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掲載日:2012年8月6日

Vol.141 病院・診療所編

高齢化に伴い、介護サービスとの連携が強化。患者の立場でサービスを提供する必要性が増す

今後は、高齢患者の割合が急激に高まることが予測される。病院・診療所には、介護や健康増進といった周辺分野と役割分担しながら、自宅や介護施設で暮らす人に対して効率的な医療を行うことが求められるだろう。

病院とは、病床数が20以上ある医療機関のこと。これに対し、病床数が19以下、あるいは入院施設がない医療機関は診療所と呼ばれる。経営母体により、民間セクターである医療法人と、国公立病院や自治体病院、大学病院などに大別される。厚生労働省の「平成22年 医療施設調査」によれば、2010年10月1日現在における全国の医療施設総は、17万6878施設(活動していない施設を除く)。内訳は、「病院」が8670 施設、「一般診療所」は9万9824 施設、「歯科診療所」は6万8384 施設だ。なお、1990年当時の病院は1万96施設、一般診療所は8万852施設。20年間で、病院が約14パーセント減り、一般診療所が約23パーセント増えたことになる。

厚生労働省の「平成22年度 医療費の動向」によると、2010年度の国民医療費は36.6兆円。09年度に比べ、1兆3700億円増えた。財政のひっ迫が深刻化しているため、政府は医療費の抑制を目指し、医療制度改革を進めている。主な課題は、「(1)診療報酬の見直し」「(2)薬価基準の見直し」「(3)高齢者医療制度の見直し」「(4)医療提供体制の見直し」「(5)医療費の適正化」だ。こうした方針にのっとり、02年度より4回にわたって診療報酬はマイナス改定となった。だが、その結果、経営状況が悪化してスタッフが削減され、医師や看護師が医療行為以外の事務作業までこなさなければならないケースが続出。さらに、06年に導入された「新臨床研修医制度」などによって慢性的な医師・看護師の不足・地域偏在に拍車がかかってしまった。そこで、10年度の診療報酬改定では、10年ぶりにプラス改定がなされた。12年度の改定でも、医療従事者の負担軽減のため、予算が重点配分される予定だ。

人口減少時代に突入した日本だが、世代別に見て人口が最も多い「団塊の世代」(1947〜49年ごろに生まれた人々)が高齢者になるのはこれから。そのため、今後しばらくは市場の拡大が見込まれている。ただし、高齢者の場合は医療ニーズより介護ニーズの方が大きい。そこで、医療機関と介護サービスとの連携の重要性はますます高まるはずだ。また、医療費抑制への機運はさらに強まる見込み。そこで、健康増進や病気予防といった周辺分野との機能分担により、効率的な医療が求められるだろう。

限られた医療資源(医師・看護師などの人材や、薬剤、医療機器など)を有効活用するため、医療機関の役割分担を進める動きも活発になっている。比較的軽い患者は、地域の「かかりつけ医」である診療所が担当。さらなる処置が必要な場合は、地域の中核病院を紹介して高度急性期治療を実施する。こうして不必要な重複診療を防止し、医療の質・量を維持しようというのだ。

医療機関においても、技術開発は着々と進んでいる。電子カルテの推進などITインフラの整備は、地域医療機関の連携や、医療の効率化に大きく寄与。また、患者が多くの医療情報に触れられるようになったのも、技術革新のメリットだ。ただし一方で、患者が医療機関に向ける視線は厳しくなっている。そこで病院・診療所には、これまで以上に患者の立場になった医療や周辺サービスを提供するよう、配慮する必要がでてきた。また、医療技術の進歩は医療費の高騰につながったり、「誰にでも平等な医療」という従来の前提を崩したりする危険性もあると指摘されている。

【押さえておきたい情報をピックアップ!】

医療業界志望者が知っておきたいキーワード

診療報酬 医療行為・薬剤・材料費などの対価として算出される報酬額。「診療報酬点数表」により、2年に一度その時の外部状況等を勘案して、国の諮問機関にて決定される。「医師の報酬」と誤解されることもあるが、実際は、「医療行為をした医療機関・薬局の医業収入の総和」を意味する。
DPC Diagnosis(診断)Procedure(診療行為)Combination(組み合わせ)の略称。「診断群分類包括評価」とも呼ばれる。診療行為ごとに計算する『出来高払い方式』ではなく、「包括部分」(投薬・注射・処置・入院料など)と「出来高部分」(手術・麻酔・リハビリ・指導料など)を組み合わせて計算する方式。出来高払いの場合、多くの治療行為を行うほど診療報酬が高くなるが、DPCでは治療行為が少ないほど診療報酬の利益が上がりやすくなる。そこで、医療費のムダの削減につながると期待されている。
クリニカルパス 患者が治療を受け、完治するまでの計画表のこと。どのような検査・治療行為を、いつごろ、どんな目的で行うか患者にわかりやすく説明することで、医療サービスをスムーズに提供できる。複数の医療機関が連携して治療に当たる場合も、治療効果の最大化と重複診療の削減に大いに役立つ。

【このニュースだけは要チェック!】

医療費抑制関連のニュースに注目

・市場調査会社の富士経済が、ジェネリック医薬品(特許期間が終了した医薬品を、他社が製造・販売するもの。従来品より低コスト)に関する調査結果を発表。2014年の国内市場規模は5865億円で、10年より33パーセント増える見通しだという。(2012年3月15日)

・厚生労働省が、「平成24年度診療報酬改定の概要」を発表。医療スタッフの負担を軽減するための取り組み、医療と介護の連携強化・在宅医療の充実に向けた取り組み、医療技術の進歩などの分野に対し、積極的な予算配分を行っている。(2012年2月14日)

この業界の指南役
日本総合研究所 マネージャー 奥田宗臣氏
日本総合研究所 マネージャー 奥田宗臣氏
早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。ヘルスケア・医療関連ビジネス分野における民間企業の事業戦略策定・実行支援などに従事。近年は、医薬品・医療機器メーカーの新興国市場を中心にマーケティング戦略立案支援、営業力強化のコンサルティングを中心に活動中。
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取材・文/白谷輝英 撮影/平山 諭 イラスト/坂谷はるか デザイン/ラナデザインアソシエイツ

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