株式会社ディーエイチシー

今回の訪問先 【ディーエイチシー DHC第二研究所 基礎研究部】
現在、国内にはさまざまな化粧品メーカーがあります。そのうちの1社、ディーエイチシー(DHC)が創業したのは1972年。当時は委託翻訳業を営む会社でした。80年に化粧品製造販売事業を開始。当時の化粧品のほとんどが化学合成成分で作られていましたが、DHCでは天然成分の自然治癒力と肌への融合力に着目し、商品開発に取り組みました。そこで生まれたのが天然成分100パーセントの美容液「DHCオリーブバージンオイル」です。以来、DHCでは肌への優しさと機能性を追求した自然派化粧品を開発・提供し続けています。DHCの事業は化粧品だけにとどまりません。95年には健康食品製造販売に参入。ダイエットや貧血予防、ホルモンバランス、血糖値改善、整腸効果、高血圧予防などをサポートする健康食品の開発に取り組みます。現在、国内の健康食品市場をけん引するまでに成長したDHC。その理由は安心・高品質な製品作りはもちろんのこと、原料の大量仕入れと大量生産、中間コストの削減の実施などにより低価格に提供できる仕組みを構築しているところにあります。2005年には医薬品・医薬部外品を製造販売する医薬品製造販売事業、08年には遺伝子事業を開始。そのほかにも発芽玄米や調味料、ドリンク・おやつなど、おいしさと健康にこだわった食品事業なども展開しています。今回は化粧品や健康食品に使用される有効成分の開発を行っている、DHC第二研究所 基礎研究部のシゴトバを訪れました。

 

新商品開発に結び付ける基礎研究という仕事とは?

DHC第二研究所(以下、第二研究所)は千葉市美浜(みはま)区にあります。東京駅から最寄り駅のJR京葉線海浜幕張駅までは約40分。そこから路線バスに10分ほど乗ると第二研究所の最寄りの停留所に着きます。

第二研究所は国道357号(東京湾岸道路:千葉市、川崎市、横浜市という3つの政令指定都市を結ぶ道路)が近くにあることから、周囲は製造業や運輸業などの企業の拠点が立ち並んでいました。

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第二研究所 基礎研究部のシゴトバを紹介してくれたのは、同部 基礎研究室主任の片吉健史(かたよし・たけし)さんです。

「DHCが展開している主要事業である化粧品、健康食品に関する研究開発を行っている拠点は3つあります。東京港区南麻布の本社近くには香粧品研究所と第一研究所があり、化粧品専門の研究開発や品質管理を行っています。そしてもう1つがこの第二研究所です。ここでは基礎研究をはじめ、健康食品や化粧品、医薬品など、幅広い商品の研究開発が行われています。私が所属している基礎研究部では、化粧品や健康食品の中に配合できるDHC独自の有効成分の開発に取り組んでいます。1日のほとんどの時間を実験に費やしています」(片吉さん)

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「私が現在、注力しているのが化粧品用の新しい有効成分の開発です。当社では誰もが安心して使えるよう、肌の負担となる成分を極力排除し、天然成分を生かした処方を検討しています。化粧品と言ってもメイク製品などもありますが、私たちが主に開発ターゲットとしているのは、スキンケア製品。しわやたるみなどに効果のあるエイジングケアや美白などのシリーズはもちろんですが、お客さまの持つお肌の悩みを解決したり、なりたい肌に対応したりする機能を持つ有効成分を見つけるのが私の仕事です。論文や原料メーカーなどの情報を基に、『これはいけるかも』という成分を見つけ、試していくということもあります。植物エキスなどであれば、片っ端から試したこともあります」(片吉さん)

写真はある有効成分がコラーゲン量を増加させる機能を持つかという実験を行っているところ。ヒトの皮膚細胞の溶解液をマイクロピペッター(微量の液体を測り採る器具)で量り取っています。
「有効成分の適量は1000分の1ミリリットル単位。いろいろな濃度で試したサンプルを作り、細胞内のコラーゲン量を計測・評価します」(片吉さん)

