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掲載日:2011年12月19日

Vol.112 鉄鋼編

大合併の成否と、その後の経営革新に注目。
高張力鋼など高付加価値品の開発も焦点だ

自動車業界では「車体を3割軽くすると燃費が約2割改善する」と言われる。エコカー人気で燃費の良さが強く求められている自動車業界では、高張力鋼へのニーズが高まりそうだ。

鉄鋼大手4社の2012年3月期決算見通しは、新日本製鐵が売上高4兆2000億円(2%増)・当期純利益850億円(9%減)、JFEホールディングスが売上高3兆3600億円(5%増)・当期純利益200億円(66%減)、神戸製鋼所が売上高1兆9500万円(5%増)・当期純利益200億円(62%減)、住友金属工業が売上高1兆5200万円(8%増)・当期純利益0円(前年度71億円の赤字を解消)となっている。各社とも売り上げは微増傾向だが、輸出環境が悪化しているために利益が圧迫されている。理由は2つ。まずは、大きな輸出先である中国で金融引き締めが起こり、建設・自動車などの大口需要が失速。高騰する原材料(鉄鉱石や石炭など)の価格転嫁が難しくなっていること。そしてもう1つが、円高によって韓国・ボスコなど海外勢との価格競争が不利になっていることだ。鉄鋼業界志望者は、中国景気と円高の行方に、ぜひ注意を払ってもらいたい。

現在、業界を賑わしているのが、新日本製鐵と住友金属工業の合併だ。両社は11年11月、公正取引委員会に必要書類を提出。審査は大詰めを迎えており、12年2月上旬までには合併の可否が決まる。分野によっては、両社の合計国内シェアが7割を超えるものもあり、製造設備を他社に売却するなどの是正措置がとられる可能性もあるとされる。また、10年度における両社の粗鋼生産量の合計は4782万トンで、アルセロール・ミタル(ルクセンブルク)に次ぐ世界2位に躍り出る。ただし、新日本製鐵の売上高経常利益率(経常利益を売上高で割ったもの)は5.5%、住友金属工業は2.4%で、海外勢と比べると物足りない。合併が成立した後は、両社の製鉄所間の連携、製造ラインの最適分担、海外拠点の再編・強化、研究開発や調達の効率化などによる収益力強化策が求められるだろう。

鉄鋼業界にとって大口の需要家である自動車業界では、燃費を改善するため、車体の強度を保ちながら軽量化を図る努力が進められている。そのため、鉄鋼業界では高張力鋼(ハイテン)の開発を促進。例えば、新日本製鐵と神戸製鋼所は、11年11月に強度が1180メガパスカル級の新高張力鋼を開発したと発表した。従来の製品(590〜980メガパスカル)に比べ、薄くしても十分な強度を保てるとあって期待が高まっている。コスト競争力で海外勢に見劣る日本企業にとって、高い技術力をさらに生かすことが今後の成長の鍵を握りそうだ。

業界全体が抱える課題である二酸化炭素削減の取り組みにも、注目しておきたい。高炉(鉄鉱石から銑鉄を取り出すための炉)や電炉(鉄のスクラップを電気で溶かして製鉄を行う炉)での生産時には莫大なエネルギーを消費するため、鉄鋼業界は、製造業の中で最も大量の二酸化炭素ガスを排出していると言われる。そこで、バリューチェーン全体で排出量を削減する努力が続けられている(下表参照)。

中国鉄鋼業界の再編問題も、国内企業に大きな影響を与えるだろう。現在、中国には大小合わせて800社近い鉄鋼メーカーが存在すると言われる。中国政府は、小規模製鉄所の閉鎖などを通じ、将来は200社程度にまで削減する方針。過剰生産が抑えられて鉄鋼のだぶつきが解消される期待と、中国メーカーの国際競争力が高まり強力なライバルとなる危険性の両方が指摘されている。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

二酸化炭素ガス削減に向けた取り組みとは

生産設備の改善 国内各社は、鉄鋼の生産時に高炉から出た熱を利用し、発電などに役立てる設備を導入している。そうした努力のかいあって、日本企業の省エネルギー性は海外メーカーに比べてかなり高い。
陸運会社との協力 日本通運が、鉄鋼製品を鉄道で輸送するための大型コンテナを新開発。現在、小口輸送の手段はトラックが主だが、陸運会社と協力して鉄道輸送に切り替えることで二酸化炭素ガスの削減を目指す。

【このニュースだけは要チェック!】

再生エネ法の決着は鉄鋼業界に朗報

・太陽光発電・風力発電など再生可能エネルギーの普及を目指した「再生エネルギー特別措置法」が成立。電力の買い取りコストは企業・家庭に転嫁されるが、鉄鋼業界など多くの電力を使う産業では、コスト負担の軽減措置が導入された。(2011年8月26日)

・日本鉄鋼連盟の林田会長が、タイの大洪水が国内メーカーの鉄鋼需要に悪影響を及ぼす危険性を指摘。タイ国内では日系自動車メーカーが大きなシェアを獲得しているが、工場の操業停止などにより、自動車や関連部品の大幅減産が予想されている。(2011年11月25日)

この業界の指南役
日本総合研究所 副主任研究員 三浦 学氏
日本総合研究所 副主任研究員 三浦 学氏
総合研究部門・経営戦略クラスターにて経営戦略、M&A戦略、事業再生、マーケティング戦略といった、各種の戦略策定・実行支援や事業性評価などを実施している。最近では、新規事業開発コンサルティングを数多く手がけている。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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