東海旅客鉄道株式会社(JR東海) 小峰さん(入社18年目・人事部人事課課長代理)【先輩たちのワーク&ライフ】

こみね・ひろお●人事部人事課課長代理。東京大学経済学部経済学科卒業。1998年入社。就職活動当初は、金融、商社、メーカーなど幅広い業種を志望していたが、JR東海の社員と話し「こんな人たちと一緒に働きたい」と思い入社を決意。大学時代から「人との出会い」を大切にしていたことから、出会いを創り出せる鉄道という仕事にも強くひかれた。

現場が教えてくれた仕事の意義。そして新入社員研修の講師で人を育てる喜びを知る

JR東海は入社後に1年半程度の研修期間があり、鉄道運行の現場で駅員や車掌、運転士などの経験を積む。これだけ長期の研修期間を設けているのは、社会のインフラを支え、安全を守る企業だからこそ。小峰さんも現場での研修を通して運輸業の現場の大変さや重要性を理解できたという。
「研修中に先輩から阪神・淡路大震災の時の話を聞きました。震災によって関西地区の交通機関は大きな被害を受け、列車も数日間の運行停止を余儀なくされていた。自宅が倒壊したり家族がケガをしたりと大変な状況の中で、通勤手段がないため、長い道のりを歩いて出勤してきた社員もいたというのです。1日も早い復旧のために少しでも役に立ちたいと。JR東海は人々の生活を守るという強い使命感に裏打ちされた尊敬すべき先輩たちが支えている会社なんだと実感しました」

約1年半の研修を終えた小峰さんが最初に配属されたのは関西支社の人事課。新入社員の採用業務と、適正な社員の配置数を検討する要員業務を担当した。旅行好きだったことから営業や旅行商品の企画の仕事をしてみたいと入社したため、人事部門への配属は想定外だったという。しかし、会社の将来を支える人材の採用と、コストを抑えながら業務に支障をきたさないよう社員を配置することは、会社の根幹を支える重要な仕事。これに気づかせてくれたのはやはり現場だった。
「要員の仕事は広く現場を回って自分の目と耳で状況を知ることから始まります。社員に話を聞くなどして作業内容をよく理解したうえで、人員の不足がないか、あるいは効率化ができないかを考える。技術系統も含めてJR東海を支える現場を見て回れたのは、刺激的で面白かったと同時に会社の基盤を知ることができ、大きな財産になりました」

JR東海には、総合職として入社して3年近くたつと、高校卒の新入社員研修のインストラクターを務めるという仕組みがある。約2カ月にわたる研修期間中、新入社員と一緒に研修センターに泊まり込み、寝食を共にする。小峰さんは24人のクラスを担当。この経験が自分を大きく変えたという。
「限られた時間の中で、伝えた知識が彼らの血となり肉となるためにはどうすればいいのか、寝る間も惜しんで考えました。衝突することもありましたが、彼らと真剣に向き合うことで信頼関係が生まれて距離が縮まり、一体感が醸成されていきましたね。今となっては、当時の教え子たちが、東海道新幹線という日本の大動脈輸送を支え、活躍している姿を見ると、本当にうれしくなります。自分が何かを成し遂げるよりも、自分が教えた人が成長して何かを成し遂げてくれる方が喜びが大きい。人を育てる仕事は大きなやりがいがあると、自分の中で意識が変わった瞬間でした」

研修のインストラクターを終えた小峰さんは要員担当として、本社の人事部勤労課に異動となる。そこで上司から、名古屋・静岡地区を中心とした在来線部門の要員査定の担当を任された。
「入社4年目の私が在来線部門全体の要員査定を担当する責任重大な仕事でした。もちろん、上司のサポートや各事業本部や支社の協力があってこそできることですが、任せてもらえたことでひと回り成長できました。若いうちから大きな仕事を任せるという文化が根づいている会社だと実感できましたね」

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普段から、週1~2回は都内や名古屋などへ出張する機会が多い。就職活動の山場となる8月には品川本社に出社することはほとんどなくなるほど出張が続いたという小峰さん。

