テレビ編・2018年【業界トレンド】

視聴時間が減って広告収入は伸び悩み気味。ネット関連の取り組みが急ピッチで進んでいる

テレビ局は、テレビ放送を収益の柱とする事業者。日本には、受信者から集めた受信料で運営される「公共放送」の事業者である日本放送協会(NHK)と、広告収入などによって収益を上げる「民間放送(民放)」が存在している。なお、民放の中でネットワークの中心となっている放送局は「キー局」と呼ばれ、これには日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョンの5事業者が該当する。

民放各社にとって最大の収益源は、テレビCM枠を販売して得られる広告収入だ。電通がまとめた『2017年(平成29年)日本の広告費』によれば、2017年における日本の総広告費(テレビ、新聞、雑誌、ラジオの「マスコミ四媒体広告費」、「インターネット広告費」、屋外広告や折り込み広告などの「プロモーションメディア広告費」を合計した額)は6兆3907億円で、前年より1.6パーセント増。ところが、2017年のテレビメディア広告費(地上波テレビ+衛星メディア関連)は1兆9478億円で、前年より0.9パーセント減った。テレビ広告は全広告市場の3割以上を占め、その存在感はいまだに大きいが、近年はインターネット広告の拡大などによって伸び悩んでいる。

2007年11月に行われたNHK「全国個人視聴率調査」によると、当時の平均テレビ視聴時間は1日あたり3時間53分(民放2時間48分、NHK1時間5分)だった。一方、2017年11月の調査では、同3時間42分(民放2時間43分、NHK58分)。視聴時間は緩やかな減少が続いている。中でも10~20代という若い世代のテレビ離れが懸念されており、このまま進むと視聴者数が先細りとなって広告媒体としての価値が低下する危険性が高い。

そこでテレビ各局は、視聴者を呼び込むためにさまざまな取り組みを行っている。例えば、ツイッターなどで視聴者から意見を集め、画面上で紹介する番組が増えているのはそうした動きの一環。自らの書き込みが紹介されたり、他人の意見をリアルタイムで読めたりすることで視聴者の興味をひこうとしている。また、インターネット上で急増した検索ワードをテレビで紹介して若年層の関心をひきつける、テレビドラマの主題歌にキャッチーなダンス映像をつけ、視聴者に「踊ってみた」動画の投稿を促してファンを増やすなどの試みも盛んだ。

オンデマンド(下記キーワード参照)サービスの充実も、各社にとって重要な課題だ。2015年10月、在京キー局5社が共同で番組の無料配信サービス「TVer(ティーバー)」をスタート。その後は在阪3社も加わり、約150番組を期間限定の広告付き動画として無料配信している。スマートフォン向けのTVerアプリは、2017年12月に1000万ダウンロードを達成。利用者数は順調に伸びているようだ。また、日本テレビは定額制動画サービスの「hulu」に資本参加しているし、TBSテレビやテレビ東京などは2017年5月、新たな動画配信プラットフォームの開設を発表している(下記ニュース参照)。一方、テレビ朝日はインターネットテレビの「AbemaTV(アベマティーヴィー)」を設立し、多数のオリジナル番組を配信中。既存のテレビ放送だけでなく、オンデマンド放送・インターネット放送でも収益が得られれば、各テレビ局の経営にもプラスとなるだろう。

広告収入の伸び悩みに備えて「放送外収入」を伸ばそうとする取り組みも、引き続き活発だ。例えば、テレビ局が積み重ねてきた制作・宣伝のノウハウを生かし、映画事業に乗り出すケースは少なくない。テレビドラマを映画化すれば、映画の興行収入、関連グッズの物販収入、DVDやブルーレイディスクのソフト販売収入、テレビ放送時の広告収入など幅広いチャネルで売り上げを得られる。また、「お台場夢大陸」(フジテレビジョン)などテレビ局周辺のイベントや、「ドリームフェスティバル」(テレビ朝日)などの音楽イベントなどを主催し、収益を伸ばそうとする動きもある。

通信販売事業に注力するテレビ局も多い。例えばフジテレビジョンは、売上高が1000億円を超える通販会社ディノス・セシールをグループ傘下に抱え、テレビ通販・カタログ通販・インターネット通販を連携させることで魅力を高めている。また、前述のAbemaTVも通販事業部を立ち上げ、通販番組を放送することで売り上げ増を目指している。

テレビ局志望者が知っておきたいキーワード

オンデマンド
視聴者の要求(=デマンド)に応じて番組を提供するサービスのこと。インターネットを活用することで好きな時に好きな番組を楽しめるようになり、視聴者にはメリットが大きい。ただし、オンデマンドサービスの普及が、テレビ視聴者の減少を招く危険性もある。
ライブストリーミング
利用者がサーバーからデータを受信しながら、同時に映像を再生する方式を「ストリーミング」と呼ぶ。このうち、リアルタイムで配信を行うのが「ライブストリーミング」で、通常のテレビのように番組表に従って動画が配信される。AbemaTVなどが該当。
4K放送
4K(よんけー)とは、画面の解像度(表示の細かさ)が横3840×縦2160画素であることを指す。現在主流のハイビジョンテレビ(横1920×縦1080)に比べて解像度が4倍となり、より美しい映像表現が可能となる。2018年12月からは、BSおよびCS110度において4K放送が開始される予定。

このニュースだけは要チェック<動画配信の新プラットフォームに注目>

・東京放送ホールディングス(TBSテレビの親会社)とテレビ東京ホールディングスが、日本経済新聞社、WOWOW、電通、博報堂DYメディアパートナーズとともに有料動画配信サービスを提供する新会社を設立すると発表。2018年4月「Paravi(パラビ)」の名称でサービス開始予定だ。(2017年5月23日)

・日本テレビがNTTレゾナント、フォアキャスト・コミュニケーションズと共同で、日本テレビ系列のドラマ『過保護のカホコ』の主人公のように発言するAIと会話できるサービスを提供。インターネットとの連携・連動に関する取り組みの一つと言える。(2017年7月7日)

この業界とも深いつながりが<広告会社とのつながりは強い>

広告
テレビCM枠の販売には、大手広告会社の協力が欠かせない

映画
映画会社などと協力して映画を制作するケースは多い

携帯キャリア
オンデマンド放送の拡大で、スマホ・ネット分野との関係が強化

この業界の指南役

日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 シニアマネジャー
吉田賢哉氏

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東京工業大学大学院社会理工学研究科修士課程修了。専門は、新規事業戦略やマーケティング戦略、企業のビジョンづくり・組織戦略など。製造・情報通信分野などの業界動向調査や商品需要予測も手がける。

取材・文/白谷輝英 イラスト/千野エー

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