが好きなんです(笑)」。

取材・文/笠井貞子 撮影/刑部友康

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