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掲載日:2012年3月12日

Vol.122 石油編

自動車需要の減少などで国内市場は縮小傾向。業界再編と「総合エネルギー業への脱皮」が焦点に

石油産業は、国際的な「石油メジャー」の統合、国内の過当競争による業績低迷などを背景に、再編の動きを強めている。2000年代は業務提携が中心だったが、2010年のJXホールディングス誕生が転換点となり、今後は経営統合を目指す企業が増えるかもしれない。

石油業界は、原油の探鉱や油田からの採掘などを行う「川上」と、原油の精製や石油商品の販売を行う「川下」からなる。「川上」を手がけるのは、エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェルなどに代表される欧米の「石油メジャー」や、サウジアラビアのサウジアラムコなど産油国の国営企業。また、日本の総合商社などは原油権益の確保などを手がけており、「川上」ビジネスの一角に食い込んでいる。一方、製油・元売り・販売という「川下」を担っているのが、JXホールディングス、出光興産、コスモ石油、昭和シェル石油、東燃ゼネラル石油といった国内企業だ。

自動車利用者数の減少やエコカーの販売拡大、出生率の低下および高齢化の進展による需要家の減少、地球温暖化対策による石油利用の抑制などにより、国内の石油需要は右肩下がりの傾向。石油連盟の公表資料「今日の石油産業2011」によれば、2009年度の国内需要は1億9493万キロリットル。2000年度(2億4322万キロリットル)に比べ、約2割も減少した。11年3月の東日本大震災の影響で多くの原子力発電所が稼働を停止したため、現在は電力向けの需要が急拡大。しかし、これは一時的な影響と考えられ、長期的な石油需要は縮小することが予想されている。

こうした中、各社は経営の効率化・合理化を目指して業界再編を進めてきた。特に大きな衝撃を与えたのが、10年4月、新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営統合してJXホールディングスが誕生したこと。10年度における同社の売上高は9兆6344億円で、業界2位の出光興産(3兆6593億円)を大きく上回っている。石油業界は設備過剰な面が大きく、再編により貯蔵設備や精油所、ガソリンスタンドなどの合理化が進めば、業務効率の改善が見込める。そこで、JXホールディングス以外の企業が、他社との業務提携・経営統合の道を探る可能性は十分に考えられるだろう。さらに12年1月には、エクソンモービルが東燃ゼネラル石油の株式を手放し、日本事業から事実上撤退する方針だと報道された。これが引き金となり、大きな業界再編が進むこともありうる。業界志望者は、ぜひ注目しておきたいところだ。

国内需要が減っている状況に対応するため、新規ビジネスや海外市場への取り組みも活発になっている。例えば、JXホールディングスの子会社であるJX日鉱日石エネルギーは12年2月、機能性化学品の開発・販売強化を目指して担当組織を強化すると公表。また、昭和シェル石油が国内の太陽電池事業を強化したり、出光興産が有機EL分野で台湾メーカーと協力したりするなどの動きも、非燃料分野に進出して「総合エネルギー企業」へと変身する取り組みの代表例と言えるだろう。そして、産油地での探鉱権益取得によって「川上」に進出したり、国内で培ったノウハウを生かして海外の石油販売に乗り出したりする企業も現れている。

環境問題への対応も、業界にとって重要な課題だ。二酸化炭素排出量を産業分野別に見ると、石油業界は電力、鉄鋼、化学に次ぐ4番手。ほかの産業は、排出取引制度への参加に前向きな態度を示すなどの対応を進めており、石油業界全体としても環境問題への対応が求められそうだ。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

石油業界志望者が知っておきたいキーワード

バイオガソリン トウモロコシやサトウキビなどの植物から生産されたバイオエタノールに、石油系ガスのイソブテンを合成して作ったガソリン。日本ではバイオマス由来燃料の導入を進めており、今後、需要の拡大が予想されている。
エネルギー供給構造高度化法 2009年に施行された法律。正式名称は、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」。エネルギー供給事業者に対し、非化石エネルギー源の利用促進を義務づけている。
コスト積み上げ方式から市場連動方式へ 従来、ガソリンなどの卸値は、原油輸入価格に経費を上乗せした「コスト積み上げ方式」で決められていた。しかし、2008年後半から「市場連動方式」に切り替わり、原油価格上昇分を素早くコストに転換できる仕組みになった。
WTI原油 WTIとはWest Texas Intermediateの略で、米テキサス州の沿岸部で産出される原油のこと。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)での価格は、世界の原油価格の有力な指標として広く認知されている。

【このニュースだけは要チェック!】

「川上」や「非燃料」への動きに注目

・JX日鉱日石開発の子会社である日鉱日石サバ深海石油開発が、マレーシア国営石油会社ペトロナスと生産分与契約を締結し、マレーシア・サバ州沖の探鉱権益を取得したと発表。同社はオペレーター(操業管理会社)として探鉱活動を手がける。(2012年1月17日)

・出光興産が、次世代ディスプレイに使われる有機EL分野で、台湾のAUオプトロニクスと戦略的提携関係を結ぶことで合意。高性能有機EL材料の提供やデバイス構成の提案を行う。出光興産は、有機EL分野でソニーや三井化学などとも共同開発を行っている。(2012年2月2日)

この業界の指南役
日本総合研究所 副主任研究員 福田隆士氏
日本総合研究所 副主任研究員 福田隆士氏
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は事業戦略、事業性評価、マーケティング戦略。幅広い業界、規模の企業を対象に活動しており、特にサービス・流通関連のマーケティングに注力中。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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