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細胞実験をするための下準備も、もちろん研究者の仕事です。写真はクリーンベンチ(ほこりや微生物の混入を避けるため、無菌状態で作業を行うための装置)で細胞を培養プレートに播種(はしゅ)しているところです。
「有効成分の研究において培養細胞を使った実験は欠かせません。その作業はこのような装置の中で行います。ピペッターの後ろ側に見えている銀色の物体はガスバーナーです。培地(ピンク色の液体)が入ったビンの縁をバーナーであぶって殺菌して、ピペッターで取り分けていきます。細胞が均一になるようにまいたら、そこに有効成分を添加し37度に保った恒温器に入れて培養します」(片吉さん)

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見つけた成分が本当に有効かどうかを判断する一つの手段として、写真のような暗室に設置されたレーザー顕微鏡を使うこともあります。

「細胞を染色し、成分を加えた時に目的のタンパク質がどういう動きをするかを確かめるんです。顕微鏡の倍率は20~640倍。実際に見えているタンパク質の局在はパソコンの画面にも映し出されるので、そちらで確認します」(片吉さん)

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「基礎研究部は成分分析も担当しています」と片吉さん。世間にはさまざまな競合製品が登場しています。それらにはどんな成分が入っているのかを調べたりするためです。写真は成分分析室で、主に食品の分析管理を行っている分析チームのメンバー(写真左、右)が使っているそうです。

「ここには高速液体クロマトグラフィーなど、成分分析のための装置がずらりと並んでいます。ここで食品の分析チームのメンバーに交じって、成分分析を行います。分析チームのメンバーは分析のプロ。たまに分析方法について相談することもあります」(片吉さん)

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「日々の実験は一人で行いますが、実験の進捗状況を報告したり、解決できない問題を相談したり、部署内での打ち合わせはひんぱんに行っています」(片吉さん)

実験がうまくいき、新しい有効成分が見つかると、製品化につなげるべくプロジェクトが立ち上がります。

「そういう状況になると、基礎研究部のメンバーだけではなく、製品開発の部署とも密にコミュニケーションをとってプロジェクトを進めていくこととなります。コミュニケーション力や協調性もかなり問われる仕事です。しかし実験はうまくいかないことがほとんど。予想通りにはなかなかいきません。また私たちが取り組んでいる研究は、他社も取り組んでいる可能性もある。そんな中でいかに早く製品化に結び付けられるような成果を出すか。そこが私たち研究者にとって重要なポイント。難しいからこそ、面白い仕事です」(片吉さん)

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成果を論文にまとめたり、それを学会で発表したりということも、研究者の大事な業務です。写真は所内にあるプレゼンルームで学会発表の練習をしているところ。

「参加する学会は国内のものだけではありません。海外で開かれる学会に参加することも。したがって資料は英語で作成することが多いですね。研究者だからというわけではなく、もはやどんな仕事でも英語の読み書きは必須です。そのほかにも、研究の成果を製品開発チームのメンバーやお客さまの相談を受け付ける専門スタッフに説明することも行います」(片吉さん)

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基礎研究部といっても、机上の研究だけに携わっているわけではありません。

「2012年3月に医薬品研究室から基礎研究部に異動して、最初に携わったのが健康食品の有効成分に関する開発でした。中でも私が担当していたテーマはCBPという成分の応用です。CBPはConcentrated(濃縮された)Bovine-milk(牛乳の)whey(乳清) active(活性)Protein(たんぱく)の略で、牛乳や母乳から少量しかとれない、希少な天然たんぱくのこと。カルシウムの吸収・定着をサポートしてくれる当社の独自研究成分です。基礎研究部ではそれを1粒にどのくらい入れて、どのような目的を持ったサプリメントに仕上げていくかという製品化に至るところまで携わりました。このように当社の基礎研究という仕事は、最終段階まで携わることも珍しくないんですよ」(片吉さん)

写真は片吉さんが研究を進めたCBP製品です。「のびっこCBP」(写真左)は子どもが飲みやすいよう、CBPとビタミンD3などが配合された調整ココア。「カルシウム+CBP」(中央)と「コツプレミアムCBP」はいずれもCBPが配合されたサプリメントで、プレミアムはCBPがより高濃度に配合されています。

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ハタラクヒト 基礎研究とはいえ、製品化まで携われるところがやりがい

