大日本印刷株式会社

今回の訪問先 【大日本印刷 技術開発センター】
活版印刷の会社として創業した大日本印刷(DNP)。以来、出版印刷や商業印刷を中心に事業を展開し、人々の暮らしや社会の発展に貢献してきました。1950年代に入り、これまで築いてきた印刷技術を、パッケージや建材、ディスプレー製品、電子デバイスなどへ応用して事業領域を拡大。印刷技術を出版印刷以外にも拡大し、可能性を広げる「拡印刷」を推進してきました。現在ではリチウムイオン電池や太陽電池用の部材開発などの環境・エネルギー分野、毛細血管のパターン形成への印刷技術応用などライフサイエンス分野へとさらに事業領域を拡大しています。このようにDNPは私たちの身近にあるさまざまなモノにかかわっています。そんな製品や技術を生み出す原動力となっているのが、国内2カ所に設置された研究所です。一つは印刷エレクトロニクスや環境・エネルギー、ライフサイエンス、機能性材料など、次世代の技術や新しい素材などについて研究開発を行っている研究開発センターです。そしてもう一つが、モノ作りを革新するための新製品や新技術の開発を行い、Q(品質)C(コスト)D(納期や在庫)E(環境)S(安全)の実現をミッションとしている技術開発センターです。今回は大日本印刷の技術力の要の一つ、つくば総合開発センター 技術開発センターのシゴトバを訪れました。

 

情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクス部門に貢献するモノ作り

技術開発センターのあるつくば総合開発センターは、日本を代表する研究学園都市、茨城県つくば市にあります。同市内には9カ所の工業団地があり、多くの国と企業の研究機関が集積しています。つくば総合開発センターはそのうちの一つ、赤松林に囲まれた自然環境豊かなつくばテクノパーク豊里内に立地しています。つくば総合開発センターの敷地内には3つの建物が設置されており、技術開発センターの技術者が主に働いているのが写真の3期棟です。同建物は2階建てで、2階が執務エリア(一部実験室あり)となっていました。

最寄り駅の研究学園駅(つくばエクスプレス)からつくば総合開発センターまでは車で20分ほどかかるため、同駅からは社用バスが出ているとのこと。自動車で通勤する人もたくさんいます。

ph_rikei_vol133_01

 

技術開発センターのシゴトバを技術開発センター 生産総合研究所 部長の下村貴一さんと同部署 主任の加藤隼人さんが案内してくれました。

「技術開発センターは生産総合研究所とプリメディア研究所、生産革新研究所という3つの研究所で構成されています。生産総合研究所では新製品、新技術を具現化するためのプロセス技術や材料、装置、設備の開発を行っています。プリメディア研究所が担当するのは紙メディアをはじめ、さまざまなデジタルメディアを対象とした画像処理技術、高精度な色合わせ技術などの追究、およびそれを可能にするための検査装置の開発です。そして生産革新研究所では工場全体の生産力向上をはじめ、得意先企業やその先の生活者までを含めたビジネスチェーン全体の視点での最適化を図っています」(下村さん)

写真は技術開発センターの執務エリア。3期棟の床面積は8600平方メートル(サッカー場とほぼ同じ広さ)もあるため、執務エリアも非常に広々としていました。

「部署間を仕切る壁などは一切なし。コミュニケーションも取りやすく、風通しはすごくいいですね」(下村さん)

ph_rikei_vol133_02

 

DNPが現在、展開している事業はコミュニケーションの可能性を広げるためのソリューションを提供する情報コミュニケーション部門、パッケージや住空間マテリアル、エネルギー関連部材などを開発・提供する生活・産業部門、各種ディスプレー製品や光学フィルム、電子デバイスの開発を行っているエレクトロニクス部門の3つ。下村さんたちが所属する生産総合研究所では、これらDNPが展開している全事業部門、および工場を対象としたさまざまな設備や製造プロセスの開発、材料の開発などを担当しています。

