THK株式会社

今回の訪問先 【THK株式会社 テクノセンター】
現在のようにクレーンやダンプカーなどがなかった時代、重たいモノを運ぶ際、「ころ(鉄や木材で作った円柱体)」を使用していました。なぜ「ころ」を使用すると、重量物が人力でも運搬できるようになるかというと、一般的にころがり摩擦(ころが転がる際、その運動を妨げるように働く力)係数はすべり摩擦(静止しているモノがすべり動く際に、その運動を妨げるように働く力)係数の100分の1の大きさとなるからです。この重いモノをころのような転動体を使って非常に軽く動かすという原理は、今もさまざまなところで使われています。例えば約110年前に開発されたベアリング(軸受け)はその代表例です。機械の運動は、回転と直線運動の組み合わせで成り立ち、ベアリングは機械装置の駆動を支え、摩擦を減らすことで機械の回転運動を支持する部品です。しかしながら直線運動部については、コストや剛性(変形のしづらさの度合い)、製品寿命、メンテナンス性などの求められる条件をすべて満たしつつ、ころがり化させることは難しく、なかなか製品化にこぎ着けることができなかったのです。この難題を解決しようと創業時から立ち向かってきたのが、THKです。1972年、世界に先駆けて直線運動にころがりの利点をフルに生かした直動システムの開発に成功。それが同社の主力製品「LMガイド」です。今や「LMガイド」は工作機械、半導体製造装置、産業ロボット、自動車、住宅、エネルギー関連などさまざまな分野で活用されています。今回はTHKの主要技術開発拠点であるテクノセンターを訪れました。

 

既存製品の用途拡大、次代を見据えた新製品の開発に取り組む

THK テクノセンターは東京都の南東部に位置する大田区東糀谷(ひがしこうじや)にあります。最寄り駅は京浜急行「大鳥居駅」。ここから5分ほど歩くとテクノセンターの入り口に着きます。羽田空港の近くであることから、出張にはとても便利な立地です。大田区はモノ作りの街としても知られており、技術力の高いモノ作り企業が集まっています。テクノセンターの周辺はマンションなどの住宅がありつつ、大小さまざまなモノ作り企業が点在していました。

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テクノセンターのシゴトバを技術開発統括部 技術開発第一部 技術開発第一課の渡邊衣梨子(えりこ)さんが案内してくれました。
「テクノセンターは既存技術の用途拡大、および5年、10年先を見据えた次世代製品の開発を推進する拠点です。そのため、ここで働いている約250人の社員のほとんどが開発や試験などに携わっている技術職。部署としては私が所属している技術開発統括部のほか、試験研究部や事業部、基礎研究所があります。技術開発統括部は主力製品の新製品開発を行っています。技術開発第一部と第二部があり、私の所属する第一部では機械をまっすぐに動かすときの案内部品として使われる機械部品LMガイドやボールねじ(ねじ軸とナットの間に多数のボールを循環させ、回転運動を直線運動に変換する部品)をはじめとする機械系の開発を担当。一方、第二部はアクチュエータ(入力されたエネルギーと並進または回転運動に変換する装置)のドライバコントローラなど、電気系の開発を担当しています」(渡邊さん)
試験研究部は製品や試作品の性能の検査、測定を担当しています。基礎研究所はこれまで山形工場(山形県)や甲府工場(山梨県)に組織がありましたが、2015年4月よりテクノセンターにも新設されました。その名の通り、製品に応用されるような基礎技術の研究を行っています。事業部は3部に分かれます。ACE事業部は免震・制震装置などの住宅関連製品、FAI事業部は自動車関連部品、IMT事業部はアクチュエータ製品など同社の主要技術をユニット化した製品の開発から販売支援までを担当しています。
写真は技術開発統括部のフロアです。机の配置が独特で、「振り返るだけで、メンバーと打ち合わせができるようになっているんです。アイデアを思いついたり、疑問に思うことが出てきたらすぐに集合できる。それと一人当たりのスペースが広いので、仕事がしやすいですね」(渡邊さん)。
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写真は渡邊さんの所属する技術開発第一部で開発を行っている、THKの主力製品のLMガイド(下)とボールねじ(上)です。特にLMガイドは潤滑油の削減やメンテナンス工数の削減など、環境面にも大きなメリットが得られるため、工作機械や半導体製造装置、産業用ロボットなど幅広いメカトロニクス機器にとって不可欠な部品となっています。
「現在、私が担当しているのはLMガイドの開発です。LMガイドは72年に発売されているので、すでに40年以上の歴史があります。その間には国内外に競合も登場しました。その中にはコストを武器にしているところもあります。そんな競合に負けないためにも、より精度や製品寿命、剛性を高めていくことはもちろんですが、コストダウンを図れるような製品にしていくことも行っていかねばなりません。このように既存製品をより良くしていくということが、私たち開発者の役割です」(渡邊さん)
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写真は技術開発第二部で開発しているアクチュエータ用のドライバコントローラ。プログラム通りの時間、速度、加速度、ストローク、推力でアクチュエータを動作させることができる制御機器です。電気系の知識が求められるため、同部では電気系出身のエンジニアも活躍しているそうです。
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ACE事業部で開発している免震装置で、写真は同社のボールねじを応用した地震エネルギー吸収ダンパーです。ACE事業部では、THKがこれまで培ってきた技術を応用して、建物などの免震構造に求められる「支える」「減らす」「戻す」の3つの機能を実現する免震システムの開発を行っています。
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写真はFAI事業部で開発している自動車のスタビライザー(車体の傾きを防ぐための装置。足回りの一部)の連結部分などに使用されるリンクボールです。自動車業界では燃費性能を向上させるため、車体や部品の軽量化は必須。同製品はアルミダイカスト(溶かしたアルミを型に入れ、高圧をかけて成形する手法)による一体成形により軽量化を実現。耐腐食性、耐摩耗性にも優れているそうです。もちろんこの製品にも、同社がこれまでLMガイドやボールねじで培った技術が応用されています。自動車だけではなく、航空機や鉄道車両、エレベーターなどさまざまな輸送用機器に使用されています。

