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掲載日:2011年12月26日

Vol.113 化学編

海外企業と競争するため業界再編の必要性が大。
各社は高付加価値商品に注力し、収益拡大を目指す

太陽電池、燃料電池などの環境エネルギーや、人工腎臓、カテーテルなどの医療機器分野といった高付加価値な製品が求められる領域において、日本の化学メーカーは大きな存在感を発揮している。

化学業界とは、石油・天然ガスに代表される原料に化学反応を加えて素材を生みだし、ほかの企業に提供する産業だ。業界全体は、基礎商品を精製する「川上」、中間原料を作る「川中」、最終製品を作る「川下」に大別される(下表参照)。経済産業省の「平成22年度工業統計速報」によれば、2010年の製造品出荷額は対前年度比7.2パーセント増の25.8兆円。これは、全製造業の9.3パーセントを占めており、わが国の基幹産業の一つだ。なお、代表的な総合化学メーカーには、三菱ケミカルホールディングス(10年度売上高3兆1668億円)、住友化学(同1兆9824億円)、旭化成(同1兆5984億円)、三井化学(同1兆3917億円)などがある。

化学反応を引き起こすには、大規模なプラントが必要。典型的な設備投資型産業であり、半導体・電機・住宅・自動車業界といった取引先の業績が活況だと、収益性が非常に高くなる。逆に、需要が縮小して一定の生産規模を維持できなくなると、厳しくなる業界だ。特に、日本企業は電子材料系に強みを発揮しており、半導体・電機業界の景気動向に左右される面が大きい。また、日本では原油を分離して得られるナフサ(粗製ガソリン)が、化学製品の主原料として用いられている。そのため、コスト面で原油価格の動向に影響を受けやすいのが特徴だ。

化学業界では、03年ごろまでに業界再編・事業効率化が一段落した。その後、07年ごろまでは市場の拡大局面が継続。原料価格は上昇していたものの、需要が拡大していたために価格転嫁ができており、大手メーカーは増収増益基調だった。ところが、07年から始まった世界金融危機以降、さまざまな産業で生産が停滞。化学製品の需要も大きく落ち込んでしまった。さらに、09〜10年にかけて、中国や中東で海外化学メーカーの大規模プラントが次々と完成。彼らは日本メーカーのプラントより規模が大きく、効率面で優位に立っているほか、中国は需要地に、中東は原料産地に近いという強みも持つ。

そこで日本メーカーには、海外メーカーとの競争力を高めるため、さらなる設備統合・事業再編が求められるだろう。特に、基礎材料部分については、徹底した集約化で効率性を高める動きが加速しそうだ。そして、日本メーカーが世界的に大きな存在感を発揮している高付加価値分野に注力することで、収益拡大を目指すのである。例えば、電子材料(半導体、液晶、半導体製造装置などの材料)、医療機器(人工腎臓、カテーテルなど)の分野では、世界の半分以上のシェアを獲得している製品もある。こうした差別化された製品を展開することで、収益力を高めることが可能。例えば、電子材料に強い信越化学工業(10年度売上高1兆583億円、営業利益1492億円)、JSR(10年度売上高3407億円、営業利益391億円)などは、営業利益率が10パーセントを超えるほどの高収益性を誇る。なお、高付加価値品の研究開発を進めるため、自社研究所の拡充を図ったり、大学との連携・ベンチャー企業の買収などに取り組む企業も増えている。

今後の化学業界では、生産拠点の海外展開が進むだろう。石油会社と提携して原料の安定確保を目指したり、天然ガスや廃プラスチックなど原油以外の原料を利用することで調達の多様化を進める企業もある。また、医薬品、化粧品、農業用肥料、繊維などの最終品事業を手がけ、多角化による収益拡大に照準を合わせる動きにも注目が必要だ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

化学製品が生み出される流れを理解しよう

「川上」
(基礎商品)
原油から、ナフサ・エチレン・ベンゼンなどを精製する。大型の製造設備が必要なため、国内では財閥系や石油元売り系などの大手メーカーのみが参入している。
「川中」
(中間原料)
ポリエチレンやポリスチレンなどのプラスチック、合成繊維や合成ゴムの原料、合成洗剤などを製造。日本のメーカーは、この工程を手がけるところが多い。
「川下」
(最終製品)
自動車、電機製品、住宅建材、日用品などに使われる化学製品を生産。今後は、燃料電池やデジタル機器などの産業で、化学製品の需要が高まりそうだ。

【このニュースだけは要チェック!】

海外展開の動きが活発化しそう

・三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱レイヨンが、サウジアラビア王国内のサウジ基礎産業公社と合弁で、メタクリル酸メチルモノマーとアクリル樹脂成形材料を製造する会社を設立すると発表。事業開始は2014年末を目指しているという。(2011年5月31日)

・住友化学が、中国の吉林省新東泰工程塑料有限責任公司と合弁で、中国・長春市近郊に自動車のバンパーや内装材に使われているポリプロピレン製品の製造・販売会社を設立。現地の自動車メーカーなどに向け、供給を拡大する予定だ。(2011年8月18日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 奥田宗臣氏
日本総合研究所 研究員 奥田宗臣氏
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。ヘルスケア・医療関連ビジネス分野における民間企業の事業戦略策定・実行支援などに従事。近年は、消費者を起点としたマーケティング戦略立案支援、営業力強化のコンサルティングを中心に活動中。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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