「学生時代、やり直せるなら××したい」 アイティメディア株式会社【人事のホンネ】

さまざまな企業の採用担当者に「学生時代をやり直せるなら、何がしたいですか?」とインタビューしてみる企画。第2回は、自分に自信が持てない状態で大学生活をスタートさせ、その後自信をつかむも、またしても奈落に…となってしまった、アイティメディアの浦野さんの「やり直せるなら…」です。

1972年長野県上伊那郡生まれ。早稲田大学商学部卒業後、ソフトバンク株式会社に入社。広報部、人事部を経てソフトバンクBBの設立、人事部門の設立に参画。その後関連会社であるアイティメディアに移籍し、2006年よりアイティメディア株式会社総務人事部担当部長。
アイティメディア株式会社 IT関連分野を中心とした情報やサービスを提供するインターネット専業のメディア企業。月間約2000万ユニークブラウザで利用されている。IT総合情報ポータル「ITmedia」をはじめ、「@IT」、「TechTargetジャパン」、「Business Media 誠」など、ターゲット別に約30のWebサイトを運営し、専門的なコンテンツをいち早く提供している。

典型的な「上京した田舎の優等生」だった自分に自信をなくした

大学入学と同時に東京に出てきたころは、典型的な「田舎の優等生が上京してきました」という感じでした。出身は長野県で、同級生の2割ほどしか大学へ行かないところです。田舎では優秀な方だったのに、東京にはすごい人ばかりと感じました。だんだん閉じこもり気味になってしまって。自分のダメなところと、逆に通用するところが整理できて見えてくるまで、1年近くかかりました。

ナチュラルに頭がいい人、すごく女の子に人気のある人、どこから見てもカッコいい人なんかに会うと、自分はとても通用しないと思いました。一方で、まわりの学生は、意外と浅い話ばかりしていることに気づくこともあり、自分の方が田舎でいろいろなことをしっかり考えてきたのかもしれないとも思えるようにも。ただ、そうして自分と比較して、勝ち負けをジャッジするのは、根本的に自信がなかったからなのですが。

大きな困難には、結構すぐにくじけてしまいます。思い立って総合格闘技道場に入ってみたものの、まったくついていけませんでした。僕は未経験とはいえ、強い人はすごく強い。自分はここではやっていけないと、瞬時に限界を感じました。精神的にも弱いということでしょうか(笑)。バイトもそうで、倉庫で働いた時もすぐにため息をついてしまったりして。周りの人に「そんな歩き方をするな」と言われることもあったほど。ただ、塾講師のバイトは大好きだったので、体を動かす仕事がダメなのだと思います。そうこうしているうちに、自分にとっての向き不向きが見えてきたのはよかったです。

塾講師と家庭教師のバイトは、周囲から評価してもらえることが多く自信につながりました。自主的に塾の運営にかかわったり、ほかの講師の指導をしたり。いろいろなところから、専任になってほしいとか、もう少しシフトを入れてくれと言われていました。大人から評価をしてもらえて、少しだけど給料が上がるといったことが自信になっていましたね。授業でも、子どもたち一人ひとりに合わせて何ができるか、そして、その向こうにいる保護者のニーズは何なのか、誰に満足してもらわないといけないのか、といったことを教室の運営者とほぼ同じ目線で考えてやっていました。それが今の仕事感というか、どうやってお金を稼がないといけないかを考えることにつながりましたね。

なぜそこまで自主的にやっていたのかを考えると、それは子どもたちが一番フィードバックをくれたから。手応えがあったから、「この子たちのためだったら土日も出よう」なんて思っていました。直接的な手応えがあることが好きなのかもしれません。新卒として働き始めたときも、成果が目に見える営業になりたかったのに、広報に配属されてがっかりした覚えがあります。子どものころから友達が笑ってくれるとか、先生が褒めてくれるとか、そういうことが好きでしたし、機会にも恵まれていたので。とにかく褒められたい(笑)。

向いていると思っていた塾講師のバイトで評価をされず、クビに

大好きだし得意だとも思っていた塾講師のアルバイトでしたが、実はまったく評価されていなくて愕然とするという事件もありました。僕の授業の進め方や考え方、伝え方を、その塾では求めていないとハッキリ言われたのです。