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IMT事業部で開発している電動アクチュエータです。同製品はLMガイドとモーターなどの駆動部品を組み合わせたユニット製品。技術開発第二部で開発しているドライバコントローラとセットで使用します。
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LMガイドの中でも、渡邊さんが担当しているのはオプション部品であるシール(製品に粉じんなどが入らないようにする樹脂部品)の開発です。
「材料の選定から、設計、試作、試験・評価というモノになるまでの一連の流れを担当します。製品開発はおよそ1年かけて行っていきます。自席では設計をしたり、試験結果をまとめたり、報告書を作成したりしています。そのようなデスクワークが比較的多いですが、試作品ができたら試験をしたり、組み立てをしたりというデスクワーク以外の時間も増えます」(渡邊さん)
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テクノセンター1階に設けられた実験室です。ここを主に使っているのは、試験研究部ですが、渡邊さんたち技術開発統括部のメンバーも試作品ができあがったときなど、ここに来て試験を行っているそうです。写真はLMガイドが正しく動くか、確認しているところ。「試験をしたり組み立てたりするため、ここにはよく来ます」と渡邊さん。同室には製品が仕様通りにできているか、形状を測定する測定機をはじめ、さまざまな試験機が所狭しと並んでいました。また試験研究部には試作課もあるため、3Dプリンターも用意されているそうです。
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デスクの配置が打ち合わせをしやすい作りになっているため、メンバー内でのコミュニケーションも活発に行われています。
「このようなレイアウトになっているため、何か困ったことが起こっても、先輩や上司に相談しやすいのがいいですね」(渡邊さん)
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ハタラクヒト 社員の発想や発言を大切にしてくれる温かな風土が魅力

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引き続き渡邊さんに「THK テクノセンター」というシゴトバの魅力ややりがい、職場の雰囲気についてうかがいました。

 

渡邊さんは2012年に明治大学理工学部機械情報工学科を卒業し、THKに入社しました。
「大学時代、私が所属していた研究室では、THK製品の試験を行っていました。THKに入れば、学生時代の知識がそのまま生かせると思ったんです」

 

入社時、新人研修終了後に配属されたのは、技術開発統括部でした。
「最初の1年間は顧客案件の対応をしていました。お客さまから求められた仕様の製品を作る仕事です。そして2014年より新製品の開発を担当することとなりました。開発には豊富な知識と発想力が不可欠です。私は自分の発想力に自信がなかったので、例えばメンバー内での打ち合わせでもなかなか自分の意見を言うことができませんでした。そんな私にも先輩たちは温かく接してくれましたね。誰かのアイデアに付け足すような形でも良いからと言われ、そのようなことを繰り返していくうちに、徐々に自分のアイデアを出すことができるようになってきたんです。発想力をいかに磨いていくか、そこが今も苦労しているところです」

 

一方で、新製品開発に携わる面白さも実感しているという渡邊さん。
「自分の設計したモノが形になっていくことは面白いですし、やりがいがあります。まだ自分が設計したモノでは量産化まで至っていませんが、近いうちにそれも実現できそうです。その瞬間が今から楽しみです」

 

渡邊さんが所属する技術開発統括部 技術開発第一部では、製品開発を行っているため、機械系の出身者が多いそうですが、テクノセンター全体では電気・電子、材料、物理、化学など出身専攻はさまざまだそうです。
「私のように学生時代にTHKの製品や技術に触れている人は、レアケース。ほとんどの人が会社に入ってから、仕事に必要な知識を習得していくので、理系なら出身専攻は特に問われません。それよりも大事なのは機械が好きであることと、いろんなことに興味を持てることだと思います。いろんなことに興味を持てる人は知識も豊富だし、発想力もある。当社がLMガイドを開発できたのも、確かな技術力と独創的な発想力があったからです。そんな人たちが今もたくさん集まっています」

 

最後にTHK テクノセンターというシゴトバの文化・風土について尋ねました。
「一人ひとりの発想や発言を大切にしてくれる温かい風土が根づいています。困っていると助け船を出してくれたり、先輩たちも親切に接してくれる。本当に仕事がしやすいですね」

 

日ごろの疲れを癒やすさまざまな施設

休憩室です。自動販売機が置かれており、昼休みなどは多くの人がここでくつろいでいるそう。昼休み以外の時間では、打ち合わせなどにも使われたりします。
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THKが所属している東京電子機械工業健康保険組合の直営保養所「上総一宮海浜保養所」(千葉県長生郡)です。社員であれば一泊2食付き6000円で利用できるとのこと。このほか、伊豆山温泉保養所(静岡県熱海市)にも直営保養所があります。社員も積極的に利用しており、好評だそうです。
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THKにまつわる3つの数字

1. 6×6

2. 50パーセント超

3. 六角形

 

前回(Vol.129 株式会社木村鋳造所)の解答はこちら

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

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