「私たちの強みとなっている技術は次の4点。第1が設計技術。図面を描くということだけではありません。こういう機能を持つモノが欲しいという事業部からの求めに応じて、仕様を検討することから始まり、適正な価格・納期で実現できるようにすることはもちろん、そのモノを作るにはどういう設備が必要なのかというところまでを一から設計していく技術です。第2は20年以上前から追究してきた構造解析技術。例えば飲料のボトル。落としても中身が出ないような適正な形状を提案するには、それなりの経験が必要でした。しかし構造解析技術を高度化することで、経験の浅い社員でも先輩社員と同程度の品質が保てる設計ができるようにしているのです。第3は後(あと)加工技術。当社の印刷機で刷り上がる印刷物はロール状となっています。後加工技術とはそのロール状の印刷物を紙パックなどに形を変えるための技術。つまり印刷機はもちろん、後工程のプロセス開発およびそれを実現する機械の開発も手がけているのです。第4はクリーン化技術です。当社ではスマートフォンなどのタッチパネルや液晶ディスプレ-関連部材の製造装置の開発も手がけています。このようなエレクトロニクス部門向けの装置の多くはクリーンルームで使われます。よりゴミ不良がなく、良品率が向上するにはどのようにクリーンルームを改善すればよいか。そこで私たちは気流シミュレーション技術や環境解析技術などを使って、よりクリーンに製造できるような仕組みも設計しています」(下村さん)

写真はある製造装置を、3次元CADを使って設計しているところです。

ph_rikei_vol133_03

 

実験室にはさまざまな実験や測定のための設備が並んでいました。
「ここには実験や測定のための機械だけではなく、簡単な加工ができるように工作機械も設置されています。例えば設計が仕様を満たしているかなどを検証する機械もここで作ったりしています」(下村さん)

写真はある機械の寿命を評価するための検証機です。

「この機械の設計はもちろん、組み立ても自分たちで行いました。実際に工場に納品される装置だけではなく、このような検証機を作ったりするのも私たちの仕事です」(下村さん)

ph_rikei_vol133_04

 

既存機種の改良も行います。写真は大型印刷機を実際に動かし、問題箇所を確認しているところ。

「工場に納品した後、使用していく中で異音がしたり振動が出たりという問題が発生することもあります。そんな場合は、どこに原因があるのかを解析をするため、このような実験環境に問題の部位を模擬的に発生させて検証を行います。そして原因を特定し、それを解消するよう設計の検討を行います」(下村さん)

ph_rikei_vol133_05

 

執務エリアがある横長のフロアの真ん中にはコミュニケーションエリアが設置されていました。

「会議室ではなく、オープンなスペースにこのようなソファなどを並べて、気軽に打ち合わせできるようにしています。ワイガヤ(役職や年齢、部署などを超えて気軽に「ワイワイガヤガヤ」と話し合うこと)ができるようにしているんです。このようなオープンな空間だと、通りすがりでも簡単に話に入っていくことができます。そういう自発的に集う場所を増やして、情報共有や新しい知識や知恵の発想の場になればいいなと思っています」(下村さん)

コミュニケーションエリアにはテレビやお菓子の販売機も設置されていました。飲んだり、食べたり、リフレッシュしながら打ち合わせをすることも多いそうです。

ph_rikei_vol133_06

 

畳が敷かれた掘りごたつタイプの打ち合わせスペースもありました。写真を見ればわかるように、テーブルの天板がホワイトボードになっているため、図を描きながら打ち合わせできるとのこと。実はこのホワイトボードのテーブルは技術開発センターのメンバーの手作り。そのほかにも打ち合わせ用のテーブルなど、さまざまな手作り什器(じゅうき)が並んでいました。ワイガヤ空間を大事にしている同社では、今後もこのような場所をどんどん増やしていくとのこと。もちろん、従業員の皆さんもこのようなスペースを活用し、コラボレーションやコミュニケーションを積極的に図っているそうです。

「私たちの仕事はコミュニケーションなしには進みません。おそらく仕事の半分は、誰かに何かを伝えること、つまりコミュニケーションで成り立っています。例えば装置の設計をするとします。図面を描いたとしても、それだけでその装置を作れないんです。つまりそれをちゃんと作ってもらうためには、工場の人たちと仕様を確認したりするコミュニケーションが不可欠になります。また新しい機構を考えたり、問題を解決したりするにもコミュニケーションは不可欠です。このフロアにはこのようなフリースペースがたくさんあるので、ちょっとしたことでも気軽に打ち合わせしたり話し合ったりすることができます。とても便利に活用しています」(加藤さん)

ph_rikei_vol133_07

 