2社への出向で競争の激しさ、価値観の違いを実感。真剣さを伝えることで乗り越える

入社以来一貫して人事関係の仕事に携わってきた小峰さんだが、人事以外の仕事も経験したいと希望を出していた。それがかない6年目に事業推進本部に異動となる。鉄道以外の関連事業を統括する部署だ。しかしグループ会社の後方支援という側面もあり、自分から動いて直接アクションを起こせないことに、もどかしさを感じていたという。そして次の異動のタイミングで、グループ会社へ出向する機会を得る。出向先でお客さまと接する環境の中で、自分の考えた営業施策を実行できる立場となった。
「出向先のJR東海バスはJR東海に比べれば小さな会社でしたので、一人ひとりに責任ある仕事を任せてもらえる環境でした。新規バス路線の開拓では自分の足で地域を回り、お客さまにたくさん利用してもらうには、どこを走らせてどこにバス停を設ければいいのかを考えながら新しい路線をつくったことも。一方でJR東海のような確固たる経営基盤がなく、不採算部門をスリム化するなど同業他社との厳しい競争にさらされる会社で仕事をしてみて、すべてが当たり前にそろっていることが前提になっている自分の考えの甘さや、これまでいかに恵まれていたのかを気づかされました」

出向先のJR東海バスからJR東海に戻った小峰さんは再び本社人事部勤務に。そこでは任用業務を担当した。要員担当が決定した社員の配置数をもとに、適材適所の人材を配置するのが任用の仕事。さらに社員の昇進昇格を決める役割もある。要員以上に責任を感じた3年間だったと小峰さんは言う。
「社員一人ひとりを理解して、キャリアステップを考えて異動を決めなければいけません。もし異動がうまくいかずに社員の成長が止まったり、精神面で不調に陥ったりすれば、その社員の将来を壊してしまう可能性もある。反対に、異動によって生まれ変わったように力を発揮する人もいるんです。人の一生を左右する仕事の責任を痛感しました」

その後、小峰さんはグループ会社のJR東海高島屋に出向となり、人事課長という立場で人事制度の改革を実行した。社内には制度が変わることを不安に感じる人たちもいた。また社風もまったく異なる会社での業務は、入社してから一番つらかった時期でもある。
「出向者は『どうせすぐに元の会社に戻るんだろう』と思われているかもしれません。でも、たとえ時間が限られているとしても、その間にどれだけのことを残せるか真剣に考えて行動しました。これは新入社員研修でインストラクターを務めた時と同じ。私の真剣さが少しずつ伝わり、周囲にも理解してもらえるようになったのだと思います。すべては社員のためにと思って努力し続けた3年間でしたが、私が会社を離れた後、うれしいニュースが飛び込んできました。実は2014年度、開業時から目指していた『地域一番店(※)』になったのです。自分とかかわりを持った人たちの成功を見るのは本当にうれしかったです」
※名古屋市内の百貨店での年間の売上高が最も高い店

現在、小峰さんは4人の部下を抱える採用担当の課長代理として新卒採用を統括。インターンシップ、イベント・セミナーなどの企画・運営、選考時期には学生との面接も担当している。自分の仕事のうち、採用の仕事は半分、残りの半分は広報活動だと言う小峰さん。
「セミナーや面接などで会う学生の大多数は残念ながら採用には至りません。しかし、そんな方々も将来当社のお客さまになってもらえるようJR東海の良さを伝えること、つまり広報担当として当社のファンになって帰ってもらうことが大切だと思っています」

人事部の採用担当として、採用計画の策定、チームマネジメント、セミナーでの講演など、多忙な日々を送る小峰さんは、自身の将来をどう見据えているのだろうか。
「人事という職を離れても、今と同じように多くの人とかかわり、信頼してもらえるような人間力を身につけることです。目の前の仕事に懸命に取り組むのはもちろんですが、自分が何を残せるか、それを常に意識しながら真摯に仕事に向き合う。それが人間力向上につながると信じています」

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学生向けのセミナーで話す機会も多い。「こういった機会にさまざまな企業の人事担当者と交流できるのも楽しいですね」。

小峰さんのキャリアステップ

STEP1 1998年 三島社員研修センターで研修を受ける(入社1年目)

