ゲーム(ハード)編・2018年【業界トレンド】

スマホゲームに対抗するため、専用機ならではの魅力を追求。スマホとの連携もカギだ

家庭用ゲーム機メーカーとしては、「プレイステーション4(PS4)」(据え置き型)や「プレイステーションヴィータ(PS Vita)」(携帯型)などを発売するソニー・インタラクティブエンタテインメント、「Nintendo Switch」(据え置き型と携帯型のハイブリッド)や「ニンテンドー3DS」(携帯型)などを発売する任天堂、「Xbox One」シリーズ(据え置き型)を発売するマイクロソフトの3社が世界的に有名だ。

一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)の『2017CESAゲーム白書』によると、2016年における家庭用ゲーム機の国内市場は1267億円(前年は1353億円)、海外市場は1兆854億円(前年は1兆4652億円)で、ともに前年より縮小した。しかし、任天堂が2017年3月に新型機「Nintendo Switch」を発売開始。2017年11月には、マイクロソフトが4K画質に対応した新型機「Xbox One X」を発売した。さらに、2013年11月に発売されたプレイステーション4は、2017年11月下旬~12月末にかけて全世界で590万台を販売。全世界での累計販売台数が7360万台に達するなど、2017年に入ってから市場は活性化している。

ここ数年、スマートフォン(スマホ)でゲームを楽しむ人が増えているのは、家庭用ゲーム機メーカーにとって頭の痛い問題。スマホ向けゲームのシェアが拡大すれば、家庭用ゲーム機の売り上げに悪影響を及ぼすし、家庭用ゲーム機向けのソフトが売れなくなってロイヤリティ(下記キーワード参照)も減ってしまうからだ。そこで各ゲーム機メーカーは、スマホ向けゲームに打ち勝つための取り組みを模索している。

1つ目は、「スマホでは実現できない楽しさ・遊び方」をアピールすることである。例えばソニー・インタラクティブエンタテインメントは、プレイステーション4のオプション機器である「プレイステーションVR」を2016年10月に発売。バーチャルリアリティ(下記キーワード参照)の技術を生かし、臨場感ある映像を手軽に楽しめるようにした。また、プレイステーション4シリーズのハイエンドモデルである「プレイステーション4 Pro」や、マイクロソフトの「Xbox One X」は4K(下記キーワード参照)画質に対応しており、高精細な映像表現が可能となっている。このように家庭用ゲーム機ならではの魅力をアピールすることは、スマホ向けゲームとの差別化につながるはずだ。

2つ目の取り組みは、「家庭用ゲーム機とスマホの連動」である。任天堂は、スマホ用のアプリ「Nintendo Switch Online」を配信。このアプリを使うと、「Nintendo Switch」で遊ぶゲームの関連情報や戦績をスマホで確認できる、オンライン対戦に友達を誘う、ほかのユーザーとボイスチャットをするなどの楽しみ方が可能になる。こうしてスマホ経由でユーザーとの接点を増やせれば、家庭用ゲーム機の利用を促すことにもつながるだろう。また、オンラインゲームの人気の高まりを受け、異なるハードからオンラインゲームを楽しめるようにする「クロスプレイ」(下記キーワード参照)の動きも進んでいる。現在は、据え置き型ゲーム機と携帯型ゲーム機、あるいはPC向けゲームと据え置き型ゲーム機が連携するケースが多いが、将来的には家庭用ゲーム機とスマホの連携も進むものと予想される。

「スマホと家庭用ゲーム機の連携」を一歩進め、ゲーム機メーカーがスマホ関連ハードを手がける可能性も考えられるだろう。例えば2016年、任天堂はスマホゲーム「ポケモンGO」のスマートフォン連携周辺機器である「ポケモンGOプラス」を発売。こちらも人気となった。今後も、スマホ向けゲームを楽しむ専用機器がヒットする可能性は十分に考えられるだろう。

ゲーム(ハードメーカー)業界志望者が知っておきたいキーワード

ロイヤリティ
ゲームソフトのメーカーが、ソフトの売り上げに応じてゲーム機メーカーに支払うお金のこと。ゲーム機が普及するとハードの売上高が増えるだけでなく、ゲームソフトの販売数が伸びやすくなり、そこから得られるロイヤリティも増える。
バーチャルリアリティ
ユーザーの五感を刺激し、まるで現実かのような体験を提供すること。VR(=Virtual Realityの略)、仮想現実と呼ばれることもある。「プレイステーションVR」などの機器が登場したことで、一般のユーザーにも手軽に遊べるようになってきた。
4K
画面の解像度(表示の細かさ)が横3840×縦2160画素であること。Kとはキロ(1000)のことで、横方向の画素(水平画素)が約4000のため「4K(よんけー)」と呼ばれる。現在主流のハイビジョンテレビ(横1920×縦1080)に比べて4倍細かく表示でき、より美しい映像表現が可能となる。
クロスプレイ
据え置き機と携帯機など、異なる機種同士で通信を行ってオンラインゲームを楽しむこと。より多くの人とオンラインゲームを楽しみたいという要望に応じ、最近ではクロスプレイが可能なゲームソフトが増える傾向で、ゲーム機側でも対応を進めている。

このニュースだけは要チェック<新機種の登場が業界を活性化>

・任天堂は、2017年3月に発売を開始した「Nintendo Switch」の世界累計販売台数が1000万台を突破したと発表。これは、過去のゲーム機と比べてもかなりのハイペースだ。据え置き型ゲーム機としても携帯型ゲーム機としても遊べ、プレイする場所やスタイルを多様化した点が評価されている。(2017年12月12日)

・ソニー・インタラクティブエンタテインメントが、新型「プレイステーションVR」の発売を開始。同時に、日本国内の販売取扱店舗をこれまでの394店舗から913店舗に拡大すると発表した。これまでは品薄で販売台数がなかなか伸びなかったが、今後は普及が加速する可能性もある。(2017年10月14日)

この業界とも深いつながりが<電子部品の進化はゲームにも影響を与える>

パソコンメーカー
パソコンゲームと家庭用ゲームの連携は、今後さらに加速しそうだ

携帯電話メーカー
スマホゲームに勝つことは、ゲーム機メーカーにとって重要課題

電子部品メーカー
ゲーム機本体や周辺機器を作るために、電子部品は不可欠の存在

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

ph_trend_vol184_01

東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

就活をはじめる以前に、本当はいろんな不安や悩みがありますよね。
「面倒くさい、自信がない、就職したくない。」
大丈夫。みんなが最初からうまく動き出せているわけではありません。

ここでは、タテマエではなくホンネを語ります。
マジメ系じゃないけどみんなが気になる就活ネタ。
聞きたくても聞けない、ホントは知りたいのに誰も教えてくれないこと。
なかなか就活を始める気になれないモヤモヤの正体。
そんなテーマを取り上げて、ぶっちゃけて一緒に考えていきましょう。

みなさんが少しでも明るく一歩を踏み出す気持ちになれることが、
私たちの願いです。