総合商社編・2014年【業界トレンド】

「非資源分野」が成長して業績は好調。さまざまな分野で新ビジネスの芽を育てる

総合商社は、特定分野に特化した「専門商社」とは異なり、さまざまな商材を取引している企業。エネルギー、金属、インフラ、機械、化学品、繊維、食品、情報・通信サービスなど、実に多彩な商材を手がけている。慣習的に、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日を「7大商社」と呼ぶケースが多い。

収益の柱は2つ。1つは、原料や商品などの取引にかかわり、手数料を得る「トレーディング」。もう1つは、有望な事業を手がける企業に投資を行い、株式の配当や、投資先の成長後に株式を売却することなどで利益を得る「事業投資」だ。従来の総合商社ではトレーディングによる収益が大半を占めていたが、最近では事業投資の割合が高まっている。その一例が、石油、天然ガス、鉄鉱石、石炭といった「資源ビジネス」。総合商社は以前から資源分野での投資を行ってきたが、2010年前後に中国やブラジルなどでの資源需要が急速に高まったことで、大きな利益を得ることに成功した。その後、新興国の景気減速、鉄鉱石や石炭価格の下落などが影響して資源分野の伸びは一服したが、それと入れ替わりに食品、機械、金融などの「非資源分野」が伸びている。各社の業績もおおむね順調だと言えるだろう。

総合商社にとって最大の武器は、豊富なネットワークだ。長年にわたって広範囲の企業と取引する中で、商社は多くの情報を蓄積。それらを生かし、投資先企業に良い原料を有する調達先を紹介したり、有望な販売先候補を結びつけたりしている。こうしてさまざまなパートナーと組みながらバリューチェーン(調達・製造・販売といった段階ごとに、製品・サービスの価値を高めていく流れのこと)の川上から川下を統合し、より大きな価値を生み出そうとする方向性は、今後も変わらないだろう。

幅広い分野に進出している総合商社にとって、新たな有望分野をいち早く発見して投資することが、成長のカギを握る。中でも注目されているのが「再生可能エネルギー」だ。多くの総合商社は、太陽光発電の大型プロジェクトに乗り出してきたが、近年では洋上風力発電にも積極的だ。また、今後の普及が期待されている電気自動車のため、街中に充電インフラを整備する取り組みも進められている。

グローバル対応力を生かした海外プロジェクトも、引き続き活発。鉄道会社などと協力して日本の鉄道システムを海外に売り込む、アジアで日本式医療機関の建設を進めるなど、「日本式ノウハウの輸出」を幅広く支援するビジネスが拡大している。また、アジアなどで「工業団地」を整備し、海外進出を目指す中小企業などを誘致するビジネスも好調だ。各社の大規模プロジェクトについては、ニュースをチェックしておくといいだろう。

今後の総合商社には、有望なビジネスの構想力・目利き力と、社会全体を巻き込みながら新ビジネスを推進する力が求められる。一方、市況の変動を受けやすい事業環境なので、今まで以上に事業ポートフォリオ(キーワード参照)を意識しながら、リスクマネジメントの徹底、迅速な意思決定をすることも必要だろう。

総合商社志望者が知っておきたいキーワード

事業ポートフォリオ
さまざまな事業の組み合わせ方を指す。複数の事業を並行して手がけることで、特定事業の業績が落ち込んだときにも、他分野の売り上げでカバーすることが可能。また、事業間の相乗効果(シナジー)が生まれることも期待できる。
IPP
Independent Power Producerの略で、独立系発電事業者のこと。発電から小売りまでを手がける電力会社とは異なり、発電した電気を電力会社に卸売り販売するスタイル。日本の総合商社や電力会社が、海外でIPPとして発電ビジネスにかかわるケースがある。
シェールガス
地中深くの頁岩層(けつがんそう。別名シェール層)から採掘される天然ガスのこと。米国などで盛んに採掘されている新エネルギーだ。世界の原油価格が下降傾向にあることがシェールガスの採算性にも大きな影響を与えており、関連事業に投資している総合商社は動向を注視している。

このニュースだけは要チェック <世界を舞台にビジネスを展開中>

・三菱商事がノルウェーのサーモン養殖加工会社セルマックASA社の株式を公開買い付けの後、完全子会社化した。今後は、世界的な人口増加で食糧需要が増加すると見込まれるため、総合商社は食糧資源の確保に積極的に動くことが予想される。(2014年11月11日)

・三井物産が、マレーシアで石炭火力発電所を建設・運営すると発表。マレーシア国営電力会社に対し、25年間の長期売電契約に基づいて電力を販売する。発電所、上下水道、淡水化プラントなどの大規模プロジェクトは、多くの総合商社が力を入れている分野だ。(2014年6月4日)

この業界とも深いつながりが <多くの業界と連携してビジネスを展開>

食品
商社が食品メーカーに出資し、バリューチェーンの一環にする動きが盛ん

電力・ガス
海外の発電プロジェクトで、電力会社と商社が協力するケースが増えそう

鉄道
鉄道会社や重工メーカーと協力し、鉄道システムを輸出する動きが活発化

この業界の指南役

日本総合研究所 主任研究員 吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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