株式会社商船三井

くわはら・かずき●鉄鋼原料船部鉄鋼原料グループアシスタントマネージャー。同志社大学工学部機械システム工学科卒業。2005年4月入社。大学1年生の時に父がフランス・パリに赴任し、現地に住む家族の元を訪れるついでにバックパッカーとして欧州を中心に旅をして回る。この経験から「将来は世界を舞台に働きたい」と考えるようになり、海運、商社を中心に10社程度に応募。うち7社ほどの面接を受け、志望度が高くかつ一番初めに内定を得た商船三井に入社を決める。

どんな仕事に対しても前向きに、全力で取り組む。その姿勢が評価され、入社5年目に海外赴任を経験

「世界を舞台に活躍できるビジネスパーソンになりたい」という思いで、2005年に商船三井に入社した桑原さん。初めに配属されたのは、LNG船部という液化天然ガス(LNG)を積載し運ぶ船を扱う部署だった。担当したのは、商船三井を含め数社が参加しているジョイント・ベンチャー(合弁会社)のインドネシア・プロジェクト。LNGの産出国であるインドネシアから、日本や台湾の企業にLNGを運ぶプロジェクトだ。

 

「その中での私のミッションは、ジョイント・ベンチャーの損益管理。予算やコスト、実績などを見ながら財務諸表を確認し、関係者に共有して了解を得るのが主な仕事ですが、それまで財務諸表など見たことがないし、知識もなかったのでとにかく数字に触れて知識を深める努力をしました。またインドネシアの傭船者(ようせんしゃ:商船三井の保有船をレンタルする依頼主)との折衝も担当しました」

 

このプロジェクトには5年間かかわったが、傭船者との費用精算に関するやりとりなどでインドネシアへ出張する機会が多かった。入社1年目の2月には初海外出張を経験。

 

「それまでメールや電話で頻繁にやり取りしていた相手でしたが、実際に顔を突き合わせて話をする大切さを学びましたね。直接会って話せば、表情などから細かいニーズや感情の動きもつかめますし、意見の行き違いが生じても“理解し合おう”という気持ちになれます。帰国後も顔を思い浮かべながらメールや電話でのやり取りができるので、コミュニケーションの質が高まりましたね」

 

1年目のころは、上司が客先に提出する資料の作成なども引き受けた。上司の指示通りにデータを集めてそれを構成して…という、いわゆる“下っ端の仕事”だが、桑原さんは「どんな仕事も前向きに捉えて全力を注ぐ」ことを意識した。

 

「新人研修の最後に、人事担当者に言われた『初めはイエスマンであれ。どんな仕事を指示されてもまずは前向きに取り組むことで、自分の身になるし次のチャンスにもつながる』との言葉が心に響いたんです。新人時代は、すべての業務がスキルアップのチャンス。たとえ雑務であっても、ただ『こなす』のではなく『意識して意欲的に取り組む』ことで得るものは大きく変わると思っています。このプロジェクトの後、米国に赴任することになりますが、どんな仕事にも前向きに取り組む姿を上司が見て、抜擢(ばってき)してくれたのではないかと思っています」

 

5年後の10年4月、米・コネチカット州にあるLNG船関連子会社に赴任。同社はインドネシアから日本へのLNG輸送を担う船舶を保有する会社。同年12月末で受注しているプロジェクトの契約が切れるため、顧客となり得る企業にアプローチして新規プロジェクトの受注を獲得する、というのが桑原さんのミッションだった。

 

「結論から言えば、11年にその子会社を畳むことになりました。保有していたLNG船はどれも竣工(しゅんこう)後30年以上の老齢船。最新型のものに比べると燃費が悪く、安全面でのリスクも高いと判断されがちなので、新たな傭船者を見つけるのは非常に難易度が高いのです。米国でのマーケットニーズを調べる一方で、世界中の拠点とも連携を取ってギリギリまでアプローチ先を探し続けましたが、経営継続を断念。保有船は商船三井の英・ロンドン拠点に移すことになり、それに伴って私もロンドンに赴任することになりました」

 

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所有、傭船する全船の運行状況が見られるモニター室で、担当者に船の状況を確認。気象・海象のほか、海賊情報なども見られるので、それらの情報を船長に送り、航路を変更するか否かの判断を促すのも桑原さんの仕事だ。

 