約2カ月間、同期と泊まり込みで新入社員研修を受ける。その後、現場研修として、駅員、車掌、運転士など鉄道の現場を経験。実際に駅の改札担当や車掌として働いてみて、「もっとお客さまへのサービス向上を図れる」と思っていたのが浅い考えだったことを実感。「毎日何万人というお客さまを相手にする現場の大変さがよくわかりました。仮に台風などの災害で列車遅延が起これば多くのお客さまからお叱りを受けることも。日々、最高のサービスを提供し続けるのは口で言うほど簡単ではない。サービス業の本質を実務経験から理解することができました」。その後、関西支社の管理部人事課で要員と採用業務を担当。

STEP2 2001年 新入社員研修のインストラクターとして研修に携わる(入社4年目)

当時名古屋にあった、社員研修センターに泊まり込み、朝から講義し、夜は課外授業という生活を約2カ月続けた。担当は24名のクラス。社会人と学生の違い、鉄道の基本、鉄道の運行に必要なチームワークなどをみっちりと教えた。情報を伝えるだけでなく、知識をもとに研修生自身が自分で考えて行動できるようになるには、どうすればいいのか考え続けたが、思いが伝わらないもどかしさに涙を流してしまったことも。研修で成長し一人前の鉄道人として巣立っていく研修生を見て「学校の先生になれば良かったかも」と思えるほど、人を育てる仕事にやりがいを感じた。その後、本社の人事部勤労課での要員管理、関連事業を統括する事業推進本部、JR東海バス(出向)、本社での人事部人事課での任用(異動・昇格等)を担当。

STEP3 2011年 JR東海高島屋に出向(入社14年目)

鉄道事業という長いスパンでの事業運営が染み付いていたところで、短期の業績を求める百貨店への出向によって大きなカルチャーショックを受ける。人事課長として与えられたミッションは人事制度改革。不安を感じる社員もいる中、会社と社員のことを考えて真摯に愚直に取り組むことで、制度改革を完遂した。「つらい時期でしたが、制度の説明会でさまざまな社員と話すことで人脈を築くこともできました。今でも飲み会の際に声をかけてもらえることもあります」。

STEP4 2014年 人事部人事課で採用を担当(入社17年目)

面接で会う学生のほとんどが不採用となる現実。また、ぜひ入社してほしいと思っても、その学生が望むこととJR東海の仕事がマッチしていない場合もある。「不幸なのはそんな優秀な学生が入社してすぐに辞めてしまうこと。新卒採用の機会は人生に一度きり。会社にとっても学生にとっても不幸な採用とならないため、学生が納得して企業を選ぶためのサポートが自分の役割です」。

ある日のスケジュール

8:30 出社。通勤時間は新幹線を利用して45分程度。出社後はメールのチェック、情報収集などを行う。
9:00 就業開始。前日までに作成しておいた採用方針などの資料を上司に説明する。
12:00 昼休み。部下数人と、オフィス近くでランチを楽しむ。
13:00 都内へセミナーのため外出し、講演を行う。
16:00 帰社し、係内でミーティング。会議は短時間ですませるように心がけている。
17:00 来年の採用計画をとりまとめ、資料を作成する。技術系の採用担当の部署と打ち合わせを行う。
17:30 退社し、懇親会へ。他企業の採用担当者などとの交流も多い。

プライベート

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2015年8月、職場のメンバーとの懇親会での一枚。「業務時間外では社内外の知り合いとお酒を飲みながら、いろんな話をしています。尊敬すべき仲間と一緒に働けることは幸せですね」。

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2014年8月に3歳の娘と一緒に温泉に出かけたときの一枚。「若いころから旅行が好きで日本全国、世界各国に出かけましたが、結婚後はもっぱら家族サービスが中心です。動物園や遊園地にもよく出かけ、リフレッシュしています」。

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「趣味といえるレベルではないです」とは言うものの、職場の仲間に誘われてゴルフに行くことも。写真は、2014年12月に職場の同僚と久しぶりにラウンドしたときのもの(後列左が小峰さん)。「スコアはさんざんでしたが、青空の下で職場の仲間と楽しい時間を過ごしました」。

取材・文/狩野健二 撮影/刑部友康

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