ジャパン マリンユナイテッド株式会社

今回の訪問先 【ジャパン マリンユナイテッド 商船事業本部 基本設計部】
古来より大量のモノを長距離輸送するための手段として使われてきた海上輸送。現在もその地位は揺るぐことはありません。例えば日本の場合、貿易物資のほとんどが海上輸送となっています。そのような私たちが日常生活を営むのに欠かせない輸送手段である船を造っているのが、ジャパン マリンユナイテッド(JMU)です。JMUは2013年、ユニバーサル造船(日立造船と日本鋼管の船舶部門が経営統合してできた造船会社)とアイ・エイチ・アイ・マリンユナイテッド(IHI MU:石川島播磨重工業の船舶部門と住友重機械工業の艦艇部門が共同出資してできた会社)との統合により誕生しました。このように統合を重ねてきた歴史により、多くの技術者が在籍していること、さまざまな船の建造実績があること、多くの造船工場を有していることが、同社の強みとなっています。また世界においては、低船価路線で盛り上がっている中国や韓国の造船業に対抗するために、省エネ技術を追究し低燃費な船造りに注力。船の生涯コストという面からお客さまに魅力を感じてもらい、受注につなげているそうです。JMUで造っている船は物流に欠かせないコンテナ船やタンカー、ばら積み船(バルクキャリア:梱包されていない穀物や鉱石などを輸送する船)などはもちろん、客船・カーフェリー、艦艇(防衛省向けの船)など多種多様。船を造るだけではなく海上プラントなどの海洋・エンジニアリング事業、さらには船の改造やアフターフォローを行うライフサイクル事業なども展開しています。今回は造船事業の中でも輸送船をメインに造っているJMU 商船事業本部 基本設計部のシゴトバを訪れました。

 

タンカーやコンテナ船などの輸送船を設計する仕事とは

商船事業本部 基本設計部のオフィスは、東京都港区芝5丁目のJMU本社にあります。最寄り駅は都営地下鉄浅草線・三田線の三田駅。そこから徒歩約3分で本社が入っている三田ベルジュビルに着きます。またJR田町駅から歩いても7分ほどの距離。このように複数路線が使える上、いずれの駅からも近いため、通勤は非常に便利です。しかも三田ベルジュビルは2012年5月末に竣工した新しいオフィスビルで内装も豪奢(ごうしゃ)で、レストランやバール(カフェ)なども入っていました。

ph_rikei_vol134_01

 

商船事業本部で扱っているのはタンカーやコンテナ船、バルクキャリア、液化ガス船(液化天然ガスや液化石油ガスなどを運搬する船)、自動車運搬船など。写真は大型タンカーです。船の長さは335メートル。幅は60メートルもあります。

ph_rikei_vol134_02

 

商船事業本部の担当ではありませんが、JMUでは艦艇も建造しています。写真は南極観測船「しらせ」。南極観測船は代々、JMUが造っているとのこと。防衛省に納められる護衛艦などは主に神奈川県横浜市にある磯子工場で造られているそうです。

ph_rikei_vol134_03

 

船だけではなく、海洋石油掘削リグ(基地)や石油生産プラットフォームなどの大型海洋構造物の建造も行っています。写真は浮体式LPG(液化石油ガス)生産・貯蔵・搬出設備です。

ph_rikei_vol134_04

 

船が船主に渡るまでの工程について、企画管理本部 人事部 人事グループの神園(かみぞの)憲太さんが説明してくれました。
「船を船主に引き渡すまでには『引合・受注・基本設計・詳細設計・建造・試運転・引き渡し』という工程があります。このうち『引合・受注・基本設計』までを本社が担当し、詳細設計以降は工場が担当します。また、船は非常に大きな構造物のため、設計(基本設計・詳細設計)とひと口に言っても、設計する箇所別に大きく次の4グループに分かれて担当します。船体の設計を担当するのが構造グループ、エンジン周辺を担当するのが機関グループ、艤装品(ぎそうひん・エンジン回り以外の装備品)や居住区などを担当するのが船装グループ、配電や計器類を担当するのが電気グループです。機関設計は機械工学、電気設計は電気工学の出身者が多いですが、そのほかの学科出身者も多数活躍しています」(神園さん)
写真は基本設計部の執務室です。壁や柱が一切なく、オフィスの端から端まで見渡せる開放的な作りとなっていました。

ph_rikei_vol134_05

 