フリー船の放置は莫大なコストにつながる。プロジェクトの間を空けない、長期契約を見つける努力が重要

米国子会社の閉鎖にかかる業務を終えてから、11年6月にロンドンに赴任。LNGの老齢船、および傭船者が決まっていないフリーLNG船の営業活動が主なミッション。社内外での人脈や、専門ブローカーなどと連携を取って、フリー船を使ってくれそうな顧客を探してアプローチを続けた。また、現地のジョイント・ベンチャーの会社管理・損益管理なども担当。15年7月に帰国するまでの4年間で、多種多様な業務を経験した。

 

「思い出深いのは、05年に竣工したフリー船で3年間のプロジェクトを受注できたこと。船舶技術の世界は日進月歩で、特にここ数年で飛躍的に進歩したため、竣工後10年といっても老齢船と見なされてしまい、新規受注が難しいのです。新たな傭船者になってくれたのは、UAE(アラブ首長国連邦)の会社。その会社のクライアント(LNGの供給先)が日本企業だったため、本社と連携を取ってその日本企業にも働きかけ、受注につなげました」

 

フリー船の新規プロジェクトが決まらない状態が続くと、会社の収益を著しく圧迫する。船のサイズにもよるが、船を1隻保有しているだけでも、資本費(主に船舶建造費)、船費(主に船員給与、修繕費)、燃料費などで1カ月に1億8000万円ものコストがかかるという。だからこそフリーの期間を極力短くする、できるだけ長期間のプロジェクトを獲得する努力が重要だ。難易度が高い案件だっただけに、「この受注が決まった時は心からほっとした。肩の荷が下りた」と振り返る。

 

ロンドンでの4年間では、この老齢船のように条件の悪い船を担当したり、担当船においてトラブルが頻発したり、海運市況の波をダイレクトに受けて見込んでいた案件がなくなったりと、試練も多かった。しかし、新人時代に意識して培った「物事に前向きに取り組む姿勢」で乗り切ることができたという。

 

「マーケットに波があるのは当然のことで、自分の力ではどうしようもない。それに、自社でたくさんの船を保有している以上、採算が悪い船を担当する機会だって当然ある。その中で、どれだけ前向きに、意欲を持って目の前の仕事にがむしゃらに取り組めるのかが大事だと、あらためて実感しました。私が意欲を失えば、フリー船のブランク期間が増え、何億円ものコストを生んでしまい会社の収益をも圧迫する。どんな環境下でももうひと頑張り!と粘れたからこそ、難しい案件の受注も実現できたのだと感じています」

 

15年7月に帰国。入社以来10年間所属したLNG船部を離れ、鉄鋼原料船部に所属している。現在のミッションは、日本の製鉄会社向けに、原料である鉄鉱石、石灰を運搬する船のオペレーション管理。2隻の鉄鋼原料船を担当し、顧客のニーズを踏まえてスケジュールや積み付け(形や重さの違うものを効率的に載せること)プランを組み、1隻ごとの損益を管理するのが主な仕事だ。アシスタントマネージャーに昇格したことで、グループの統括やトラブル対応なども行っている。

 

「LNG船は、プロジェクトあたりの投資規模が大きく、期間も長期にわたるのが特徴。ダイナミックなビジネスを動かす醍醐味(だいごみ)を感じることができましたが、だからこそ事業方針ややるべき業務はある程度事前に決まっていて、個人が裁量を発揮するチャンスはそれほど多くはありませんでした。一方で鉄鋼原料船は、自分の裁量が生かせる場面が多く、前部署とはまた違ったやりがいを感じています。例えば、クライアントに指定された期日までに鉄鋼原料を輸送するのですが、燃料費の動向を見ながら、スピードアップして現地に到着するまでの期間を縮めた方がいいのか、それともスピードを落として燃料をセーブしながら時間をかけて着いた方がいいのかなど、損益を考慮しながらスケジュール調整することも可能。責任は重いですが、その分やりがいも大きいですね」

 

現在、入社11年目。「世界を舞台に活躍するビジネスパーソンになる」という目標に向けて、これからも走り続けるつもりだ。

 

「米国と英国への赴任を経験し、どんな国の、どんな立場の人とも対等に渡り合い、折衝ができる力を磨き続けたいと思うようになりました。そのためには、言語力、コミュニケーション力だけでなく、専門知識や市況を読む力などが重要になります。どの部署においても目の前の仕事に全力で取り組むことで総合力を磨き、ステップアップし続けたいですね」