塾では、少しレベルの高いことを教えて、学力を上げるという方法でずっと教えていました。でも、その塾は補習や教科書を丹念に読み直すといった基礎的なことを重視するところでした。それを事前に言われていたのに、僕は自主的に難しめのことをしてストレッチをかけるような授業をやっていた。今考えると大間違いですよね。自分の世界を押しつけて、評価されていると思っていたのですから。かなり恥ずかしい。

塾のトップの人にフィードバックの場で指摘されて、そこのバイトはやめてしまいました。授業の担当をすべて外されて、ほとんどクビ同然で。当時は「ふざけんなよ」という気分でしたけど、今ではそれはダメだとよくわかります。それがわかったのは就職活動をしたおかげかもしれません。いろんな社会人と話す中で、見える風景が変わる瞬間があったように思います。

就職活動をするまでは、消費者として良いと思うかを選択基準にしていました。でも、社会人と会うとそんな話は出てきません。提供者として、相手のニーズにどう応えるかという話ばかりです。自分があのとき考えていたことは、見当違いだった、ということにも気づきました。

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大学生に戻れるのなら「もっと違う考え」を受け入れてみたい

学生時代の自分にアドバイスできるとしたら、3つ言いたいことがあります。

1つは、自分が当事者意識を持てるものをもっと探した方がいいよ、ということ。学生生活を振り返ると、ほとんどが塾講師のバイトでした。時間も労力もかけていたし、責任感も持っていました。それ以外に、起業でもいいし、女の子への興味でもいいから、多種多様な経験をして、塾講師以外の当事者意識を持てることも、しっかり探した方がよかったなと思います。きっと当時の僕は、自分と違う考え方を受け入れられないから、いろいろなことはやらなかったのだと思います。

2つめは、もっとさまざまな枠組みの人たちを知った方がいいということ。気の合う人とばかり付き合っていたので、社会人になってから苦労しました。特にマネージャーになってから、女性の考えていることがまったくわからなくて、困ってしまいましたから。自分と違う思考パターンや行動パターンの人を、もっと知ってほしいです。自分の考えに沿うようなことばかりなのは、よろしくないなあと思います。そういう面では1番目と似ていますね。

そして3つめは、そのうえでいろいろな情報を自分でちゃんと出して、伝えるということをもっとした方がいいということ。面白いことも、面白くないことも、他人に対してちゃんと伝えるということを、あまりやっていませんでした。自己評価を下げたくなかったのだと思います。間違っているかもしれないとか、バカだと思われるかも、と考えてしまって、怖くて自分からは情報発信できない時期がありました。こればかりは、アドバイスをしたからできるようになるかというと、かなり難しいと思います。それでも、やった方がいいと今は思うし、当時の自分にはやるように言いたい。

実は最近、人前で話すことが増えたので、いろんな人からフィードバックもよく受けます。当然、いいことも、悪いこともある。それによって、自分がどう見えるかを客観的に知ることができます。たとえヘコまされるような意見であっても、それは自分にとって間違いなくプラスになります。

フィードバックは、情報を出した人が受けられる特典のようなものです。情報を出せば出すほどフィードバックも増えるので、次の発信がより多くの人に適したものになります。

先にあげた3つのことに当時の自分が気づいていたら、もう少しいろいろなことに悩まずに済んだのかもしれない、と思います。学生時代に一回起業して、失敗しちゃいましたとか言っているかもしれない。今働きながら、ああいう道もいいなと思っている方に行っていたかもしれない、なんて考えます。今となってはわかりませんが。採用担当者から見て、かなり魅力的な人になっているでしょうね。採用担当者として、そしてWeb業界にいる人として、これからの時代に求められる人はそういう人だと思っています。

浦野さんの愛用品

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iPadには常にキーボードを携帯していて、いろいろ試してこれが4代目。一番しっくりきています。手書き用のスタイラスペンを併用すればもう完璧です。今やメモや情報整理はほとんどiPadです。そこに加えてノイズキャンセリングのヘッドホンがあれば、どこにいても快適な思考環境がつくれるので、併せて重宝しています。

取材・文/サカタカツミ 撮影/刑部友康

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