基本設計部の仕事内容については、基本設計部 電気グループの星野有哉さんと同部機関グループの伊藤洋麻(ようま)さんが紹介してくれました。
「現在、私が携わっているのは基本設計部のメインの仕事である船主との打ち合わせ。営業に同行し、船の仕様や船価について船主と話し合いをするんです。そして費用や実際の使い勝手を考えて適切な仕様を提案します」(星野さん)
「お客さまの要望をうかがい、仕様書にまとめ、船の建造に向けた設計を進めていきます」(伊藤さん)
もちろん、一から新しい船を開発することもありますが、シリーズ船と呼ばれる、ある船をベースとした案件も多いそうです。とはいえ船の建造はオーダーメード。世界にたった1つのモノづくりというわけです。
写真は星野さんがCADを使ってタンカーに取り付ける照明の設計を行っているところ。
「どれだけの数の照明(水銀灯光器やナトリウム灯光器)をどのような方向に取り付ければよいか、検討して図面化していくんです」(星野さん)

ph_rikei_vol134_06

 

基本設計部の仕事の大半は、デスク作業となります。CADを使って設計すること以外にも、資料を確認したり、仕様書をまとめたりという業務に費やす時間もかなりなもの。写真はエンジンメーカーの資料を確認し、お客さまの要望を満たすエンジンかどうかを確認しているところです。
「エンジンを設計・開発するのはエンジンメーカーです。お客さまが要望する仕様を提出し、造ってもらうのです。私たちが設計するのは、エンジン周辺装置。例えばエンジンから排出されるエネルギーを回収する廃熱回収装置などの環境対策機器の検討もその一つ。同装置は回収したエネルギーを電気に変換して、船内電力に利用したり、モーターを使用して本船の推進力に活用したりすることで、省エネを実現。このように環境に優しく、魅力的な船を造ることができるよう日々努力しています」(伊藤さん)

ph_rikei_vol134_07

 

船の建造は長期(約2年)にわたって行われます。その間、さまざまな部署・人とかかわりながら仕事を進めていきます。したがって基本設計部内での打ち合わせに加え、工場の詳細設計部など、他部署との打ち合わせもひんぱん。詳細設計部のメンバーと打ち合わせをするときは、工場に出向くことも多いとのこと。社外においては基本設計部の主な役割である船主との打ち合わせをはじめ、エンジンなどの船に必要な機器・装置のメーカーの担当者との打ち合わせも欠かせません。写真は電気グループと機関グループとの打ち合わせ。図面や仕様書を広げながら行われます。
「例えば『このシステムにはこれぐらいの電気が必要になる。だからそれを賄えるような発電機エンジンを用意してほしい』というような具体的な話し合いを行うことが多いですね」(星野さん)

ph_rikei_vol134_08

 

建造できた船は、船主に引き渡す前に試運転を行います。試運転とは実際に1週間ほど外洋を航行して、ちゃんと設計した通りの船ができているかチェックする作業です。試運転には船主のほか、建造にかかわった多くの人が乗り込みます。写真はエンジンコントロールルームでメインエンジンが正しく動作しているか監視しているところです。
「私たち基本設計の担当者も試運転に同行します。試運転ではさまざまな項目をチェックするので、自分が担当する項目のチェックが夜に行われると、昼夜逆転することも。また不具合が見つかれば、深夜であっても即対応したり…。海の上では電波も届かないので、電話をしたりインターネットを見ることもできません。もちろんテレビを見ることもできませんし、コンビニだってありません。自分が携わった船が実際に海を航行する場面に居合わせるのはすごくうれしいことなのですが、普段とはまったく違う生活環境に置かれるのが少しつらいところです」(伊藤さん)

ph_rikei_vol134_09

 

