<技術開発>株式会社ミクニ シゴトバ&やりがい紹介

今回の訪問先 【ミクニ 小田原事業所 開発本部 開発(MBD)統括部 機能開発設計部】
今や私たちの生活に欠かせない移動手段の一つに自動車や自動二輪車(以下バイク)があります。街で見かけるそれらのほとんどにはエンジンが搭載されています。エンジンとひと口に言っても、それを駆動させるには燃料噴射装置(ガソリンなどの燃料を圧縮し、吸入空気に霧状に噴射する装置)をはじめとする、さまざまな部品が必要です。それらのエンジンを構成する部品を中心に自動車およびバイク関連部品を幅広く手がけているのが、ミクニです。ミクニは自動車・自転車およびその部品の輸入会社として1923年に創設されました(当時の社名は三國商店)。32年にはアマル(イギリスの気化器メーカー)とガレリー(イタリアのバイクメーカー)の気化器製造権を取得し、36年に蒲田工場、44年には小田原工場を開設し、生産を開始。ここから自動車関連の部品メーカーとしてのミクニの歴史が始まります。自動車およびバイクのエンジン制御技術については、今では世界をけん引する技術力を持った部品メーカーとして、世界各国の完成車およびバイクメーカーに部品の提供を行っています。ミクニが手がけている製品は自動車だけではありません。エンジン制御で培った技術を応用し、ガス制御機器や水制御機器、加湿器などの開発も行っています。今回はミクニの主力R&D(Research and Development :研究開発)拠点である小田原事業所のシゴトバを訪れました。

お客さまから情報を仕入れ、未来の車に搭載される新しい部品を開発

ミクニ製品を生み出すR&D拠点、小田原事業所は神奈川県小田原市郊外にあります。小田原事業所まではJR小田原駅および小田急小田原線足柄(あしがら)駅からいずれも車で約10分の距離。駅から離れていること、また自動車やバイクの部品を開発しているメーカーだけに車・バイク好きの社員が多いことなどから、ほとんどの社員が車やバイクで通勤しているそうです。

小田原事業所の敷地面積は8万5357平方メートル(東京ドーム1.8個分)。以前はミクニの中で最も古い製造拠点として稼働していたそうです。現在、工場はありませんが、敷地内にはその当時に建てられた趣のある建物も数多く存在していました。また過去には自社製品の試験用に、バイクのテストコースもあったそうで、その名残も。同事業所内の建物の一角に開発本部 開発(MBD)統括部 機能開発設計部のシゴトバはありました。

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開発本部 開発(MBD)統括部 機能開発設計部のシゴトバを同部第1グループに所属する石井利昌さんが紹介してくれました。

「開発(MBD)統括部のMBDとはModel Based Development(モデルベース開発)の略で、エンジンシステムにマッチした最適製品の創出を効率的に行うために、コンピュータを使ってシミュレーション解析し、事前検討を素早く正確に行ってから試作に移るというプロセスを実施しています。私たちの部署が担当しているのは5~10年先を見据えた先行開発。どんなものが求められるのか、お客さまである完成車メーカーやバイクメーカーのニーズをうかがったり、グローバルトレンドを予測して製品開発に取り組んでいます。その手法としてMBDを活用しているというわけです。また開発本部にはもう1つ、製品開発に携わっている部署があります。それが開発(PFT)統括部です。PFTはPlatform Technologyの略で、ここでは量産のための開発を担当しています」(石井さん)

石井さんが所属している機能開発設計部では、現在次の3テーマをメインに先行開発を行っているそうです。

「第1のテーマはサーマルマネジメント系。日本語にすると熱管理システムです。エンジンなどから発生する余熱や廃熱をどう制御し、うまく活用していくか、その仕組みを考えたり、熱の有効活用ができる製品を検討したりしています。第2のテーマは排ガス循環系。現在、地球温暖化対策として自動車排出ガス規制が厳しくなっています。そこで排出ガスを低減化するため、排出ガスの一部を取り出し、効率的な燃料に利用しようというのが排ガス循環技術です。そして第3のテーマが可変バルブ機構(吸排気バルブの開閉タイミングやリフト量を可変させる機構)などを代表とする動弁系です。これらのうち、私が主に携わっているのが排ガス循環系です。現在、自動車は環境に優しいエコなモノが求められていますが、私たちが開発した製品が搭載されるのは5年以上も先。したがってエコであることはもちろんですが、さらにどんな付加価値を提供できるか、お客さまにヒアリングし新しい技術の検討を行っています」(石井さん)

