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掲載日:2012年6月18日

Vol.135 医薬品卸編

薬局など小口顧客への販売比率が拡大。医薬品情報の提供など、本業強化の重要性が高まる

従来の医薬品卸にとって、最大の販売先は病院だった。しかし、2010年度には薬局のシェアが50パーセントを突破。「大口から小口へ」の動きは今後も進むとみられ、各社はビジネスモデルの変更を迫られている。

経済産業省の「商業動態統計調査」によれば、2011年度における医薬品・化粧品卸売業の市場規模は25兆9130億円。09年度(24兆8110億円)、10年度(25兆8580億円)に比べ、微増傾向だ。背景には、高齢化に伴う医療費の高騰がある。ただし、政府はふくれあがる医療費を抑えるため、10年4月に薬価引き下げを実施。さらに、業界内の競争が激化して納入価格の値下げ合戦が起こっており、各社の収益を圧迫している。

医薬品の約85パーセントは、病院などの医療機関で治療に使われる「医療用医薬品」。街中のドラッグストアなどで販売される「一般用医薬品」は、15パーセント程度に過ぎない。そのため、メディパルホールディングス、アルフレッサホールディングス、スズケン、東邦ホールディングスといった医薬品卸にとって、医薬品メーカーが生産した「医療用医薬品」を病院や調剤薬局に販売することが収益の柱となっている。なお、医薬品産業には、「多品種少量供給が基本」「命に直接関わる商品を扱っているため、薬事法などの法令・規則が厳格」「医療用医薬品については、国が定めた『薬価基準』によって価格が決まっている」などの特徴があることを知っておこう。

薬価の抑制・競争激化という逆風に対し、各社は事業範囲を広げることで対応を図っている。まずは、「川上」に乗り出す動きに注目。例えば、アルフレッサホールディングス傘下の医薬品メーカーであるアルフレッサ ファーマは、09年11月に岡山工場を増強。従来からの自社製品生産に加え、受託製造にも力を入れる方針を明らかにしている。一方、「川下」への取り組みもある。メディパルホールディングスは、10年5月に調剤薬局のクオール、ドラッグストアのグローウェルホールディングスと共同で新会社ジーエムキューを設立。地元に密着した調剤薬局型ドラッグストアを展開中だ。ほかにも、化粧品や動物用医薬品、医療機器など、医薬品以外の商材を拡充する動きが活発になっている。

海外進出も本格化しつつある。メディパルホールディングスは09年10月、三菱商事、そして中国の大手医薬品卸である国薬ホールディングスと提携。アルフレッサホールディングスは11年3月に、伊藤忠商事と、中国東北地方最大の薬局チェーンである成大方円を傘下に持つ遼寧成大股份有限公司と提携した。このように、国内医薬品卸の強みである、効率的な医薬品物流・トレーサビリティー(traceability:直訳すると「追跡できる」という意味。生産から販売・廃棄までの流れや、製品の素材などをさかのぼって確かめられること)の確立で「高付加価値医薬品流通」を実現し、中国など海外で販売網を拡大する試みは、今後も続けられそうだ。

医薬品の情報提供力を高める取り組みも目立ってきた。社団法人日本医薬品卸業連合会によると、1992年度における医療用医薬品の販売先のうち、薬局の占める割合はたったの5.2パーセント。ところが、2010年度には50.8パーセントに達している。近年、大病院より小規模なクリニックが増え、それに伴って周辺の調剤薬局も増加しているからだ。小規模な調剤薬局では、医薬品の情報提供に対するニーズが大きく、医薬品卸各社はサポート体制の構築に努めている。また、災害時にも安定した流通を維持するため、物流網を強化する企業も多い。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

医療品卸業界志望者の必須キーワード

薬事法 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具に関する事柄を規制し、その運用方法などを定めた法律のこと。2009年6月に改正され、リスクが比較的低い一般用医薬品を販売できる「登録販売者」制度が設立。他業種から医薬品小売業への参入・提携などが加速している。
後発医薬品 ジェネリック医薬品、ゾロ薬とも呼ばれる。特許期間が終了した医薬品を、他社が製造・販売するもの。研究開発費がかからないために一般の医薬品より3〜8割程度安く、医療費抑制を目指す国によって普及が進められている。
セルフメディケーション Self-medication。薬局で一般用医薬品などを購入するなどして、患者が自らの責任で治療・手当てをすること。医療機関での受診なしで健康を維持することで、医療費の抑制などに役立つのではないかと期待されている。
BCP Business Continuity Planningの略。災害時などに、限られた経営資源による事業継続や、目標時間内の復旧を目指す「事業継続計画」。医薬品は、地震、台風・竜巻、新型インフルエンザなどが発生した場合にも安定供給が必要で、BCPの構築が強く求められている。

【このニュースだけは要チェック!】

地域密着型の取り組みに注意しよう

・メディパルホールディングスの子会社であるメディセオが、医療用医薬品などを取り扱う物流拠点「名古屋ALC(エリア・ロジスティクス・センター)」を新設。免震構造、停電時の自家発電装置など、災害時にも安定供給できる体制を整えている。(2011年6月8日)

・アルフレッサホールディングスが、中国地方と九州の一部を地盤とする医薬品卸の常盤薬品と業務提携することで合意。常盤薬品が持つ地場のネットワークを生かし、地域の調剤薬局などとの関係性を強めることが目的だと見られている。(2012年2月3日)

この業界の指南役
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
日本総合研究所 研究員 千葉岳洋氏
一橋大学社会学部社会問題・政策課程卒業。専門は、国際会計、経営管理・グループ経営改革、グローバルマーケティング、グローバルサプライチェーンマネジメント。製造業を中心として、グローバルを共通テーマに、マーケティング・会計・業務改革などを幅広く手がける。米国公認会計士。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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