写真は大型タンカーに積まれているメインエンジンおよびその周辺装置です。左側にある大型の機械がメインエンジンで、床下まで収まっています。これも試運転での作業のひとコマ。
「このような大型タンカーに積まれるエンジンは非常に大きく、高さは5階建てビル(約20メートル)に相当するほどです」(伊藤さん)
ph_rikei_vol134_10

 

写真は横浜事業場 磯子工場を上空から見たところ。JMUでは国内に7つの工場を構えています。このように磯子工場も広大な敷地面積を有していますが、さらに大きな敷地面積を有しているのが、有明事業所(熊本県長洲町)です。総面積107万平方メートル(東京ドーム約22個)の敷地に長さ620メートルと420メートルのドック(船の建造や修理をするための施設)を2基、700トンと1200トン吊りのゴライアスクレーン(大型の門状のクレーン)などを装備。大型船舶や大型海洋構造物などの生産が行われているそうです。

ph_rikei_vol134_11

 

 ハタラクヒト たくさんの人が携わって造られるスケールの大きさが面白さ

ph_rikei_vol134_12

星野さん(左)と伊藤さんに「JMU 商船事業本部 基本設計部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気についてうかがいました。

 

星野さんは2011年、大学院情報通信工学専攻を修了しJMU(当時のユニバーサル造船)に入社しました。
「大学では電子回路を中心にレーザーやアンテナの研究をしていました。卒業後もマイクロ波にかかわる仕事に就きたいと考えていましたが、就職活動を通じて造船業の電気設計という仕事を知りました。船には通信装置や発電機などさまざまな電気の技術にかかわる機器や装置が搭載されています。ここなら自分が学んできた電気の技術を幅広く生かせると思い、選びました」(星野さん)

 

その翌年の12年に大学院機械工学専攻を修了してJMU(当時のIHI MU)に入社を決めた伊藤さん。
「私も学生時代は、氷の凍結特性に関する研究をしており、造船とはまったく関連のない専攻でした。就職活動をしている時、周囲の同期は研究職や家電メーカーに進む中、私は『たくさんの人と大きなものを造りたい』と思ったのです。そこで、昔から好きだった船を造る会社を選びました」(伊藤さん)

 

研修を終え、基本設計部に配属後、星野さんが最初に取り組んだのは、「Sea Navi®」という技術研究所が開発した船舶の運航支援システムを実船に搭載するという作業でした。
「『Sea Navi®』は海上気象予報による運航支援だけでなく、船速や風向風速などをモニタリングすることで、設計した性能が正しく出ているかを解析できるというシステム。船の価値を高めることに加え、解析結果のフィードバックにより、次に設計する船をより良くすることができるわけです。『Sea Navi®』は新しい機器だったので、誰がいつどのように工事を行えば良いのか、まったく決まっていませんでした。そこで所掌表や業務フローを作成して定型業務化しました。その後、現在の電気設計業務を担当することとなりました」(星野さん)

 

一方の伊藤さんが入社後に配属されたのは、呉(くれ)事業所(広島県呉市)。
「事業所(工場)では工程管理の仕事に従事していました。実際の船を間近で見ると、学生時代に思っていたよりもはるかに大きく、たくさんの人がかかわっているんだということを知りましたね。そして2年目に現在の部署に異動しました」(伊藤さん)

 

