鉄道編・2014年【業界トレンド】

人口減は経営に悪影響。「沿線価値」の向上と外国人観光客への対応が収益向上のカギに

JR旅客6社(北海道旅客鉄道、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、西日本旅客鉄道、四国旅客鉄道、九州旅客鉄道)と、大手私鉄16社(東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、東京地下鉄、相模鉄道、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道、西日本鉄道)の2014年3月期における総売上高は、13兆7000億円。東日本大震災などの影響があり、ここ10年で最低の売上高となった12年3月期(12兆9700億円)に比べると約6パーセント増え、JR1社、私鉄9社が過去最高益を記録する好調ぶりだった。景気回復によって観光に出かける人が増えたことで、鉄道事業収入(運賃収入)はもちろん、ホテル・レジャー施設部門の売り上げがアップ。また、14年4月の消費増税前に定期券の駆け込み購入が相次いだことも、収益を押し上げる要因となった。

ただし、今後の経営環境は必ずしも明るいわけではない。最大の課題は人口減である。沿線の人口が減れば、鉄道会社にとって収益の多くの部分を占める運賃収入も低下してしまう。また、系列百貨店・スーパーなどから得られる流通収入、沿線の住宅地整備などで得られる不動産収入などにも悪影響を及ぼすだろう。そこで各社は、住民が「住み続けたい」と思えるような地域づくりを通じて「沿線価値」を高め、沿線人口の維持を目指している。

一昔前の沿線価値向上策は、鉄道の速度向上、駅周辺の再開発といったハード面にまつわるものが多かった。しかし最近では、食料品の宅配・家事代行などの生活総合サービス、保育所などの子育て支援サービス、介護付き優良老人ホーム運営などの高齢者向けサービスを充実させる取り組みが目立つ。さらに、公的機関と連携した試みも活発。例えば、東京急行電鉄は12年4月、横浜市と「次世代郊外まちづくり」の推進に関する協定を締結。産・学・官・民が連携して地域づくりに取り組む仕組みを整えた。また、阪神電気鉄道は11年4月、ICタグをランドセルに入れた児童が校門を通過すると、保護者の携帯電話などの登録したアドレスにメールが自動配信される「登下校ミマモルメ」サービスを開始。14年7月現在の利用者は9万2000人に達し、阪神沿線以外でも利用が広がっている。このように、住民や地方自治体、学校、病院などと協力しながら地域の利便性を高めようとする試みは、今後も模索が続くだろう。

海外からの観光客(インバウンド旅客)も、今後の成長領域だ。官公庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、14年4~6月期における訪日外国人1人あたりの旅行消費額は14万4000円で、2年連続で前年を上回った。また、13年の訪日外国人旅行者数は、初めて年間1000万人を突破している。こうした結果を受け、羽田空港路線を持つ京浜急行電鉄、箱根路線を持つ小田急電鉄では、13年度の輸送人員が過去最高を更新。また、成田路線を持つ京成電鉄でも、「スカイライナー」の利用が好調である。今後は、沿線内の観光資源を発掘し、訪日外国人を含む観光客を呼び込むことが、輸送人員増加の一つのカギになるだろう。逆に、重工メーカーなどと協力し、海外の鉄道会社に日本の鉄道システムを売り込むなど、海外展開を目指すケースも増えている。

収益性を高めるため、コスト削減への努力も進めている。電気料金の高騰に対応し、新型の省エネ車両を導入する鉄道会社は少なくないし、保守管理業務を自動化することで人件費を抑えようとする鉄道会社もある。一方、安全・安心を維持するための投資は欠かせない。また、「Suica」(東日本旅客鉄道)や「PASMO」(関東周辺の私鉄各社など)といったICカードの相互利用拡大、他社との乗り入れ拡大を行い、利便性を向上させることも大切。必要な投資と削減できるコストの見極めが、さらに強く求められるだろう。

押さえておこう <鉄道業界志望者が知っておきたいキーワード>

コンパクトシティ
自動車を使わずに済む狭い範囲を生活圏とした市街地のこと。高齢者などの「交通弱者」でも十分に暮らせる、都市の維持コストを抑えられるなどの利点がある。鉄道の駅を中心に都市機能を再構築する試みが、いくつかの地域で進められている。
省エネ車両
福島原発事故が起きて以降、日本では電気料金の高騰が続いている。そのため、車体の軽量化、LED(発光ダイオード)照明の採用などで消費電力を抑えた車両を導入し、コスト削減を目指す鉄道会社が現れている。
鉄道の輸出
台湾、イギリス、ベトナムといった地域で、日本の企業連合が受注獲得に成功。鉄道を輸出する場合は、車両などのハードだけでなく、運行ノウハウなどのソフトも同時に提供する必要があるため、鉄道会社が果たすべき役割も大きい。
駅ナカ
駅構内にある商業施設の通称。ターミナル駅の「駅ナカ」は大きな集客力を持っており、鉄道会社は百貨店やコンビニといった流通系企業などと協力して開発を進めている。JR東日本の「エキュート」や東京メトロの「エチカ」などが代表格。

このニュースだけは要チェック <ICカードの相互利用拡大など利便性向上への努力が続く>

・近畿日本鉄道が、超高層ビル「あべのハルカス」(大阪市)を全面開業。旅客人数が伸び悩んでいた近鉄だが、あべのハルカス開業や、伊勢神宮の「式年遷宮」などが効果をもたらし、22年ぶりに旅客人員が前の年度を上回った。近鉄百貨店などによる「非鉄道収益」にも期待が集まっている。(2014年3月7日)

・国土交通省が、交通政策基本計画の中間とりまとめ案を公表。「Suica」「PASMO」などのICカードが相互利用できない地域の解消、駅のバリアフリー化、線路への転落を防ぐ「ホームドア」の設置促進などが盛り込まれている。これらの取り組みは、オリンピック開催で多くの外国人観光客が訪れる2020年をメドに進められる予定。(2014年8月5日)

この業界とも深いつながりが <地方自治体などと協力する機会が増加>

地方自治体
沿線にある観光資源の開発、観光客の誘致などで協働するケースが増えそう

百貨店
「駅ナカ」事業などで競合する一方、合弁会社を作って協力する動きも

重工メーカー
鉄道車両の製造、運行システムの構築などで密接な関係。海外事業でも協力

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 田中靖記氏

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大阪市立大学大学院文学研究科地理学専修修了。専門は、新規事業、マーケティング、海外市場進出戦略策定。鉄道・住宅・エネルギーなど、社会インフラ関連業界を担当。環インド洋諸国におけるコンサルティング・調査案件を中心に手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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