 

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担当するクライアントにメール。希望期日や積み荷の量などを確認し、損益を計算してスケジュールを組む。海外のクライアントとの英文メールのやり取りも多い。

 

桑原さんのキャリアステップ

STEP1 2005年 LNG船部に配属、インドネシア・プロジェクトの損益管理を担当(入社1年目)

自社が参加するジョイント・ベンチャーのプロジェクトを担当し、主に損益管理を手がける。1年目の2月には初めてのインドネシア出張も発生。傭船者との費用精算のやり取りのために向かったが、ほかの議題が押してしまい、スケジュールの都合上、先方担当者と顔を合わせるだけで終わってしまった。しかし、短い時間ながら直接会って言葉を交わせたことで、お互いを理解しようとする思いが強まり、その後のやり取りがぐんとスムーズになったという。

STEP2 2010年 米国子会社に赴任、LNG船の新規プロジェクト獲得のために奔走(入社6年目)

商船三井では、若手のうちに海外赴任を経験させる文化がある。世界各国の拠点に「若手のための枠」が設けられており、桑原さんは入社6年目に海外武者修行に出ることになった。日本では詳細な報告が求められ、マネージャーから部長へと報告が上がっていくが、赴任先は自分以外すべて米国人。口頭で報告が行われ、その場で物事が完結してしまうことが多く、ビジネススタイルの違いに驚かされた。現地のやり方に合わせながら相手の懐に入り込み、コミュニケーションを取ることの大切さも学んだという。

STEP3 2011年 英国ロンドンの拠点に配属、フリーのLNG船の新規プロジェクト開拓に注力(入社7年目)

ロンドンではナショナルスタッフ5人のマネジメントも担当。思うように動いてくれないスタッフもおり、コミュニケーションに悩んだこともあったという。試行錯誤の末、働きや成果に対する感謝の気持ちを伝えることでモチベーションを上げることが、チーム力の最大化につながると気づく。自分ならではのマネジメントを磨くことができた。

STEP4 2015年 帰国し鉄鋼原料船部に異動。保有する鉄鋼原料船のオペレーションを担当(入社11年目)

入社11年目にして、初めての部門異動。液体を運ぶLNG船とは船の形状が異なり、積み付けの工夫も求められる。積み地から降ろし地まで一貫して管理する必要があるため、クライアントである鉄鋼会社の工場がある全国の降ろし地まで出向く機会も多く、配属後半年間ですでに8回の出張があった。

ある日のスケジュール

9:00 出社。メールをチェックし、船の動静確認を行う。担当する船がどこにいるか、積み地、降ろし地や到着日時に変更はないか確認する。
10:30 クライアント企業の担当者によるグループ会議。運行中の船のオペレーションに問題がないか、メンバー全員の目で確認し、意見交換を行う。
12:00 会議のメンバーと昼食。社員食堂で日替わり定食やカレー、ラーメンを食べることが多い。
14:00 部内会議。鉄鋼原料船部は4つのグループに分かれており、各代表者が出席してグループごとの状況を報告し、共有する。
15:00 クライアント訪問。週1回のペースで訪問し、担当船の動静報告を行い、先方の要望をヒアリングする。
17:00 業界紙の記事などをチェックし、市況を確認。クライアント企業に関する情報もこまめに確認する。つかんだ情報によっては本船集荷プランや航路の見直しなども検討する。
18:30 仕事のめどがついたところで退社。11カ月の息子と遊び、風呂に入れるのが帰宅後の日課。

プライベート

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2013年12月、ロンドン赴任時代にオフィス近くのレストランで開催したクリスマスパーティー。ナショナルスタッフも皆パートナーを連れて参加し、大いに盛り上がった。

 

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ロンドン時代には、休みの日に夫婦でヨーロッパ中を旅行した。写真は2013年12月、パリを訪れた時のもよう。

 

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サッカーはプレーするのも観戦するのも好き。ロンドン時代は元日本代表稲本潤一さんも所属していた英国のサッカークラブ、フラムFCのシーズンチケット(シーズン中いつでも入場可能なチケット)を購入し、4年間通い詰めた。写真は2014年2月ごろに撮影したもの。

 

取材・文/伊藤理子 撮影/刑部友康

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