星野さん、伊藤さんにやりがいや面白さを感じる瞬間について聞きました。
「船主との打ち合わせをする際は、本当に多くの準備が必要です。その中で船主が納得する提案を出せて、『こんな方法があるのか』と言ってくださる時が最もやりがいを感じる瞬間ですね。また、船主との打ち合わせをして仕様を決めた後に事業所に設計引き継ぎを行いますが、船主の意図や基本設計の内容をスムーズに引き継げたときは面白さを感じています」(星野さん)
「船は非常に大きいもので、多くの人、多くの部署がかかわって造られます。自分が設計したものが船主や他部署にとって大きなメリットがあったり、お互いが協力し合いながら効率良く仕事を進めることができたりしたときは、やりがいを感じますね。大きなスケールのモノづくりだけに面白さもひとしおです」(伊藤さん)

 

やりがいや面白さの裏側には、さまざまな苦労も。
「最も大変だったのはブラジルに船主打ち合わせに行ったこと。初めての海外打ち合わせがブラジルで、しかもよく知らない船(統合前のIHI MUが建造した船をベースにしたもの)についてでした。当初は先輩社員が行く予定でしたが、急きょ行けなくなったための代理。当時は船主打ち合わせの経験も乏しく英語も苦手でしたので、なかなかうまく打ち合わせが進まず苦労しましたが、ほかのグループの方や上司の助けもあり、なんとか仕様を固めることができました。今となっては良い経験です(笑)」(星野さん)
「呉事業所で働いていた時のことです。船の建造を通して、乗組員の方と共に動作確認試験を行ったり、装置の使い方の説明などを行うのですが、乗組員の多くは海外の方。文化や習慣の違い、英語力の乏しさから、なかなか理解してもらえませんでした。船の完成が近づくにつれ、ようやく乗組員の方に船の具体的なシステムを理解していただき、喜んでいただいた時は、今までの苦労が報われた思いでした。1年間、建造を見守ってきた船が乗組員の方と共に出航していった時の達成感は今でも忘れられません」(伊藤さん)

 

仕事で必要になる知識についてうかがうと、「常に勉強は必要ですが、基本的な理系の知識があれば、仕事を通じて身につけられる」と星野さんと伊藤さん。それよりも海外の方と仕事をすることも多いため、「海外旅行をするなど、海外慣れすることも大事」(伊藤さん)、「英語力、中でも会話力が求められるのでそれを磨くことをお勧めします」(星野さん)と言います。

 

最後にJMUの文化、風土について人事の神園さんが答えてくれました。
「ジャパン マリンユナイテッドは造船所が統合・分社などを重ね、規模を拡大した会社です。現在の形となってまだ2年間しかたっていないので、会社の風土は、社員一人ひとりによってとらえ方はさまざまだと思いますが、『新しいことに挑戦し、若手にも大きな仕事を任せてくれる会社』だと実感しています」(神園さん)

 

親睦を深めるイベント、新築間もない独身・単身寮

基本設計部 電気グループと機関グループでは親睦を深めるため、年1回、「デカンズ杯」(電気の「デ」と機関の「カン」を組み合わせた同社の造語)という名称のゲームイベント(写真はボウリング大会)を開催しています。
「このイベントの起源は日立造船の有明工場時代にまでさかのぼり、20年以上の歴史があります。企業統合などにより同イベントは自然消滅したのですが、約4年前に旧ユニバーサル造船で復活させ、今に至っています。意外に歴史あるイベントなんです(笑)」(星野さん)

ph_rikei_vol134_13

 

本社近くにある独身・単身者のための寮です。神奈川県横浜市神奈川区にあります。最寄り駅はJR新子安駅。
「14年10月にできたばかりの新築の寮です。部屋はワンルーム。約100人、入居しています」(神園さん)

ph_rikei_vol134_14

 

ジャパン マリンユナイテッドにまつわる3つの数字

タンカーやコンテナ船、バルクキャリア、艦艇、客船、旅客カーフェリーなどさまざまな船を建造し、世界に提供しているジャパン マリンユナイテッド。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 約1300万立方センチメートル

2. 約80キロメートル

3. 約2センチメートル

 

前回(Vol.133 大日本印刷株式会社)の解答はこちら

 

取材・文/中村仁美 撮影/臼田尚史

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。