写真は開発(MBD)統括部の執務エリア。小田原事業所では約400人の社員が働いていますが、その6~7割がエンジニアで占められているそうです。

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ミクニが開発、提供している製品の一例です。写真は大型バイク用電子制御スロットルボデー(エンジンに入る空気の量を調整するための部品)。燃料噴射システム製品の一つです。同製品ではスロットルバルブの開閉を電動化し、出力制御の最適化を図っています。

「ミクニは特にバイクの分野で強みを発揮してきました。電子制御スロットルボデーも国内外のバイクメーカーに採用され、さまざまな車種に搭載されています」(石井さん)

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「先行開発では考えている時間の方が、CADで図面を描いている時間より多いですね。そのほかに自席ではデザインを考えたり、試作品ができあがれば実験の計画書を作成したり、届いた実験結果を解析したり。開発設計職だからといって、ずっと社内にいてパソコンに向かっているわけではありません。どんな製品を求めているのか、情報を収集するためお客さま先にうかがいヒアリングしたりすることも。世界中のお客さまとかかわっていますので、海外に出張することはもちろん、製造現場に出向くこともあります」(石井さん)

写真はお客さまに提案するための資料を作成しているところです。

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新しいモノづくりにおいては、コミュニケーションが欠かせません。写真は研究材料である他社の排気系の部品を手に、新たな排気系の製品をどう作っていくか、部のメンバーと打ち合わせをしているところ。

「部のメンバーとはもちろん、実験部のメンバーと実験計画について打ち合わせをしたり。そのほかにも生産の現場にも出向き、生産本部のメンバーと話すことも。とにかくさまざまな人とコミュニケーションして情報を仕入れ、製品開発につなげていきます」(石井さん)

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小田原事業所は実車を用いた実験も行うことができます。写真は吸気系の新製品開発をするために実験をしているところ。どのくらいの効率で吸気が行われているか、スピード、出力などを測定しています。首にかかっているヘッドホンはエンジン音を遮断するのに使います。

「実験計画は実験部のメンバーと協力して作成しますが、実際の実験は基本的に実験部のメンバーが行います。とはいえ、任せっぱなしにするわけではありません。例えばこの実験では、アクセルを踏むという動作が必要になります。それを設計者が手伝ったり…。実験者と設計者が協力することで、より製品開発に効果的な実験ができる可能性もありますし、実験者の視点ならではの意見を共有できますからね」(石井さん)

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分析室もあります。写真はX線検査装置です。

「例えばプラスチックで外観を覆われた他社製品があったとします。内部の金属部品がどのような構造になっているのか、調べるときなどにこの装置を使っています。この部屋にはX線検査装置以外にも電子顕微鏡など、さまざまな分析するための機器が用意されています」(石井さん)

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電波暗室です。電波暗室とは外部からの電磁波を受けず、かつ外部に電磁波を漏らさないよう、そして内部で電磁波が反射しないよう設計された部屋。いまや自動車にはさまざまな電子部品が搭載されており、ミクニでもECU(エレクトロニックコントロールユニット:エンジンの燃料噴射量や噴射時間などを制御する装置)やセンサーなどの車載電子部品が開発されています。それらの製品から出される電磁波が規格以下に収まっているか、またほかの製品や周囲から出される電磁波によって誤動作しないかどうか、このような電波暗室を使って確認します。

「私もセンサーの設計に携わっていたときは、この部屋で実験を行っていました」(石井さん)

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ハタラクヒト 意欲と能力・スキルがあれば、やりたいことにチャレンジできる

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引き続き石井さんに「ミクニ 小田原事業所 開発本部 開発(MBD)統括部 機能開発設計部」というシゴトバの魅力、やりがい、職場の雰囲気などについてうかがいました。

石井さんは2008年、関東学院大学大学院工学研究科電気工学専攻を修了し、ミクニに入社しました。

「大学院では高電圧関係の研究をしていたため、電力メーカーなどに応募していたんです。もっと幅広い視点で就職活動をしようと思い、バイクや自動車好きだったことから、車の部品メーカーも選択肢に入れました。その中でもミクニを選んだのには3つ理由があります。1つは完成車メーカーの下に属さない独立系だったこと。もう1つは海外に拠点があることです。そして最大の決め手となったのは、工場見学の際に見た、実験と設計の人が話し合いをして進めている姿。部署を超えて、話し合いの中でモノづくりを進められるという風土にひかれたんです。もともと、自分が初めて買ったバイクのキャブレターがミクニの製品だったことも、ミクニに決めた大きな理由でもありましたが(笑)」