ハタラクヒト 上司や先輩との壁がなく、エネルギッシュで明るいシゴトバ

ph_rikei_vol133_08

引き続き加藤さんに「大日本印刷 技術開発センター」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気についてうかがいました。

 

加藤さんは2008年早稲田大学理工学部機械工学科を卒業し、DNPに入社。

「機械に携わる仕事に従事したいと思っていました。数ある企業の中からDNPを選んだのは、お菓子のパッケージをはじめ、床材や壁紙、天板の化粧シート、スマートフォンのタッチパネルなど、身近なモノをたくさん作っていたこと。そんな幅広いモノを開発している環境で、自分の可能性を試したいと思ったんです」

 

希望通り、技術開発センターへ配属。現在は新しい商材を量産化する装置の開発に携わっています。

「新しい商材といってもさまざまですが、私がこの前まで携わっていたのは、タッチパネルセンサーの量産設備の開発です。量産する製品の仕様を検討するところから担当。次にその製品を量産化するための設備の仕様を考え、設計します。部品ができあがれば組み立てて、仕様を満たしているか検証します。品質をクリアしていれば、工場に納入。その後も正しく稼働しているかどうか、数カ月間は工場に出向いたりなどしてチェックします。このような開発の一連の流れを一人で任されるようになったのは、入社6年目から。最初は一部の部品の図面を描くことから始まりますが、徐々に任される範囲が増えていくんです。現在のように量産までを任されるようになると、やりがいも大きくなりますね。自分が一から設計した設備が、安定して量産するのを見る時が、一番うれしい瞬間です」

 

うまくいくことばかりとは限りません。「失敗もたくさんあった」と加藤さんは振り返ります。

「以前にこんなことがありました。ある量産設備の設計を担当していたのですが、工場に納品したところ、当初はトップスピードで動かす予定が、かなり低速で動かすことになったのです。すると低速では想定以上にうまく動かず、即座に改良しなければならなくなりました。この時初めて、自分が担当する設備だけではなく、前後の工程の設備についてもきちんと把握しておかなければならないことを実感。部分ではなくトータルで見ることの大切さを学びました」

 

加藤さんが所属する生産総合研究所は生産プロセスや材料、設備の開発を担当しているため、学生時代に機械系や材料系を専攻していた人が多いそうですが、技術開発センター全体では電気・電子、情報、物理、化学、人間工学などのさまざまな理系出身者が働いているとのこと。またビジネスチェーン全体の革新を推進する生産革新研究所もあるため、経営工学の出身者もいるとのこと。そのようなバラエティに富んだ専門性を持つ人材が働いているのも、技術開発センターの魅力の一つ。

「執務フロア同様、上司や先輩とも壁がなく、気軽に相談できます。コミュニケーションも活発で、声も大きい。明るくエネルギッシュなシゴトバです」

 

メニュー豊富な食堂、リフレッシュにぴったりなテニスコートやグラウンドも

厚生棟にある食堂です。窓の向こう側にはちょっとした緑地が広がり、そこでレタスやキュウリなどの野菜の栽培を行い、収穫時にはサラダ(無料)として提供されたりするそうです。

ph_rikei_vol133_09

 

メニューが豊富なのも同食堂の特徴です。写真は「女子栄養大メニュー」という、女子栄養大学が考えた日替わりランチ。この日の献立は豚肉のハニーマスタード焼き、大根とベーコンの煮物、胚芽ごはん、白菜とコーンのスープ。このほかにも定食メニュー(A、B)やカレーなどの一品メニューがあります。すべて1コイン(500円)以下で食べられます。

ph_rikei_vol133_10

 

テニスコートです。3面あり、昼休みや終業後はもちろん、仕事が休みの土日など、リフレッシュを兼ねてテニスを楽しんでいるようです。テニスコートだけではなく、野球やサッカーが楽しめるグラウンドもあります。

ph_rikei_vol133_11

 

大日本印刷(DNP)にまつわる3つの数字

創業以来、出版印刷・商業印刷で培ってきた印刷技術を武器に、パッケージや建材、ディスプレー製品、電子デバイスなどへと応用し、印刷技術の可能性を広げる「拡印刷」を推進しているDNP。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 400キロメートル

2. 20ナノメートル

3. 139年

 

前回(Vol.132 株式会社ディーエイチシー)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。