家電量販店編・2013年【業界トレンド】

特需の反動で売り上げが大幅減。ネット強化と単身者向け商品の拡大で業績回復を目指す

市場調査会社であるジーエフケー マーケティングサービス ジャパンによると、2012年の国内家電小売市場は7兆4800億円。11年より11パーセント、絶好調だった10年に比べると約2割も落ち込んだ。最大の原因は、「特需」の反動。エコポイント制度(省エネ家電を購入すると、商品やプリペイドカードなどと交換できるポイントが与えられる制度)が導入され、地上デジタル放送への切り替えが目前に迫ったことにより、10年には薄型テレビなどの売り上げが大きく伸びた。ところが、11年3月にエコポイント制度が終了し、同年7月に地上デジタル放送への切り替えが実施されると、薄型テレビの需要は激減。ブルーレイディスクレコーダーなどの周辺機器も、売り上げを落としている。

Amazonや楽天市場といったネット通販会社の台頭も、家電量販店にとっては悩みの種だ。家電は、同じ商品であればどの販売チャネルで買っても品質は変わらない。そのため、自宅で簡単に購入でき、値段も比較的安いネット通販は着実にシェアを伸ばしている。通販会社の中には、仕入れ値を下回る価格設定をしているケースもあるといわれており、顧客の奪い合いは激しくなる一方だ。こうした結果、12年度の家電量販店の業績は低迷した。業界最大手であるヤマダ電機の13年3月期決算は、売上額が対前年比で7.3パーセント減。エディオン(売上額9.7パーセント減)、ケーズホールディングス(12.2パーセント減)といった大手も同様に売り上げを下げた。

そこで各社は、ネット店舗の強化に力を入れ、ネット通販会社に対抗しようとしている。大きな関心を集めているのが、ヤマダ電機が打ち出した「ベストプライス保証」。これは、ほかのネット通販での製品価格を調べ、自社の方が高い場合は最安値まで引き下げるというものだ。店頭ではすでに導入されていた仕組みだが、ネットでも取り入れて消費者へのアピールを目指している。また、ヨドバシカメラはオンラインショップの「ヨドバシ・ドット・コム」で、送料無料、当日配送エリアの大幅拡大、書籍の取り扱い開始などサービスの大幅向上を打ち出した。こちらも、大手ネット通販会社を意識した対抗措置と見られており、今後の動向が注目されている。

このところ家電量販店が力を入れているのは、高性能・小型家電の分野。中でも、単身者、高齢者などをターゲットにした小型家電は、世帯あたり人数が減り続けている日本では需要拡大が期待できそうだ。例えば、高級小型炊飯器、小型のドラム式洗濯乾燥機、高機能エアコンなど、単身者向けの家電コーナーを拡充する動きが広がっている。また、住宅リフォームや家庭用太陽光発電システム、医薬品、書籍の販売といった新分野への取り組みも、引き続き続けられるだろう。

業界再編の動きにも注目しておきたい。12年5月、ビックカメラがコジマの子会社化を発表。同年7月には、ベスト電器がヤマダ電機の傘下に入ると発表された。この業界では、仕入れの規模を拡大して「バイイングパワー」(家電メーカーへの価格交渉力)を高め、仕入れ値を抑えることが大切。そのため、スケールメリットを求めて合併や業務提携を行う可能性は、今後も十分に考えられるだろう。

押さえておこう <家電量販店志望者が知っておきたいキーワード>

オープン価格
メーカー側が「希望小売価格」を定めず、小売店側が自由に価格を設定したもの。「オープンプライス」と呼ばれることもある。希望小売価格と実際に販売される価格の間に大きな差がある「二重価格」に陥らないようにするため、多くの家電製品で導入が進んでいる。
不当廉売
仕入れ値を下回るような安い値段で商品を売ること。場合によっては、公正取引委員会から是正措置の対象とされるケースもある。ネット通販会社の中には、家電販売で赤字を出してもほかの商品で埋め合わせがきくため、家電量販店より低価格に設定しているところがあるともいわれている。
スマートハウス
IT技術を活用し、太陽光発電装置や蓄電池、家庭内ネットワーク、ハイテク家電などを制御する住宅のこと。政府からの補助制度が設けられ、今後の需要増加が期待されている。このところ、スマートハウスなど住宅関連の事業に乗り出す家電量販店が登場しているため、注目の分野だ。
4K(よんけー)テレビ
解像度が横3840×縦2160画素のテレビのこと。Kとはキロ(1000)のことで、横方向の画素(水平画素)が約4000のため「4Kテレビ」と呼ばれる。現在のハイビジョンテレビ(横1920×縦1080)より美しい映像が表示可能で、次世代の売れ筋商品としての期待がかけられている。

 要チェックニュース! <来店を促す取り組みとして注目される「ビックロ」>

・ヤマダ電機が、レノボ・ジャパンと共同で開発したタブレット端末「EveryPad」を発表。公式ネット通販グサービス「ヤマダモール」など、同社が展開するサービスを簡単に使えるアプリが入っており、Eコマース分野での消費者囲い込みにも貢献が期待されている。(2013年7月11日)

・市場調査会社のIDCは、タブレットPCの出荷台数が13年までにノートPCの出荷台数を、15年までに全PCの出荷台数を上回る見込みだというレポートを公表。家電量販店の店頭でも販売が伸びているが、より高価なノートPCの売り上げ減につながっているのが悩みだ。(2013年5月28日)

つながりの深い業界 <家電メーカーとのつながりは強固>

住宅メーカー
スマートハウス事業で協力する一方、リフォーム事業では競合

デジタル家電
デジタル家電は重要な商品。キャンペーンなどで協力も行う

Eコマース
大手ネット通販会社は、家電量販店にとって強力なライバル

この業界の指南役

日本総合研究所 副主任研究員 粟田 輝氏

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慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は経営・事業戦略、各種戦略策定・実行支援や事業性評価。幅広い業界・規模の企業を対象としている。最近では、今後さらなる発展が期待されるブラジル市場に注目し活動中。

取材・文/白谷輝英 イラスト/坂谷はるか

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