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片吉さんに「DHC第二研究所 基礎研究部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気についてうかがいました。

 

片吉さんは09年に茨城大学大学院 理工学研究科を修了し、DHCに入社しました。

「学生時代の専門は放射線生物学。放射線によってダメージを受けた細胞がどのように修復するかということを研究していました。その知識を身近な商品の開発に生かせる研究に携わりたいと思いました。DHCなら化粧品や健康食品の研究開発を行っています。またそれらの事業にとどまることなく、医薬品の分野など事業分野を拡大していっているイメージもありました。ここなら会社と共に成長していけると思い、入社を決めました」

 

入社後、配属されたのは医薬品研究室。

「当社が開発しているのは、一般用医薬品(市販薬)と指定医薬部外品(厚生労働大臣が指定する医薬部外品。ビタミン剤やカルシウム剤、喉清涼剤、健胃清涼剤などはその一例)。入社1年目から新製品の開発や厚生労働大臣への承認申請のための試験、品質管理など責任ある仕事を任されました。医薬品研究室のメンバーのほとんどが化学や薬学の出身者。私の専門は生物系だったため、医薬品に関する専門知識は仕事を覚えていく中で身につけていきました。また私が入社した年に、改正薬事法が施行され、通信販売など対面販売以外の販売方法に大きく規制がかかったのです。14年にはまた薬事法が改正され、現在は市販薬のほぼすべてが通信販売可能となっていますが、医薬品の開発は法律にも左右される難しい分野で、いろいろ苦労しました」

 

3年間、医薬品の開発に携わったのち、自ら希望して現在の部署に異動。現在は化粧品用の有効成分の開発に取り組んでいます。

「医薬品研究室とは異なり、分子生物学や生化学の知識が求められる現在の部署で多いのは農学部や理学部、工学部などの出身者です。とはいえ学生時代に学んだことは基礎的なこと。仕事で使う知識の大半は、仕事をしていく中で身につけていきます。例えば化粧品用の有効成分の開発に携わるなら、やはり化粧品自体に詳しいことも重要になります。したがって私のような仕事に就きたいなら、化粧品についてもいろいろ調べておくといいでしょうね。そしてもう一つ学生時代に身につけておいた方が良いなと思うのが英語力。学会発表だけではなく、海外の資料や文献を調べたりなど、英語に触れる機会は多いですからね」

 

基礎研究部での仕事のやりがいについては、「製品化に至る最終段階まで携われるところです」と片吉さん。基礎研究部門の研究者が携わるのは、有効成分を見つけるところまでというのが一般的だと片吉さんは言います。

「例えば『カルシウム+CBP』開発の主担当だった現上司は、工場の選定まで携わりました。量産化まで携わることはレアケースかもしれませんが、製品化まで携わるのは基礎研究部というシゴトバの魅力です。やはり自分が携わった製品が世の中で売られているのを見ると、誇らしい気持ちになりますからね」

 

最後にDHCという会社の文化、風土について聞きました。

「経験や年齢に関係なく、意見やアイデアを出しやすい環境です。理系のシゴトバとしては女性比率も高めなので、雰囲気も和やか。働きやすいですね」

 

気分転換に最適な社内外の施設

自動販売機が設置されているなど、気分転換に最適な休憩室です。お昼になるとここでランチを取るそうです。

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DHCはリゾート施設「赤沢温泉郷」(静岡県伊東市)の運営も行っています。赤沢温泉郷は赤沢温泉ホテルや赤沢日帰り温泉館のほか、赤沢ボウル(ボウリング場)、赤沢フィットネスクラブ、赤沢スパなどの設備で構成。予約が空いていれば社員ももちろん、ホテルが利用できます。写真は赤沢日帰り温泉館の大露天風呂からの景色。
「私も定期的に泊っています。ご飯もおいしいし露天風呂からの景色は絶景です」(片吉さん)

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ディーエイチシーにまつわる3つの数字

肌への優しさと機能性を追求した自然派化粧品や健康食品、医薬品などを開発し、安価な価格を実現することで次々と顧客を獲得しているDHC。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 1240万人以上

2. 3分の1

3. 913種類

 

前回(Vol.131 日清オイリオグループ株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美  撮影/臼田尚史

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