車やバイクに携わりたいと思いながらも、完成車メーカーを選ばなかったことについて、「完成車メーカーだと全体に携わることはできないから」と石井さんは答えます。

入社後、最初に携わったのは燃料噴射装置の開発。「設計ではなく、実験を担当しました」と石井さん。その後、センサー技術グループに移動し、センシング製品(センサーを利用して計測・判別する装置)の実験、設計に携わるように。

「センシング製品には5年間、携わりました。その後、1年間、Mikuni Americanに赴き、バイク向け吸気系製品の設計開発に従事。海外で働きたいというのは、入社時からの希望でしたので、機会が得られたときはうれしかったですね。同じ設計開発という仕事ですが、アメリカと日本では仕事の進め方が異なり、すごく良い経験になりました」

帰国後は排ガス循環系の製品の設計開発を担当している石井さん。車やバイクの部品を開発する面白さややりがいについて聞いてみました。

「いかにお客さまに採用していただける新しいものを生み出すか。そういった仕事に携わっていること自体が面白さです。どんな新しいものを生み出すか、それはメンバー内だけの極秘事項。素案の段階では社内でも知っている人は限られます。そういった新しい提案がメーカーに認められたときももちろんうれしいのですが、最も大きなやりがいが得られるのは、その部品が搭載された自動車やバイクが街中を走っている姿を見たとき。家族や友達に『あの○○という部品、ぼくが手がけたんだよ』とついつい自慢してしまいます(笑)」

お客さまは完成車メーカーやバイクメーカー。

「メーカーの開発者の要求レベルは本当に高い。例えば提出資料ひとつをとっても、かなりの根拠や精度が求められます。また自分が担当している以外の周辺技術についても問われることがあるので、会議に臨む際には勉強が欠かせません。昔、ある質問に答えられなくて黙ってしまったことがありました。そのときは上司のフォローでなんとか信頼感を損ねることはありませんでしたが、そんなことが続くと私だけではなく創業以来、先輩方が築いてきたミクニへの信頼感を失ってしまうかもしれません。勉強が欠かせない厳しい仕事です」

ミクニという会社の風土・文化について聞きました。

「先輩や上司、他部署の人たちともコミュニケーションを取りやすい、オープンな雰囲気のある環境です。そして最大の魅力はやる気があり、能力・スキルが伴っていれば、若手でも大きなことにチャレンジさせてくれる風土があること。私がアメリカのグループ会社で1年間、働く機会を持てたのも、そういうチャレンジをさせてくれる文化があるから。実はこの時、英語力に自信はまったくなかったんです。設計開発のスキル、そして身振り手振りを使ってでもなんとかコミュニケーションを取るということについては自信がありましたが…。前向きにいろいろなことに挑戦したい人、グローバルで活躍したいという人にとっては、働き心地の良いシゴトバです」

レーシングチームを社員が運営、全日本ロードレース選手権への参加も

ミクニでは2008年よりレーシングチーム「MIKUNIテリー&カリーレーシングチーム」を持ち、全日本ロードレース選手権 J-GP2(600立方センチメートル/4ストローク)クラスなどに参戦しています。レースチームを運営しているのは同社の社員。レースは走る実験室とも呼ばれる過酷なもの。そこで培った経験とノウハウを職場にフィードバックすることで、性能向上や製品開発へとつなげているのです。

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自動車部もあります。市販車をカスタムしてレースや走行会に出ることもあるそうです。

「自動車部には私も所属しており、車好き・ユーザー目線で楽しんでいます」(石井さん)

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小田原事業所では夏季に、近隣住民の方たちも招いた納涼祭が開催されています。15年は小田原市長も来場。写真のように屋台が多数立ち並んだほか、舞台ではラムネの一気飲みゲーム、福引き大会などの催し物の実施も。もちろん、同社社長も参加。運営を担当した小田原事業所の社員はおそろいのスタッフTシャツを着て、納涼祭を盛り上げたそうです。

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ミクニにまつわる3つの数字

電子制御燃料噴射システム製品をはじめとした自動車・バイク関連部品の開発・製造を行い、グローバルに提供しているミクニ。以下の数字は何を表しているのでしょうか? 正解は、次回の記事で!

1. 392

2. 2023年

3. 6種

前回(Vol.138 株式会社タマディック)の解答はこちら

取材・文/中村仁美  撮影/平山諭

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